■スポンサードリンク
ギリシア棺の謎
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
ギリシア棺の謎の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全46件 21~40 2/3ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
最近はやりのページターナーではない。 次から次へとサスペンスフルな展開を期待する人には向かないけれど、やっぱり「古典」には古典の味があります。 越前氏の訳は1930年代のニューヨークの空気をとても上手く伝えてくれている。 (下訳者がいるようなので、ちょっと心配してました…) 父親にタメ口をきくエラリーは宇野利泰訳よりも嫌な奴です。 けれどそれがキャラクターに厚みを与えている。個人的には宇野訳エラリーの方が好きですけど。 やはりプロットや語り口がどうしても古臭くて感情移入しにくいこと、 文庫版の表紙イラストがあまりにも残念なこと(越前氏の時代感あふれる訳が台無しです) Kindle版には巻末の解説が無いことで星3つとさせていただきました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
本格ミステリが好きなら、必ず通る道──それが、エラリー・クィーンの国名シリーズ。 1932年発表の本作品はその第四弾で、一般的には、シリーズ中、一、二を争う傑作とされています。 数十年前の若い頃に読んだ本作品、「新訳」に惹かれて再読してみました。 既刊の第一弾から第三弾と同様、「本格ミステリ」をよく理解した訳出となっており、満足度は高いです。 作品的には、誰が犯人かは憶えていましたが、犯人特定のロジックは組み立てられず、「読者への挑戦」には、完敗…。 でも、自己弁護になりますが、本作品から、名探偵ならぬ「名犯人」が登場、犯行の痕跡を隠すための罠の巧妙さに、探偵が嵌まってしまい、途中で推理を誤ってしまうくらいなので、完勝できる人はまれでしょう。 ちなみに、この新訳国名シリーズは、巻末解説が充実しています。 上記のような展開の結果生じる「多重推理」を<後期クィーン的問題>と呼んでいますが、その点もきっちり説明されています。 さらに、エラリー・クィーンは本編以外にも趣向を凝らすことでも、有名。 本作品では、目次に凝らされた趣向は誰でも気づくのですが、それ以外にもあるのです。 この部分は解説の「本編読了者限定ページ」に記載されていますが、初読から数十年、本書を読むまで気づきませんでした。 脱帽! この新訳シリーズは、原書の初刊バージョンから訳出してきており、これからもその方針は変わらないようなので、発刊当時の雰囲気を厳密に伝えられる新訳として、レベルは高いと感じています。 第五弾以降にも、期待しています。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
大学を出たての探偵エラリー最初の事件。いきなりこんな難事件を、報道の前でど派手な解決をしてしまっては、この後、警察関係者の絶大な信頼を得るのも無理はない。ですます調で喋る他社訳に比べ、角川版の新訳はエラリーの生意気ぶりが新鮮。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
たとえるとしたら、「作家クイーンという蜘蛛が、自分で複雑に張った巣に自ら絡まってしまいましたとさ」、その結果できた話って感じ。酒飲んで書いたの? 主人公クイーンが酒を飲んで終わる最後の場面、作者クイーンの自己投影なんすかね!?しかもこの理屈になってない推理を、探偵がやたら長々語るから、ヤバい。 クイーンの作品で理屈の面でまだマシなのってシンプルなやつで、クイーンは複雑な話はからきしだめすね。 そりゃ、フランスはでかい欠陥も多い上にインパクトに欠けるし、オランダは、不十分で一面的な論理でムリヤリ突っ切っただけって感じでどうかと思うけど、でもそういうシンプルなのは、まだ許せる。 それに比べてこのギリシャは、推理小説的にひどいとしか言いようがないから、書いてみた。 唯一の救いは、このツッコミどころだらけの推理、あなたはどれだけちゃんと指摘できますか?