■スポンサードリンク


マッチマッチ さんのレビュー一覧

マッチマッチさんのページへ

レビュー数325

全325件 61~80 4/17ページ

※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
 閲覧する時は、『このレビューを表示する場合はここをクリック』を押してください。
No.265: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

砂漠の感想

正真正銘の青春小説。非ミステリーです。

読んで思い出す自身の学生生活。
大学生になり一人暮らしをし、大人になったつもりでも結局は子供なんだよ。
世間に庇護され自由に生きる、オアシスのような生活。
タイトルの砂漠こそ、著者の意図するアンチテーゼ。

そのオアシスで青春を謳歌した5人の登場人物。大学生の北村、鳥井、南、東堂、西嶋。
そしてもう一人の登場人物社会人の鳩麦さん。鳩麦さんは、彼らを優しく見守っていたんだね、砂漠から。

あっと言う間に過ぎ去った4年間。卒業式での学長の祝辞。
「・・・学生時代を思い出して、懐かしがるのは構わないが、あの時は良かったな、オアシスだったな、と逃げるようなことは絶対に考えるな。そういう人生を送るなよ」
著者も自身の学生生活を振り返って、これが一番言いたかったんだろう。

懐かしく楽しんで読ませてもらいました。
★7つ。
砂漠 (実業之日本社文庫)
伊坂幸太郎砂漠 についてのレビュー
No.264:
(6pt)

Another 2001の感想

失敗しちゃった。
Anotherの評価がえらく高いので、これは面白そうだ読み始めたのが、これ。
これ、AnotherじゃなくてAnother2001という続編。
読んでいる途中で気づいて、がっかりしちゃった。

結構楽しんで読めたが、果たしてこの後Anotherを読んで、楽しめるだろうか。
どちらかというとそっちの方が気になってしまう。

完全にホラーミステリーですね。
結局は、正体がつかめない不可解な世界。
やっぱり、この手の不可解で奇怪な出来事は、その正体が明らかになることで、物語がしっかり腑に落ち楽しめる。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
Another 2001(上) (角川文庫)
綾辻行人Another 2001 についてのレビュー
No.263: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

プロジェクト・ヘイル・メアリーの感想

先日の日経新聞で、SF界のスポークスマンとも呼ばれる大森望氏の絶賛書評を読み、手にした。

中国SFが急速に台頭する一方、アメリカSFの影が薄い。そもそも、一般に知られる作家や作品が出てこない。
そんなアメリカSF界のさびしい状況を打ち破る希望の星が、『火星の人』で2011年にデビューしたアンディ・ウィアー。・・・
・・・しかし、その『火星の人』をも上回る人気を得たのが、21年に出た最新長編『プロジェクト・ヘイル・メアリー』・・・
・・・「だれが読んでもおもしろいSF」という無理難題に果敢に挑んで見事に成功した奇跡的な傑作だ。

という書評である。これは是非読まなくてはならない。
確かにシンプルに楽しめた。
上巻の大半が、主人公グレースの一人称語りでストーリーが展開する。
ややもたもたしているが、上手く疑問を膨らませる。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
プロジェクト・ヘイル・メアリー 上 (ハヤカワ文庫SF)
No.262: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

可燃物の感想

警察ミステリーの短編集。
作品は5作。全作品とも群馬県警捜査一課葛(カツラ)警部が事件を推理解決するお話。
扱う事件は、連続放火、人質立てこもり、交通事故など日常によくある事件・事故ばかり。
全作品通して、非常にドライで淡々と事件の概要・警部の推理が語られる。
読みどころは、事件の細部に見られるちょっとした違和感。この違和感の正体に迫る警部の緻密な推理であろう。
読むと「なるほど」と、納得させられる。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
可燃物
米澤穂信可燃物 についてのレビュー
No.261:
(6pt)

倒錯のロンドの感想

著者初読み。
「えー、普通そうするか?」とか「ちょっと都合良すぎるじゃん」とか思いながら、結局、先が気になって最後まで一気に読んでしまった。
そういう面では楽しめたが、、、

