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三つの棺



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三つの棺の評価: 3.86/5点 レビュー 51件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.86pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全34件 1~20 1/2ページ
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No.34:
(4pt)

推理小説好きなら密室講義の章を是非とも

勿論、この作品そのものも推理小説として優れているが、とにかく密室講義のノリが楽しい。ネタバレになるので具体的な事は書けないが、特に講義に入る「序文」の部分はユーモアのセンスが優れていて、また大いに共感出来る。
三つの棺〔新訳版〕Amazon書評・レビュー:三つの棺〔新訳版〕より
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No.33:
(5pt)

密室トリックの名作

カーの代表作のみならず密室トリックの名作として、必ず名のあがる本作。確かにこのトリックはすばらしいと思うし、有名な「密室講義」も非常に楽しい。「現実味がない」ことを理由にミステリを否定する層に対しての挑戦状のようでもある。「黄色い部屋…」など、他作品のトリックのポイントを明かしてしまうので要注意ではあるが…。
ただ訳者があとがきで翻訳の難しさに触れているように、実際のところ文章がかなり読みにくい。登場人物のキャラも全体的にエキセントリックで、感情移入しにくいところもある。欠点はいろいろあるが、トリックのあざやかさで帳消しというところ。本作を読まずして密室トリックは語れないだろう。
三つの棺〔新訳版〕Amazon書評・レビュー:三つの棺〔新訳版〕より
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No.32:
(4pt)

「火刑法廷」と好対照を成す密室物の名作

1930年代のロンドン、雪の夜。原始魔法の愛好研究者、裕福なシャルル・グリモー教授が、雪に、窓に、暖炉にも足跡も残さぬ犯人に撃たれて死ぬ──というフェル博士の長編。

中盤フェル博士突然が長々と「我々は推理署の中の人物だからだ」と珍奇な解説を始める珍事はさておき、「墓から蘇り、墓に帰る男」を主題とした雰囲気満点の面白い作品である。

しかし終盤の謎解きになると、たしかに説明は通っているのだが、あまりの秒刻みの構成にどうしても別種の名作、「火刑法廷」を思い出してしまう。

あり得ぬ状況を創り、最後にあらゆる合理的な解説で解き明かす──のに反抗したのか、「合理的な解説が結末ではない小説は如何かな?」と出された「火刑法廷」の無気味さこそ、当方にとっては好みである。
三つの棺〔新訳版〕Amazon書評・レビュー:三つの棺〔新訳版〕より
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No.31:
(5pt)

ジョン・ディクソン・カーとカーター・ディクソンの違い

ぼくは、カーター・ディクソンが好きで、ジョン・ディクソン・カーがあまり好きではない。同じ人物でありながら、書き方がまるで違うのだ。

カーター・ディクソンでは、構成・キャラクタ・文章どれをとっても超一流だ。『赤後家の殺人』など、スゴイ傑作なのになんで廃盤扱いなのか不思議で、仕方がなかったくらいだ。カーター・ディクスンの『黒死荘の殺人』も素晴らしい。正に王道だ。

ところが、ジョン・ディクソン・カーになると、カーター・ディクソンとは違うことをやりたいという気持ちが異常に強くなっている。『皇帝のかぎ煙草入れ』がなかなか進まないのも、『火刑法廷』で挫折したのも、なんでそんなところに力を込めて語っているのか解らないからだ。

唯一の例外が、ジョン・ディクスン・カー名義のこの『三つの棺』だ。これは実際の歴史を取り込もうとしているのが成功している。なんと言っても、ルイ16世が処刑された時代のフランスとイギリスを歴史そのままに下敷きにして、これを構築するのだから驚く。

でもやはり、ぼくは、カーター・ディクソン流の『犯人とトリックを当てられるものなら当ててみろ』という王道が好きなのだ。そして、トリックを解いていく主人公H・M卿こと、ヘンリ・メリヴェール卿が好きなのだ。

『皇帝のかぎ煙草入れ』は、1942年の作品だが、この頃になると、カーター・ディクソン的な書き方に飽きてしまっている気がする。だから、変な恋愛小説を読んでいるようなくだりがグダグダと続くのだ。