みたいな、セルフチェック型の知能検査にも思えること。だから考えようによっちゃ、役に立つ? ところで、ギリシャ棺って、旧訳でもこの新訳でも、理屈言っていろいろ指摘して批判してる人達でさえ☆3とか4とかにされてますけど、申し訳ないですけど、それって、ちょっと甘くないすか? 複雑な話だと思い込んでみょーに感心しちゃってる人達と違って、複雑にしようとして収拾つかなくなってるだけの理屈も何もない話ってちゃんと理解できてるんなら、大目にみても☆2とかでしょ!? それと、犯人、意外すか?いかにもクイーンらしく奇をてらってるだけで、誰を犯人に仕立てようとしてるかも分かるけどなぁ… それから新訳の国名シリーズを訳で誉めてる人多いですけど、旧訳と比べて訳がいいのはよく分かってるけど、初めて読もうとしてる人には、「旧訳と比べて良いから良い」みたいな話より 中身が問題だろうから、純粋に作品そのものだけを評価する人間がいてもいいと思うんで、やっぱり☆2つ。これでも仏心。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
エラリークイーンの真骨頂の作品。 犯人の意外性ならYの悲劇にも劣らない作品(クイーン問題もあり、少しもやっとはしたが) ストーリーも長いながらも飽きさせず、苦痛に感じることは無かった(訳がいいからかもしれない) 新訳は本当に素晴らしいですね。 オランダ靴もそうでしたが、原書の初版にあった仕掛けとかもきっちり残しています。 カバーがあれだとか思う方もいると思いますが、この訳のバージョンを買うのをおすすめします。 エラリークイーン作品で、一番良い訳なのは間違いないです。 国名シリーズが終わっても、エラリークイーンの今後の作品や、ヴァンダインやクロフツ、カーといった作家の作品も翻訳してくれないかなと期待しています。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
大学を卒業して、エラリーが初めて遭遇した事件であるとともに、最高レヴェルの難関事件。初めて事件に出くわしたこともあって、張り切ってフィールドに出たはいいが、へまをやらかしプロの捜査陣の失笑を買う、これが前半の山場。しかし、この辺りは読者が相当引き込まれる場面ではある。 「ローマ帽子」で国名シリーズ第一作としてリリースされたのが1929年だけど、実際の事件は1928年9月に発生している・・・・・今回のケースはオリジナルがリリースされたのが1932年だけど、エラリー最初の事件ということもあって、実際の事件は1926年9月から11月にかけて起こっている。こういうことも簡単にネット上のカレンダーで検索できちまうっていうから、すごい時代になったもんだ。 プロットは複雑極まりない。エラリーが完全に翻弄される前半、後半数十ページの盛り上がりと、意外な犯人。どれをとっても超一級のミステリであること、これが80年以上も昔に書かれたモノであること、いやはや今読んでもまったく色あせていない・・・・でも、クイーン、ちょっとやりすぎたかな | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ニューヨークのある荘厳な屋敷を中心に起きた怪事件の数々に、名探偵エラリー・クイーンが挑んだ代表作。如何にも本格ミステリーらしい雰囲気など、 話としては面白かったです。 しかし、エラリー・クイーンの諸作品の中でも、本作は特に、推理に緻密さがありません。 緻密さに欠けるというのは、作品を問わず、エラリー・クイーンの推理法の多くに共通したミステイクで、“アンチクイーン”な人々を生み出してしまう理由でもありますが、 新訳で久しぶりに読んでみたところ、残念ながら本作は、それが顕著な作品でした。そこで先ずは、エラリー・クイーンの主な推理法に対する批評を書いてみます。 1・仮説を立て検証する、ことを怠る “推理”についてよく言われることを私なりに咀嚼してなるべく平易に言えば、推理とは、“広義での論理的活動”ですが、より分解して言えば、基本的に2つの側面があります。 それらを表現するなら、一方は、“判断的命題”、もう一方は、“狭義の論理的命題”とでも呼べましょうか。 “判断的命題”とは、物証、証言、心理等が理屈によって分析された結果であり、“狭義の論理的命題”とは、導かれた複数の“判断的命題”を基に、 話に整合性を持たせて整理したものです。