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湖の男
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湖の男の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.30pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全27件 21~27 2/2ページ
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暗く陰鬱でありながら非常に味わいある文章でこのシリーズは読み終わるたび深い余韻に浸らせてくれます。とはいえ次作までの待ち時間を考えると寂しいんですけどね。 今回も素晴らしかったです。ミステリー自体としては直球というか犯人はだいたい予想はつきますし。 小説は事件の核となる冷戦時代と現在を交互に描くことで進んでいきます。 どちらの時代にも悲恋が出てきます。 行方不明になった恋人を忘れられずにいる女性の切なさについ思いを馳せてしまいます。若い頃から苦労が多かったことが伺える彼女の人生でその恋は掴みかけた唯一の幸せだったのではないでしょうか。 失踪した際に残されていた車についての話が出てきます。彼女は車は売ってしまったと答えます。理由はお金のためです。いつもお金が足りなかったから。切ない理由だと思いました。恋人の写真も持っていない彼女にとって車は恋人との幸せを形として残しておける象徴だったはずです。車を購入した時の彼女はとても幸せだったでしょう。これからの生活、将来への期待。それらの幸せが突然消えてしまう。 ほんの短いシーンですが胸にぐっと詰まるやりとりでした。 次の作品はいつごろ出るんでしょう?どんな作品なのか。楽しみにしています。 | ||||
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このシリーズ、やたらとタイトルが意味深だが、実はメインとはあまり関係ない、というのばかり。原題がそうなのか、日本語訳題がそうなのか。倒叙ものみたいで、早々と犯人は分かるし。今回は冷戦下のアイスランドを描きたくて、犯人捜しがメインじゃないんだろうが。訳者の解説によれば、まだまだ訳されていないものが10冊前後あるようだが、なんだか、もういいか、という感じ。『声』もそうだったけど、今回のも今ひとつでした。次が出ても読むか、微妙です。 | ||||
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アーナルデュル・インドリダソンの小説を読むのは、『湿地』、『緑衣の女』に続いて3作目(エーレンデュルシリーズとしては4作目であるが)。『湿地』、『緑衣の女』には痛めつけられ、傷つけられる女性が出てきて読むのがつらかったが、その点では『湖の男』にはDVされる女性は出てこないので読みやすいとは言える。だがインドリダソンはなかなか簡単に読ませてくれない作家だ。やはり別な点で胸を締め付けられながら読んだ。 私はこの小説の大きな軸は「時」だと思う。ストーリーは干上がった湖の底で発見された白骨から始まる。壊れたソ連製の盗聴器が体に結びつけられていることから、自殺にしろ、他殺にしろ、三十年くらい前の事件であろうと思われる。日本でなら時効が成立して捜査は始まらずに終わってしまうかもしれない。だが、エーレンデュル捜査官は地道で丹念な捜査を始める。それはアイスランドには時効がないからでもあるが、彼自身が過去の傷を今もずっと抱えているせいでもある。また捜査の過程で三十年前の失踪事件に行きあたるが、失踪者を今もずっと待ち続けている女性がいる。ストーリーはまたある男の六十年代の東ドイツでの回想を語る。 この小説で描かれるのは過去と現在という時であり、日々の生活、家族の生活という時であり、年代であり、時代であり、歴史である。希望や夢や理想や信念が「時」の中で失望や、落胆や挫折や裏切りに変わっていく。「時」に翻弄される人々の姿をインドリダソンは詳細に描く。それを読むのはとてもつらい。だが、読み続けずにはいられない不思議な魅力がある。『湖の男』は推理小説でもあるが、すぐれた歴史小説でもある。読み終わって溜息をつくのが必至、その溜息が犯人が分かった満足から出るものか、あるいは「時」の残酷さに戦慄して出るものか、それは読者次第である。 | ||||
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お話の中に登場する東ドイツの相互密告システムにより人々が周りの人間に対し疑心暗鬼に陥るなど気持ち良く読めるお話しではなかった。 謎解き自体は以外にあっさりしていたなという印象です。 それよりも主人公の元に新たな親族が現れるなど、彼の子供や恋人などの人間関係がこの先どうなるのだろうということのほうが気になってしまいました。 | ||||
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「湿地」には及ばなかったが、まあまあ面白かった。 トーマスが拳銃で自殺する場面ですが、父親からもらった時には数個あった銃弾が一つしか残っていなかったのはなぜですか?。彼がそれまでに拳銃を使ったことを意味しているのかな、P273にも拳銃に触れた箇所があるんですが、何か意味があるのでしょうか? | ||||
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かつて存在していたソ連による圧力下で東ドイツを始め東ヨーロッパでは多くの悲劇を繰り返した。その影響は西側にも当然及びアイスランドという小国も例外ではなかった。本シリーズでは共産主義をあたかも不磨の大典のごとく信じアイスランドから東ドイツ・ライプチッヒ大に留学した元学生の独白を挟み,偶然干上がった湖で発見された遺体の男の身元をエーレンデュルのチームは追う物語と並行して進む。その過程で遺体の男が何者か明らかになると共に元留学生の話とリンクする。元留学生はハンガリーから留学した女性と恋仲になるも悲しい運命を辿るのである。そして遺体の男もしかりである。このように本作は警察小説の形を借りて冷戦時代の矛盾国民の苦悩を描いている。最近北欧の作家によるミステリーが多く翻訳されているのもこのような題材を使うからだと思う。 | ||||
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アイスランドについては世界史でも地理でもほとんど習うことがない。地図で北極圏に近い小さな島国だとわかる程度である。 しかし、冷戦時代、この国には米軍基地が置かれ、アメリカの対ソ戦略上重要な場所であった。核廃絶に向けたレーガン・ゴルバチョフ会談がレイキャビクで行われたことを覚えている人もいるだろう。 小説は冒頭の干上がった湖の底で発遣された白骨から一挙に冷戦時代に遡り、アイスランドから旧東ドイツへの留学生グループの物語が並行して語られ、それが白骨をめぐる捜査と巧みに絡められて展開される。 翻訳もよく、小説それ自体で楽しめるが、できれば冷戦時代の東欧史をざっとでも概観した方が、小説を深く理解できると思う。 1950年代のハンガリー、60年代のチェコ、そして70年代のポーランドと続いた東欧社会主義国の民主化運動と弾圧の歴史なしに、あのベルリンの壁崩壊はなかった。 ただ、東欧民主化運動の求めたものは「人間の顔をした社会主義」だったが、冷戦崩壊後はソ連型の官僚社会主義への反動から一挙に資本主義化したのは歴史の皮肉というほかない。 | ||||
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