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悪人
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悪人の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.01pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全407件 101~120 6/21ページ
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おそらくこの作品の最後のページに至るまで題名の「悪人」の意味を読者はなかなか捉えきれないのではないか。九州の博多のうら寂しい峠で一人の女性が絞殺される。保険の販売員でありながら、時々出会い系サイトで知り合った男たちに体を売っていた佳乃という女性だ。彼女を殺したのは、金持ちの息子でスポイルされた大学生増尾なのか、あるいは幼いときに母に捨てられ、祖父母に育てられた貧しい土木作業員の清水祐一なのか、筆者はうまく読者を引っ張りながらここで作品の題名の意味は増尾を指すのではと思わせる。増尾は、佳乃を真夜中の峠で車から無理やり降ろしたという罪の意識もまったくなく、佳乃の父の憎しみの意味さえ理解できないのだ。祐一は、この捨てられた佳乃を救うべく対処するのだが、逆に佳乃に殺人者呼ばわりされて彼女の首を絞めてしまう。作品のクライマックスは祐一が人生でおそらくもっとも心を通じた女性光代との逃避行に入っていく。やがて警察に捕まる寸前に祐一は光代の首を絞めて、自分が全ての罪を背負い、どうしようもない「悪人」であることを示そうとする。ここでこの作品は終わる。薄幸の人生を送ってきた祐一、そして彼を育てた祖母房江の寂しい人生もまた悲しい。だが、彼女が悪徳商法で高価な薬を売りつけた男たちの所に勇気を振り絞って乗り込んでいくところは何か、この作品で唯一救われそうな気がする場面である。 | ||||
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主人公の祐一は、光代を罪に巻き込まない為に首を絞めます。 あれほど愛し合った2人が、突然首絞めという暴挙に出て、 光代はただただ戸惑います。 これまでのやりとりで彼がなぜ首を絞めたのか、冷静に考えれば 光代を事件から外す為と理解できますが、首を絞められた当の本人 は、「彼はやっぱり悪人だった」という見解に落ち着きました。 佳乃が祐一を訴えるといった時も、冷静に考えれば対処できたはず。 突然佳乃の言葉に追いつめられた祐一は、佳乃を殺してしまう。 悪人とは、冷静な判断ができなかった末に人殺しをした人間に、 否応なくついてくるものだと思いました。 もちろん、健康食品販売のセールスマンや、増尾圭吾なども悪人に 当てはまると思います。不器用な人間が結果として悪人になるのだ と思いました。 | ||||
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『悪人』という書名に惹かれて読みましたが、結局誰が悪人なのか、 明確には分かりませんでした。 (読み手である私の感性が低いからだと思いますが、誰が悪人なのか、 もう少し分かりやすくしてほしかったです) 物語の作りとして、登場人物が多過ぎる感じがして、読みにくかった です。別に登場人物がたくさんいてもいいのですが、小節ごとに 主人公が入れ替わる作りでは、読んでいて混乱しました。 主役の1人である光代が登場するのが上巻の後半になってからで、 それまでの話は何だったのかと思いました。 | ||||
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親近感を抱きそうな、故郷が舞台の小説ながら、情景が思い浮かぶだけに… リアリティーを感じにくかったのかなぁ、と。 | ||||
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数年前に話題となり、映画化もされたこの作品…これまで巷で話題になった駄作・愚作の類は多くあるので、最初は大した期待もせず読み始めた。 しかしこれは思いがけず秀逸であった。 最初は読者の目線で、軽薄で愚かな者、自分自身は何の力も持たないくせに人を見下し嘲笑う事が当然となっている者、社会的勝者には程遠い冴えない者達を心中嫌悪したり嘲笑したりしているうちに、物語を読み進め、入り込むに連れ、いつしかその嫌悪や嘲笑の刃は自分の中の有る部分に向いているのである。 この小説のプロットはあくまでも一つのケースであるが、事ほど左様に何が真の善悪かという事は実際は分かり辛く、結局は法に触れた者達が「悪人」として世に周知される。 そして、それを世の「善人」達が憎み、嘲笑する。 誰が真の悪人なのか。 