また、こうして導かれた幾つかの論理的命題を、最終的に更に一通り論理的にまとめることで、推理が完結します。 さて、ここで、クイーンの問題と関連して考えるべきは、“推理を進めて行く過程において、より比重を置くべきなのは、判断的命題か、狭義の論理的命題か?”なのですが、 多くの場合、“判断的命題”の方に比重を置くべきと言えるでしょう。 何故なら、推理においては、“狭義の論理的側面”なんて、ちょっと慎重に話を整理してまとめるぐらいの役目しかないのに対して、“判断的命題”を導くには、 物証、証言、心理等を基に、様々な角度から仮説を立てた上で検討することが求められるので、ここでちゃんとした答えが幾つか出てくれば、あとはそれを踏まえて、 “狭義の論理的思考”を少し使えば、簡単に最終的な答が出せるからです。 しかしエラリー・クイーンの物証等に対する判断というのは、まず仮説を立てる、という発想に欠ける点からして不十分なのです。よって、導かれたとされる命題も、実に“テキトー”です。 そして、このテキトーに導いた命題を前提に、あとは論理的に話をまとめ、「私はミステリー界のロジカル・シンキングの王者です」みたいなことを本気で主張していますから、 失礼を承知で言えば、まさに本物のタチの悪さがあるわけです。 そこで私は以前にも、東京創元社の旧訳版『エジプト十字架の謎』や、角川書店の新訳版『オランダ靴の秘密』のレビューを書いた時に、それらの論法のまずさを 簡単に指摘しておいたのですが、この『ギリシャ棺の秘密』に関しては、まずい理屈がてんこ盛り過ぎて、細かな点は書いても切りがありませんので、 とりあえず、エジプトやオランダより遥かにまずい側面のみについては後に書きますので、興味のある方は、本作を読みながら見つけてみて下さい。 ちなみに、緻密な仮説の検証を中心に、狭義でも広義でも論理的に上手い作品に、『悪魔の家系図(エラリー・クイーンへの挑戦状)』という秀作が最近ありました。 理詰めの作品を読みたい方には良いでしょう。それから、例えば過去の本格作家で言えば、私の好きなクロフツの場合、彼はコツコツとした捜査に重きを置いた リアリズムの作家だと言われますが、彼の出来の良い作品の中には、仮説の検証に重きをおいていて秀逸なものもあるので、代表作でさえ緻密さを欠いた作品ばかりの クイーンよりは、クロフツの方が理屈の上でも優れていたと言えます。 2・馬鹿馬鹿しいトラップの多用 将棋で言う“詰め将棋”や、サッカーその他のスポーツでよく言う“トラップ”を、まさにその本質を理解せず、これまたテキトーな思いつきでよく使ったのが、クイーンです。 どういうことかと言いますと、将棋でいう詰め将棋や、スポーツのトラップというのは、「自分がこうすれば、相手の棋士や選手はついついこう動くだろうから、 (それを読んで)出し抜いてやろう」というものですが、この罠は、将棋でもサッカーでも、相手もそれが得意な人でないと、かえって通用しません。 例えば将棋もサッカーもできるわけでない私が、羽生名人と将棋で、メッシとサッカーで、お手合わせ頂き、彼らが私にトラップを仕掛けてきたとしても、私は反応できず、 トラップは意味をなさないでしょう。 ところが、(本作はまだ許せる展開の部類ですが、)クイーンの複数の小説では、誰も反応できずにスルーされると犯人の計画に大きなマイナスを及ぼすようなトラップを、 犯人が仕掛けてきます。そのトラップというのは天才的な探偵でないと気付かないレベルのものなので、作品によっては、犯人がそうしたトラップを仕掛けるというのは、 状況としておかしいのです。相手にスルーされたら、一体どうするつもりだったんですか?という話になってしまうのです。 この点については、代表作で言うと、『エジプト十字架』が完全に破綻していますが、本作も、かなりまずいです。 ただし、本作の場合、唯一の救いは、捜査関係者の全員がスルーしたとしても、犯人にとって計画が“万事休す"という程ではないことですね。また『エジプト』と違い本作では、 犯人のトラップがスルーされないだろうという予想に、少しはちゃんとした理由があるので、(まともに考えればそれも非常に怪しいわけですが、)『エジプト』よりはマシです。 