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悪人
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悪人の評価:
| 書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.01pt | ||||||||
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全407件 161~180 9/21ページ
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| 良かった。映画で理解し切れなかった全てが読み解けた。 小説の方が素晴らしいと思える部分と、映画の方が凄いと思える部分が、それぞれあって、どちらも完全ではなく、両方を経験するのがベストだと思える、不思議な作品だった。 映画のラスト近くになって、追いつめられた祐一が光代の首を絞めるところが、どっちの意味か、はっきりと分からなかったので、すぐに小説を買って読んだ。 「やっぱり」というか何と言うか、私が、そうであって欲しいと思っていた方の理由だった。いや、そうとは書いてはいなかったけれど、私は、はっきりとした確信を持ってそう読みとった。 光代を大切に思うからこそ、彼女を「殺人犯と逃走したバカな女」ではなく、「完全な被害者」として、自分のいない現実社会に返してやったのだ。 あの瞬間、狂おしく愛した女のために自分ができる最後のことを、力の限り、してやったのだ。 光代の最後のモノローグからは、祐一の偽りの証言に揺れる彼女しか見えず、「そうじゃないんだ!なぜわからないんだ!」と叫びたくなるような歯がゆさしか感じられない。後味が悪くてどうにもいけない。 性善説を信じる甘ちゃんの私は、映画のラストシーンの方を強く支持する。 祐一が実母にお金をせびるエピソードは、ラストに繋がる重要な伏線となっているんだけど、ちょっと出来過ぎの感があって、あまり好きではない。そんなに気の利く男なら、こんなことにはなってないよ。 祐一が風俗嬢に手作りの弁当を差し入れる場面では、不覚にも泣いてしまった。 風俗嬢の戯れ言を真に受けて、2人で住むためのアパートを借りる、という、わけの分からない痛さと唐突さが、友人が語るところの「起承転結の間がなくて起と結だけいきなりある」という祐一の全てを物語っていると思う。 この風俗嬢との一件が、祐一という人物を語る上で、何よりも重要な鍵だと思う。 祐一は、出会う全ての女に、乱暴なほどに、心も身体も、恐ろしいほどに、全てを全力でぶつけることしかできない、どうしようもなくバカで不器用な男なのだ。 そんな男が、母の罪悪感を軽減するために要りもしない金をせびり続ける、というのは、どうにも矛盾していて受け入れがたい。そんな器用な男であるはずないじゃん。 一方、被害者の佳乃は、父親の姿が切ない。 佳乃は、無惨に殺された上に、不名誉な事実を晒されてしまった。 嫌な思いさせてごめんと言う佳乃と、嫌な思いなんてしとらん、おまえの為ならどんなことも我慢できる、と言う父。 殺されても仕方のないような軽薄なビッチ、という見方に捕われた読者の心を、「あ!そうだようね。大切なひとり娘だよね。被害者だよね。ごめん、ごめん」と引き戻す、良い場面だった。 どのような娘でも、「お前は悪くなんかない」と全力で守ってくれる親がいることを、生きているうちに知れたなら、彼女だって、違う生き方をしただろう。 それまでの自分を悔いるチャンスが与えられていたなら! 心をいろんな方向に揺さぶられて、どうしたら良いのかまだ整理がつかない。そんな作品だった。 | ||||
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| 殺人を犯した犯人と、出会い系サイトで出会った女性が一緒に逃亡生活をするという現実にはあり得ない出来事に至るストーリーである。しかしながら、登場するキャラクターのディテールがしっかりと描かれており、彼らは実際に存在していてもおかしくないリアリティがあるのである。 九州の片田舎の国道沿いの生活。将来になんの明るいものがない生活を送る登場人物達...なんとも言えないリアリティがストーリー全体に流れており、上下巻聞き込まれるように読み終えることが出来ました。 映画、まだ、観ておりません。是非、映画ではどのように描かれているのか?興味!観たいです。 | ||||