それで、結論だけど、正直ちょっと凝り過ぎ。
院長の説明を読んでいて「そうなんだ」とは思うが、いまいち理解しづらい。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
倒錯のロンド 完成版 (講談社文庫)
折原一倒錯のロンド についてのレビュー
No.260:
(7pt)

正体の感想

600ページ少々の長編小説である。ボリュームはあるが文体は軽く読み易い。
当方もあっさりと読み終えることが出来た。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
正体 (光文社文庫 そ)
染井為人正体 についてのレビュー
No.259: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

鬼の跫音の感想

6編からなる短編集であった。
6編に共通するのはSという頭文字の人物と鴉。
しかし、共通するのはそれだけで、連作短編ではなく、それぞれが完全に独立した作品であった。
6編目の最後の作品で、共通するSの秘密が明かされる驚愕のネタを期待したが、何もなく些かがっかりした。
テイスト的には米澤穂信の「儚い羊たちの祝宴」に似たダークな雰囲気。
でも「儚い羊たちの祝宴」よりは、すこしレベルが落ちるのかな。いまいちオチの切れがない。オチが唐突過ぎて無理やり感がある上に、やや分かりづらい。
余韻を残して読者に考えさせたいという著者の意図だろうか。
ということで、当方はやや消化不良感を覚えたので、この点数とした。
鬼の跫音 (角川文庫)
道尾秀介鬼の跫音 についてのレビュー
No.258:
(8pt)

あの日、君は何をしたの感想

第1部 2004年 前林市(「東京から新幹線と在来線で2時間弱の北関東にある」と、第2部本文中で紹介されている架空の市らしい)で起こったある少年の事故死に関する内容。
第2部 2019年 東京都新宿区で起こった若い女性の殺人事件と容疑者の失踪に関する内容。
ミステリーとしての本書の読みどころは、2つの事件がどう絡んで、最後のオチに繋がるのかという点にあると思う。
そして、この小説のもう一つの読みどころは、少年とその母、容疑者とその母、そして容疑者の妻とその母、その関係性と両者間の心情を扱ったところです。
特に少年と容疑者のそれぞれの母親の心情は、母親の愛情が持つ負の側面をうまく描いていると思います。まさに異様な母子愛ですね。

感想ですが、なかなか面白かったです。読み易く、ストーリーがどう展開するのか気になり、あっと言う間に読み終えました。
ミステリー面としては、一体全体どこで両事件が結びつくのか、ラスト近くまで判然とせず、もしかすると両事件を結ぶことなく、母親の異様な愛を扱っただけの小説家かと危惧した位です。
でもキチンと解答は与えられていました。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
あの日、君は何をした (小学館文庫)
まさきとしかあの日、君は何をした についてのレビュー
No.257: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実の感想

一作目の「殺人鬼フジコの衝動」を読んだのが2022年の冬。
ちょうど二年後に本作に辿り着いたことになる。シンプルに面白かったです。
二年前に書いた一作目の自身の感想を読んでみると、「ちょいと難しいが、後味の残る癖になりそうな小説」という風にコメントしている。
それを踏まえて本作を振り返ると、一作目の「…衝動」が問題集。本作である「…真実」がその解説集ということか。
解説集ということもあって、本作は前作より内容が分かり易い。前作を読んでいなくても、ストーリーとしては成立している。
また、読み手の心身が健全で体力も充実している時に読めば、ギャグとして笑い飛ばせるが、心身不調で衰弱してるときに読めば、深くて暗い淵に引き込まれようなイヤミス感も前作同様しっかり残されている。
とはいえ、ミステリー小説として、事件本体のディテールを冷静に眺めてみると、非現実的でぐちゃぐちゃ。「これはないでしょう(笑)」という感じのB級感ツッコミどころ満載。
しかし、これをツッコんでも始まらない。ご愛敬でいいと思います。本作はサイコ感と不穏な雰囲気を楽しむためにあると思います。


▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実 (徳間文庫)
No.256: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

