罪責の神々 リンカーン弁護士



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初公開日(参考)2017年10月
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長編小説

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罪責の神々 リンカーン弁護士(上) (講談社文庫)

2017年10月14日 罪責の神々 リンカーン弁護士(上) (講談社文庫)

依頼人アンドレ・ラコッセは殺害容疑で逮捕されていた。女性を絞殺し、証拠隠滅をはかって火を放ったのだという。かつての依頼人デイトンが名前を変え、ロスに戻り、娼婦に復帰し、殺されていたとは意外だった。ハラーは、ラコッセの弁護を引き受けることにした。事件を独自に調査した結果、ラコッセは本人の言うように無実であり、何者かにはめられたのだとハラーは確信する。 悪徳捜査官マルコは違法な捜査方法で、実績をあげることを平気でやってのける人間だった。 終身刑判決無効の申し立てをおこなわせ、デイトンを証人として召喚しようという動きを知ったマルコが先手を打って、デイトンの口封じをさせたのだった。 当局側の人間として事前に情報を知る有利な立場から、マルコとはハラーの先回りをして、証拠や証人潰しをつづけていく……。(「BOOK」データベースより)




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罪責の神々 リンカーン弁護士の総合評価:8.89/10点レビュー 18件。Bランク


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No.3:
(9pt)

もやもやしつつもカタルシス

リンカーン弁護士シリーズも5作目を数えるようになった。前作『証言拒否』では民事訴訟を扱い、最後は地方検事長選に出馬するとの決意表明をして物語は閉じられた。
本書はその選挙の1年後に当たる。結局ハラーは選挙には破れ、再び刑事裁判を扱うようになった。いわば振出しに戻ったような形だ。

今回ハラーが扱う事件はアンドレ・ラコースというデジタルポン引きの殺人容疑の弁護で、奇妙なことに彼は殺害された娼婦当人からハラーが優秀な弁護士だと勧められたという。そしてその娼婦の名はジゼル・デリンジャー。ハラーは全く心当たりがなかったが調べていくうちにかつての依頼人グローリー・デイズことグロリア・デイトンであることが判明する。

私はこの名前をかすかに覚えていた。第1作『リンカーン弁護士』の中で麻薬所持で起訴されそうになっていたのをハラーによって助けられた売春婦でトラブルメイカー的な存在として書かれていた。そしてその後ハワイに送ってそこで過去と断ち切った生活を送っていると思われていた女性。しかし彼女は名を変え、アメリカ本土に戻り、また売春婦の仕事をしていた。

それがきっかけでハラーはラコースの弁護を引き受けることになる。そして調査を進めていくうちにこのラコースが無実であり、嵌められたことが明らかになってくる。グロリアが麻薬取締捜査官ジェイムズ・マルコのタレコミ屋、そして手先として飼われていたことが明らかになる。そしてグロリアによって身に覚えのない火器を自分の物だと証拠づけられ、終身刑で服役することになった麻薬王ヘクター・モイアの存在も浮かび上がりつつも、事件はこのマルコによって仕組まれた罠だったことが判明する。
つまり法の番人である麻薬取締局が今度の相手という巨大な相手をハラーはしなければならなくなる。

コナリーの作品の特徴の大きな1つとして過去の作品の因果が新たな事件に大きな要因として作用してくることが挙げられるが、今回もまたその例に漏れない。

上に書いたようにグロリアの初登場シーンは麻薬所持で起訴をされそうになったところをハラーに助けを求めるシーンだ。つまりグロリアは既に麻薬取締局の手先になっていたことが仄めかされている。
この何気ないエピソードの1つでこのような壮大な物語を描くコナリーの着想にまたもや唸らされた。

そればかりでなく、今回は原点回帰であるかのように第1作の登場人物がやたらと出てくる。

まずハラーの元調査官で事件の調査中に殺害されたラウル・レヴンの名。その名を想起させたのはその事件を当時捜査していたグレンデール市警殺人課の刑事リー・ランクフォードが再登場する。彼は刑事を辞め、検察側の調査官となっており、ラコース事件を担当する検察官ウィリアム・フォーサイスの調査官となり、ハラーの前に立ち塞がる障壁という重要人物になっている。

また運転手も2作目で雇われた元サーファー、パトリック・ヘンスンではなく、1作目に登場したアール・ブリッグスだ。彼は今回運転手以上の働きを見せ、ハラーのミーティングにも参加するようになる。