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| 結果から言うと「で、何が言いたいの?」。 タイトルの「悪人」が名前負けしているように思えます。 九州の田舎の人々の話ですが、こんなにステレオタイプの「田舎者」っていませんよ。私も九州の出身ですが、ここまでヒドくない。 田舎の人たちは、田舎には田舎の良さっていうのを都会の人よりよく知っているものだと思います(不便なところもあわせて)。 その部分だけでも共感できなかったし、登場人物たちの思いや行動はもっと不可思議でした。 あまりにも短絡的、単純、魅力に欠けている。 娘を殺された父親に誹謗中傷するようなメールや電話をかけてきた人々の話がありましたが、そういう人たちと主人公は違うと著者は言いたかったのかもしれません。しかし、どうちがうのか?「素朴な人VS意地悪な人」くらいの違いしか読み取れませんでした。 何となく呼び込みは派手だったから入ってみたお店のご飯がインスタントの味と変わんなかったっていうようなガッカリ感。 読んだ後、幸せなため息が出るほどの本を最近読んでないなーと痛烈に感じた本でした。 | ||||
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| 悪人とは‥? 作者はその判断を 読み手それぞれの解釈でよいと取れる帰結をしている。 私たちが一つの事件をニュースとして知る時、 それは報道による情報から得た、一面的なイメージでしか 犯罪者を捉えることはできない。 殺人を犯した悪人が、実は心やさしい善人であったとしても、 犯罪に至るまでの過程や犯罪時の心理、 そして生育歴や背景が詳細に伝わらない限り、 殺人犯に情状酌量の余地はない。 作者はそこに焦点を当てたのだと思う。 犯罪者の周囲にいた者を正確に描くことで、 また犯罪者の人間像や背景を丁寧に描くことで、 読み手の中の「悪人」の定義に揺さぶりをかける。 そして“最も悪いヤツ”をあぶり出す。 そして、悪人も、最も悪いヤツも、 周囲にいる多くの善意ある人びとに 支えられているということに気づかされる。 犯罪者を愛した光代、そして見守り続けた祖母の房枝、 被害者の父親や、彼を助けた大学生の鶴田のように まっとうな人びとの良心に‥‥。 かつて推理小説の巨匠松本清張氏を、田宮虎彦氏が解説した時、 「松本清張氏の用いた手法は人間の影の落ちている周囲から描き 中心にあるものを際立させる」と解説した言葉をふと思いだす。 だからこそ映画になり、TVドラマに起用されるのだろう。 清張作品に通ずるこの「悪人」も然り。読み応えのある秀作。 《第34回大佛次郎賞》《第61回毎日出版文化賞》 . | ||||
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| テレビの二時間サスペンスを見る感覚で読める、わかりやすい文体。 悪人と善人、そのボーダーは何だろう。 救おうとして殺してしまって犯罪者になる主人公、 殺意があって殺しかけたのに罪に問われない大学生。 深いテーマを持たせた推理小説だが、不完全燃焼な印象。 もろもろの問題の捉え方が浅く、 登場人物の行動、犯人の殺害の動機や背景など、どうしても納得できなかった。 被害者が殺されてもしかたない的な描き方はどうなんだろう。 花輪和一の『刑務所の中』などを読むと、 殺人での受刑者が、被害者が殺してくれという顔をしていた、というが。 加害者の歪んだ視点で書いたところが、この小説のチャレンジか。 同じ内容で、女性の作家が書いたら、どうなるかなあ。 | ||||
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| 上巻は普通の推理小説として楽しんだ。 下巻はひたすら、祐一のささやかな幸せが一分一秒でも長く続くことだけを祈って息を潜めて読み進めた。 読み終わって、少ししてからズンと来る。 地方の閉塞感。若さの価値と幸せの定義。性欲と孤独。 どうして祐一はこんな風に育ったんだろう。 こんな風に生きられたんだろう。 彼の強さ、彼の弱さ、彼の中で毎日はどんな風に過ぎていったのか。 想像するだけで滅入って来る。 簡単に道をはずせる者の方が幸せなのだ。 狂うほどの日常をただ重ねて老いていくことがどれほど難しいか。 孤独の中で人知れず足掻いていた「悪人」。 その手にかける価値もない人間のためにすべてを失った「悪人」。 その手に残ったただひとつのものを守るためにすべてを捨てた「悪人」。 お見合いシステムが残っていれば、過不足ない夫として平穏無事に一生を送れただろう「悪人」。 出会い系がもはや社会の片隅に堂々と市民権を得て何もかもが自己責任の旗の下に野放し。 醜い幻想と隣り合わせの現代のローカル恋愛市場の暗部を目の前に突きつける佳作だと思う。 | ||||
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| 久しぶりにここまで感動する本にあいました。 本当に身近にいそうな登場人物が登場します。それぞれの登場人物の性格、環境がとっても目に浮んだ。 そして主人公の祐一の優しさ。最後の行為。もう悲しすぎて、可哀相で。お願いだから光代にも彼の気持ちわかって、っと思うほど主人公の祐一に感情移入してしまいました。 こういう人って本当いそう。本当に本当に優しいんだと思う。 映画も是非観てみたいです。 妻夫木聡ってそこまでファンではなかったけど、私が想像していた祐一の暗さ、優しさを演じていそうな感じです。 あ〜、本当に祐一がかわいそう。。。 | ||||
