燃える部屋



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    初公開日(参考)2018年06月
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    長編小説

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    燃える部屋(上) (講談社文庫)

    2018年06月14日 燃える部屋(上) (講談社文庫)

    2014年、定年延長制度の最後の年をロス市警本部強盗殺人課未解決事件班で迎えようとしているボッシュは、あらたな相棒として、若き新米女性刑事ルシア・ソト(28歳)と組むことになった。ソトはメキシコ系アメリカ人で、四人の武装強盗と対峙して二人を撃ち倒した事件で有名になり(その際、相棒は殉職した)、刑事に昇進し、未解決事件班に配属されたのだった。 意欲と向上心にあふれたソトを優秀な刑事になるとボッシュは見こんで、育てようとする。 今回、ふたりが担当するのは、十年まえに銃撃され、体に残った銃弾による後遺症で亡くなったばかりの元マリアッチ・ギタリスト、オルランド・メルセドの事件。(「BOOK」データベースより)




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    燃える部屋の総合評価:8.42/10点レビュー 19件。Aランク


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    (10pt)

    そして刑事魂は受け継がれていく

    コナリー作品25冊目で作家生活20年目の記念碑的作品『ブラック・ボックス』からミッキー・ハラー物の『罪責の神々』を挟んで、前作から2年経った本書では色々とボッシュの身の回りに変化が訪れていた。

    既に前作のパートナー、デイヴィッド・チューと目の上のたん瘤だった上司クリフ・オトゥールもいなくなり、ボッシュは新人の刑事メキシコ系アメリカ人のルシア・ソトを相棒に迎えている。ボッシュにとっても定年延長制度最後の年であることもあって、残り少ない刑事人生をルシアに自分の経験と知識を十分教え込むことを使命として良きパートナーかつ良き師として彼女に接している。ボッシュのこの対応は一匹狼で単独行動ばかりしては上層部の悩みの種となっていた彼からは隔世の感を感じさせる。

    また変化と云えば前作まで付き合っていたハンナ・ストーンとの関係も既に終わっていた。彼女の息子ショーンはレイプの有罪判決を受け、刑務所に入っていたが、仮釈放審査でボッシュが彼の味方をするのを拒んたことがきっかけでそれで関係がすっぱりと終わったことが知らされる。前作でも彼女の息子の件がボッシュの出張費を私用目的で使ったと疑問を与えたのが母親との仲を嫉妬したショーンからの訴えであったことから彼女との関係は険しいものになると予想されたが、意外にもあっさりと幕を閉じたようだ。

    さて刑事生活最後の年を迎えるのは前作から引き続いて未解決事件班で、10年前に起きた射殺未遂事件の真相を追うというもの。しかし事件は10年前に起きたが、被害者が亡くなったのはつい前日。被害者であるオルランド・メルセドは銃弾を体内に残したまま一命をとりとめ、下半身不随になり、更に体内に残った銃弾の影響で両脚と片手をも失いながら、10年間生き長らえた人物で、世間では英雄視された人物、つまりちょっとした有名人だったのだ。

    彼の死後、ようやく解剖によって彼の背骨に埋まっていた1発の銃弾を手掛かりに事件の再捜査が始まるという実にドラマチックな幕開けを見せるのである。

    しかしコナリーは銃弾がよほど好きなようで人の運命を決定付ける絆を例えるにも使っている。そして本書もその銃弾にて10年前の事件が再度幕を開けるのだから。

    ただ追う事件はそれだけでなく、もう1つある。
    それは1993年に起きたボニー・ブレイ放火事件だ。当時大半の子供を含めた9名の死者を出した放火事件で、なんと被害者の1人がボッシュの新相棒ルシア・ソトだったのだ。彼女はこの事件で亡くなった保母と5名の仲間たちのためにこの未解決事件を解決するために刑事になったとも述べる。

    但しこの事件は他のチームが扱っており、通常ではそれはテリトリー侵害に当たるため、そのチームから横取ることをしないのだが、ボッシュはかつて自分も母親殺しの事件を単独で捜査した過去を思い出し、ルシアの意図を組んで自ら事件の通報者に模してメルセド襲撃事件とボニー・ブレイ放火事件2つの事件に関係があると仄めかせてボッシュ達に捜査を当たらせるように仕向ける心憎い配慮を示す。

    本書のタイトル『燃える部屋』、原題“The Burning Room”はルシアがこのボニー・ブレイ放火事件で生き長ら得ることができた地下の無許可託児所のことを示す。
    火災によって煙が充満していく部屋の中、濡れたエプロンを鼻と口に当てて、しのぎながらも更に進入してくる煙を避けるためにクロゼットに入り、助けを待っていた彼女。クロゼットに入れずに外でひたすら助けを求め叫び続けながら死んでいった保母のエスター・ゴンザレス。