さて、1、2と、クイーンの作品に共通する欠点を挙げてきましたが、本作における最大のとんでもなさは、2のトラップの話と似たところにあります。 少し具体的に言えば、最初の殺人が起きた経緯は納得するとしても、犯人がその対処のために取った行動を始め、それ以降の行動に、不可思議なものが幾つかあるのです。 もう少し言いますと、犯人は一連の犯罪を計算して行ったとされているのですが、しかし、その前提に立脚した上で犯人像をまともに分析してしまいますと、 誰でも予測可能なリスクすら計算できない、矛盾した不自然な人物ということになってしまうのです。また、本作は連続殺人事件なのですが、最後の殺人に関して言えば、 被害者も犯人と同様、誰にでも分かるようなことが分からない人物像となってしまい、この被害者が殺されるに至った経緯もおかしいのです。 と、以上をまとめながら、とりあえず私がレビューを書いたクイーンの他の代表作と本作を比べてみます。 2の馬鹿馬鹿しいトラップに関して言えば、『オランダ靴』はそうした展開とは無縁なので、『エジプト十字架』や本作だけの問題です。1の仮説の検証に関しては、 『オランダ靴』がまだマシな方で、『エジプト十字架』はそれよりいささか劣るものの、随所にテキトーな論理が散見される本作よりは、遥かにマシです。よって、 本格ミステリーとしての出来を総合的に評価すると、これらの中では、それでも『オランダ靴』が最もまともで、逆に本作『ギリシャ棺』が圧倒的に劣るということになります。 さて、ここまでは、かなり本作を攻撃してしまいましたが、一方で、“クイーンらしい良さ”という点を真に突き詰めて考えれば、この『ギリシャ棺』こそ、究極です。 そこで今度は、クイーンの長所について考えてみましょう。上記の通り、クイーンはロジックを売りにしていながら、実際にはロジックや緻密さの方はあまり期待できませんし、 また、例えばカーのような“ハウ・ダニット(如何にして行われたか)”の作家と違い、トリックという見せ場も特にありません。ミステリー・ファンには言わずもがなです。 しかし一方で、“意外な犯人を提示する”ということにかけてだけは、本当に優れていたと言えるでしょう。 上で述べた通り、滅茶苦茶な理屈が多いので、読者はまともな推理はできず、クイーンが読者に求めるように犯人を絞り込むことは実際には不可能ですから、それならば、 そんな彼の論理に立脚した犯人が誰かということに、本格ミステリーとして意味があるのか?と疑問に思うかもしれませんね。しかし、それでも理屈を抜きにその意外さが面白いのが、 クイーンなのです。特に本作は、まさかの意表を突かれて足を掬われる感じで、驚きますよ。 犯人の意外さだけひたすら極めた人こそが、クイーンだと言えるでしょう。 例えば、私の好きなクロフツなんて、犯人は分かりやすい作品が多いですし、そもそもクロフツはアリバイ崩しを得意とするため、むしろ犯人は簡単に見当がつくようにさえ なっていますから。代表作における犯人の意外性こそ、クイーンの専売特許と言って良いものだと思います。 そして、その唯一のクイーンの強みが究極的な形で引き出されたのが本作です。 本作の前に出版された『オランダ靴』は、クイーンが大して得意でもないロジカル・シンキング的なものを極め様とした“直球勝負”の作品ですが、結局は地味なだけだったのに対して、 本作の後で出た『エジプト十字架』は、オランダ靴とは真逆に、ある種のエンターテイメント性を極めた“変化球”的な作品です。そしてその間に書かれた本作は、 『エジプト十字架』ほど面白いわけではないものの、犯人の意外性という、これまた“別の球種の変化球”が炸裂した作品なのです。と言いますか、この作品、「犯人は本当に意外だよ」 と事前に言われて読んでも犯人に気付かない作品の典型、のように昔から言われてきましたが、これより犯人が意外な本格ミステリーは、いまだにないのでは!? というわけで、犯人の意外さを極めていることや、話もそれなりに面白いこと、また、ロジックの方はかなり滅茶苦茶ですが、それでも本作はその点で“反面教師”になりやすく、 読者が自分で反証を考えながら読むことができ、ロジカル・シンキングも鍛えられるでしょうから、全体的に考えて、おまけの星4つかな、と。もちろん、本作が後の作品に与えた歴史的な 価値も踏まえましてね。 ただし、犯人の意外性という、本作におけるクイーンの良さを最後に称えた私にも、一つだけ不安が残ります。