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マッチマッチ さんのレビュー一覧
マッチマッチさんのページへレビュー数312件
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イヤミスの女王と称される湊氏のデビュー2作目の作品である。
著者の作品は本作で、4冊目[絶唱(5P)→リバース(5P)→贖罪(7P)→本作(?P)]。 著者独特のその作風は、そのまま。 人の負の心理・行動を、軽いノリで軽妙に描く。だから、イヤミスとは言え、さほど重すぎることはない。 それどころか却って、人のバカさ加減が滑稽に見えて笑いを誘う。 よって本書は、気負わず暇つぶし程度で気楽に読み、楽しめばよい。 ラストのオチも「自業自得」・「因果応報」と割り切って、笑い飛ばしましょう。 さて本書の焦点は、2人の女子高生の心理の対比であろう。 序盤はその2人の目線がどちらの目線なのか、とても分かりづらい。慣れるまで少々時間が掛かった。 しかし、後半は分かりやすく、テンポよく展開する。 ミステリー風の伏線もキチンと漏れなく回収される。もちろんその分、伏線回収はいかにも都合良い。しかしその都合良さも、この小説のライトさで考えると、違和感はない。 それで本書の評価であるが、単なるイヤミス的内容ではなく、2人の少女の友情も味わえ、当方にとっては読後感もさほど悪くはなかった。 これまでの3作の最高点7点越えの8点としたい。 |
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親子の葛藤を描いた作品。
完全なるノンミステリー。著者のイメージからミステリーを期待したい方は、パスしてOK. でも読んで損はない。読後感はとてもよろしい。 物語は、補導委託で問題少年を受け入れた南部鉄器工房の親子と工房の職人、そしてその少年を中心にして話が進む。 工房の息子が父に思うわだかまり。少年の心のわだかまり。さらに少年の両親の思いと工房の父の思い。これらが徐々に明らかになり、ほぐれていく。 話は淡々とゆっくり進む。さほど大きな事件が起こるわけでもない。エンタメ感は一切期待してはいけない。 面白さを求めるのではなく、感動・感情の揺れを味わいたい。そういう作品であった。 惜しむべきは、南部鉄器を育んだ岩手の風土、自然、季節の変化などの言及が物足りない。唯一「チャグチャグ馬コ」については、興味深く読めた。 工房で仕事をした少年が南部鉄器に何を感じたのか、ここへの言及はあっても良かったのでは。 それらがマイナス評価。この辺りを十分に書き込み本書のテーマと融合させたら、より重厚な一冊となっていたのでは、、、 よって、アマゾン評価の5点には届きませんでした。4の下で、7点です。 |
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シリーズ1作目、「警官の血」を読んだのがちょうど1年前。
読み応え抜群ですね。 スピード感なく展開が遅いという感想を持つ方もいるとは思いますが、当方にとっては、妙にサクサクと話が進むより現実的で落ち着いて読める。 「警官の血」のような脈々たるスケール感はないが、それはそれで、却ってリアルで良い。 本格的な王道の警察小説である。犯人探しのミステリー的楽しみかたではなく、警察内部の覇権争いや手柄をめぐっての現場の主導権争いを、観察し楽しむ小説である。 本冊の焦点は、3代目和也と和也が売った加賀谷。 この和也と加賀谷の件(クダリ)については、「警官の血」を読んでいなくとも、ある程度は説明されている。ただし、1作目を読んでいた方が、より話に深みが付いてくる。 どう読んでも、主人公は加賀谷であろう。1作目同様、和也はまだ未熟で発展途中。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「第68回江戸川乱歩賞受賞作、 選考委員満場一致」との触れ込みで手にした小説。
なかなか序盤のつかみは良い。小惑星「テロス」が日本に衝突。2か月後には確実に死ぬ。 そんな極限の状況で、主人公は太宰府で自動車の教習を受ける。 山道教習では、途中で落下してきた首つり死体に教習車が激突したり、行き先のダムでは生きる希望を失った人間の自殺場となっていたりと、非日常の世界を描いている。 そんな中、主人公小春は、なぜこの時期敢えて自動車学校に通うのか?そもそも自動車学校がなぜ営業されており、唯一残っていた指導教官イサガワ先生とは一体何者なのか? ここまでは、今後の展開期待大ですこぶる良かった。 しかしながら、その後の展開は、ある殺人事件の謎解き小説。 ハッキリ言って、この謎解きは陳腐である。せっかくの究極の極限状態という設定が、あまり活かされていない。 そもそもこんな状況で、殺人事件の犯人探しなんて、超非現実的。ありえない。 登場人物の生い立ち、背景、性格、心理描写、この辺りの記述が妙に軽くて表面的。 描写・文体もこなれていないというかちょっと、幼い感じ。 結局、テーマの割にはライトすぎるという感覚か。 ということで、あまり高評価は与えられなかった。 ただ、序盤が気に入ったので、中庸点の5点とした。 |
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短編集です。4編中3編がSF。1編が表題作のミステリーです。