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| 紛争解決機関で働いています。 どちらが「悪い」のか、紛争の関係者どちらも「相手が悪い」と主張する場面に 多々遭遇します。いずれもそれなりの言い分があり、成程と思わされる、 まさにこの小説の場面を素で経験します。 社会常識的に「悪」と見えるようなときも、それなりの事情があって そこに至ってしまった、そんな事情も理解しますし、その人の立場に 立った時に自分が同様に行動しない保障はない、と思います。 ですが、他の方のレビューにもあるように 登場人物が他者の命を奪った結果に変わりはなく。 それを避けるために、この者はできる限りの努力をすべきであったこと だからこそ我が国の刑法は構成要件として故意(または過失)そして 意思能力を要求しています。 正義とは何か、という軸はやっぱり持っておかなければ、と 本書を読み終わって、あらためて思います。 | ||||
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| 映画化しにわかに話題になった本作。 話は非常に面白く、あっと言う間に読み終わってしまった。 しかし名作、大作にはちょっとおよばないなあという感じ。 回想シーンに突然移行してわかりにくかった部分や、 あまり必要ではない登場人物が妙に個性的だったりといったところが少し気になった。 それと登場人物のルポタージュによる構成がちょくちょく出てくる。 これが素晴らしいので、ミステリーの金字塔といえる宮部みゆき氏の「理由」のように このルポだけで構成したら凄い作品になったかもしれない。 | ||||
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| 上下巻通しての感想ですが、終盤のもっと盛り上げて欲しい部分が弱かったせいか、 あの最後の光代の言葉にそこまで揺さぶられる事も無く少し残念でした。 序盤から色々な角度からひとつの事件を語っていくのは面白いと思いますが、 長い割に伏線になっていないものもあり、正直上巻は重たく長く感じました。 光代という重要な役が参入して徐々に面白さも加速したのは良かったです。 ただ加害者側がメインのせいか被害者側に嫌悪感を抱かせるような表現が多く、 そこは少し勘違いを誘ってしまいそうな気がします。 殺された佳乃の父親の、父親として娘を守ろうとする気持ちや言葉が一番温度を感じて、 伝わってくる言葉でした。 殺人に至るまでの理由が薄いので現実的ではないように思います。 ただ昨今のニュースでは「そんな事で?」と思わず耳を疑ってしまうように 感情的に自分勝手に殺人を犯す人間もいますから…そんなところがまた怖いなと感じます。 自分の善悪の判断が本当に正しいのか。 時としてそれは逆転するという事を改めて感じる事が出来ました。 ただもっと掘り下げて欲しかったなというのが本音です。 | ||||
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| 素直に面白かったし、もっと長く読んでいたかった。DVDが出たらぜひ観てみたい。でも登場人物がみんなどこか安っぽい。主人公2人の出会いが出会い系とゆうのもどうかと。それに、殺人者と殺人を許していた女に共感は難しい | ||||
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| 映画化でも話題のこの作品。大きなメリハリがあるわけではありませんが期待どおりに、楽しめます。被害者、被害者の父、加害者、加害者を育てた裕福ではない祖母、そして加害者への劣情?から加害者と逃避行を共にする女性。そのどの人物へも共感できるのは筆者の人間を描く力が優れているからなのではないでしょうか。被害者の女性特有の嫌な感じに嫌悪感を抱くのは自分の中にも少なからずそういう面があるからだろうし、加害者男性と行動をする女性の大胆さの背景に30を超えた女性の喪失感を感じ、共感します。また頼りである孫が罪を犯したという現実に呆然とする祖母の心細さの描写がそつなく上手い!筆者を知らずに読んだのですが共感しまくりなので女性作家かと思ってたので驚きでした。映画の話題性から興味を持ち期待感バリバリで読んだのでまあ、期待通りということで4点。何となく、前情報である程度予測できるストーリ−ながらラストの終わり方にも満足(という言い方は変ですが小説として)です。前情報無しだったら、もっと楽しめたかもしれません。 | ||||
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| 雑誌や本などで「今年のおすすめ」としてよく紹介されていたので読んでみました。 よくできた小説だと思うのだけど 本当の悪人たちがのうのうと生きてて、 一生懸命生きている人たちがいっぱい傷ついている姿を見て、どんどん心が重くなっていきました。 傷ついた人たちが、また自分の足で立ち上がって再スタートする姿もあって、 きっと祐一や光代もそうなってくれるのだろうと思うのだけど… なんだかすっきりしないまま終わってしまいました。 ハッピーエンドで終わってほしかった… | ||||