と言いますのは、私がこれを初めて読んだのは、東京創元社の旧訳版で、 云十年だか前の15、6歳の高校生の時でしたが、この度、角川書店の新訳版を読むまで、ただの一度も再読せず、話の詳細はサッパリ忘れていました。にも関わらず、 犯人だけは漠然と覚えていたのです。本格ミステリーを読み始めたばかりの少年時代にはあまりにも意外だったとしても、もしかしたら、どうしても勘が鋭く働いてしまう人で、 そこそこ本格ミステリーを読み慣れた人には、本作の犯人でさえも、見当がついてしまうかもしれません。そうであるなら、犯人の意外性という唯一の長所も、打ち消されてしまいます。 しかも、以前にどなたかが、「エラリー・クイーンは中高生の時に読み感動したが、大学で読んだらけっこう印象が変わっていた。ましてやそれなりの年齢になって読んだら、 中高生の時とは殆ど正反対の印象さえ受け、何より理屈のチープさばかり感じた」と述べていたのを思い出しました。精神や肉体の成長に比べ、推理小説が得意かどうかに年齢は そんなには関係ないのかもしれません。しかし私も過去を振り返れば、その人と同じような感じ方の変化をしてきましたし、子供時代から本格ミステリー読んできた人の場合、 エラリー・クイーンの小説に対する感じ方は、そんなものでしょうね。ですから、クイーンの理屈は実際には大したことがないということと掛けて表現すれば、 まさに“子供騙し”という他なくなってしまうかもしれません。 そうして考えますと、代表作の一つと言われながらもとりわけ“子供騙し”の論法がやたらと繰り広げられる本作の場合、本格ミステリーを読み慣れていてロジカルなミスにも 簡単に気付き、しかも勘が鋭く働いてしまって犯人に見当がついてしまうような人であれば、さすがに「何なんだこれは!?」ということにしかならない可能性があるな、と改めて思い直し、 私も、「犯人が意外だから読んでみて下さい!」とはあまり主張できないかもしれません。 ですので、“アンチクイーン”になりがちな方々の存在も考慮に入れると、星4という評価も正しいか分かりませんが、“とりあえず”と考えて下さい。 面白さだけで引っ張れる『エジプト十字架』ほど無難にはオススメできるわけではありませんが、それでも、私は本作の犯人を覚えていていたにも関わらず、 それなりに楽しく読めたのですから、改めてもう一度言いますが、理屈を放り出しさえすれば、話はけっこう面白いと思いますよ。 それにしましても、特にこの『ギリシャ棺』は、東京創元社の旧訳版は文章が硬く、読みにくかったのですが、この新訳版は非常に読み易くなり、スイスイ読めたので、 この度の国名シリーズ再読に際して最大の山場を越えたと言いますか、何だかんだ言っても、新訳版を読めて本当に良かったと思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
エラリークイーン国名シリーズの中でも一際異才を放つ作品。大学を出て間もない生意気な若造といった感じのエラリーが挑むのはニューヨークの墓地の中から発見された殺人死体。作者のクイーンは「オランダ靴」で到達したクイーンロジックの極みをさらに越えようとしたため今作のような作品を書いたのだろう。そのためクイーン作品初心者にはあまり、オススメできない。クイーン作品をある程度読んで(最低でも国名シリーズ、悲劇四部作を三冊以上)本書を読んでない読者には是非とも読んで欲しい。ロジックの極みを越えようとしたクイーンの技をご堪能あれ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
まだエラリイが若かったころの作品です。 おなじみの人物の若いころも見られます。 さすが若いだけあって エラリイも多少は遠慮がちですし 所詮若造ということで、 聞く耳をもたれていないときもあります。 それに名探偵候補は よく間違えた推理をします。 でも正確といえば正確なのです。 ただこのエラーは後の解決の鍵になります。 やや長いものの 冗長ではないので 飽きは来ないはずです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