私個人の感覚では、祐一のプライドを踏みにじり、更に殺人という「法に触れる」行為に及ぶまで追い込んだ佳乃、そして一人娘を殺された父親の怒りを仲間達と嘲笑する圭吾こそが「悪人」に感じるが、彼らは世では被害者であったり一般人であったりする。 むしろ、彼らは、世の中の、そして読者の大部分である、法に触れる事無く生き、ニュースの「悪人」を嫌悪し、嘲笑い、攻撃する「善人」側に属する者達である。 鶴田が佳乃の父佳男を偶然助け、遂には圭吾の元へ連れて行くプロットは強引ではあるが、彼は我々一般人が心の何処かに僅かでも持っていなければいけない「倫理」や「良心」の象徴で有る様に思う。 偶然にも私の出身地である九州が舞台となっており、故郷の情景もごく自然に、現実感を持って描写されている。 読者を引き込み、楽しませる読み物としての魅力を備えていながら、作者が訴えたい事は明瞭に表現されており、しかも安っぽくなるギリギリで色々な表現が抑えられている。 決して読後にカタルシスや幸福感に浸ることの出来る内容ではないが、それでも多くの読者に何かを考えさせる作品である。 通常滅多に与えない5つ星を献上する価値のある小説であった。 | ||||
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数年前に話題となり、映画化もされたこの作品…これまで巷で話題になった駄作・愚作の類は多くあるので、最初は大した期待もせず読み始めた。 しかしこれは思いがけず秀逸であった。 最初は読者の目線で、軽薄で愚かな者、自分自身は何の力も持たないくせに人を見下し嘲笑う事が当然となっている者、社会的勝者には程遠い冴えない者達を心中嫌悪したり嘲笑したりしているうちに、物語を読み進め、入り込むに連れ、いつしかその嫌悪や嘲笑の刃は自分の中の有る部分に向いているのである。 この小説のプロットはあくまでも一つのケースであるが、事ほど左様に何が真の善悪かという事は実際は分かり辛く、結局は法に触れた者達が「悪人」として世に周知される。 そして、それを世の「善人」達が憎み、嘲笑する。 誰が真の悪人なのか。 私個人の感覚では、祐一のプライドを踏みにじり、更に殺人という「法に触れる」行為に及ぶまで追い込んだ佳乃、そして一人娘を殺された父親の怒りを仲間達と嘲笑する圭吾こそが「悪人」に感じるが、彼らは世では被害者であったり一般人であったりする。 むしろ、彼らは、世の中の、そして読者の大部分である、法に触れる事無く生き、ニュースの「悪人」を嫌悪し、嘲笑い、攻撃する「善人」側に属する者達である。 鶴田が佳乃の父佳男を偶然助け、遂には圭吾の元へ連れて行くプロットは強引ではあるが、彼は我々一般人が心の何処かに僅かでも持っていなければいけない「倫理」や「良心」の象徴で有る様に思う。 偶然にも私の出身地である九州が舞台となっており、故郷の情景もごく自然に、現実感を持って描写されている。 読者を引き込み、楽しませる読み物としての魅力を備えていながら、作者が訴えたい事は明瞭に表現されており、しかも安っぽくなるギリギリで色々な表現が抑えられている。 決して読後にカタルシスや幸福感に浸ることの出来る内容ではないが、それでも多くの読者に何かを考えさせる作品である。 通常滅多に与えない5つ星を献上する価値のある小説であった。 | ||||
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私は、ラブコメ小説「横道世之介」から本書に入ったのだが、本書を読み終わって、筆者は何でも書ける本当に芸域の広い人であり、かつ、並外れた筆力の高い人なのだと、本当に感心させられた。 本書は、携帯サイトで知り合った女性の殺害事件を扱った作品なのだが、実は、冒頭のわずか4ページ目で、あっけなく犯人は明かされてしまっている。しかも、それだけでなく、友人のある判断が、その後の捜査方向を狂わせてしまったとまで書いてしまっているのだ。通常、ここまで書かれてしまうと、読者は、犯人に辿り着くまで、ヤキモキ、イライラさせられ、フラストレーションを感じてしまうのが落ちなのだが、この作品には、そうしたことが全くなかったのだ。これは、ひとえに、筆者の並外れた筆力の高さの賜物だと思う。 筆者は、いささかも冗長さを感じさせることなく読者をグイグイと引っ張っていき、下巻の最終ページに至るまで、スラスラと、一気に読ませてしまうのだ。特に、その豊かな表現力は抜きん出たレベルにあり、祐一と光代の感動的な心情(というよりも真情)をメインに、被害者と加害者の関係者の心情が木目細かく描き分けられており、その繊細なタッチは、さりげない情景描写の一つ一つに及ぶまで神経が行き届いているのだ。正直いって、ここまでの豊かな表現力は、「横道世之介」では読み取れなかったので非常に驚いたのだが、考えてみれば、純文学を対象とした芥川賞の受賞歴があるという筆者の経歴を見れば、これくらいの表現力も当然といえるのかもしれない。 