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悪人



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【この小説が収録されている参考書籍】
悪人
悪人(上) (朝日文庫)
悪人(下) (朝日文庫)

悪人の評価: 4.01/5点 レビュー 407件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.01pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全407件 141~160 8/21ページ
No.267:
(3pt)

この結末は心中が封じられた現代の悲恋物のニュースタンダードになれるかも?

登場人物の誰にも自己投影しにくい小説です。悪く言うと他人事というか、、、。
でもだからこそ、この小説で大泣きできる人がいるのかもしれません。詳しくはありませんが例えば落語の人情話の悲恋物や歌舞伎の心中物に近い気がします。

あいにく私は泣きませんでしたが、日本の古典的な「泣き」の物語に自己犠牲愛というスパイスを振りかけた、なかなか普遍的に良い小説だと思います。主人公が行った自己犠牲的な愛情表現によるこの結末は、心中が封じられた現代の悲恋物のニュースタンダードになりうるかもしれません。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
402250272X
No.266:
(5pt)

「悪人」とは誰か?

言い方は非常に悪くなりますが、殺害された人が一人とその後の犯人の逃亡劇ですから、ドラマ的な要素は少ないのですね。これが、地域や季節などの状況の描写、例えば、冒頭の事件現場の描写、人や車の往来のない山の峠道の描写の1,600字程度を費やすことで、映像が立ち上がるような感覚をもつことができます。

 人の心情はモノに色濃くでます。それは、お正月のおせちの重箱のなかの真っ赤なエビに、また、洋服を何年も買った覚えがないおばあさんの久しぶりに買ったセールで3,800円のオレンジ色の明るいスカーフに現れます。

 また、被害者の心情と、状況が絶妙だなぁ、と思います。若い女性の同年代の仲の良い女性に対する相手への考え方、本人はそれほど派手ではないが、生活の状況を飾り立てるような自分の見せ方、地方都市の若さを閉じ込めるような息苦しさが伝わってきます。

 少し本文の引用を。被害者の父親が、事件現場に被害者を導いた男に接触する場面での言葉

 「今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎったい。大切な人がおらん人間は、何でもできると思い込む。自分には失うもんがなかっち、それで自分が強うなった気になっとる。失うものもなければ、欲しいものもない。だけんやろ、自分を余裕のある人間っち思い込んで、失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を、馬鹿にした目で眺めとる。そうじゃなかとよ。本当はそれじゃ駄目とよ」

 これがでてきたときに、すべてがハラハラと解けるように判った気がするんですね。つまり、人を3つに分類すると、誠実に生き大切なものを持つ人間と、誠実に生きているがまだ大切なものを持ったことがない人間と、大切なものを持たない人間。

 事件は、大切なものをまだ持たない人間が起こしたもので、周りの大切なものを持った人間は、大切なものを持たない人間の持たないが故の言動に心を痛め、大切なものをまだ持たない人間が大切なものを見つける過程である、と集約できるのではないかということです。

 そうすると、大切なものがない人間の言動が、それが本人が誠実に生きていたとしても、例えば、テレビのコメンテータの全く当事者たり得ないが故の言葉、ネットでの無名性に守られた中傷のような言葉、近所や周りの人間の当事者でありえるにもかかわらずただの迷惑であるとするような言葉や視線に「悪人」が宿るのではないか、と思えてきます。つまり、加害者や、軽薄であるため嫌悪感を感じる人間から、相対する人間に「悪人」を反転させている感覚をもたせる、その感覚に心を痛めるわけです。

 ただし、実際には、もうすでに「悪人」たり得る、もしくは、既に「悪人」であるのにもかかわらず、そのときには、心を痛めない現実を認識することができるのです。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
402250272X
No.265:
(4pt)

甘くて苦い

女性2人のキャラクターに、救われていると思います。
佳乃は、裕福で誰もが羨む圭吾と交際していると同僚たちに話しますが、実際につきあっているのは、出会い系サイトで知りあった無骨で面白くない土木作業員の祐一です。同僚たちに見栄を張り、ついてしまった嘘をとりつくろうために、嘘を重ねていきますが、なぜか憎めません。
私は映画は見ていないのですが、満島ひかりさんが佳乃を演じています。そういえば、NHKの連続テレビ小説「おひさま」で彼女が演じている筒井育子と、イメージが少しダブるような気もします。