そしてハラーが1作目に使っていた保釈保証人フェルナンド・バレンズエラも登場する。

なぜこれほど1作目の登場人物が登場するのか?
それはハラーが前作の最終で立候補した地方検事長選に敗れたことに起因する。一旦は弁護士から検事の側へ移ることを決意しながらも叶わなかったハラーは民事弁護士ではなく再び刑事弁護士として再出発する。そしてこの地方検事長選の敗北で被った被害がハラー自身に留まることではなかったことも明かされる。これについてはまた後で述べよう。

一方でこれまでのシリーズで新たに加わったメンバーも更にキャラクターが濃くなり、シリーズとしての醍醐味も増してきた。

頼れる調査官シスコはもうハラーには無くてはならない存在でその有能ぶりを遺憾なく発揮する。高度な調査能力と腕っぷしを誇る彼はしかし、裏切者を容赦なく制裁する麻薬カルテルのボス、そして自分の利益のためならば無実の人でさえ罪を着せる冷酷な悪徳捜査官を相手にする今回の裁判で妻ローナはこの屈強な夫もラウル・レヴンのような危難に遭うのではないかと心配する。それはラウル殺害事件を捜査したランクフォードの登場が起因しているのだろう。

そしてブロックスことジェニファー・アーロンスンもハラーの片腕として申し分ない一人前の弁護士となっている。ハラーも自分を超えるのもさほど遠くないと云わしめるほど頼りになる存在だ。

そして今回初登場のデイヴィッド・“リーガル”・シーゲルを忘れてはならない。彼はハラーの父親の弁護士事務所の共同経営者で弁護の戦略を立てていた人物であり、またハラーの弁護士としての師匠でもあった。
50年近いキャリアを持つ彼はまさに生きる伝説の弁護士であり、あらゆる手法に精通した人物だ。『スター・ウォーズ』で云うところのヨーダ的存在だ。

またハラーの家族も出てくるが、あまりよろしくない状態となっている。
ボッシュとマデリンの親子がシリーズを経るにつれ、信頼を深めている一方、ハラーとヘイリーの親子関係は悪化の一途を辿っていることが書かれている。ヘイリーは悪人を弁護する父親の職業に嫌気が差し、またそれによって彼女自身も学校の友達から中傷を受けるようになって転校する被害を被るに至り、今まで隔週で水曜日と週末にハラーの家に泊る取り決めも事実上なくなっていた。更に地方検事長選で落選したために、ハラーを支援していた元妻のマギーは文書整理担当という閑職に追いやられ、心機一転ヴェンチュラ郡地区検事局に転職することになり、ますますハラーの住むLAから間遠になってしまう。

ハラーも悪人を刑務所に送り込む刑事のボッシュと悪人―といっても無実の人かもしれない人―を刑務所から釈放する弁護士という職業の自分とを比較し、その差について落胆をする始末だ。

しかしボッシュが刑事という職業に誇りを持ち、悪に制裁を加えることを使命と感じているように、ハラーも無実なのに刑に処されようとしている人を救う職業だと誇りを持って、仕事に臨めばこのような罪悪感に苛まれることはないのだ。

今回の事件でハラーが対峙する麻薬取締局捜査官ジェイムズ・マルコと彼と組む元刑事で検察側の調査員リー・ランクフォードは自分の目的のためならば平気で凶器や麻薬を仕掛け、恰もそれをターゲットの人物が所持していたかのように見せかけて不当逮捕を平気で行う悪徳捜査官だ。このような正義の名の下で自分の利己心を優先して無実の人に刑を与えようとする法の番人がいるからこそ、弁護士もまた必要なのだ。

本書は原点回帰のような作品だと上にも書いたが、それを踏襲するかのように本書ではラウル・レヴンに匹敵する犠牲者がハラーの仲間に出てしまう。

コナリーの作品には以前も書いたが3つの大きな要素がある。

1つは警察やその他捜査機関の連中が決して清廉潔白な人物ではなく、彼らもまた犯罪者になりうると謳っていること。

もう1つは娼婦が関わる事件が多い事。

そして最後の1つは過去の作品の因果が大きく作用していることだ。

正直3つ目の過去の因果については既に述べたのでここでは書かない。

やはり特徴的なのは1つ目と2つ目だ。1つ目はこの要素を作品に持ち込んだことでコナリーはいつも我々に驚きと何とも云えない荒廃感漂う読後感を与え続けていることだ。パターンと云えばパターンだが、これがまた不思議と盲点となり、そして常に苦い気持ちを抱かせてくれる。