器用だからこういう事ができるのだろうが・・・よく分からないのである。
三つの棺〔新訳版〕Amazon書評・レビュー:三つの棺〔新訳版〕より
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No.30:
(4pt)

密室トリックの仕掛けとして一つの究極を実現しているが…

若い頃読んだ時は論理性の面で満足できずそれほど評価していなかった。今回は論理性は重視せずに解決が納得できればいいという気持ちで再読したが内容を忘却していたこともあり驚天動地の真相に圧倒された。2つの密室トリックの仕掛けは偶然も加わってさらに複雑さを増しミステリの技巧として一つの究極を実現しているのではなかろうか。ただし細かい点では無理がありほとんど何もわからないまま最後まで進むため途中の冗長感は否めない。フェル博士も2回も自分の間違いを認めるわけで、結果的に謎めいたセリフのほとんどは読者を惑わすだけのミスリードだったことになり興ざめの感は残る。

また、いろいろな手掛かりが何気ない会話の中に紛れ込ませてあるため非常に読みにくい。例えば、p250のハドレイ警視のフェル博士へのセリフ「...あんたは、ペチスに血が欲しいと言った。...」とあるが、これの意味を確かめるために読み返すとp184の「...わたしの望んでいるのは血だ!」が見つかるが事件には全く関係しない話であるためがっかりさせられる。意味あるものも含めてこの種の読み返しが非常に多かった。もう少し整理されていれば読みやすいと思われるが、このへんはカー作品の特徴であり我慢するしかないのであろう。それでも読みたくなるのがカー作品なのではあるが…

本作を現実感のある人間ドラマとして見た場合はやはり評価できない。他のレビュワーの方も指摘しているが犯人側から見た場合この犯行計画はあまりに突飛で危険であり現実に実行されるものとはとても考えにくい。また、これも他のレビュワーの方の指摘であるがこの事件が現実として起こった場合ある決定的な手掛かりが残るはずでありそれが全く省略されている。作者のうっかりミスかもしれないが、これを仮に省略しなかったとしたら本作のトリックの基本部分が成立しないためあえて省略したのかもしれない。もう一つ、第14章「教会の鐘の手掛かり」でフェル博士が気が付く事実であるが、これも最後まで誰も気が付かないというのは現実にはあり得ないであろう。犯行計画の点でも基本的には無理である(ごまかしが効く範囲かもしれないが)。これらの点を考えるとやはり絵空事でしかなかったかといった空しさは禁じえない。

登場人物も一人(最後にナイフを持っていた人)を除けば魅力に欠け人物描写も深みが無い。ハドレイ警視ももっと穏やかで謙虚なイメージがあったが本作ではせっかちでやや失望した。全体的にゲームの駒でしかなく会話も表面的で相手の心理を思いやるようなものは感じられない。

第17章「密室講義」は読み応えがあるが、これらの過去のトリックと較べると本作のトリックはその数段上を行くものであることが実感できるといった茶目っ気たっぷりの仕掛けという気もする。また以下の作品のネタバレが含まれているので事前に読むか第17章を読み飛ばすかしたほうがいいかもしれない。

○長編
ガストン・ルルー「黄色い部屋の謎」
イズラエル・ザングウィル「ビッグ・ボウの殺人」
ヴァン・ダイン「カナリヤ殺人事件」
エラリー・クイーン「チャイナ橙の謎」
○短編
トマス・バーク「オッターモール氏の手」
チェスタトーン「通路の男」
ジャック・フットレル「13号独房の問題」
メルヴィル・ディヴィスン・ポースト「ドゥームドーフ殺人事件」