光代は紳士服量販店の店員で、お客の男たちの中に未来の夫がいるのかもしれないと思ったこともありましたが、「いくら裾上げしながら見上げたところで、そこに未来の夫の顔などなかった」
彼女は、やはり出会い系サイトで祐一と知りあい、3カ月ぶりにメールを送ります。そのときには、祐一は殺人を犯してしまっていたのですが。
躊躇しつつも、本気で誰かと出会うほかない、そうしなければ空漠とした孤独がつづくだけ。光代の思いには、現代社会における人間関係の困難さの何ほどかが表わされているのでしょう。
彼と逃げるほかない、その後に何が待っているとしても…光代の一途さが胸を打ちます。

登場人物たちの内面が反響しあい、重畳な影を落としながら終局へと突き進んでいく描写はみごとです。
ただ、題名から哲学的、宗教的なものをあまり期待すると、当てがはずれるかもしれません。
甘くて辛い現世を生きるほかない男女の、せつなく苦い物語です。


悪人(上) (朝日文庫)Amazon書評・レビュー:悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.264:
(5pt)

切なく悲しい逃避行

映画化され、日本アカデミー賞もほぼ独占状態だっただけに、興味を持ち、まずは原作から、と思い、読んでみました。
正直、期待以上の作品でよかったです。

内容は非常に重く、辛い物語なのですが、これだけ人間を描いた小説は無いんじゃないでしょうか?
登場する全ての人物が、窓を開ければすぐそこを歩いていそうな、普通の人ばかりです。
今作では、そんな普通な人間である祐一が、殺人を犯してしまいます。

本の帯にも書かれていましたが、
「誰が悪人か?」
これが大きなテーマになっています。
僕は正直、祐一が一番かわいそうでした。
一見普通に見えていた人たちが、実は内ではこんなことを思っていたんだと、解き明かされていくたび、言い知れぬ恐さを感じました。
世の中こんなに悪人だらけだろうか?と疑問に思うけど、違うとも言い切れないのがまた辛いです。

いずれ捕まってしまうことを覚悟しての光代と祐一の逃避行は、切なすぎて涙が出てきたほどです。
最後の祐一の行動も、考えれば考えるほど切ないです。

読んだ後は、誰が悪人だとしても、登場人物全員が報われることを祈ってしまいました。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
402250272X
No.263:
(5pt)

愛する人のためにできること

映画を見たあと、
祐一という人物をもう少し知りたくて小説を手に取りました。

読んでみて感じたのは、
祐一という人物の、悲しくなるくらいに優しい部分や純粋な部分でした。

「どちらも被害者になれない」
そのつらさを知る祐一は、
自分を捨てたことを泣いてわびる母には金をせびり酷い息子を演じ。
殺人犯である自分を愛してしまった光代には、本当の殺人者になってみせました。

そうして愛する人に憎まれてでも、
愛する人に泣いてしまうほどつらい思いはさせたくないと
祐一は思うのだろうと思いました。

その優しさが、悲しかったです。

ただ・・・そんな祐一も
光代が警察から逃れ灯台に戻ってきたとき
母親に置き去りにされた、幼いころの孤独な心が救わたように思います。
だから、自分とのことを忘れて生きる光代の幸せを心から願えたようにも思います。

祐一は、光代を守れて幸せだったと信じたいです。




ただ映画に登場しない女性が
最後光代に会いたがっている場面で
光代が、祐一の心をいつか知るのかもしれない
淡い可能性を感じたりもしました。

もし光代が、祐一の不器用な優しさに気がついたら・・・
日常に戻った光代は再び祐一を愛し求めるのか?

そこが気になりもしました。

悪人(下) (朝日文庫)Amazon書評・レビュー:悪人(下) (朝日文庫)より
4022645245
No.262:
(4pt)

本当に面白かったけど…

読みながら本当に引き込まれ、読み止めるのが難しかった。
だけど…
どこかで読んだことがある、と思ってしまった。
宮部みゆきの「模倣犯」とか?
読み比べたら全然違うと思うんだけど…。
題名は出てこないんだけど、なんかこう、もどかしい感じ。
本当に面白かったんだけど、それがどうにも引っかかってしまった。

悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
402250272X
No.261:
(4pt)

あまりにも切ない「悪人」となった彼

「悪人」
そのタイトルからどんな残酷な人間像が描かれた作品なんだろうかというのが最初の印象だった。

主人公の「清水祐一」はある一人の女性を殺してしまう。

殺人は決して許されるべきことではない。

その殺人を犯してしまった「清水祐一」は悪人なのか。

「悪人」と「清水祐一」という人物のギャップが切なさを大きくするのかもしれない。

読み終えて何とも言えない哀しい気持ちになった。

だからといてこの作品が悪いものでは決してない。
この作品には読み手の心を捉える大きな力があると思う。
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4022645237
No.260:
(5pt)