4編の関連は全くありません。 SFの3編は、あまり面白く感じなかった。特に1作目の、「夜の記憶」はややわかりずらい。最後の「赤い雨」がある程度マシかな。 表題作の「罪人の選択」。こちらは本短編集では、一番の良品でしょう。でも短編ミステリーの醍醐味であるオチの切れ味は、さほど感じれなかった。 やっぱり、この著者は長編が向いているのではないだろうか。 「黒い家」や「天使の囀」のようなヒリヒリする小説を読みたい。 ということで、評価は辛めのアマゾン評価2点。 |
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正真正銘の青春小説。非ミステリーです。
読んで思い出す自身の学生生活。 大学生になり一人暮らしをし、大人になったつもりでも結局は子供なんだよ。 世間に庇護され自由に生きる、オアシスのような生活。 タイトルの砂漠こそ、著者の意図するアンチテーゼ。 そのオアシスで青春を謳歌した5人の登場人物。大学生の北村、鳥井、南、東堂、西嶋。 そしてもう一人の登場人物社会人の鳩麦さん。鳩麦さんは、彼らを優しく見守っていたんだね、砂漠から。 あっと言う間に過ぎ去った4年間。卒業式での学長の祝辞。 「・・・学生時代を思い出して、懐かしがるのは構わないが、あの時は良かったな、オアシスだったな、と逃げるようなことは絶対に考えるな。そういう人生を送るなよ」 著者も自身の学生生活を振り返って、これが一番言いたかったんだろう。 懐かしく楽しんで読ませてもらいました。 ★7つ。 |
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失敗しちゃった。
Anotherの評価がえらく高いので、これは面白そうだ読み始めたのが、これ。 これ、AnotherじゃなくてAnother2001という続編。 読んでいる途中で気づいて、がっかりしちゃった。 結構楽しんで読めたが、果たしてこの後Anotherを読んで、楽しめるだろうか。 どちらかというとそっちの方が気になってしまう。 完全にホラーミステリーですね。 結局は、正体がつかめない不可解な世界。 やっぱり、この手の不可解で奇怪な出来事は、その正体が明らかになることで、物語がしっかり腑に落ち楽しめる。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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先日の日経新聞で、SF界のスポークスマンとも呼ばれる大森望氏の絶賛書評を読み、手にした。
中国SFが急速に台頭する一方、アメリカSFの影が薄い。そもそも、一般に知られる作家や作品が出てこない。 そんなアメリカSF界のさびしい状況を打ち破る希望の星が、『火星の人』で2011年にデビューしたアンディ・ウィアー。・・・ ・・・しかし、その『火星の人』をも上回る人気を得たのが、21年に出た最新長編『プロジェクト・ヘイル・メアリー』・・・ ・・・「だれが読んでもおもしろいSF」という無理難題に果敢に挑んで見事に成功した奇跡的な傑作だ。 という書評である。これは是非読まなくてはならない。 確かにシンプルに楽しめた。 上巻の大半が、主人公グレースの一人称語りでストーリーが展開する。 ややもたもたしているが、上手く疑問を膨らませる。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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6編からなる短編集であった。
6編に共通するのはSという頭文字の人物と鴉。 しかし、共通するのはそれだけで、連作短編ではなく、それぞれが完全に独立した作品であった。 6編目の最後の作品で、共通するSの秘密が明かされる驚愕のネタを期待したが、何もなく些かがっかりした。 テイスト的には米澤穂信の「儚い羊たちの祝宴」に似たダークな雰囲気。 でも「儚い羊たちの祝宴」よりは、すこしレベルが落ちるのかな。いまいちオチの切れがない。オチが唐突過ぎて無理やり感がある上に、やや分かりづらい。 余韻を残して読者に考えさせたいという著者の意図だろうか。 ということで、当方はやや消化不良感を覚えたので、この点数とした。 |
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第1部 2004年 前林市(「東京から新幹線と在来線で2時間弱の北関東にある」と、第2部本文中で紹介されている架空の市らしい)で起こったある少年の事故死に関する内容。
第2部 2019年 東京都新宿区で起こった若い女性の殺人事件と容疑者の失踪に関する内容。 ミステリーとしての本書の読みどころは、2つの事件がどう絡んで、最後のオチに繋がるのかという点にあると思う。 そして、この小説のもう一つの読みどころは、少年とその母、容疑者とその母、そして容疑者の妻とその母、その関係性と両者間の心情を扱ったところです。 特に少年と容疑者のそれぞれの母親の心情は、母親の愛情が持つ負の側面をうまく描いていると思います。まさに異様な母子愛ですね。 感想ですが、なかなか面白かったです。読み易く、ストーリーがどう展開するのか気になり、あっと言う間に読み終えました。 ミステリー面としては、一体全体どこで両事件が結びつくのか、ラスト近くまで判然とせず、もしかすると両事件を結ぶことなく、母親の異様な愛を扱っただけの小説家かと危惧した位です。 でもキチンと解答は与えられていました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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一作目の「殺人鬼フジコの衝動」を読んだのが2022年の冬。
