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マッチマッチ さんのレビュー一覧
マッチマッチさんのページへレビュー数38件
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非ミステリーではあるが、全編を通じて漂うこの切なさと哀しさ、そして緊張感と不安感、これは何なのだろうか。
ミステリーでは無いが、一種のサスペンスである。とは言っても、決して怖いわけではない。愛が溢れているのである。 物語の主人公は、二人の女性。 産まればかりの女児を誘拐した希和子とその女児薫。 第1部は希和子の逃亡劇をその目線と心情で、第2部は成長した薫の現在の環境と心情を描く。 本書の評価のポイントは、不倫・誘拐・逃亡という行為を理知的に読むか、女性の心情・親子愛をエモーショナルに読み進めるかによって全く異なるであろう。当方は、後者のスタンスで最後まで読み、相当に印象に残り、評価もかなり高くなった。 『その子は、朝ごはんを、まだ、食べていないの、と』に表される希和子の愛。 今の自分を全て希和子の所為と割り切れない薫の心情。 泣かせます。 アマゾン評価5点です。 非ミスであっても楽しめますし、心に残ります。 |
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シンプルに面白かったです。
いよいよ太平洋戦争勃発か!というギリギリの状態の頃の米国と日本を舞台にしたお話。 ハッキリ申しまして、これはもう飛び切りのエンタメ娯楽アクション小説ですね。 当時の日系人の米国での扱い、日本軍の南京虐殺、アイヌ差別、朝鮮人徴用、混血偏見、軍国主義・・等々社会派的要素が散りばめられてはいますが、これは正直グリコのおまけの景品みたいなもの。 欲しいのはグリコのキャラメルであり、これが本命で美味しいのです。 米国から派遣された日系人スパイ賢一郎。訳ありで殺し屋家業を営む。 こやつが日本海軍の動向を調べ、憲兵に追われながらも択捉島までたどり着き、ハワイ真珠湾奇襲の情報を本国に伝送するというストーリー。 まさにスパイ小説です。 主人公の日系人スパイ以外の脇役も、それぞれいい味を出しています。 米国人スパイ養成女性教官キャスリン、朝鮮人スパイ金森、クルル人アイヌの宣造、憲兵脇田、ロシア人ハーフのゆき、この辺りがストーリーにいいアクセントとなって楽しめます。 史実ではハワイ真珠湾攻撃は大成功で終わり、それは明白なのです。 なのに、なぜかハラハラドキドキ、スピード感よくサクサクと読める。 正直、大衆娯楽小説はこれでいいと思います。 アマゾン評価の5点は十分でしょう。 よって、サイト評価9点としました。 |
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2023年の第36回山本周五郎賞かつ第169回直木三十五賞作品である。
なぜこれまで手にしなかったのかというと、時代小説という触れ込み。 正直、苦手なんです。外国ミステリーと時代物ミステリーは、いま一つ読みづらい。 ということで、避けてきたわけですが、最近当サイトのレビューで10点という高得点。 このサイトでは、なかなかお目にかからない高評価が眼に留まりました。 そこで、お気に入りに登録しておいて、最近読んだというのが、ことの真相です。 久し振りにこれは大当たりですね。なかなか、よく出来ている。 それに、時代小説ではあるが、全く気にならない。楽々と読めます。 場所は江戸の町の芝居小屋が立つ木挽町。雪の降る1月の夜に、ある見目麗しき若者によって仇討ちがなされます。 そして、この仇討ちの様相が、町の関係者から語られるわけだが、この語りが面白い。 関係者は5人。その全ての語りが独白である。独白が長々と続くので、少々退屈に思いそうだが、実際はそうならない。引き込まれる。 それぞれの独白が人情味に溢れ、なかなか奥深いし、それぞれにストーリーがある。5話の短編のようでもある。 そして、5人の関係者が、仇討ち現場近くの芝居小屋にかかわる人物。 芝居の紹介をする呼び込み屋。芝居の殺陣(タテ)の指導者。芝居衣装の裁縫職人兼女形。小道具職人夫婦。芝居の筋書き作家。という役割。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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かなり面白かった。