国名シリーズの第四作。大学を出てまもないエラリーが悪魔的な怪事件に挑む。名探偵の存在意義に対する矛盾は、後期のクイーン作品に 濃厚に顕れていますが、本作においてその先鞭はすでに存在しているように感じる。探偵小説のリアリティにおいて神の叡智を持つ探偵役。 しかし、残された手がかりから推論を組み立てる探偵の裏をかいて、悪魔的な意図をもってして偽の手がかりを故意に残したケースを題材と しているのが本作の特徴だ。 それ故に、この一作でエラリーは自我の虚栄心とも相まってとことん犯人に手玉にとられて苦境に追い込まれてしまう。やっとの思いで、 推論を完成形に仕上げたと思えば、実はそれは土台からてんでまがいものに過ぎなかったと粉砕されてしまう。真相に辿り着くためには、 何層もの障害物を乗り越えなければならず、とても深遠なのだ。 だが思うに、そこに一種の哲学を感じてしまう。というのは、名探偵の代名詞といえるホームズの登場に続いて雨後の筍のように出現した 名探偵連中。そしてそれを忌避する姿勢で出現した所謂足で稼ぐタイプ。その100か0の極端なところに留まらず、あくまで名探偵に人間性を 与えた点においてクイーンは本質的に斬新だった。 ただ同時に歪みをきたすのもまた事実。名探偵を解剖する過程において、名探偵を超える悪魔的な頭脳が必要なのだ。よって本作の犯人は やたら頭が良い。あまりに良い。。その観点から見れば、この謎物語は論理的にはフェアだが、謎解きしたい読者にとっては愉しみに欠ける のかもしれない。つまるところ、本質的に突き詰めれば神と悪魔の境界線なんてなくなってしまうの。。そんな皮肉まで愛せるだろうか? | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
本書は前作「オランダ靴の秘密」と次作「エジプト十字架の秘密」とともに、国名シリーズベスト3と名高い作品。 前作「オランダ靴」では完璧な論理を見せたエラリイだが、本書ではすぐにその推理を覆す事実が発覚し、若さゆえの未熟さを何度も露呈している。つまり本書はバークリーの「毒入りチョコレート事件」の流れを汲むいわゆるアンチ・ミステリーなのだが、このアンチ・ミステリーというやつ、推理の論拠の解釈によって解決が変わってくるというシロモノで、推理小説の知的パズル要素を否定されているみたいで好きになれない。いったい何でロジックの鬼であるはずの作者がこのような作品を書いたのかと思う。 もしもこれが、例えば個々の推理の前に「これまでにエラリイに与えられたデータは、等しく読者にも提供されている。したがって、これらのデータをもとに行われる推理はエラリーと読者諸賢では同一のものであるはずである」と、「読者への挑戦状」を差し挟んでいれば、本書のパズル小説としての評価はまた違ったものになったかも知れないが。 個々の推理に関しても「オランダ靴」で見せた完璧な論理ほどのものではなく、穴やこじつけというかそれはムリだろうという点もいくつか見られ、国名シリーズ最高傑作と評される理由がわからない。それに、とにかく冗長で読むのがしんどい。何度挫折しかけたことだろう。 私なら国名シリーズベスト3には本書の替わりに「フランス白粉の秘密」か、推理作品としてはイマイチだがストーリーの面白い「シャム双生児の秘密」の方を推す。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
本書は前作「オランダ靴の謎」と次作「エジプト十字架の謎」とともに、国名シリーズベスト3と名高い作品。 前作「オランダ靴」では完璧な論理を見せたエラリーだが、本書ではすぐにその推理を覆す事実が発覚し、若さゆえの未熟さを何度も露呈している。つまり本書はバークリーの「毒入りチョコレート事件」の流れを汲むいわゆるアンチ・ミステリーなのだが、このアンチ・ミステリーというやつ、推理の論拠の解釈によって解決が変わってくるというシロモノで、推理小説の知的パズル要素を否定されているみたいで好きになれない。いったい何でロジックの鬼であるはずの作者がこのような作品を書いたのかと思う。 もしもこれが、例えば個々の推理の前に「これまでにエラリーに与えられたデータは、等しく読者にも提供されている。したがって、これらのデータをもとに行われる推理はエラリーと読者諸賢では同一のものであるはずである」と、「読者への挑戦状」を差し挟んでいれば、本書のパズル小説としての評価はまた違ったものになったかも知れないが。 それと、個々の推理に関しても「オランダ靴」で見せた完璧な論理ほどのものではなく、穴やこじつけというかそれはムリだろうという点もいくつか見られ、国名シリーズ最高傑作と評される理由がわからない。それに、とにかく冗長で読むのがしんどい。何度挫折しかけたことだろう。 私なら国名シリーズベスト3には本書の替わりに「フランス白粉の謎」か、推理作品としてはイマイチだがストーリーの面白い「シャム双子の謎」の方を推す。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