なお、昭和54年7月発行の版であるためどこが誤訳なのか気になったが、ネット上のレビューで指摘されているのは冒頭でフレイがグリモー教授を脅迫する最後のセリフの中にある単語についてのようである。これは確かにp337のフェル博士の説明と矛盾するようであるが、グリモー教授が他の二人についてその後どうなったかは知らなかったすれば脅迫のセリフとしては説明がつき誤訳とはいえないのではなかろうか。むしろp337のフェル博士の説明のほうが勢い余って間違えた、つまり翻訳ではなく原作の誤りという気もする。
三つの棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-3)Amazon書評・レビュー:三つの棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-3)より
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No.29:
(4pt)

文字が薄い

旧約の1979年発行版を購入したのですが、こんなに古いとは思いませんでした。三つの棺は50年位昔に読んでいたので、旧約を再び読んでみたくなりました。エドガ―・アラン・ポーの作品の雰囲気です。旧訳は判りずらいと言う人がいますが、自身は快いです。 唯、老眼となり、インクが薄くなった感じは目に辛いところです。
三つの棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-3)Amazon書評・レビュー:三つの棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-3)より
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No.28:
(4pt)

ためになった。

フェル博士の、第17章「密室の講義」(The Locked Room Lecture)を読みたくて購入しました。わかりやすくて良かったです。
三つの棺 (1979年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:三つの棺 (1979年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
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No.27:
(4pt)

不可能密室ものの代表古典傑作

JDカーの作品の中でもそのやり過ぎとも言える密室不可能トリックと途中の密室講義によってマニアには人気が高いカーの代表作である。
この版は翻訳が分かりずらいという意見が多いが、別にそんなことはない。
まあ、トリック自体は翻訳以前にもともと分かりずらいので仕方ないだろう。
実際はこんな事起こるはずがないってタイプの現実性を無視した小説内論理だけによる本格派らしい本格推理であり、今読んでも十分楽しめる作品である。
日本では二階堂黎人氏や折原一氏が影響を受けている事もあり、本書でのトリックのアイデアは後の新本格系のお手本ともなっている事が分かる。
三つの棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-3)Amazon書評・レビュー:三つの棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-3)より
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No.26:
(4pt)

待ちに待った新訳

待っていた新訳です。 旧訳本を読み理解できないところをペーパーバックに照らし、もがきながら読んだのも良い思い出でした。 この新訳は、現代人にすんなり受け入れられる読み口で、週末の楽しい伴侶になり得ます。 平易な言葉になったせいか、良い意味でも悪い意味でもペダンティックな空気が希薄となり、この読みにくい物語をぐんぐん読ませてしまいます。 これは出版社さん、ブラボーです!
三つの棺〔新訳版〕Amazon書評・レビュー:三つの棺〔新訳版〕より
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No.25:
(4pt)

凝り過ぎパズル

自分はそれほど推理小説にリアリティーは求めない方で、知的遊戯として楽しめれば良い
のだけど、この作品の終盤(謎の解き明かし)は現実感がなさ過ぎてちょっと疲れた。
主役のフェル博士の言うとおり全体的にねじれてしまっていて、終盤にそのねじれを一気
に解明するものだから、こっちまで何かおかしくなる。凝り性のカーならではのコクかな?
作中で、フェル博士に「我々は小説の中に居る・・・」と言わせたり、脇役の曲芸師に奇術の
タネ明かしをさせたりしており、作者は「これは推理小説という舞台でのマジックなのだ」と
宣言しているのだろう。
マジックというより、凝り過ぎて変になったパズルのような気がする。作り込み感が強すぎ
るのだ。しかし、そこはさすがにカーで、登場人物の性格や背景に意を用いて、不気味な
ドラマを構成している。1935年が初出だから、トランシルヴァニアの吸血鬼伝説みたいな
味付けは当時としてはけっこう「来て」いたのではないか。
敵役が突然現れて「三つの棺。オレが来ようか、弟を行かせようか?」と謎かけみたいな
脅しから幕が開くこのお芝居は、疲れるけど妙味のある作品だと思う。
厳密に言うと、不可能犯罪物としては少々破綻しているのだが、カー独自の奇術なので
嵌められてそれを楽しめばいい。
三つの棺〔新訳版〕Amazon書評・レビュー:三つの棺〔新訳版〕より
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No.24:
(5pt)