殺された佳乃の物語。

祐一(妻夫木聡)と光代(深津絵里)の話はまだちょびっとだけで、殺された佳乃(満島ひかり)の物語を中心に描かれている。
殺した犯人は祐一なのか増尾(岡田将生)なのか。続きが気になる。
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4022645237
No.259:
(1pt)

汚物感の残る小説

映画を見てから原作を読んだ。
映画はつまらなかったがそれ以上につまらない小説。

わざとボタンの掛け違いによる悪意に基づく行動を
書きすぎていて、そんなことありえないだろうと感じた。
出演者のミスばかり書きすぎていて吐き気を催した。

故意に、無理やり悪意のもとを作り出している
だけでどこが面白いのかぜんぜんわからなかった。

悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
402250272X
No.258:
(1pt)

無意味な登場人物たち

会社の方から、借りて読んだ作品。

ヒロインの光代が、物語に関わるまでの時間が、
長すぎる気がします。

上巻を読んでいて、人間造形されていない登場人物たちに
飽きてしまい、とても辛かったです。下巻になって、少々
緩和されましたが・・・。

もう少し登場人物の配置を絞った方が、良かった気がします。
映画で賞を取った作品なので、期待して読みだしましたが、
外しました。

「万人は、罪人なり」というテーマは、良いだけに、
もったいないです。

悪人(上) (朝日文庫)Amazon書評・レビュー:悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.257:
(4pt)

悪人とは

福岡・佐賀県境にある三瀬峠で若い女性の絞殺死体が発見される。被害者は福岡の保険外交員で、犯人は長崎の土木作業員である。二人は出会い系サイトで知り合った。

こう書くと週刊新潮の名物読物「黒い報告書」(その時々に実際にあった痴情事件を基にしたフィクション)からピックアップしたものを長編化したと思われがちだが、底は浅くない。

死体という表層面的な事実の背景に、犯人・被害者の裡を事件に関わった者が多層面的に捉える。

この構成が巧い。ミステリー度は弱いが、その分ノンフィクションを読んでいる錯覚を持ってしまう。

犯人は本来的な意味での悪人だったのか? この謎を問うのであるが、神のみぞ知るだ。
悪人(上) (朝日文庫)Amazon書評・レビュー:悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.256:
(5pt)

心優しすぎた悪人

私にとって、容疑者Xの献身(東野圭吾著)以来の感動する小説でした。
登場人物の多くが社会的弱者で、みな戸惑いながらも必死に人生を生きている様子がひしひしと伝わってきました。
主人公の清水佑一の、育てられた環境の複雑さゆえの心の弱さと、おそらく生まれつき持っている、自己犠牲を払ってでも他者を思いやる優しさが、この作者の巧みな描写によって、みごとなまでに切なく心に染み入ってきました。とくにラスト2行を読み、涙がとまらくなってしまい、また読み返し、佑一の愛のかたちの哀しさに深く胸を打たれました。
また、どうしようもない馬鹿娘の佳乃を思う父の愛情、佑一の祖母の愛情、イケメンボンクラ息子の増尾の軽薄で自己中な態度など、どの登場人物もあざやかに描かれていると思いました。
重たい話ではありますが、非常に人物描写が豊かな深い小説だと思います。
悪人(下) (朝日文庫)Amazon書評・レビュー:悪人(下) (朝日文庫)より
4022645245
No.255:
(3pt)

リアル博多っ子、祐一同世代の意見

少ししか読んでませんが、いちいち違和感があるんですよね。今時のこんなこてこてな博多弁つかう子いるみたいな。それから湯布院から西南大に通学するため福岡市にでて来て、博多駅にマンション?西新、唐人町あたりでいいんじゃいとか。福岡でアウディA6に乗ってる西南大生いるかな〜、いないでしょみたいな。

これから読み進めることができたら、また改めてレビューしようと思います。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
402250272X
No.254:
(3pt)

タイトルから伝えたかったことは何であろう?

