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マッチマッチ さんのレビュー一覧
マッチマッチさんのページへ書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点6.55pt |
レビュー数312件
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非ミステリーではあるが、全編を通じて漂うこの切なさと哀しさ、そして緊張感と不安感、これは何なのだろうか。
ミステリーでは無いが、一種のサスペンスである。とは言っても、決して怖いわけではない。愛が溢れているのである。 物語の主人公は、二人の女性。 産まればかりの女児を誘拐した希和子とその女児薫。 第1部は希和子の逃亡劇をその目線と心情で、第2部は成長した薫の現在の環境と心情を描く。 本書の評価のポイントは、不倫・誘拐・逃亡という行為を理知的に読むか、女性の心情・親子愛をエモーショナルに読み進めるかによって全く異なるであろう。当方は、後者のスタンスで最後まで読み、相当に印象に残り、評価もかなり高くなった。 『その子は、朝ごはんを、まだ、食べていないの、と』に表される希和子の愛。 今の自分を全て希和子の所為と割り切れない薫の心情。 泣かせます。 アマゾン評価5点です。 非ミスであっても楽しめますし、心に残ります。 |
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東京23区にまつわるいわく因縁を基にしたオカルト的ホラーミステリー小説。
とは言え、全く不気味でぞわぞわするようなお話ではない。 主人公は霊感の強いフリーライターの原田璃々子。そして、その相棒である先輩の民俗学講師島野。 両人が、23区の中で今回は5区を回り、妙な噂を取材する5話からなる連作短編集。 ご当地にお住まいの方なら、興味深くよりリアルに楽しめたのではないでしょうか。 ただ当方の様に縁もゆかりも無い者にとっては、やや薄味に感じる。 そういう意味では、評価が少々低くなってしまった。 どちらかというと、現実の人の怖さが秀でて感じられた。 第2話の「渋谷区の女」のお話。ラストの母の怨念と息子の恐怖。爆笑するくらい怖かった。まさに怖面白い。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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村野ミロシリーズ三作目。
と言っても、ミロは出てこない。雑誌記者だった親父さん(村野)のお話。 このシリーズは二作目の「天使に見捨てられた夜」を最近読み、読み易く面白かったので手にした。 読んで、あれっ!ミロは出てないんだと思ったが、ミロの出生の秘密が明かされ、それはそれで面白かった。 ミロシリーズのスピンオフ作品という位置づけでもいいと思う。 小説自体は、まあ、典型的なハードボイルド小説。 この手の小説が好きな方には、どんぴしゃりであろう。 昭和38年の草加次郎事件をベースに、村野が巻き込まれた少女殺人事件の真犯人を追い求める物語。 東京オリンピックが開催されたのが昭和39年のことだから、丁度その頃の話で、当時の懐かしい言葉や地名・フレーズがたびたび出て来て、当時の情景が思い起こされた。 ただ残念なことに、懐かしい言葉は多数出てくる割には、オリンピック開催前の当時のむんむんとした熱気、騒々しさはあまり感じられず、少々物足らなかった。 それが、真犯人を追いかけるストーリーに影響したのか、やや展開が淡々と進んだ印象であった。 ハードボイルド小説なのだから、もうちょい、緊張感・躍動感ある筋書きがあって良かったとも思う。 まあそれでも、卒なくまとめられており、アマゾン評価の4点としたい。 |
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心理サスペンス小説ということで、期待感一杯で読んだが、なかなかしんどいお話であった。