飢餓海峡の感想

著名な大作である。入手する機会があったので手にした。読んだのは新潮文庫の文庫版(上・下)である。
とにかく読み応え十分。特に上巻は面白い。
著者のあとがきに書かれている「…無理な事件を設定しておいて、それに現実性をあたえる営為の苦しさは、よく出来上がれば楽しいが、なかなかうまくゆかないのが常だから…」とその苦労を書いている。
まさにこの小説の本質はそこにある。戦後から昭和30年初頭にかけての日本の地方の貧困。舞台となった北海道積丹半島・青森県下北半島・京都北部の舞鶴や丹波山地。その僻地ににある寒村・僻村。そこで生活する人々。なかなかリアルである。
Wikiで調べてみると、何度も映像化されている。主要登場人物の俳優陣もなかなかの顔触れ。確かに映像化にはもってこいのストーリーだと思う。
    1965年(映画)   1968年(TV)  1978年(TV)  1988年(TV)  1990年(TV)
杉戸八重 :左幸子     :中村玉緒   :太地喜和子   :藤真利子   :若村麻由美
樽見京一郎:三國連太郎   :高橋幸治   :高橋悦史    :山﨑努    :萩原健一
弓坂刑事 :伴淳三郎    :宇野重吉   :金内喜久夫   :若山富三郎  :仲代達矢


▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
飢餓海峡(改訂決定版) 上
水上勉飢餓海峡 についてのレビュー

No.255:

螢 (幻冬舎文庫)

麻耶雄嵩

No.255:
(5pt)

螢の感想

この著者の作品は、「隻眼の少女」・「鴉」と続いて3作目である。
特に前回読んだ「鴉」では散々な目にあい、チンプンカンプンであった。
ということで、今回は読み落としが無いようある程度は丁寧に読み進めた。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
螢 (幻冬舎文庫)
麻耶雄嵩 についてのレビュー
No.254: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

戻り川心中の感想

短編集である。
当サイト内で偶然に見つけ手にする。著者初読み。
大正から昭和初期にかけての動乱期に、男女が織りなす綾を描いた小説。
ミステリー小説らしからぬ格調高き文体で、文学的に書かれてはいるが、これは歴然としたミステリー小説である。
特に表題の短編「戻り川心中」では、冒頭での歌人「苑田岳葉」についての解説が、まるで実在する歌人であるかのように描かれ、騙し絵のように騙される。
「ひと枝の花をかたみに逝く春を雲間のかげに送る夕月」…ただ初期の作品は、表面的な物象にとらわれ、才に溺れすぎ、現在では大した評価を受けていない。
うーん、著者が詠んだ作中歌なんだ。そしてそれを著者自身で解説する。
「明日はまた涸れぬ命をつかの間の朝陽に結び蘇る花」「世の中は行きつ戻りつ戻り川 水の流れに抗ふあたはず」
こんな感じで、なかなか本格的。著者紹介に早稲田大卒と書かれていたので、Wikiで調べてみたら文学部ではなく政経学部卒なんですね。意外でした。


▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
戻り川心中 (光文社文庫)
連城三紀彦戻り川心中 についてのレビュー
No.253:
(6pt)

蟻の棲み家の感想

この小説を読み終わったすぐあと、Yahooのニュースで下記のような記事を見つけた。
「16歳で1回手取り2000円の格安風俗に入店…4つの性感染症にかかり、医者から「風俗の仕事をやめて普通の仕事に就きなさい」と言われてもやめられない理由」2023/12/23(土) 17:01配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/ec4280d1dd0ec71792400e4dbdc34df9ce5a392a
やめられない理由が、まさにこの小説に登場した女性たちのそのままであった。

この小説、かなり好き嫌いがはっきりしそう。万人向けではない。
また、誰の視点から書かれたのか分かりづらいところもあり、やや読みづらい。



▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
蟻の棲み家 (新潮文庫)
望月諒子蟻の棲み家 についてのレビュー
No.252:
(7pt)