密室ミステリの最高傑作

密室ミステリの最高傑作が改訳でさらに読みやすくなっている。前回改訳時の誤訳もなくなっている。kindle版のため、どこにでも持っていけるのがいい。
三つの棺〔新訳版〕Amazon書評・レビュー:三つの棺〔新訳版〕より
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No.23:
(5pt)

推理小説好き必見の作品

旧訳に比べて非常に読みやすく、旧訳では最も大切なトリックの部分に誤訳がありましたが、それもう巻き修正されています。入手困難だった時期が長いのはカー作品の欠点ですが、この作品も早く入手しないと本屋さんから消える日も直ぐに来るでしょう。推理小説の原点であるこの作品は必見の書です。是非、入手し、お読みください。
なお、翻訳者は最後に入手困難なカー作品の一つである「ユダの窓」の翻訳も手がけられるとのこと。この作品も必見の書です。新訳の出るのが待ち遠しいです。
三つの棺〔新訳版〕Amazon書評・レビュー:三つの棺〔新訳版〕より
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No.22:
(4pt)

新訳で読みやすくなったのかな??!!!

ジョン・ディクスン・カー(1960年11/30~1977年2/27)、英国での活躍が目立つため、英国生まれと思われがちですが、米国生まれです。
 商業作でのデビューは、夜歩く(1930年)です。本作、三つの棺(1935年)は、火刑法廷(1937年)と並ぶカーの2大傑作として、
 マニアの間では定評になっています。事実、東西ミステリーベスト100(文藝春秋)では、海外編の第16位にランクインしています。
 カーと言えば、オカルト趣味(吸血鬼、狼つき、黒死病・・・・)、不可能犯罪・・特に密室物・・・、ユーモア―というかむしろファースに近い、
 が3大特色だと思いますが、本作もその後多分に漏れません。
 本作では、主人公の過去が語られるところで、トランシルバニア地方が出てきます。トランシルバニアと言えば、吸血鬼ですね!
 それに、黒死病(ペスト)、それに、奇術師、などの小道具が、上手く雰囲気を盛り上げています。 
 そして、本作に登場する名探偵は、ギデオン・フェル博士・・H・メリヴェール卿と比べれば少し存在感は薄いのかな?・・・、
 作中で有名な密室講義を披露します。というわけで、本作のメイン・トリックは、密室ということになりますが、
 使用されているトリックは、当然、フェル博士の講義の範疇に入っています
 世評では高い評価を受けていますが、カーの他の作品にも言えることですが、とにかくトリッキーすぎます。
 最後のフェル博士の推理を読んでもよくわからず、2度、3度と読み返すうちにようやくその言わんとすることがわかりました
 ・・・ああややこし・・・大阪弁です。
 本作は、名作と言われていて、手に入りにくい状態が続いていましたが、今度、新訳で再刊されました。
 改訳されて読みやすくなったのかな、と期待していましたが、相変らず読みにくい!!これは、もう翻訳の問題ではなく、
 カー自身の泥臭い文章術のせいなのかもしれません!!
 そんなこんなで、欠点だらけのように見えますが、それがまたカーの魅力の一つなのでしょう!!
 巻末に、最新の長編著作リストが付いています。三つの棺に関しては、さすがに魔棺殺人事件は所有していませんが、
 その他の版はすべて所有しています。
 ちなみに、火刑法廷との比較ですが、これは言わずもがな、圧倒的に〇〇のほうが優れています。
三つの棺〔新訳版〕Amazon書評・レビュー:三つの棺〔新訳版〕より
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No.21:
(5pt)

カーの反リアリズム宣言

誤訳・悪文と非難轟々の旧訳版であったから、もはや遅きに失した感もあるが、待望の新訳版リリース。カー・ファンにとっては今年一番の僥倖であろう。
加賀山氏の翻訳は、カーの『火刑法廷』を含め幾つか読んだが、非常にスタンダードな現代文で、読みやすい訳文といっていい。もちろん、旧訳で問題だった誤訳部分も適切に修正されている。
とはいえ、それでこの小説のすこぶる錯綜したプロットが整理整頓されるわけもなく、本質的な読みにくさは変わらない。カーを読むのは体力勝負、との覚悟が必要だ。