とにかく主人公里沙子の思考にイライラする。 本文中にも「・・・そんな具合に、ネガティブな思考のループにはまりやすい自分を里沙子は自覚していて、心底面倒だと思っているのだが。・・・」 まさにこの一文に尽きる。 主人公は三歳の娘を育てている普通の主婦である。夫陽一郎もその娘を可愛がるどこにでもいるような普通のサラリーマン。 そのどこにでもあるような普通の家庭の普通の主婦が、裁判員制度の補充裁判員に選ばれ、刑事裁判に臨むことになったというお話。 刑事裁判の被告は、我が子を湯船に沈めて虐待死させた女性水穂。 当方読み始めて本書の展開は、「被告や証人の証言や主人公の発言・行動が複雑に絡み交錯しつつ、事件の真相が思わぬ展開を迎える」というエンタメ的なストーリーを予想したが、実際は全く異なっていた。 事件そのものは、この小説の本題ではない。 要するに、主人公里沙子が被告水穂に自分を重ね、自分の生い立ち・環境・家庭・家族・結婚生活・子育て・躾け・虐待・嫁姑・自立・専業・共稼ぎ等を考える社会派的家族小説である。 安直に言うと、若い男女が結婚するに当たっての指南書・啓蒙書とも言っていいかもしれない。 男性側から見ると、里沙子のような超面倒な女性は遠慮したい。 女性側から見ると、陽一郎のような一見理解があるようだが、女性の内面を知ろうとしない無理解・マザコン男はもう無理。こういうことだろう。 だから、円満な結婚生活を送るためには、この本を読んで男女の特性差を知り、些細な一言も気を配って結婚しましょう。ということではないか。 勝手ながら、当方、著者の意図をそういう風に捉えてしまった。 アマゾンの感想を読んでいると、里沙子の心情に共感するというコメントが多いことになるほどと思う。 無理解男が世に多いということの証左でもある。 まあしかし読みながら、うじうじ思考の里沙子には、もっとガツーンと言ってやれよと言いたくなった。 もしかすると、著者はダメ女性の例として里沙子を描き、世の女性たちに「もっと自立せよ!」って発破をかけているのかとも思った。 エンタメ小説では無く、ちょっと本サイトでは範疇外という印象なので、中庸点の5点とした。 |
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お馴染みの伊達・堀内シリーズ第4弾というところですね。
文庫版が発行されるのを待って、読んでみました。 いつものごとく、安心して楽しめる定番の娯楽小説です。 元大阪府警。ヤメ刑事の2人のコンビが今回シノギとして狙うのが、密輸された行方不明の金塊。 半グレ集団やヤクザと対峙しながら、金塊を追いかける。 この間のやり取りは、もうシリーズ4冊目となってマンネリ化しているのだが、それが分かっていてもハラハラドキドキで楽しめる。 2人の会話も面白いし、旨そうな食い物の話題や伊達の鬼嫁のエピソードは、いつものように良い味だ。 事件の詳細は控えるが、数年前に福岡であった金塊強奪事件の裏事情も垣間見れる。 さて、読み終えて気になったのは、少し陰が見えてきた堀内の言動。妙に刑事時代を思い出し、懐かしむ。 当方読んでいて、最後に堀内が死んでしまうのではないかと想像しながら読んでいた。 実際は、最後はすべて一件落着。ハッピーエンドで終わったわけであるが、もし第5弾があるのなら、そちらで片方が亡くなり、このシリーズが終わりになるのではないかと想像する。 著者の黒川氏もそれなりの高齢である。解説の最後には、黒川氏は75歳の今でも執筆意欲に衰えが無いと書かれていたが、当方はシリーズを終わらせる布石を第4弾で打ったものと感じた。 恐らくノー天気なキャラの誠やんがチンピラに刺されて死ぬのであろう。そして、堀内が杖を突きながら静かに二人のコンビを懐かしむのであろう。 数年後の第5弾の発行を楽しみに待ちたい。 |
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オリジナル版の文庫本を手にしました。
表紙画の血走った眼(マナコ)。 芸能人くずれのエセ催眠術師。 雷鳴とともに女性の甲高い笑い声。 「ワ!タ!シ!ハ!ユ!ウ!コ!ウ!テ!キ!ナ!ウ!チ!ュ!ジ!ン!デ!ス!」という奇声。 「ワタシハ、ファティマ第七星雲ノ、アンドリア、デス。・・・」 まさにこの後、なにか不可解なことが起こりそうな気配です。 いやー、この辺りでかなり期待感が高まりましたね。 おっと、この小説、当たりかも?! 映画化されたらしく、これから、どんな奇想天外な展開が待っているのか?! もちろん、当方この小説の事、映画化されたということ位しか知りません。 ワクワクしながら読み進めました。 ということで、読後の結論ですが、正直ハズレでした。 この後は、単なる催眠術と催眠療法との違いであったり、精神疾患や多重人格についての執筆当時の知見が語られるだけ。 特に稚拙なのが、警察捜査と第三者のカウンセラーの関わり。 この嵯峨という第三者が、なぜに横領事件捜査に関与できるのか。あまりにも非現実的。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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著者作初読み。