タイトルから、作者が言いたかったことは何なのであろうか?
いろいろな形の悪人があるということだろうか?
すべての人が悪人であるというのであろうか?
悪人と呼ばれる人にも正義や歴史があるということであろうか?
期待が大きかった分、下巻を読み終えた今、何も感じなかったことに
残念に思っている。
映画はもっとおもしろいのであろうか?期待したい。
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4022645237
No.253:
(5pt)

2回買いました。

1回目は古本屋で見つけて悩んだあげく購入しました。読んでみて買ってよかったと思いました。古本屋で悩んでたのがばかみたいに。
そして読み終わったら他の単行本やまんがと一緒に古本屋に売りました。
で、やっぱりまた何時でも読めるように、綺麗な状態のを手元に持って置きたくてamazonさんで購入しました。
もう手放さないと思います。
今迄読んだ小説の中で私はいちばん好きです。

読んでると深津絵里さんの声が聞こえます。

吉田修一さんのこれだけの発想力は素晴らしいです。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
402250272X
No.252:
(5pt)

作家として大化けした記念碑的作品

吉田修一の作品は、デビュー作から数冊読んだが、軽いという印象が拭えず、読後もあまり印象に残らない作家だったので、ずっと読んでいなかった。映画化にあたり、深津絵里が出ているということで彼女ファンである僕は映画を見ようと思い、念のためにその前にこの作品を読んでみた。
平坦なキャラクター設定や描写が彼の持ち味であるが、一歩間違うと印象の薄い作品になる。しかし、この作品ではそれらの表現方法が、かえって作品に凄みを持たせている。

地方都市の典型的な現象、若い人が少ない、仕事はない、金もなければ、遊ぶ場所もないという地方のやるせなさと、そこに住まう人達の生活や思いを見事に描いている。

自分を信じ、他人を守る強さが現代において如何に複雑で困難なことかを考えさせる作品である。

悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
402250272X
No.251:
(1pt)

殺した人が悪人なら人殺しも問題ない?

大変不愉快だったとしか言いようがない・・・。
違和感も残りました。

主人公が実はそこまで悪くないと説明しつつ、
殺された女性が”淫ら”であったことから、
こんなくだらない女(被害者)のために主人公が罰せられるのが可哀そうだとでも
いいたげに、ストーリが進んでゆく・・・。
大きな疑問点はなぜヒロインはこの主人公に
人生までをもかけるようなまねをしたのか・・・。
愛してるから?
しかし、どう読んでも、主人公のセックステクニックがよかったから
惚れましたっという説明しかない・・・。

主人公の頭もイカれている。
出会いサイトで交流を得て、あった瞬間に”はい、セックス!”という女性に対して、
いきなりドタキャンされて怒り狂うとか・・・。
そんな女にいったいどんなモラルを求めていたのか。

ヒロインと主人公の逃亡生活がはたして”美しかった”のか・・・。
主人公がヒロインの首を絞めて、ヒロインを”かばった”・・・?はい?
そもそもかばいたいのなら、本当に守りたいのなら、
最初っから突き放せばよかった。それができなくて、最後の最後でしたから感動的なのか?
そして、ヒロインが”あの人は悪人だった”と思い込もうとしているとこが
健気で悲しいと大半の読者は思うのだろうか・・・。
読み終えた後の感想は”結局なにを伝えたかったのかがわからない”でした。
そこまでの流れが面白かったわけでもないですし・・・。

この作品の最低な点は

'@”殺害された側”の醜さを伝えることによって、主人公を哀れに思わせること。
'Aほかに”悪人”を出すことによって、まるで主人公の罪が軽くなるべきだと
読者に思わせること。

殺人は殺人だ。
相手の女性がどんな女性であろう、重たく罰せられるべきである。同情などいらない。
まして、このケースだと、
セックスのために、あっていた女性にキレて、キレ返されて、女性がけがをしてしまい、
”訴えてやる!”と言われたから、はい、殺しちゃいました♪など
ふざけているにもほどがある。
同情される余地なし。
本当に同情されるべき人間ほど、殺人などしない。

ああああ!不愉快!
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
402250272X
No.250:
(3pt)

映画が原作を凌駕した一例

「都市」と「地方」、「富」と「貧」、「もてる」と「もてない」、「既婚」と「未婚」、そういう対立軸のなかで劣位にある男女の主人公は、逃避行の中でつかの間の恋を燃え上がらせる。
いや二人が渇望したのは恋というよりはもっともっと根っこにあるもの、かけがえのない人間として互いに求め、求められるという存在の意味そのものだったかもしれない。
それは、誰もが欲望や嫉妬、憎しみに翻弄されるこの世界の中で、逃避行という例外的な状況においてのみ純粋に成立しえた善悪を超えた特権的な経験であったろう。

祐一が逮捕されたあとの光代が、「昔のまんまです。あの人と出会う前の生活のまんま。」と語っているように、その出来事は光代の表面的な人生を変えてしまうことはなかったが、恋愛というよりもお互いの存在そのものを求め合う根源的な経験は、「生きた証」として二人の中に深く刻みつけられて生き続けるに違いない。