もう1つの娼婦についてはボッシュが娼婦の息子であると云う設定から事あるごとに物語に登場する職業だと云っていいだろう。この頻度の高さは正直異常である。
前にも書いたかもしれないが、娼婦という職業を選ばざるを得なかった生活に貧窮した女性たちを描くことと、そんな社会の底辺でも逞しく強かに生きていく彼女たちを描くことでアメリカ社会の現実を知らしめようとしているようにも取れる。特に今回ハラーが裁判の調査の過程で知り合ったケンドール・ロバーツは元高級エスコート嬢から足を洗い、ヨガ教室の先生として生計を立てた女性で、過去を捨てて生きていく彼女の姿勢と美しさに魅かれ、彼は彼女と付き合うようになる。

また一方でケンドールと一緒に働き、今もエスコート嬢をしているトリナ・ラファティとの対比させることで変われる女性と変われなかった女性の有様をまざまざと見せつける。誰もがチャンスに恵まれていることではないことも現実的に突き付ける。

しかしコナリーがハラーをして娼婦のグロリアを「放っておけない女性」とし、また彼の新恋人に元娼婦を選んだのも彼なりにこの職業の女性たちにどこか親近感を抱き、そして亡くなっても歯牙にもかけられることのない彼女たちへエールを送っているのかもしれない。

さてここでちょっと話題を変えて私の心に留まったエピソードを書き留めておきたい。

ハラーによれば自身を主人公にした映画がヒットしたことでリンカーンに乗る弁護士が増えたようだ。従って自分の車がどれか解らなくなり、誤って他の車に乗り込むシーンさえもある。本当ならば実に面白いことだ。

また右脳と左脳との関係で人は自分の左手にいる人の意見に賛成するものらしい。これはちょっと試してみようと思う。

またハラーが日本酒好きになっていたことも明かされる。世界で日本酒が好まれ、現在消費が拡大しているが、まさかハラーまで飲んでいるとは。
いやこれは正確には作者コナリー自身の話ではないか。彼の写真は酒焼けしているかのように顔が赤いからかなりの酒飲みではないかと私は睨んでいるのだが。

さて本書のタイトル「罪責の神々」はハラーの父親が陪審員たちに与えた呼称だ。彼らは自分たちの生活基盤に基づいて罪を決める。従ってその判断基準は多種多様だ。いかにこの神々を説得し、納得させるかが裁判の鍵となるのだと。
それを意識してかハラーは陪審員の中のキーパーソンを意識して裁判を進める。自分の意を組む神を見つけ、そしてあるべき結果に導くようにと。

しかし今までの例に漏れず、今回の裁判も苦い結果に終わる。

しかし裁判も恐ろしいものだ。本来悪を罰するために行われる裁きが、弁護士、検事の口八丁手八丁で歪められていく様、また証拠不十分であれば罰せられない現実から、証拠を捏造して狙った獲物を刑務所に送り込もうとする捜査官も存在する。

またそれを隠匿するために麻薬を無実の人の家に忍ばせ、不当逮捕を企む。更には裁判で敗色が濃厚になると他の服役囚に襲わせ、無効化させようとする。

罪を裁くために行われる裁判が高等なロジックの上に成り立ち、また公平さを重んじるあまり、法律や規則にがんじがらめになって罰せられるべき者が罰せられず、無実の人が罪を着せられ、刑務所に送られるようになる。
手段が目的となっており、悪を征するために正義が悪を成すと云う本末転倒な社会に、システムになり、そしてそんな危険な思想が横行している。それが現代社会なのだ。

世の中全てが正しく解決されることは限らない。寧ろ現実世界はうやむやになって人々の記憶から忘れ去られる事件ばかりだ。
そんな世の中だからこそ我々は答えが出るミステリを読むわけだが、コナリーは実に現実のシビアさを突きつける。まあ、今日はこれくらいで良しとしようといった具合にはカタルシスを与えるかのように。

さてリンカーン弁護士という非常に特徴的なキャラクター設定で登場したミッキー・ハラーを通じてコナリーは時に弁護士側、検事側、刑事裁判に民事裁判と多面的にアメリカの法曹界を描いてきたが、ここに来てようやくシリーズの本流を刑事裁判に絞ることに決めたようだ。
本書の結びにはかつてのように刑事裁判を続けることへのハラーの疑問や悪を裁く側の検事長への立候補するなどと云った意外な展開、悪く云えばハラーの心情のブレがない。最後の決意表明はボッシュ同様に弁護士としての使命感に溢れ、まさに決意表明と云った感がある。

次作はまたボッシュと組んで事件に取り組むようだ。色んな犠牲の上に今の自分があると悟ったハラーの次の活躍が非常に愉しみだ。


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Tetchy
WHOKS60S
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