ちょうど二年後に本作に辿り着いたことになる。シンプルに面白かったです。 二年前に書いた一作目の自身の感想を読んでみると、「ちょいと難しいが、後味の残る癖になりそうな小説」という風にコメントしている。 それを踏まえて本作を振り返ると、一作目の「…衝動」が問題集。本作である「…真実」がその解説集ということか。 解説集ということもあって、本作は前作より内容が分かり易い。前作を読んでいなくても、ストーリーとしては成立している。 また、読み手の心身が健全で体力も充実している時に読めば、ギャグとして笑い飛ばせるが、心身不調で衰弱してるときに読めば、深くて暗い淵に引き込まれようなイヤミス感も前作同様しっかり残されている。 とはいえ、ミステリー小説として、事件本体のディテールを冷静に眺めてみると、非現実的でぐちゃぐちゃ。「これはないでしょう(笑)」という感じのB級感ツッコミどころ満載。 しかし、これをツッコんでも始まらない。ご愛敬でいいと思います。本作はサイコ感と不穏な雰囲気を楽しむためにあると思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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著名な大作である。入手する機会があったので手にした。読んだのは新潮文庫の文庫版(上・下)である。
とにかく読み応え十分。特に上巻は面白い。 著者のあとがきに書かれている「…無理な事件を設定しておいて、それに現実性をあたえる営為の苦しさは、よく出来上がれば楽しいが、なかなかうまくゆかないのが常だから…」とその苦労を書いている。 まさにこの小説の本質はそこにある。戦後から昭和30年初頭にかけての日本の地方の貧困。舞台となった北海道積丹半島・青森県下北半島・京都北部の舞鶴や丹波山地。その僻地ににある寒村・僻村。そこで生活する人々。なかなかリアルである。 Wikiで調べてみると、何度も映像化されている。主要登場人物の俳優陣もなかなかの顔触れ。確かに映像化にはもってこいのストーリーだと思う。 1965年(映画) 1968年(TV) 1978年(TV) 1988年(TV) 1990年(TV) 杉戸八重 :左幸子 :中村玉緒 :太地喜和子 :藤真利子 :若村麻由美 樽見京一郎:三國連太郎 :高橋幸治 :高橋悦史 :山﨑努 :萩原健一 弓坂刑事 :伴淳三郎 :宇野重吉 :金内喜久夫 :若山富三郎 :仲代達矢 ▼以下、ネタバレ感想 |
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短編集である。
当サイト内で偶然に見つけ手にする。著者初読み。 大正から昭和初期にかけての動乱期に、男女が織りなす綾を描いた小説。 ミステリー小説らしからぬ格調高き文体で、文学的に書かれてはいるが、これは歴然としたミステリー小説である。 特に表題の短編「戻り川心中」では、冒頭での歌人「苑田岳葉」についての解説が、まるで実在する歌人であるかのように描かれ、騙し絵のように騙される。 「ひと枝の花をかたみに逝く春を雲間のかげに送る夕月」…ただ初期の作品は、表面的な物象にとらわれ、才に溺れすぎ、現在では大した評価を受けていない。 うーん、著者が詠んだ作中歌なんだ。そしてそれを著者自身で解説する。 「明日はまた涸れぬ命をつかの間の朝陽に結び蘇る花」「世の中は行きつ戻りつ戻り川 水の流れに抗ふあたはず」 こんな感じで、なかなか本格的。著者紹介に早稲田大卒と書かれていたので、Wikiで調べてみたら文学部ではなく政経学部卒なんですね。意外でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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この小説を読み終わったすぐあと、Yahooのニュースで下記のような記事を見つけた。
「16歳で1回手取り2000円の格安風俗に入店…4つの性感染症にかかり、医者から「風俗の仕事をやめて普通の仕事に就きなさい」と言われてもやめられない理由」2023/12/23(土) 17:01配信 https://news.yahoo.co.jp/articles/ec4280d1dd0ec71792400e4dbdc34df9ce5a392a やめられない理由が、まさにこの小説に登場した女性たちのそのままであった。 この小説、かなり好き嫌いがはっきりしそう。万人向けではない。 また、誰の視点から書かれたのか分かりづらいところもあり、やや読みづらい。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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