異色のマイホームミステリー(前の家族)

履歴を見ると、著者の青山七恵氏は2007年第136回芥川賞受賞、2009年第35回川端康成文学賞受賞とある。しかも受賞時の年齢は20代前半。お若い!
とは言え、当方全く知らない。
なのに何故本書を手にしたかというと、本年8月頃、愛読している日経新聞の書評欄でこの小説が紹介されていたからである。
当方、未読本の書評は出来るだけ避けるようにしている。もちろん、オチを想像してしまうことを避けるためだ。
日経の土曜日の書評ページは、基本的にお堅い書籍・専門書が多数である。ただ、たまにはこうした娯楽的な小説も取り上げられる。
という事情でついつい軽く読み流してみると、「不穏な気配」というフレーズが目に飛び込んできた。
これは大好きなフレーズである。
ということで、今回、手に入れ読んでみた訳である。

さて、主人公の猪瀬藍は37歳で独身の作家だ。
思い立ち、やっとのことで購入した中古の1LDKマンション。
ここからなにやら怪しげなことが起こってくる。
マンションの売主小林家は、妻と夫と小さな二人の娘の4人家族。
主人公がマンションを購入後、しばらくしてから、この娘たちがマンションを訪問してくる。
さらにしばらく経つとその母親まで。
うーん、その目的というか意味は?
そしてさらに時が進むにつれ、藍は小林家の新居を訪問するようになり、歓待される藍は、ついには連泊するまでになる。
いやいや確かに不穏である。
不穏・不思議と言えば、この小林家の夫。目立たないようではあるが、何か秘密が?
娘たちも可愛いんだけど、藍に懐いているようで懐いていない。
主人公の藍も何やら頼りないし、小林家の妻の歓待は、無償の愛なのか。
うーん、なにやら本当に不穏である。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
前の家族
青山七恵前の家族 についてのレビュー
No.251:
(9pt)

ユリゴコロの感想

読み始めて感じるこのおどろおどろしさ。
サイコな雰囲気。貴志氏の「黒い家」に通ずるような気配。
期待できそう。
得体の知れないタイトルもなかなか乙である。

しかし、当方ここで大きな失敗を犯す。
1/4ほど読み進めた段階で、ふと、文庫本の裏に書かれた紹介文を読んでしまった。
この小説、絶対に初期情報なしで読むべきです。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
ユリゴコロ (双葉文庫)
沼田まほかるユリゴコロ についてのレビュー
No.250:
(8pt)

果鋭の感想

マル暴担コンビ、堀内と伊達シリーズの3作目。
また読んじゃった(笑)
相も変わらずの3匹目のなんとか、という作品。
でも分かっていても面白い。止められないお手軽の娯楽作品。
当方、きっと4作目の「熔果」もいずれ読むんだろうね。まだ文庫は出ていないようだから、出たら読みましょう。

まあしかし、3作目になるともう完璧にヤクザみたいになっちゃったね、お二人。
でも元は刑事。ハチャメチャに悪を懲らしめる。痛快で面白い。
上手くいきすぎて最後のオチが少々ハラハラしたけれど、まあまあ無難な不時着で一安心。
伊達もあの程度の傷なら、堀やんと次のシノギを見つけることだろう。
解説はハードボイルドなんて書いてあったが、これはエンタメだよね。
息抜きに持って来いです。
果鋭 (幻冬舎文庫)
黒川博行果鋭 についてのレビュー
No.249:
(8pt)

邪魔の感想

奥田氏の初期作。3作目。
味付けは2作目の「最悪」と同じ。犯人探しのミステリーではなく、展開を楽しむエンタメ系の小説。
でも決して楽しんで読める小説では無く、読み手によっては、そのエンディングも含めて、イライラ感やストレスが溜まる小説だったかもしれない。
しかし、当方、こういう流れ好きですね。奥田作品は、伊良部ドクターのギャグ系より、こっちの人間模様系の長編が面白いと思う。
世相を皮肉るちょっとした社会現象、脇役の何気ない癖や行動。こういった描写が、小説に妙にアクセントを付けてくれ、時には笑わせる。
当方、文庫本新装版で読みましたが、上下で800ページ強、あっという間に読み終えました。