《国名》シリーズにおけるエラリーの推理とは、あくまで証拠に基づいた 緻密な論証を展開することによって、犯人を指摘する、というものです。 しかし、そうしたエラリーの思考を逆手にとった犯人が、 意図的に偽の証拠を残した場合は、どうなるのか? 探偵は、証拠の真偽を見極めることができるのか? そして、ただ一人、小説世界の事件の「外部」に位置し、そこから 全てを解き明かすという探偵の特権性は、どうなってしまうのか? 本作は、以上のようなミステリにおける決定不可能性の問題や 探偵への懐疑を、無自覚かつ先駆的に取り上げた作品です。 作中においてエラリーは「犯人は自分に不利益な行為はしない」という原則のもと、 物的証拠を吟味し、取捨選択していきますが、そこには作者の恣意性が抜きがたく 存在しています。 また、エラリーが推理の根拠とする証言に対し、 偽証の可能性を検討していないのも問題でしょう。 証言が証拠能力を有するか否かを判断する場合、事実誤認の可能性や、 人間が虚偽を語りうる存在であることを当然念頭におくべきですが、 本作では、その手続きは無視され、論理的な整合性を保つために、 作者の恣意的な価値判断を導入せざるを得なくなっているのです。 偽の犯人をつくり出すため、意図的に偽の証拠を捏造する真犯人、 という存在が組み込まれた本作は、「手がかり‐推理」という、 ミステリの構造を多重化・メタ化しています。 しかし、作者としてはそうした「実験」を追究しようという意識はなく、 たんに、 名探偵の出発点における失敗譚を示すことで、キャラの 理由付けをしたかっただけなのでしょう。 結末においてのみ推理を開陳するという、名探偵の不自然さを 正当化するために書かれた本作は、図らずも、形式が本質的に 持つ不確定性を暴露してしまったといえます。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
僕は本作が、「意外な犯人」の最高傑作だと思ってます。高校のとき読んでて、犯人がわかったとき思わず、登場人物表を見直しました。 「Yの悲劇」みたいにおどろおどろしさがなく、探偵エラリーもサラッとしたキャラなので(ファイロ・ヴァンスやドルリー・レーンに較べてってことですよ)、「伝説」の域までは評価されていませんが、冷静に読めば「本作」のほうが、ずっとよく考え抜かれているのがわかるはずです。 殺人現場の見取り図もあるし、読者への挑戦状もあるし、古きよき時代の本格物の楽しさを満喫させてくれます。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
クイーンの国名シリーズの最高作といっていいと思います。 ただし、誰が読んでも面白いという作品ではないと思うのです。パズラーの教科書といってもいい「オランダ靴の謎」、論理的解決など不可能ではないか?と思わせる連続首切り事件を些細な証拠から解体してみせる「エジプト十字架の謎」が万人受けする作品だとすると「ギリシア棺の謎」はマニア好みの作品なのです。 名探偵と同等いやそれ以上の知力を持った犯人が「こいつならこんな具合に推理するに違いない」と偽の手がかりをバラマキ探偵を翻弄する。いわば、神懸かり的な知性を持った盤面の敵を相手に名探偵エラリーが散々翻弄される物語なのです。そもそもそうした犯人を演繹的推理で追い込む事は可能なのか?どれが本当の手がかりでどれが偽の手かがりかどうやって判断するのか?パズラーの持つ弱点を浮き彫りにしていくのです。 はたして、この成果は??正直に言うと作者クイーンの意図は完全には達成できたとは思えません。最後に明かされる真相すら「それが、偽の手がかりによって導かれたのでないとどうしていえる?」