本書のトリック等の内容については旧訳版の方に(ネタばれを含み)多数のレビューがあるので、あえて触れない。
ここでは第17章の「密室講義」について蛇足を少々・・・。

この「密室講義」の冒頭で、カーは「われわれは探偵小説の中にいる・・・」云々と、フェル博士に大上段からメタ的発言をさせているが、これに飛びついてこれをメタ・ミステリの走りだなどと評するのはもちろん失当である。
ここでの密室トリック分類自体は、分類基準がやや錯綜していて論理的な分析とは言いがたいが、メタ発言により小説の枠組をぶち壊してまで言いたかったことは何なのか、そこは注意しておく必要がある。ミステリ作家としてのカーの本音が垣間見えるはずだからである。

カーは1922年(15歳の時)、地方紙に「リアリズム作家を語る」というコラムを載せているが、その中で、世にはびこる「愚にもつかないリアリズム小説」をこきおろし、「トラック一台分のフィッツジェラルドの本よりも、ほんとうに上質の探偵小説を書き上げるほうが作家としての才能をはるかに要する」と、大胆に探偵小説を擁護している。
フィッツジェラルドの小説をリアリズムと呼べるかはともかく、カーが15歳の若さですでに危惧していたとおり、『三つの棺』が書かれた時代(1935)は、フィッツジェラルドやヘミングウェイの文学が探偵小説に伝染し、ハメットを経由してチャンドラーに至る過程にあった。
カーはのちにチャンドラーのハード・ボイルド小説を、低俗なリアリズムとしてケチョンケチョンに罵倒しているが、カーの「反リアリズム」はこれほど年季が入っており、相当根が深い。

「密室講義」の導入部で、フェル博士に「われわれは、ありそうにないことが好きだからこそ、探偵小説に愛着を抱く」のだと明言させたのは、もちろん、自己の密室モノをはじめとする不可能犯罪への嗜好を擁護するのが主な目的だが、その根本には、自分の書く小説が近代リアリズムの対極にある物語、すなわちファンタジー(あるいはロマンス)の一種であるという強い確信がある。
で、あとはグダグダ言わず「それでいいのだ!」と開き直って揺るがない。このドン・キホーテばりのカーの雄姿が、案外、時代を超えて「探偵小説を愛するわれわれ」の拠り所になっていたりするのだ。
三つの棺〔新訳版〕Amazon書評・レビュー:三つの棺〔新訳版〕より
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No.20:
(5pt)

「ドゥームドルフ事件」未読の方は要注意

名前は有名なのに長年絶版状態が続いていた「三つの棺」。
自分のようなカー初心者も待望の刊行なので年長ファンは待望などという言葉では表せないでしょう。
翻訳された加賀山氏は以前「火刑法廷」も担当されており信頼して間違いないと思います。
内容も密室殺人に衆人環視殺人という不可能犯罪を盛り込みカーを代表する作品なのも頷けます。
巻末の長編著作リストは日本での刊行タイトルも羅列されていて参考になるリストです。
(例えば「三つの棺」の前後作は「死時計」と「赤後家の殺人」というようなことが容易に調べられます)

ただ一つ注意したいのは有名なフェル博士の「密室講義」。既読の方には今更の話題ですが
ここでM・D・ポーストの「ドゥームドルフ事件」のトリックが完全にバラされています。
自分は偶然数日前に読んでいたので「危なかった…」と思いました。
該当作品は創元推理文庫「世界短編傑作集2」に「ズームドルフ事件」として収録されているので
名作のネタバレは嫌だという方は予習のつもりで読んでみることをオススメします。
三つの棺〔新訳版〕Amazon書評・レビュー:三つの棺〔新訳版〕より
415070371X
No.19:
(5pt)