メインの登場人物は、主婦・恭子と刑事・久野。
でも、主役は恭子だろう。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
邪魔〈上〉 (講談社文庫)
奥田英朗邪魔 についてのレビュー
No.248: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

すべてがFになるの感想

文庫本の解説を読んでみると、本作の初稿完成時期が1995年12月となっている。
今から約30年前で、阪神淡路大震災があり、オウム真理教による地下鉄サリン事件があったあの頃である。
果たしてあの頃に、巷でVR(仮想現実)の話題が上がることはあったであろうか。
本書では、終盤の犯人とのやり取りが、カートに乗ってVRで行われる。この辺りは凄く新鮮。30年ほど前の小説とは思えない新しさだ。
AI(人工知能)についての記述は無かったが、その初歩的発想のロボットも出てくる。
著者の履歴を調べてみると、執筆当時は現役の名古屋大学工学部助教授。うーむ、これはバックボーンが全く異なる。
こういう肩書でありながら、こうした大衆向けの娯楽小説が書けるわけだ。その当時、著者は大学でどのような趣向で学生に講義していたのだろうかと、色々と想像してしまう。

さてそういうことを含めて、本書のミステリー本としての感想だが、内容的にはクローズド・サークルのミステリー小説であった。
当方、基本的に、この手の謎解き本格物というものは、余り好みでは無い。
しかしながら、今回は妙に楽しく読ませて頂けた。理系ミステリーを標榜するだけあって、ややマニアチックな用語や数値が頻出したが、さほど苦にはならなかった。
謎解きの説明も、そこそこに納得できた。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER (講談社文庫)
森博嗣すべてがFになる についてのレビュー
No.247: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

悪い夏の感想

終盤近くまでとても面白かった。
生活保護受給者や彼らに群がるヤクザや医師、そして、保護申請の受理に関わるケースワーカー達のお話。
とは言っても、社会派という要素は殆ど無い。底辺に生きる人たちを扱ったイヤミス的エンタメ小説でしょうか。
登場人物がすべてワルかバカばかりという殆ど救いが無い内容。
でも、それはそれで問題ないし、妙に引きこまれる。終盤近くまでは、ワクワクしながら読めました。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
悪い夏 (角川文庫)
染井為人悪い夏 についてのレビュー
No.246:
(7pt)

望みの感想

「サスペンスミステリー」というキーワードで、引っかかった作品。
でもこれは、ミステリー小説でも無ければサスペンス小説でも一切ありません。
少年犯罪に関わった4人家族の揺れ動く心理を扱ったリアルな家族小説です。

登場人物は、設計事務所を構える夫、校正の仕事を請け負う妻、サッカー部を怪我で辞めた高校生の兄、高校受験を控えた中学3年生の妹の4人。
あらましは、兄が行方不明になり殺人事件という少年犯罪に関わっていることが判明。数限られた情報から、兄が事件の加害者であるか殺されてしまった被害者であるのか、その2者択一。
こうした状況下で、夫・妻・妹は、兄が加害者と被害者のどちらであることを望むのか、この心理の様をリアルに事細かく描いていく。

特に長男である兄のことを考える夫と妻の心理の対比はリアルです。
ストーリーはほぼ最後までこの描写が続きます。これを良しとするか悪しとするかは、読み手の年齢・家族構成によっても違うでしょうね。
また、この小説をミステリ本と思って手にした方は、正直、何の面白味も感じなかったでしょう。
当方は結構、夫や妻の思考・心理にそれぞれ同調でき、考えさせられました。
まあ、しかし、最後は親の立場として、見舞いに来た妻の母親がアドバイスした考え方が、道理でしょう。

読み手の立ち位置によって評価が分かれる本と思います。
私はある程度高評価のアマゾン評価4点にしました。
望み (角川文庫)
雫井脩介望み についてのレビュー