200ページ少々の小品ではあるが、軽くはなく読みごたえがある。 「涙香岬」・「書道」というのが鍵となり、文学的な雰囲気を醸し出し、味わいがある。期待を持って読み進めることができた。 では期待の結果はどうであったかというと、思っていたよりエンタメ感も高く、ミステリー要素も多い。「裏表紙には桜木ノアールの原点ともいうべき作品」と記載されているが、ノアール感はほとんど感じない。小ぶりにまとまったサスペンス小説という所であった。 夏紀の出生の秘密などの結末は、殆ど予想された通りで、特段大きな驚きは無いが、気になったのは川田親子の最後の有り様。 特に息子川田隆一の描き方。悪に徹しきれない中途半端さが、上手く描ききれていない。年に2回50万ほどの金を30年もの間、無名で弁護士に預託する。そんな良心を持った男が、平気で人を始末しようとする。なにか、釈然としない。 どうなんだろう。もう少し、ちぐはぐにならないよう捌けなったのだろうか・・・ 前半から終盤に至るまでの雰囲気がよかったこともあり、ラストの三流サスペンスドラマのようなドタバタ感は、やや安っぽく感じてしまった。 母夏江と娘夏紀。そして、ひょんなことから彼らに絡んでしまった元校長の父徳一と息子優作。北海道釧路地方の自然と風土を背景に、この2つの親子の人間模様をもう少し掘り下げ描いていれば、より品の良い作品に仕上がったのではないだろうか。 |
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桐野夏生氏の初期作。
女性版ハードボイルド小説という触れ込みである。 読んでみたが、まあこれは面白いし、読み易い。悪くはない。 特に主人公の女性探偵村野ミロ、この娘のキャラがいい。 いいと言っても、ハードでないところがいい。固ゆででない半熟・未熟なゆで加減いい。 そういうちょっとよれよれの探偵というのが、この小説の重要ポイント。 そして、このちょっとだらしない素人っぽい女性探偵が、失踪したAV女優を追いかけるというお話。 ミステリー感もあり、なかなか失踪女優の正体がつかめないストーリーも楽しめる。 さらに90年代のアダルト業界、歌舞伎町の風俗等、が多く扱われていて、社会派的な一面も見られる。 しかし、もっとも楽しめたのは、女性の描き方。ミロだけでなく、依頼人で活動家の渡辺房江。依頼人の支援者で著名な料理研究家である八田牧子。この辺りが華を添える。 桐野氏の作品はさほど多くを呼んだわけではないが、さすが女流作家だけあって、女性を描かせたらその生態・心理の描写が妙にリアルで面白いですね。 そこそこのオチも準備されており、素直に楽しめるお話です。 ある程度、ボリュームもあり、十分にアマゾン評点4点は与えられるでしょう。 |
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シンプルに面白かったです。
いよいよ太平洋戦争勃発か!というギリギリの状態の頃の米国と日本を舞台にしたお話。 ハッキリ申しまして、これはもう飛び切りのエンタメ娯楽アクション小説ですね。 当時の日系人の米国での扱い、日本軍の南京虐殺、アイヌ差別、朝鮮人徴用、混血偏見、軍国主義・・等々社会派的要素が散りばめられてはいますが、これは正直グリコのおまけの景品みたいなもの。 欲しいのはグリコのキャラメルであり、これが本命で美味しいのです。 米国から派遣された日系人スパイ賢一郎。訳ありで殺し屋家業を営む。 こやつが日本海軍の動向を調べ、憲兵に追われながらも択捉島までたどり着き、ハワイ真珠湾奇襲の情報を本国に伝送するというストーリー。 まさにスパイ小説です。 主人公の日系人スパイ以外の脇役も、それぞれいい味を出しています。 米国人スパイ養成女性教官キャスリン、朝鮮人スパイ金森、クルル人アイヌの宣造、憲兵脇田、ロシア人ハーフのゆき、この辺りがストーリーにいいアクセントとなって楽しめます。 史実ではハワイ真珠湾攻撃は大成功で終わり、それは明白なのです。 なのに、なぜかハラハラドキドキ、スピード感よくサクサクと読める。 正直、大衆娯楽小説はこれでいいと思います。 アマゾン評価の5点は十分でしょう。 よって、サイト評価9点としました。 |