総ページ数500P超。ハードカバーで少々厚い。 冒頭に登場人物の一覧が出ている。 なんと、総人数は40人を超えているではないか。 こりゃ、読むのに難儀しそうだなと恨めしく思った。 ところがである。読み始めると何のことはない。 主要人物は僅か3名。 犯人箱崎、追いかける大阪府警刑事玉川(玉さん)と舘野(たーやん) あとはざっくり頭に入れておけば問題ない。 大変分かり易い。 しかも心情描写や情景描写は極めて少なく、各場面での会話で物語の大半は進行する。 故により分かり易く読み易い。 あっと言う間に読み終え、楽しむことが出来た。 登場人物のキャラ。 箱崎は極悪人なのか。正義の一面も被っているのか。 この扱いが絶妙に上手い。 仕事ぶりも冷静沈着。まるでTVの必殺シリーズに出ていた仕事人「中村主水」のような切れ味である。 「そう、おれはシリアルキラーじゃない。サイコパスでもない。犬や猫を殺したことはないし、庭に・・・」 興味を引く独白である。 立て続けに3名もの殺人。犯行の動機が気になる。純粋に金(カネ)?それとも? 追いかける刑事2人組。 黒川氏の著書はさほど多くは読んでいないが、「悪果」シリーズの堀内・伊達のような雰囲気である。2人の漫才のような掛け合いが面白い。 食事の支払いのコイントス。美味しそうな名物料理の紹介。 「堀内・伊達シリーズ」の二番煎じのようだが、軽妙でノリが良い。 しかし、捜査の過程は前述シリーズより、緻密で細かい。リアルである。 また、情報屋・道具屋・金塊ブローカーなど怪しげな業種の輩の登場は、興味深いアクセントとなりストーリーに花を添える。上記3名のキャラとこやつらとのやり取り、駆け引きは絶妙で、生々しくかつ可笑しい。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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某田舎町の中学校が舞台のいじめをテーマにした長編社会派小説である。
ミステリー要素はほぼ無いが、その真相が知りたくてストーリーに引き込まれる。 エンタメ的な面白さは無いが、ノンフィクション小説と誤認するかのようなリアリティ感。これが実にいい。 都合よく展開する小説には鼻白むが、この小説にはそれが全く無い。 当方、あっという間に読み終えた。だから著者の長編は好きなのだ。 中学校でのごくありふれた日常の中で起こった男子生徒の死亡事故。 いじめ加害の少年たち、少年の親たち、被害者の親、学校の先生、捜査にあたる刑事、検察官、事件を取材する女性記者等、多くの視点で事件が語られ描かれる。 そういう面では、著者が常用する社会派群像劇でもある。 ポイントは、亡くなった少年からの視点はなく、彼の心情は一切分からないこと。 また、最後の数ページで真相は明らかになるが、それはある程度予見されていたことでもある。 見方によっては尻切れトンボのエンディングという形にも思え、消化不良感を覚える方もいるかもしれないが、当方は逆にスッキリと肯定的にこのラストを捉える。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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シリーズ1作目、「警官の血」を読んだのがちょうど1年前。
読み応え抜群ですね。 スピード感なく展開が遅いという感想を持つ方もいるとは思いますが、当方にとっては、妙にサクサクと話が進むより現実的で落ち着いて読める。 「警官の血」のような脈々たるスケール感はないが、それはそれで、却ってリアルで良い。 本格的な王道の警察小説である。犯人探しのミステリー的楽しみかたではなく、警察内部の覇権争いや手柄をめぐっての現場の主導権争いを、観察し楽しむ小説である。 本冊の焦点は、3代目和也と和也が売った加賀谷。 この和也と加賀谷の件(クダリ)については、「警官の血」を読んでいなくとも、ある程度は説明されている。ただし、1作目を読んでいた方が、より話に深みが付いてくる。 どう読んでも、主人公は加賀谷であろう。1作目同様、和也はまだ未熟で発展途中。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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かなり面白かった。