リーガルに謎解きをプラスした面白さ

リンカーン弁護士シリーズの第5作。法廷シーンの面白さは従来通りで、さらに謎解きミステリーの面白さがプラスされた傑作エンターテイメント作品である。
エスコートガール殺害容疑で逮捕された「デジタルぽん引き」ラコースから弁護を依頼されたハラーは、ラコースにハラーを教えたのが、かつて何度も窮地を救ってやった高級娼婦のグロリアで、しかも殺されたのがグロリアだったことを知り仰天する。依頼を引受けて調査を始めたハラーは、ラコースは罠にはめられただけで無罪だと確信し、真犯人を探し始めるのだが、それに気づいた犯人側から執拗な妨害を受け、命まで狙われることになる・・・。
真相解明までのプロセスは良くできた私立探偵ミステリーのようで、謎解きもアクションも楽しめる。さらに、いつも通りに二転三転する法廷シーンのスリリングさは秀逸。シリーズの中では一番の華やかな作品である。
「訳者あとがき」に「ひょっとするとシリーズ最後の作品か」とあり、同じような感想を持ったのだが、これまでとは違う路線への転換点なのかもしれないと、密かに期待してもいる。
シリーズ作ではあるが、本作だけでも十分に楽しめる作品であり、法廷もの、私立探偵ものファンには自信を持ってオススメしたい。

iisan
927253Y1
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

罪責の神々 リンカーン弁護士の感想

いかにもアメリカのリーガルミステリ。
売春婦がポン引きに殺された?事件でもチームワークで、全力を尽くすことが大事。
チームを引っ張っていくリーダーとしてのハラ―弁護士は頼もしい。

みやはら
TL5WJ5W1
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No.15:
(4pt)

「あなた弁護士のような話し方をするのね」「なぜならわたしは弁護士だからだろう。さて、次の質問だ」

刑事裁判における被告人の弁護をするハラーにとって、被告人が実際に犯罪を犯しているかどうかは全く関心がなく、却って知ることで動きずらくなってしまう。
 ハラーの仕事は陪審員の心に疑念の種を植えつけること。
 陪審員が合理的な疑いを抱けばハラーの勝ちだ。
 そんなハラーが飲酒運転の罪で起訴された被告人を無罪放免で解放されたとたん、再び飲酒運転による死亡事故を起こし、その被害者が娘ヘイリーの友人であったことから、娘との関係が悪化し、娘と会うこともできなくなってしまう。
 本書はこのようなハラーの家庭状態をバックグランドにしていることから、物語の根底には、娘の信頼を取り戻すことができるのか、といった物語としても読めます。
 ハラーは思う。
「この世界が白と黒で色分けされているものではないとヘイリーがいずれは気づくだろうと信じねばならなかった。この世界は灰色であり、その灰色の領域に自分の父親が住んでいるのだということを」

 さて、リンカーン弁護士シリーズにおいていつも思うのは、チームプレイがいかに大切かということ。
 シスコという優秀な調査員の力なくては、間違いなくハラーがここまでの成功を得ることはなかったでしょう。
 運転手アールの機転によりかたくなな人から話を聞き出すことに成功したり、刑事弁護にあこがれるアソシエイト弁護士ジェニファーは、ハラーが誇らしく思えるほど判事の前でうまく主張できるほど成長している。
 チームで集まりブレインストーミングをするなど、今回はチームプレイ場面がいつになく強調されています。

 タイトルの「罪責の神々」とは、弁護人が陪審員につけているあだ名のこと。
 だれが有罪でだれがそうでないかを決める。
 そんな罪責の神々たる陪審を誰もが心の中に持っている。
罪責の神々 リンカーン弁護士(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:罪責の神々 リンカーン弁護士(上) (講談社文庫)より
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No.14:
(5pt)

前半は混乱、それを越えたら後半は痛快

『ミッキー・ハラ―』シリーズ5作目、関連作『ハリー・ボッシュ』シリーズ他含めて通算26作目。
本作は登場人物が多く混乱して大変だった。加えて同一人物なのに姓と名、別名が出たりして。
上巻後半でようやく焦点が絞られてきた。
下巻の後半は怒涛の展開、見事、だからコナリー作品はやめられない。
リーガルサスペンスは理屈臭くてじれったいところがあるが、ラストの巻き返しが痛快だ。
特に本作は最高潮で、シリーズを通しても圧巻だった。
ボッシュ・シリーズのような警察物語と別物のおもしろさがある。
訳者もあとがきで懸念を述べているが『ミッキー・ハラ―』シリーズは本作で終結のようなエンディングだった。今後はわからないが、とりあえずこの後のボッシュ・シリーズでハラ―は登場しているようなので、そこで楽しみたい。
本文ではハラ―の娘との断絶に触れている箇所が少なく詳細がよくわからなかったが、前作と本作の訳者あとがきで理解できた。原文の問題なのか翻訳で省いたのか不明だが。
訳者の古沢氏はなかなか癖が強い。気になるところの一つ目は「けっこう」という言葉。偉そうで日本社会の通常の会話ではまず受け入れられない高飛車で癇に障る言い回しだ。
二つ目は「ほら」。上巻252ページだけで3か所もあるほど。この言葉がなくても会話は成立すると思われるが。
本氏はコナリー作品専属で、確かに優秀だしファンもいるようだが…。
罪責の神々 リンカーン弁護士(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:罪責の神々 リンカーン弁護士(上) (講談社文庫)より
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No.13:
(5pt)