そんな本書を読み終わってつくづくと考えさせられたのが、虫唾が走るほど嫌な男がのうのうと羽振りを利かせて生き続け、純粋で真面目な男が不器用であるがゆえに殺人者になってしまうという何とも皮肉な現実だ。もちろん、作者はそうしたことを意図的に描き分けているわけで、人生とは理不尽なものであり、案外そんなものなのだろうと思う。 最後に、一言だけ苦言を呈したい。本書は、上下2巻に分かれているのだが、わざわざ分冊にする必要性が感じられないほど薄く、実際、本書は第三章の途中という中途半端なところで分冊しているのだ。分冊すれば、当然割高になるだろうし、私を含めて、上下2巻という見掛け上の長さに、手を出すことを躊躇してしまう読者も少なくないはずだ。本書以上のボリュームのものを1冊にまとめた文庫本も決して珍しくなく、本書のような折角の好著が、こうしたことで購買層を狭めているとしたら、大変もったいないことだと思う。 | ||||
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Kindle版ではタイトルが「悪人:上」となっていますが、この書籍内に最終章まで含まれています。 | ||||
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これはアウトレイジ [DVD]じゃないけれど全員「悪人」ですわ。 でも読んでいるだけで各登場人物の逃げ場の無さ、押し潰されそうな気持ちは痛いほど理解できた。 閉鎖された田舎で、地域の全介護を背負わされたかのような存在となり、金髪にしても変身できないし、家にも居場所がなく、 車だけが唯一の居場所、ドライブしても逃げられない。 車は唯一のプライドであり、自分がどうやっても手に入れられないもので差を付けられれば非常に屈辱だろう。 安月給のOLで、援助交際でもしなければ広告で煽られてるものなんて何一つ買えない。金持ちと結婚でもしない限り抜け出せない。 チャンスだと思っていたのに、自分は交際するレベルですらないと相手の眼中にない屈辱。 毎日が職場との往復の販売員。もう若くもなく、時間がどんどん過ぎていく。殺人犯との逃避行を非現実的なボニーアンドクライドのごとく酔ってる。 高級車を乗り回し、奔放に過ごしているように見えて、伝統あるということは同時に重荷でもある旅館を継ぐことは決めさせられているボンボン。選択の自由はない。 若き日の理容師の父親が竹の子族に方言むき出しでケンカを売ったのに、標準語で軽くいなされたというシーンも印象的。 地方と東京の格差。全く相手にされていない。 皆が皆、心のなかに貯めていた鬱屈が爆発したかのような「悪」を最後に一人で背負い、そしてまた表面的に平穏に始まる変わらない日々。 厚い本だけど、一気に読める圧巻の感想でした。 | ||||
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先に映画を見ていました。 原作が連載小説であることは知っており、この度Kindle版を見つけ購入。 「悪人:上」とあり、「下」にKindle版リクエストを出しましたが、とりあえず読んだ所、これ一冊で完結していますね(下巻も含まれている)。 あんまり感動しない質なのですが、このお話にはホロッときます。 切なくて、ロマンチックなお話です。 悪人とは法を犯した者のことをいうのだとすれば、この小説において誰が悪人であるかは明白です。 また、悪人とは人の心を弄び、人の頭を踏みつけることを何とも思わない者のことをいうのだとすれば、この小説において誰が悪人であるかは明白です。 両者は必ずしも重なりあうことがないというのは、誰しも心得ているはずです。 法で裁くことが出来ない悪を目の当たりにして、多少なりとも無力感と悲しみを感じるのですが 一方でそのような悪の仕打ちに耐え、何かを信じ守ってひたむきに勁く生き抜く姿も描かれていて、救われるような気持ちになります。 悲しさと美しさが入り交じる、なんとも切ないストーリーです。 小説と映画の一番の違いは、祐一とその母親の関係についてのエピソードの有無でしょう。 映画を先に見るのがオススメです。 小説のほうがプロットがはっきりしているのですが、祐一が母親のために敢えてとりはじめた行動は、若干非リアルな気がします。 罪悪感の何たるかを理解してはじめて思いつく行動だし、理解していても実際なかなか取れる行動ではありません。 相当のオトナです。 衝動的に事件を起こしてしまった祐一と比べると、どこかチグハグな気もします。 そういう意味では、映画のほうが観る側に解釈の余地を残す出来だと思います。 | ||||
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寓話として読める物語。生きるだけでも大変なのに人を救おうとしたらどうなるか。現代日本社会に紛れ込んだ聖者の受難劇。あっさり読めて読後感は重い。 | ||||