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| 雑誌や本などで「今年のおすすめ」としてよく紹介されていたので読んでみました。よくできた小説だと思うのだけど本当の悪人たちがのうのうと生きてて、一生懸命生きている人たちがいっぱい傷ついている姿を見て、どんどん心が重くなっていきました。傷ついた人たちが、また自分の足で立ち上がって再スタートする姿もあって、きっと祐一や光代もそうなってくれるのだろうと思うのだけど…なんだかすっきりしないまま終わってしまいました。ハッピーエンドで終わってほしかった… | ||||
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| 私は本作を読む前に映画を観ましたが、映画では柄本明さんの印象が強すぎて、肝心の祐一と光代のストーリーがちゃんと腹に落ちなかったので、復習のつもりで本作を読みました。なぜ祐一は、これほどまでに誰かと出会いたかったのか。なぜ光代の相手が、祐一でなければならなかったのか。本作を読んで、映画では理解できなかった二人の“業”が、彼らを未来のない逃避行へ駆り立てたのだと理解しました。また映画だけでは知り得なかったエピソード(例えば、祐一にとって車がどれほど大切な宝物であるかとか、彼がどんな気持ちで母親に金銭を要求していたか、など)も明らかになり、映画の中で聞いたり見たりした登場人物のセリフや動作の一つ一つが、ようやく命を持って目の前に現れたような気がします。ただ、本作では、序盤から中盤は、様々な登場人物の生い立ちや生き方を描いた群像劇となっており、中盤からようやく祐一と光代の関係を軸とした人間ドラマとなり、最後は口数の少ない祐一本人の長い語りによって淡々と本作が締められるなど、ストーリー展開に多少、ちぐはぐさを感じました。その点、映画は、祐一が殺人を犯してから、光代と出会い、逮捕されるまでを一貫したトーンで描いているので(先に述べたように、柄本明さんの圧倒的な存在感は否めませんが)、美しく一つにまとまった印象を持ちました。結論としては、やはり本をまず読むべきでしょうね。本作で、祐一と光代の“業”をじっくり味わった後なら、灯台から見える刹那的に美しい夕日のワンシーンが、さらに目に染みると思います。 | ||||
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| 悪人とはどういう人を指すのか。法を犯した人は悪人なのか。必ずしもそうとは言えない。しかし、罰は受けねばならない。法を犯していない悪人。咎められずに、のうのうと生きてるそういう人が一番腹正しい。ふと、そんな事を読み終わった後に思いました。なんて書いてみましたが、悪くない本だと思います。 | ||||
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| 読み応えのある小説は「レ・ミゼラブル」以来です。 最後の方で止め処なく自然に溢れ出る涙を拭うことも忘れてしまいました。自分を捨てた母親に対して、金をせびる祐一。 自分を捨てた母親が「負い目」を抱いている事を感じ取って、母親の負い目を軽減させる為に、本当は欲しくもないお金をわざわざ母親にせびるという行為をする祐一の気の使い方。 これで母親は「負い目」よりも、母親に祐一に対する幾ばくかの「嫌悪感」を持たせることによって、「負い目」を忘れさせてあげることができた。 灯台の管理小屋に警察が入ってくる間際に光代の首を絞める祐一。 この場面を見た警察官は「光代はやはり脅されて、連れ回されていたんだ」と信じる。 殺人犯である自分を恐がりもせず「一緒に逃げよう」と言ってくれる光代。祐一にとって心を許しあったかけがえのない人だからこそ、自分が捕まった後のことを考えて、光代に犯人隠避の罪や、他人からの誹謗・中傷・罵倒を受けたりしないようにとの思いから為せる祐一の言動・行動はあまりにもやさしくて、切ない。結果、光代は会社にも戻ることができて、普通の生活を営むことができて、祐一が光代に与えてあげることができなかった「幸せな生活」を得ることができる。 最後の部分で逆説的に光代のことを酷く語っているのは、光代がその話をどこからともなく聞き及ぶだろうことを予想して、「オレのことなんか忘れて幸せになってくれ!」との祐一の叫びだった。 もし最後に至って、まだやさしい言葉をかけたり、抱きしめたりという行動を取っていたなら、光代は祐一を忘れることができず、普通の生活を取り戻すことができない。でもこれらの優しさは祐一が頭で考えてした行動ではなく、本能のまま自然と出てくる優しさなんだろうと思う。 本当は無骨なんかじゃない、無私の愛を与えられる祐一は本当に優しい。 | ||||