これぞリーガルサスペンスの見本である。

マイクル・コナリーの『罪責の神々』下巻を読み終えた。
 弁護士経験のないコナリーが、ここまで刑事事件案件を専門的に描写することに驚きながら読み進んだ。
 なにか弁護士経験などなくともこんな小説を書けるんだぞ!と、世に問うているよな作品に仕上がっている。
 コナリーは、ロサンゼルス・タイムズ犯罪担当の記者経験もあり、若いころにはレイモンド・チァンドラーの小説を読み、啓発されて小説家になろうと決心したそうである。
 とにかくこの『罪責の神々』を、リーガル・サスペンス好きが読めば、その際立った才能の深淵さに触れることができること間違いない。
 デティールも疎かにしていないことは、著者自身が弁護士経験がないから、多くの司法の専門家にアドバイスを受けたことが、巻末の「謝辞」に挙げた人たちの多さに伺うことができる。
 ハリー・ボッシュ" シリーズも読んでいないものが多く、ミッキー・ハラー" シリーズもこれからできるだけ読んでみようと思いながらマイクル・コナリーの労作『罪責の神々』下巻を読み終えた。
罪責の神々 リンカーン弁護士(下) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:罪責の神々 リンカーン弁護士(下) (講談社文庫)より
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No.12:
(5pt)

久しぶりにマニア好みのリーガルサスペンスを読み終えた。

先日久しぶりに読んだジョン・グリシャム『危険な弁護士』の主人公セバスチャン・ラッドは、マイクル・コナリーが生み出した”リンカーン弁護士”を、ミステリファンなら即座に思い浮かべるだろう、と、『危険な弁護士』の解説で若林踏氏が述べていた。
 が、評者は、マイクル・コナリーのハリー・ボッシュ・ シリーズは何作か読んことはあるが、ミッキー・ハラー・シリーズを読んだ記憶がないのでシリーズ5作目の本書『罪責の神々 リンカーン弁護士』を読むことにした。
 本書の上巻を読み始め最初に思ったのは、「グリシャムさんコナリーさんをパクったな!」ということでした。
 確かに『危険な弁護士』のセバスチャンには、本書『罪責の神々』のミッキーなど問題にならないくらいの過激な状況を設定して描いていたが、リーガルサスペンスとしての出来の良さで評価させてもらうと本書『罪責の神々』のマイクル・コナリーにどうしても軍配を挙げることになるだろう。
 二番煎じは、やはりあくまで二番煎じであるから、先に読んだグリシャムの『危険な弁護士』は、それなりに面白かったのだがなんだかレビューを書き直したくなつてしまった。
 本書のタイトルである「罪責の神」(The Gods of Guilt)というのは、今は、老人ホームにいる元刑事弁護士の81歳になるリーガル・シーゲルが昔を思い出しながらミッキーへ語った言葉である。
 このリーガル老人は、かってミッキーの父親と刑事弁護士として辣腕を振るっていたパートナーだったのである。
 ミッキーの父親が早世したのち、このリーガル・シーゲルが父親代わりになってミッキーを育て、同じ刑事弁護士へと導き、いまなおよき相談相手であり、チームの一員でもある。
 「きみの父親は、陪審員のことをいつも”罪責の神々”と呼んでいた。覚えているかね?」(P40)
 と、語ったことで本書のタイトルが判明した。
 本書『罪責の神々』上巻で久しぶりに玄人好みのリーガルサスペンスを楽しく読み終えました。
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No.11:
(4pt)

もう一度読み直しても良いかと思う内容ではあります。

しまった!だいぶ前に文庫本で読んでいたぜ!間違えてKindle版でも購入しちまった!CDもそうだが小説でもやっちまった!耄碌したか!最近のBoshものよりこっちの方が面白いし…。仕方ない、旅行に行ったときに読み直しでもするか。チャンチャン。
罪責の神々 リンカーン弁護士(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:罪責の神々 リンカーン弁護士(上) (講談社文庫)より
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