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この本が困ってしまうのは 「悪人は誰だ?」と考えさせられるからだ。 犯罪者は誰だ?と聞かれたら答えは単純明快で 殺人を犯した人がいる。 売春をしていた人もいる。 女性に暴行し峠に置き去りにした人も、 老人を恐喝したした人もいる。 自首することを止めた人も犯人隠匿罪という犯罪になるんじゃなかっただろうか。 だけどこの中で一番悪意が無かったのは、一番重い罪の殺人犯だ。 殺してしまった瞬間の狂気は別にして、殺人犯の彼は周囲の人に対して悪意などなかった。 むしろ犯罪に問われない、あるいはバレずにいた他の人たちの方が よほど悪意のある人間だ。 この悪人という本を読んで思い出したのは 三島由紀夫の不道徳教育講座という本の「たくさんの悪徳を持て」という項だ。 99%道徳的、1%不道徳的、これが一番危険な爆発状態である 無難な社会人は70%道徳的、30%不道徳的 中には豪胆な政治家のように1%道徳的、99%不道徳的でも犯罪者どころか 立派に「国民の選良」として通っている人もいる。 といった内容のもの。 この「悪人」に出てくる殺人犯は純粋で優し過ぎて 周りの悪意に耐えられず、殺人を犯すほどの狂気を爆発させてしまったのだな、と思った。 | ||||
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毎日毎日同じことの繰り返しで、ただ流されて生きているより、 それが罪であったり、自分の将来を危うくさせることであったとしても、 生きていることを感じられるなら、その方が有意義な生き方なんじゃないかって… 若い頃に考えていたことを思い出しました。 | ||||
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物語の展開は面白くて一気に読みました。(新聞小説なんで枠の影響もあるんだろうけど間延びしている個所はある) けれど、読後の今はなんだかなあという気分。 主人公って、ほんとは悪人ではないんだよ、と言いたいのだろうけどそれに多くの人が納得できないでしょう? 他の人そう思わせたいならもっと彼の内面を描かないと。 肝心の主人公の描き方が中途半端で感情移入できなかった。 ただの頭の弱い朴訥な特殊な性欲の強い少年が犯した犯罪でした。って感想になってしまう。 生い立ちだけでは納得いかないし、何にも考えてない思考能力の低い人、ならこの小説は」なりたたないし。 それと女子の描き方がイマイチです。あ、男性の書いた小説だなという感じ。男性に都合の良い展開になってるし。 女性同志のかかわり方とか、納得できないなあ、そういう風には思わないよ普通、と思いながら読みました。女性の心理ってもっと複雑ですよ、変な意味で。 殺された佳乃さんの人となりもイマイチ理解できない。 さらには、光代さんん。出会い系で出会って、わけのわからん男とこんな風にいきなり乱れる人ではないよ、ほかの場面で出てくる彼女から跳躍しすぎ都合よすぎ。性行為場面は、渡辺淳一センセイを思い出しました。男性目線です、まあ仕方ないか。でも結構上手に描かれるなと思いました。 映画になるのはよくわかる気がする。 演技派の二人がうまく演じられたと思う。エンターテイメントなんでそれで映画は十分でしょう。 原作では登場人物の心理がもうちょっと理解できるのかと思った...が残念でした。 | ||||
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全編にわたり九州弁が使われ、とてつもない不快感に襲われる。ネットリとシツコイとんこつラーメンのような方言に終始イライラさせられた。さて、小説の内容だが、全体としては非常につまらない。第一章はそこそこで、これからの展開を少しだけ期待させるが、第二章でいきなり尻すぼみ。女性にちょっとキツく当たられただけでカッとなって殺してしまう主人公に同情できるはずもない。そのどうしようもないクズの主人公と出会い系サイトで知り合った女の逃避行物語であるが、軽い主人公に軽い女の軽い出会いに軽い逃避行はどれもが嘘くさかった。簡単に人を殺す主人公を真に優しい男として描いている物語は違和感を感じさせるには充分だ。物語の進行も、語られる人物の視点がコロコロ変わりすぎで落ち着かない。2ページほどで視点が変わったりする。当然ストーリーもほぼ進んでいないので意味のない記述だと感じるハメになる。発売する必要のない小説であった。 | ||||