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当サイトSランクの未読本を読んでみようと、手にした1冊。
当サイト評価Ave8.70。アマゾン評価Ave3.55。 かなりの差が見られる。 それこそ、本書の特徴を如実に示している。 いわゆるミステリー好きが多いこのサイトでは、評価が高く、多様な趣向の読み手が多いアマゾンサイトでは、中庸点。 まさに読者層を選ぶ1冊であった。 当方にとって、まず登場人物の名前が読みにくくて覚えづらい。 最初に主な登場人物の名前と続柄等が書かれてはあるが、なぜだかなかなか頭に入らない。 さらに登場地の地名や事件現場の建物名、建物の構造・位置関係などが全く整理できない。 それに、この事件に関係があるのかないのか良く分からない中で、ミステリー作家が多く出てきて、これまた混乱の一因。 当方、深くは考えず、まずは筋書きだけを読みきることに専念して、読み終えた。 二転三転ありで、面白くはあったが、なかなか難しい本であったなと、そういう感想を持った。 これは、本当のところは、二度読み必須なんであろう。恐らく概略を知った上で、二度目をじっくり落ち着いて読むと、筆者が落とし込んだ餌が次々と点と線で繋がり、謎解きのミステリーを楽しむ醍醐味が得られると思う。そういう類の本だと思う。 しかし、当方にはちょっと無理っぽいかもしれない。 とは言え、読後のこの微妙なホラー感。この味は面白い。すべての解答を与えず、読み手に不可解な消化不良感を残す。 それが謎解きとは別の本書の本当のところの醍醐味である、そういう気がした。 ということで、当方の評価はアマゾン評価の3.5点。すなわち当サイト評価7点とした。 |
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2023年の第36回山本周五郎賞かつ第169回直木三十五賞作品である。
なぜこれまで手にしなかったのかというと、時代小説という触れ込み。 正直、苦手なんです。外国ミステリーと時代物ミステリーは、いま一つ読みづらい。 ということで、避けてきたわけですが、最近当サイトのレビューで10点という高得点。 このサイトでは、なかなかお目にかからない高評価が眼に留まりました。 そこで、お気に入りに登録しておいて、最近読んだというのが、ことの真相です。 久し振りにこれは大当たりですね。なかなか、よく出来ている。 それに、時代小説ではあるが、全く気にならない。楽々と読めます。 場所は江戸の町の芝居小屋が立つ木挽町。雪の降る1月の夜に、ある見目麗しき若者によって仇討ちがなされます。 そして、この仇討ちの様相が、町の関係者から語られるわけだが、この語りが面白い。 関係者は5人。その全ての語りが独白である。独白が長々と続くので、少々退屈に思いそうだが、実際はそうならない。引き込まれる。 それぞれの独白が人情味に溢れ、なかなか奥深いし、それぞれにストーリーがある。5話の短編のようでもある。 そして、5人の関係者が、仇討ち現場近くの芝居小屋にかかわる人物。 芝居の紹介をする呼び込み屋。芝居の殺陣(タテ)の指導者。芝居衣装の裁縫職人兼女形。小道具職人夫婦。芝居の筋書き作家。という役割。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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読み易いことはこの上もない。まるで軽いコミック本のような小説であった。
こいつが怪しいじゃんと思った人物が、まさにそのものずばりであったのは笑える。 また、何となく怪しい手術室。ということは、いかにも違法臓器移植がバレバレ。 それにラストの復讐殺人。スーパースターのようなお手並みと逃亡劇。 軽さとスピード感と雰囲気だけのお気軽小説という評価で、☆2つ(アマゾン評価) |
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なぜこの書籍を手にしたのだろうか?