カー魔術の極致

原題 The Three Coffins(原著1935年刊行)
『火刑法廷』(1937年)と並ぶカーの代表作にして最も華麗で巧妙な不可能犯罪ミステリの最高峰。
綱渡りの様なきわどいバランスの上に成立する複雑な密室トリックの妙技。それを支える伏線とミスディレクションの素晴らしい技巧と読者を翻弄する叙述のテクニック。
そして吸血鬼伝説などの怪奇的意匠が結末に至って見事に収斂する謎解きの快感はカー作品中屈指。
さらに作中フェル博士が宣う「密室講義」に代表される遊び心の愉しさ。全てが相まってもたらされるカー魔術の集大成であり、探偵小説黄金時代ならではの論理遊戯の極致。
三田村裕による旧訳は誤訳(重版の際該当箇所は訂正されたが)を含め読みづらく不評だったが、ようやく改訳された事は素直に喜びたい。
なお巻末のカー長編書誌リストは昭和初期から現在までの邦訳版を網羅し非常に有益。
三つの棺〔新訳版〕Amazon書評・レビュー:三つの棺〔新訳版〕より
415070371X
No.18:
(5pt)

カーの反リアリズム宣言

訳が悪かろうが、錯綜しすぎるプロットに辟易しようが、本格ミステリ・ファンたる者はこの小説を避けて通るわけにはいかない。一種のイニシエイションとしてこの作品はある。
それはひとえに、「密室の講義」という1章のためである。

この「密室の講義」の冒頭で、カーは「われわれは推理小説の中にいる人物であり・・・」云々と、フェル博士に大上段からメタ的な発言をさせているが、これに飛びついてこれをメタ・ミステリのはしりだと評するのはもちろん失当である。
この1章(第17章)、密室トリック分類自体は分類基準がやや錯綜していて論理的な分析とは言いがたいが、メタ発言により小説の枠組をぶち壊してまで言いたかったことは何なのか、そこは注意しておく必要がある。ミステリ作家としてのカーの本音が垣間見えるはずだからである。

カーは、別の作品でも登場人物に言わせているが、大のロシア嫌いである。19世紀のロシア小説的なリアリズムが大嫌いなのである。はっきり言えばドストエフスキーである。それから、この時期はまだ長編デヴューしていないが、チャンドラーのハードボイルド小説も大嫌いで、後に低俗なリアリズムとしてケチョンケチョンに貶している。この時期、ヘミングウェイ的なハードボイルド手法はハメットを介してチャンドラーに伝染してゆく過程にあったと思うが、カーはすでにその予兆をはっきり感じていたのだろう。

カーがフェル博士に「われわれが探偵小説を好む大きな理由は、ありそうにないことを好むからなのだ」と明言させたのは、もちろん、この時期顕著になってきた自己の密室モノをはじめとする不可能犯罪への嗜好を擁護するためだが、その根本には自分の書く小説が近代リアリズムの対極にある物語、すなわちファンタジー(あるいはロマンス)の一種であるという確信がある。
で、あとはグダグダ言わず、それでいいのだ!・・・と開き直って揺るがない。この不動のカーの雄姿が、案外、時代を超えていまだに「探偵小説を好むわれわれ」の拠り所になっていたりするのだ。
三つの棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-3)Amazon書評・レビュー:三つの棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-3)より
4150703531
No.17:
(5pt)

古典ミステリー

とりあえず昔のミステリー作家の作品を読み漁ろうと購入しました。これは面白かったと思います。
三つの棺 (1979年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:三つの棺 (1979年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
B000J8FWCO
No.16:
(5pt)

なんだかんだ

読みづらさはあっても、やはりこのトリック、そして真相が明らかになる一連のシーケンスの迫真性は圧巻。今読んでも十分に新鮮。
三つの棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-3)Amazon書評・レビュー:三つの棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-3)より
4150703531
No.15:
(4pt)

訳があれなのかな

トリックは図があったから分かったものの、文だけだったら理解するのは、難しかったかもなあと思う(自分の頭が悪いだけなのかもしれないが)

密室講義が凄い。それだけのために金を払う価値はある。
三つの棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-3)Amazon書評・レビュー:三つの棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-3)より
4150703531

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