ミステリと綺想の女王が紡ぎだす、禁忌と官能に満ちた世界 愛する男を慕って、女の黒髪が蠢きだす「文月の使者」、挿絵画家と若い人妻の戯れを濃密に映し出す「青火童女」、蛇屋に里子に出された少女の記憶を描く表題作他、密やかに紡がれる8編。

「庭は、寝がえりをうって、背をむけた。…庭にまで馬鹿にされるのは、いい気分ではない」(「風」)。

17歳のおちかは、ある事件を境に、ぴたりと他人に心を閉ざした。

怖いものとは何だろう。本当に怖いものを知るため、とある屋敷を訪れた男は、通された座敷で思案する。

普段から死人のように青ざれた顔をした、その歴史ある街は、その日、死装束のような濃い霧に包まれていた―表題作の「閉じ箱」をはじめ、プロ作家としてデビュー後、初の短編である「陥穽」、不思議な少年の世界を描いた「けむりは血の色」、代表作の「恐怖」、その他、「実験

19世紀末、大英帝国の首都ロンドン。謎の殺人者「切り裂きジャック」による連続殺人事件が街中を恐怖に陥れていた。

橘佑二は、結婚の挨拶のために婚約者・乙瑠の故郷である九州山中の村を訪れていたが、そこで異様な儀式を目撃してしまう。

全ては「死者の日記」から始まった。これは“怪異”か、或いは“事件”か。

1789年7月14日、民衆がバスティーユ監獄を襲撃。パリで起きた争乱は、瞬く間にフランス全土へ広がった。

湖から屍蝋が上がった―。小さなバーのママと常連客は、そのニュースに激しく動揺する(「水底の祭り」)。

第10回 幽文学賞短篇部門 大賞受賞作品に書き下ろしを加えた連作短篇集 2年前に結婚し、夫と死別した柚子は昼間はコールセンターのシフト制で働くフリーターだ。

小説の女王・皆川博子が百年近くの歳月をかけ耽溺してきた、永遠に残したい本の数々。

第二次大戦下のドイツ。

耳の中に棲む私の最初の友だちは 涙を音符にして、とても親密な演奏をしてくれるのです。

18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室からあるはずのない屍体が発見された。

これは私が、角川ホラー文庫編集部から依頼を受けた連作短編集です。

外務省書記官夫人である佳子は、美しく才能豊かな女流作家としても知られていた。そんな佳子の元へある日長文の手紙が届く。

18世紀英国。

降りしきる薔薇のはなびらで窒息することを夢見て、縊死した劇団員を描いた「薔薇忌」、水を汲んだ桶を覗きこむと、その人のために祈ってくれているなにものかが水に映るという「祷鬼」、現実のセックスでは不感症であるが、眠りの中で濃密な性の悦びを得られるという女を描い

異界と現し世を自在に行き交い、読者を迷宮へ誘う極上の語り。「結ぶ」―問答無用で縫われ、丸められていくからだ。

戦時中のミッションスクール。図書館の本の中にまぎれて、ひっそり置かれた美しいノート。

何でも売っている不思議な市場「夜市」。幼いころ夜市に迷い込んだ祐司は、弟と引き換えに「野球選手の才能」を手に入れた。

真夜中の屋根のぼりは、陽子・リン姉弟のとっておきの秘密の遊びだった。不登校の陽子と誰にでも優しいリン。

一風変わった家がある。戸口が見当たらず、あるのは格子の嵌った窓ばかりで無用の者の侵入を嫌っている。

宇宙基地に連れてこられたミノルとハルコは、奇妙な”電波幽霊”の正体を突き止めるため、基地隊員のキダ、特殊ロボットのプーボとともに広大な宇宙空間へと旅立った。

インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。

私の中に巣喰う狂気が、さまざまな夢を見させる―さらなる広がりと魅力を増した皆川博子の恐怖世界。

人情の深さに触れる100分間。

晩年を迎え、体が動かなくなった父親に複雑な思いを抱く43歳の息子。

お釈迦さまが散歩の途中、極楽の蓮池の下をのぞき込むと、カンダタという男が血の池でもがいているのが見えた。

「才能」の限界を知る100分間。

私はね、心に一つ秘密がある──。伯爵夫人手術時に起きた“事件”を描く『外科室』。

人口わずか千三百、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。

現世から冥界へ下っていく道を、古事記では“黄泉比良坂”と呼ぶ―。なだらかな坂を行く私に、登山姿の青年が声をかけてきた。

夭逝した明治の日本画家・河野珠枝の「朱鷺飛来図」。

二十年ぶりに、故郷である高知の矢狗村を訪れた比奈子は、幼馴染みの莎代が十八年前に事故死していたことを知った。

母と二人で大切にしてきた幼い妹が、ある日突然、大人びた言動を取り始める。

事故で亡くなった愛妻の肝細胞を密かに培養する生化学者・利明。

陰惨な歴史が残る四国山中の集落・尾峨に赴任した中学教師・金沢には、競技中の事故で陸上を諦めた疵があった。

帰宅途中、浮浪者ふうの男に襲われた葉子は、無我夢中で抵抗した結果、男を死に至らしめてしまう。

猛毒の栞をめぐる、幾重もの嘘。 高校で図書委員を務める堀川次郎と松倉詩門。

黄昏の東京――。鞠谷雛子は、周防馨は、電柱の陰の、交差点の向こうの、ふとした廃墟の様相に“死者"を見る。

「知り合いから妙なケモノをもらってね」篭の中で何かが身じろぎする気配がした。

―この物音は、何か可怪(おか)しい。 何かが畳を擦る音、いるはずのない赤ん坊の泣き声。

勤め先の小学校で、ヒロインは「あそぼ」とささやく子供の幻に出会う。そんな折、校内プールに女性の死体が…。

まるで吸い寄せられるように二人の男が訪れた廃車置場。そこにうち捨てられた冷蔵庫の中にいたのは、死にかけた裸の幼女だった。

八月は、血の匂いがするーー。愛媛県伊予市に生まれた越智エリカは、この街から出ていきたいと強く願っていた。

自身の身代わりとなった親友・セリヌンティウスを救うため、3日で故郷と首都を往復しなければならないメロス。

寛政の改革による春画・春本の取締りを経て、歌麿の没後、豊国を筆頭とする歌川派は依然隆盛を極めていたが、お咎めを恐れて枕絵にだけは手を出せずにいた。

出先でばったり会ったのは、もうずっと会っていない幼なじみののんちゃんだった。

1934年、ドイツ。

時は16世紀。スコットランドに生まれたアランは、17歳で戦士集団に加わり、アイルランドに渡る。

結合双生児として生まれたゲオルクとユリアンの波瀾に満ちた数奇な人生。

作家M・Mが常連の喫茶店の密やかな性戯を描いた「影を買う店」他、皆川博子、最大の「偏愛幻想/奇想」小説集、ついに刊行!