かなりライトな小説です。 中高生向きって言ったら、中高生に失礼か(笑) とにかく軽く流したい方とか、ミステリー初心者にはお手頃でしょう。 いわゆる刑事コロンボ、古畑任三郎シリーズタイプの倒叙ミステリー。 もうガチガチの絵に描いたような倒叙です。捻りも何もない(笑) 読んで分かったこと。福家警部補というのはシリーズもので、全5シリーズ。本作はその4作目。 基本、すべてが短編集です。なお、本作は2編の短編から構成。 刑事コロンボ役は、福家警部補という女性刑事。 「メガネをかけたチョイとおっちょこちょいタイプの女子」という設定で描かれていますが、その実態は、スーパーマン的な運動神経を持つしつこめで有能な刑事ということです。 なお、ミステリー小説としての感想ですが、短編1作目「未完の頂上」。こちらは、Nシステムの言及無しがダメポイント。Nシステムを確認すれば、ナンバーと運転手が撮影されているので、このトリックは成立しない。 2作目「幸福の代償」。犯人を落とすポイント。犯人に冷静さを失わせて失言を待つ。これは、面白く無い。最後まで冷静に証拠を積み上げ落とし込む。これが倒叙の醍醐味。がっかり。 というところがマイナス評価であった。 |
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現在の食の問題に関して書かれた社会派小説。
社会派ミステリーとまではいかない。著者からの啓発・啓蒙小説という立ち位置か。告発までは行かないであろう。 そういう意味では、かつて大きな話題となった有吉佐和子氏の「複合汚染」に似たようなスタンス。でも、決してルポではなく娯楽小説である。 食の問題の中身については、2010年頃の作品なので、現在では、世間的にほぼ知られた内容ではある。ただし、当時著者が相当情報を収集し、取材・調査された様子がうかがえる。当時の意欲作である。 また、単なる食の問題だけに的を絞っているわけではなく、食品加工場における外国人労働者、技能実習生の問題についても、ある程度丁寧に記述されている。 500ページほどあるが、上記のようなスタンスではあっても読みにくくはなく、サラっと読んでしまう。読み易い。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「ジェンダー・クライム」直訳すると、男女にかかわる犯罪ということですか。
本書は、昨今のジェンダー問題を扱った社会派警察ミステリーである。 著者のあとがきによると、『永遠の仔』を書いた20数年前の当時では書けなかったジェンダーにまつわる様々な課題を今回本書で届けた、ということらしい。 数年前に起こった集団レイプ事件。これをベースに、さまざまな出来事が発生する。殺人・虐待・DV・家出・・・さらにはセクハラまで。どれもにジェンダーが関わっている。 また、日常生活におけるジェンダー格差。男女間の意識差。性差に関する文化の習熟度。こうした話題までも散りばめられ、まさに多種多彩である。悪く言えば総花的か。 結局それも、あとがきに書かれていたように著者が最も意図したかった事であろう。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは「社会派」を正面に据えた、もうガチガチの社会派小説である。
この方の作品、「幻夏」・「犯罪者クリミナル」・「天上の葦」と読んだけど、社会派ではあるがエンタメ感も強く、すこぶる面白い。当方の評価も全て高い。 それを期して読むと、前半から中盤までは少々しんどい。 この作者のことを知らずに、初めて本書を手にした方は、途中で投げ出すかもしれない。 でも勉強のつもりでしっかり読み進めると、後半は俄然面白くなる。著者の本領発揮という所か。 本作は、非正規雇用に関わる労働問題、組合活動、労働法制、さらにこれらに共謀罪を絡めた超問題作。テーマは重いし、こうした問題に無関心な若い方や右タイプの方は、端から手にしないであろう。 初出は地方紙とある。令和3年から約何2年間年に渡って連載されていたとのこと。 ということは、あやふやなことは書けない。参考文献を見てみると、膨大な数。相当調べてから書かれたようである。 正面切って上記の問題を扱っているので、どうしても説明がくどくなる。くどいから、読むのがしんどいというわけだ。 社会派小説には、主たる登場人物がいてそれらの行動・人間性が徹底的に掘り下げられ、その結果その背後に潜む社会問題が浮かび上がってくる、というタイプの社会派がある。 しかし、本書はそうではない。前述のテーマが主役で、このテーマを扱うために登場人物たちが行動し葛藤し生き抜いていく。このタイプだ。 後者のタイプだったが故、読む人にとってこのテーマが鼻につき敬遠してしまうこともあるだろうし、本来読んで欲しい人たちの手に渡らない可能性も高い。もったいないことだ。 惜しむべきは、このテーマを前者のタイプで描いて欲しかった。そして、4人の若い非正規雇用者をよりリアルに描き出してもらいたかった。 そうすれば、労働問題を扱った不朽の名作と評価されていたかも知れない。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「この作品は史実に基づくフィクションです。」
最後にこう記されていた。 その通りなんだろう。 著者が望むべき理想像として、史実に基づきつつ「ゴッホ」と「ゴーギャン」の関係を創作したのであろう。 ミステリー感は殆ど感じられなく、淡々と物語が進行した。 この本を手にしたのは、著者作の「楽園のカンヴァス」の印象が非常に強かったからである。 当時の読後評価は8ポイント。それには遠く及ばなかった。 ただ、理想の像を描いたからこそ、読後感は悪くはなかった。 それを良しとして、中庸点の5ポイントとした。 |
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