さすがに当サイトのS評価。納得です! しかしながらこれだけ面白いのに、調べてみると、何らの賞も取っていないようだし、また映画化どころかTVドラマ化もされていない。 不思議である。なんらかの忖度でもあったのかな、と思ってしまう。 デビュー作ではあるが、TVの『相棒シリーズ』の脚本家という肩書があられるということで、やはり素質が違うのであろう。 面白く緻密でありスピード感も十分で文句のつけようが無いところではあるが、まあ、強いて挙げれば、やや都合が良すぎる。まあ、これは「幻夏」や「天上の葦」を読んだときにも感じたことだけど、、、 ということで、満点からマイナス1点の9点を付けてみました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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うーん、なかなかよく出来たミステリー小説ですね。
これでこのこのサイトの「国内総合ランキング」104位ですか。50位以内には十分入りそうだと思いますがね。 当方読みたい本をこのランキングから適当に見つけて、気になった物を読んでいますが、著者作は初読みでした。当たりでしたね。 こうやってこのランクから見つける方法も、宝探しみたいで良いものです。 約680ページ16章からなる長編です。 ただし、ページ数の割には、さほど多くは無い登場人物の手記と供述だけで全ページ書かれており、軽くて読み易いです。 16章のタイトルはビートルズのアルバム『ラバー・ソール』に収録された曲名と同じ名前になっています。 しかし正直なところ、内容はこの洋楽的な雰囲気とは余り合ってはいないように感じられました。※著者のこだわりですかね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは面白いですね!
650Pほどの厚さですが、久しぶりに寝るのを忘れて、一気読みしてしまいました。 10年前、河川敷で発見された2件の絞殺女性死体。未解決のまま、再び同じ河川敷で連続して2件の女性死体が見つかる。そして浮かび上がる3人の容疑者。 大筋はどこにでもある普通の犯罪小説なのだが、とにかくこの小説はテンポよく読ませてくれる。そして、犯罪小説にありがちな重さや陰鬱さは一切無い。 それどころか、読んでいて思わず読者を笑わせるギャグも散りばめられている。 このギャグのポイントが、刑事・容疑者以外の登場人物、すなわち10年前の被害者の父親、新人新聞記者、犯罪心理学者なんですね。 特に被害者の父親のキャラは特筆ものです。絞殺された娘を想う父親の哀しい行動ですが、その無茶で妙に滑稽な行動、そしてその妻との対比、これがギャグとして読者を笑わせてくれる。 記者と父親の関わり、また記者と犯罪神学者とのやり取り、ここにも傍から見た人間の滑稽な一面を感じさせる。この辺りの心理描写が実に面白く絶妙ですね。 まさに犯罪小説の名を冠した群像小説で、単なる「犯人探しの謎解き小説』ではありません。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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あとがきを読んでみると、この著名な作家さんはすこぶる推理小説好きだったらしい。
昭和30年代の極ありふれた地味な事件を扱った裁判小説である。それは、派手な展開や驚くような結末が待っているわけではない。量的にも500ページを楽に越える肉厚である。なのに、最後まで目が離せない。 さすが大御所の作家さんだけのことはある。並の作家では、この材料をこれだけのボリュームで書き尽くし、読ませ切るのは不可能であろう。 ※確かに序盤は、ややしんどい所もあるが、これがあってこそこの小説の真価が得られる。 法廷物·裁判物が好きな読者は、必ず読んでおくべき小説だと思う。通常のこの手のミステリー小説が、いかにデフォルメされて面白、可笑しく描かれいるのかが、良く分かる。といっても、決してこれを否定するものではない。それこそエンタメ的な醍醐味であり、読後の爽快感なんだから、今後もそれはそれで楽しみたい。 それにしても、凄く勉強になりました。冒頭に「宮部みゆき」氏の紹介文が掲載されているが、A級の紹介文です。その通りでした。 |