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やや中だるみ感はありましたが、最後に一気に話がまとまり、読後は色んな思いや余韻が強烈に残りました。色んなメッセージが詰まっていますが、1番感じ取ったのは「『世界中の全員が敵になったとしても私だけは永遠にあなたの味方でいる』という使い古されたこの大切な感情が現代社会において軽んじられている」ということでした。それを色んな登場人物の感情の揺れ等であらゆる角度から巧みに表現をされていたように思います。 その観点から本のタイトル「悪人」とは?祐一は殺人者で世間からみれば悪人だが、「あなたは私が守る」と言った光代から見れば世間が敵=悪人、さらに無根拠に世間を先導するマスコミなんかは極悪人。でも世間的には光代も悪人から善人に代わる。佳男から見れば世間で許されている増尾が第一悪党。じゃあ佳乃は?祐一の母は?警察に通報したばあさんは? 結局人の善悪なんて表裏一体で、悪人だけど善人の人もいるし、善人ぶった悪人もいる。どこかで歯車が狂って極悪人になる可能性は誰にもあり、ある主観で見れば今も全員が誰かの悪人なのでしょう。 そんな善悪の議論をすることよりも、自分の大切な物を命がけで自分の人生を掛けて守る強さを持つこと、悪人にならないことよりも大切なものを守ろうとすることが本当の正義なのではないか。そう感じさせてくれました。(殺人を肯定する訳ではありませんが。) 佳男の「あんた、大切な人はおるね?」の下りは心に刺さりました。 光代が最後につぶやいたセリフは心が震え涙がでました。 | ||||
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単純な私は、読めば読むほど引き込まれました。 記憶力が弱い私は登場人物が増えていくことに戸惑いましたが、それぞれの人物像がうまく描写され、まるで映像を見るように想像できました。 出会い系で出会った女を殺し、出会い系で出会った女と逃げる、こう書いてしまうとそれだけの小説?という感じですが、心理描写もうまく引き込まれました。 例えば、増尾が佳乃を暗闇の峠に置き去りにする場面でも、こういう女っていそう、そしてこういう女にムカつく男もいそう、なんかわかるような…と。 祐一は老夫婦と暮らし、唯一の趣味の車も年寄りの送迎に使い、不器用で真っ直ぐで…。 あまり何も考えていないような印象でしたが、そうではなかった。 ラストでは、悪人を装い愛する人を救おうとするという点で、東野圭吾の「容疑者Xの献身」を思い出しました。 しかし、この小説のラストは悲しすぎました。 その愛する人が、装った「悪人」を真に受けてしまうなんて。 そして確かにあった「愛」を、「舞い上がっていた」だけだと思い込んでしまうなんて。 | ||||
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犯罪ドラマを目指したような作品。この作家では珍しい。心象風景などはよく描かれており、それなりに読ませるが読後感が薄い。「郊外」の人々の心象風景というテーマが自分に置き換えにくかったせいかもしれない。 吉田修一なら「パレード」「日曜日たち」「東京湾景」「パーク・ライフ」とかの方がいいです。最近は多作過ぎて内容が薄くなっているような気がして吉田修一好きとしては心配(この作品は朝日新聞連載小説だけあって気合が入ってますが)。。。 | ||||
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全く予備知識なしに本作を手に採ったのだが、読み応えのある作品だった。実際に起こった事件をモデルにして、小説として再構成したかと思う程のリアリティを持って読む者に迫って来る。作者の出身地が関係しているためか、特に物語の舞台となる長崎・佐賀周辺の地理・風物の描写の木目細やかさはハンパではなく、読んでいて眼前に情景が浮かび上がって来るようである。 また、登場人物達の生い立ちや人生観に関する洞察も深い。主人公やそれに関わる2人の女性だけではなく、殆ど全ての登場人物の造形に工夫が凝らされているのには感心した。男女間の愛憎、家族関係、生きて行く上での孤独感や希望、そして老人相手の詐欺商法まで、まさに現代社会のある縮図を切り取った様な感がある。その意味で、本作は事件(殺人, 逃避行)に纏わる人々の悲哀を描いた物というよりは、そうした社会の縮図を描くために事件の形を借りた物という印象を受けた。 題名の「悪人」から受ける印象とは裏腹に、静謐感に溢れた筆致も特徴的。上述した印象と重なるが、小説というよりは優れたドキュメンタリーを読んでいるかの様な感覚さえ覚えた。その骨格に対する肉付けの重厚味とそれを支える多角的視点の構成の巧みさとが本作の持ち味だと思う。作中の各章に付けられている表現を借りれば、「作者は何を描きたかったのか ?」という問いに充分に応えた力作だと思った。 | ||||
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★5つをつけたいがためだけにレビューを投稿しています。 読み終えてしまった今、とても残念な気持ちです。毎晩これを読むのが 楽しみだったのに、その楽しみがなくなってしまったから。 | ||||
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