という疑問がないわけでない。 とはいえ、やはり、この作品は傑作だと思います。「オランダ靴の謎」「エジプト十字架の謎」がいわばパズラーらしいパズラーの傑作だとしたら、「ギリシア棺の謎」はパズラーの枠組みを意図的に逸脱しながら尚かつパズラー以外の何者でもない希有な作品なのです。しかも、歪な部分があるとはいえ完成度は極めて高い。 しかしながら、あくまでマニア好みの作品だと思います。クイーンを最初に読む場合、本書はおすすめできない。しかし、パズラー好きを自認するなら必読の書だと思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
最終場面で「犯人の条件は第1に何々、第2に・・・、それをすべて満たすのは何某」と真相を明かすクイーンお得意のパターン。しかし、推理のみで物証はなく、犯人の具体的行動も示されないので、かなり欲求不満を感じた。 また、犯人は2度まで他人を陥れる罠を仕掛けるが、クイーンのような風変わりな人間しか気がつかない罠ではリアリティに欠ける。それに、第1の罠ではその家の主人が急死する前夜に出されたティーセットが、なぜ葬儀の日まで仕舞われなかったのか?、第2の罠では犯人はなぜ他人の家のタイプライターの特徴を知っていたのか?、などについても納得のいく説明がない。さらに、事件の発端で、出棺の5分前に金庫にあることが確認されている遺言状が、人のいる部屋から紛失、棺桶に隠されたのではというクイーンの主張に従って、掘り返してみるともう一つの死体が・・・、というのも奇を衒いすぎて不自然になってしまっている。 エジプト十字架と同じく、ストーリー展開は面白いのでページ数の割には退屈しないが、推理小説としての出来は今ひとつではなかろうか。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
国名シリーズ中で、「オランダ靴」、「エジプト十字架」等と並ぶ代表作にして最長編作。時間を巻き戻して若き日のクィーンの活躍を描いている。若さ故に失敗を重ねる探偵クィーンを描くという趣向と共に、それだけの難事件を案出して見せるという作者の自負もあったのだろう。 冒頭におけるクィーンの予想を越えた死体出現から始まって、クィーンは犯人に翻弄され続ける。こうした犯人との知恵比べが本作の見ものであり、前半のクィーンの苦闘ぶりが微笑ましい。1つ々々の事件に工夫が凝らしてあるので、全体の分量が多くなるのは止むを得まい。各事件が全体の構成上、パズルのピースに嵌るように造形されているのも、クィーンなら当然とは言え見事である。 犯人に押されっ放しだったクィーンは結末に到って逆襲に出て得意の推理を披露。そして、最後に待っているものは...。若き日の苦闘するクィーンという設定を用意し、更にそれにふさわしい難事件を案出し、重層的推理で読者を魅了する国名シリーズの代表的傑作。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
探偵役のクィーンが犯人の巧妙な手口によって何度もミスリードされ、状況は二転三転し、最後の最後にどんでん返しで真犯人が判明しますが、意外と言うよりはちょっとずるい感じがして、やや不満が残ります。蘊蓄が多いので、全体としてやや冗長ですが、ストーリーの展開は面白く、一気に読めて、それなりに楽しめます。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
この作品はエラリー・クイーンを語るには読んでおかなければいけない作品です。 国名シリーズの中で、『エジプト十字架の謎』と一位、二位を争う傑作ですし、推理の論理性、犯人の意外性もあり、とても読みがいがあります。 厚いですが、読んで損はないと思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
国名シリーズで最も優れているのは、やはり「エジプト十字架」じゃないでしょうか。 「ギリシャ棺」は引用癖が煩わしいというよりも、話の展開が面白くなかったですね。長さの割に展開のスピードが遅く退屈でした。 トリックや犯人の意外性もイマイチ驚くほどでもなかったです。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!