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| 2001年の12月、九州を舞台にした物語です。保険外交員の女性が巻き込まれたある事件の周囲にいる人物を、神の視点から語られる物語です。様々な人々の生活と感情をちりばめられています。ある事件の結果や原因、にではなく『心の動き』に焦点を絞った作品だと私は感じました。ニュースで見たなら、さらっと流されてしまいそうなものの背景を想像させる切り口です。そして主人公である祐一という朴訥とした素朴な青年と、巻き込まれてしまう受け入れる光代という2人の情熱に満ちた話しでもあります。この2人に感情移入できるならば、ぐいぐいと引き込まれること間違いなしの作品です。果たして、誰が悪人なのか?という問いかけに興味のある方に、そして昭和という時代が懐かしい方に、オススメ致します。ちょっとだけネタバレあります。祐一はある意味素朴で社会からの接点は少なく、朴訥としていますが、やはり他者を求めています。それも渇望している、と言っていいです。それは最初に関係ある女性との間でもそうですし、被害者である石橋剄佳乃に対してもそうですし、逃避行をすることになる馬込光代に対してもそうなのですが、自分を受け入れてくれる相手であるなら、誰でも良い、というように映り、非常に衝動的で刹那的な人物に感じさせます。また、犯行に及ぶ際に、どうしても殺人を犯すところまで追い詰められている、という風に感じることが出来ませんでした。その手段もまた、衝動的ではない手段(一瞬の誤りではなく、時間がかかる行為であるということです)として写ります。素朴で朴訥としているように描写されているのに、とても衝動的に自身の欲求に対しては大胆になったり、母や最後に光代への「被害者」に仕立てるという考えも、どこかナルシスティックなものの形として(自分を「悪人」とすることで、周囲の人を救っているようで、本当は母や光代をあまり信用していなかったことのように受け取れ、さらに悪意を背負う自分に酔っている印象)感じさせます。とくに逮捕後に急に喋り過ぎているように私には感じられ、そこが特に酔っている印象を受けました。 個人的には最後に逮捕された後に、もしそれでも光代を求め、罪を償って、責任を背負っていくのであればまだ、理解できるように感じたかもしれないのですが・・・。 巻き込まれる光代の方も、かなりよく分からないです。ほぼ初対面の相手なのですが、とても信用してしまっていますし、光代としても誰でも(自分を求めてくれるのであれば)良かったのではないか?という風に写ります。そんな2人が出会ってお互いにお互いを求めたわけですが、どうしても、祐一なり、光代でなければならなかった、という個性と出会いを感じ得なかったです。出合ってすぐに感情的に打ち解ける何かがあるわけではないのに非常に親密な関係になれるのは、ただ単に「寂しい」ので「誰でも良かった」とい風に感じられます。寂しいというコップに水がもう入りきらない状態に常にある、そんな2人であったのではないか?と。実際、最後の最後で語られる光代の自分でさえ未だにワカラナイという感覚の持ち方が、非常に私には都合の良い振る舞いに見えました。逃避行中はあれだけ自分で付き添った、と言っておきながら(実際そうなのですが)、振り返るとワカラナイというのは、何も考えず責任も取らない、そのうえ判断さえ保留にしてしまう、衝動性が日常的に繰り返されている性格のようで、読後非常に恐ろしいホラーのように感じました。光代の怖さを感じさせるホラー小説、としてはかなり面白いと思いました。 | ||||
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| 最後の光代の独白。これが、この作品のすべてという気がしました。何なのかなと思いながら読んでいたのですが、この落としどころはすごいなあと思います。ぜひ、味わっていただきたいです。 | ||||
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| とても上手な作家だ。誰にでもある孤独、ふと起きてしまうありふれた殺人、事件に巻き込まれた人達の生活感も心理描写もきちんと描かれていて、どんどん読めてしまう。特に久留米という町の疲弊を「松田聖子」全盛時代と比較し、時代の流れを、地方の衰退を描いた出だしのあたりは十分読ませる。いや、本当に巧みな作品なのだ。だが、この本がミステリーでないと分かっても、恋愛小説だとしても、やはり何処かで不意打ちの感動の・・・じわっとしたものが欲しかった。多分、私は吉田修一の描く登場人物が苦手なのかもしれない。あまりにも流されて生きる登場人物ばかりで、カタルシスがない。殺人者と一緒に逃げる女よりも、颯爽とした女が好きなのだ。男に媚びて殺される女より、男を振り回す女を読みたかったのかもしれない。あと、やはり何人かの方が書いているように、どこかで、この手の小説に飽きているのかも? どうしても既視感が・・・・・。 | ||||
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