九州の福岡、佐賀、長崎を舞台に、実際の地名を挙げてそれぞれの土地の特色をよく描き出していることが、この作品のリアリティを支えている。
特に佐賀平野のあののっぺりとしたとりとめのなさの描写は、不発の人生を送ってきた光代が住む舞台としてぴったりで(佐賀の人すいません)、効果をあげていたと思う。

映画を見てから原作を読んだのだが、むしろ映画が原作のエッセンスをつかんでよく表現できていることに感心した(原作者も映画の脚本を担当したらしい)。もともと場面転換の手法などが映画的で、映画化に適した小説だったともいえるかもしれない。
主演の深津、妻夫木の二人は言うに及ばず、樹木希林、柄本明の真に迫る名演、久石讓の音楽、李相日の演出と、脚本、俳優、音楽、監督の揃い踏みで、個人的には映画を見さえすれば十分にこの作品を味わうことができると感じた。映画が原作を凌駕しえた一例だと言えるのではなかろうか。
悪人(上) (朝日文庫)Amazon書評・レビュー:悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.249:
(2pt)

自分の読みかたが変なのだろうか

文庫版上下巻を読んだ。
久しぶりに読んだ吉田修一の小説。

映画を見た何人かの人間から、
「何がいいたいのかよく分からない」ということを聞いたので、
「悪人」というタイトルにも引かれ、
小説をまず読むことにしたのだ。
実は諸事情で上巻を読んでから2ヶ月くらい間が空いたため、忘れてしまった部分が多い。

この話、一言で言えば
善人だが、生きることが不器用な若者がひょんなことで殺人を犯し、
その後、生まれて初めて本当の愛を知る。
だが、殺人者である彼は、逃亡後恋人に迷惑をかけないために、
逮捕された後“悪人”を演じて供述する。

もっと煎じ詰めて言えば、間の悪い男の不幸な事件。
てこと?

これって傑作なのですか。
正直そうは思えないのですが。

文章はうまいしすらすらとストーリーが進むので、
ひっかかることなくあっという間に読める。

祐一と光代の愛の経緯はさすがにうまく描いている。

あと、
かなりの場面展開があり、
祐一のことを語るコメント部分とカットバックしながら物語が進んでいく。
これは何なのだろう、映画的手法を使っているということ? 

映画、小説ともに“何が悪人か”ということをうたっていたので、
そのことを思いつつ読み進めた。
でも肩透かしを食った感じ。
そういう話ではないですよ、これ。
というのが私の感想だ。

最終章は、
人としてくだらない、唾棄すべき存在、軽薄な俗物を誇張して話が進む。
マスコミのこと世間のこと、軽薄な存在として描く増尾のこと、
それにコントラストをつける存在である増尾の友人の鶴田のこと。

上巻のことを忘れてしまったので、
なんで増尾と鶴田が親しい友人なのか理由がさっぱりわからなかった。
増尾の逃亡生活にはかなりの文字数をさいていたと記憶するが、
増尾がどうしてこんなに軽薄な人間なのか掘り下げもなかったのでは。

加害者、被害者。

祐一は加害者(悪人)を演じることで光代を救おうとした。
光代はそのことで被害者となり、
周囲からの悪意にさらされることなく過ごすことができるようになった。

「祐一は悪人、そんな悪人を私は好きになってしまったんですよね」
心とは裏腹の光代の最後の言葉。

そこで物語が終わる。こんな終わり方でよかったのか。

そんないい作品なのだろうか?
世界観的にも魅力、心を動かされる点はなかった。
文章はこなれているが、内容については?の大いに疑問のある作品だ。

世間的な評価と自分の評価にあまりに隔たりがあるので
私の読み方にもしかしたら足りないところがあるのかもしれない。
李相日と共作のシナリオも読んで、そちらにも感想を書きたい。
悪人(上) (朝日文庫)Amazon書評・レビュー:悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.248:
(2pt)

期待し過ぎた!?

とても読みやすくて1日半で読み終えた。が・・・特に心に残るような作品では無かった。
重みを持たす意味でも『パレード』のように個々の人間性をしっかり書いて欲しかった。
登場人物一人一人のストーリーが薄っぺらく、だれにも感情移入できずのまま読み終わった。
しいて言うなら主人公の祖母があまりにも不幸で心が痛んだ。
しかし何故映画化されたのかが不思議。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
402250272X

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