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すこぶる面白いエンターテイメント小説であった。
と言っても、単なるエンタメ小説ではなく、「戦争」·「言論」という重厚なテーマを扱った純然たる社会派小説であり、エンタメとしての軽快さの中に一本の太い筋が通っている。また、参考文献等を見てみると、多数の書籍や新聞が参照されており、単なるエンタメ小説で終わらせたくない著者の並々ならぬ意欲が伺える。 さらに、著者の略歴はTV脚本家の出身のようだが、そういった業界人としての経験も、本書に上手く活かされているようであり、興味深かった。 著者の『幻夏』を読んだ際に、やや都合良すぎる展開が気になったが、本書でもそれは随所に見られる。ただし、本書ではそのご都合主義が、ややもすれば重たくなるテーマにインスタント麺のようなお手軽さを与え、口直ししてくれた。 十分にアマゾン評価5点の価値があるであろう。 |
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一級の本格的社会派ミステリーと言える。
ボリュームも十分あり、かつ、内容も重厚。 20年ほど前の作品だが、「児童虐待」というこの本書のテーマは、古さを一切感じさせない。というより、現代のこの令和の時代にこそ、もう一度改めて読みたい小説である。 3人の子供たちの内面がとても丁寧に描かれており、また、ストーリー展開も緻密に考えて書かれてあり、飽きさせない。 冗長という捉え方もあるかもしれないが、じっくり派の読者にとっては、この分量こそ好ましい。 暗くて救いが無いという見方もあるかもしれないが、著者は端から希望や夢や明るさを描きたかったのではないだろう。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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500ページ少々の作品で、ある程度ボリューム感もあり、読みごたえがあります。特に後半450ページ辺りまでは、引き込まれますね、良く練られてあり、ページをめくるスピードも衰えません。
ストーリーの主軸は、犯行の「動機」なのですが、被疑者の自白の信ぴょう性に疑念を持った被疑者と被害者のそれぞれの子供が、真実に迫っていく。この過程が実に面白い。 犯人は嘘をつく。それは出来るだけ刑を免れるために嘘をつくのであるが、時には減刑に繋がらない嘘をつくこともある。 それは何のために?となると、これこそ犯罪小説の王道、「誰かを、何かを守るためである」 ▼以下、ネタバレ感想 |
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不穏な雰囲気。ごくごく普通の日常に迫る得体の知れない違和感。
この怖さは、絶妙にいいですね。雫井脩介の「火の粉」に似た雰囲気です。 ノー天気な夫秀嗣と不審な違和感に気づくがそれを正面切って口に出せない妻里佳子。読者をイライラさせる描き方が、著者は実に巧い。 突如現れた優平は、果たして本物なのか、目的は何なのか、それとも里佳子の思い過ごしなのか。 そんなことを考えさせながら、序盤から中盤にかけて、緊張感を持って読み進めさせてくれます。 また、妻里佳子の職業選択も、秀逸ですね。校閲者としての職業が、里佳子の真面目で神経質なほど几帳面さを浮き出させています。 お見事!これがあったから、その結末には驚いた。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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短編4話からなる構成。といっても、3話·4話は上下の位置付けなので、短編2話と本題作である中編1話の構成となっている。
表題作は特に面白かったです。ありきたりな法廷小説の様だが、正に勧善懲悪の冷静な半沢直樹版という感じ。単純に読後感が良くスッキリした。 2話の佐方父親の話も、心が暖まり気分良く読めました。 本懐の方が、アマゾン点数で4点ならこちらは5点。オチ狙いの短編なら横山秀夫に分がある。こういうスタンスが佐方シリーズには合いそうと思いました。 |
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