    そしてもう1つの意味は事件の核心に近づいた時、それが思わぬ権力者や社会的重要人物に突き当たった時には慎重に物事を当たらなければならないことを云い表す際にボッシュが火事で燃えている部屋はドアを決して開けてはならないと表現したことによる。

    バックドラフト。内部で燻ぶり続けた炎は部屋の中の空気を全て使い果たし、次の空気を待っている状態だ。迂闊にそのドアを開けようものなら急激に入り込んだ空気によってドアを開けた者は一瞬にして炎に包まれる。
    パンドラの箱は無暗やたらに開けてはならない。慎重に動かないと自分たちが怪我をするという意味だ。

    本書では刑事事件の捜査に各種の検索エンジンが活用されていること、容疑者との尋問はスマートフォンの録音アプリが使われており、グーグルマップで行き先を検索したり、はたまたウェブ新聞の勢いに押され、閑散としたLAタイムズの事務所の様子が描かれていたりとIT化による利害がやたらと目に付くようになっている。そしてウェブ上では自分の意見を自由に発言できるようになったことで注目が増し、多くのシンパを得てムーヴメントが巻き起こしやすくなる一方で、リテラシーを理解しない人間がその発言で世界中から袋叩き状態になる、いわゆる炎上することも多くなってきている。

    つまり本書の『燃える部屋』とは我々ウェブを活用する人々が持っているブログやSNSのアカウントのことを示しているのではないかとまで考えるのは少し穿ち過ぎだろうか。

    そうそう、忘れてはならないのはボッシュシリーズのもう1つの関心事、娘マデリンの成長だ。既に彼女は17歳になり、警察官になるための準備を着々と整えているようで、ハリウッド分署で行われている警察体験班に参加し、更には身体の不自由な老人へのボランティア活動を行って大学進学の申請書に箔を付けるのに勤しむ毎日。しかも警察体験班の連中との付き合いも出来、ボッシュは嬉しい反面、娘に悪い虫がつかないかとハラハラしている状況だ。

    しかし何といっても本書の一番の読みどころはボッシュと相棒の新任刑事ルシア・ソトの師弟関係だ。

    上にも書いたようにボッシュは定年延長制度最後の年でルシアにそれまでの刑事生活で培ってきた自身の捜査技術とノウハウ、そして刑事という生き方とも云うべき心構えを教えるべく良き師となって彼女に付き添う。そこにはもはや一匹狼として単独行動が常であったボッシュの姿はなく、去り行く老兵が手取り足取り若者に戦い方を教え、歩むべき刑事の道へと導く先達の姿があるのみだ。恐らくボッシュはルシアに警察官志望の将来の娘の姿を見出していたのではないだろうか。

    そしてボッシュの教えを頂くルシアもまた自分が将来刑事の道を歩む強い意志を示し、ボッシュの期待に応える。もし自分だったらそうするであろうことを云わずとも行うルシアにボッシュは自分に似た部分を感じる。

    そしてルシアもまたある信念をもって警察官になった女性だった。
    彼女は1993年に起きたボニー・ブレイ共同住宅放火事件の被害者の1人で当時7歳だった。彼女はそこの地下にあった無認可託児所におり、大半の子供を含む9名の人命が亡くなった陰惨な事件で奇跡的に生き残った児童の1人だった。彼女を助けて亡くなった保母のエスター・ゴンザレスとその他5名の友達の無念を晴らすために警官になり、そして未解決事件班でこの事件を独自で捜査しようと決意したのだった。

    そしてボッシュは次第にこのルシアの信念と刑事の資質に感心するようになる。
    誰よりも早く出勤し、そして誰よりも遅く退社する。休日であっても署に出向いて事件について調べる。
    それはボッシュがいまだに行っていることだが、いつもそれを先んじて彼女が行っている。最後の方はボッシュがついていくのがしんどくなってきたと吐露するほどだ。

    更に彼女はラッキー・ルーシーの異名があるように運にも見舞われている。まだ市警に入って5年目にも関わらず、酒屋での武装強盗の事件で、4人を相手にし、彼女のパートナーは撃たれて死亡したものの、彼女は2人を倒し、残り2人をSWATが駆け付けるまで釘付けにしたことで有名になった。その功績を買われ、彼女はいきなり刑事となり、未解決事件班に配属され、ボッシュの相棒となった。

    ボッシュはこのルシアの話を聞いており、彼女が相棒となることを喜んだ。彼は若くして職務遂行中に人を殺し、相棒を喪った彼女の気持ちが同じ境遇を経験した自分には解ると思ったからであり、それを知っているからこそ彼女を上手く育て上げることができるだろうと思ったからだ。

    つまりボッシュは自分を彼女に投影し、そして彼女を自分と同じような刑事、いやもしくは自分を超える刑事に育てようとしているのが文面からひしひしと伝わってくる。そしてそれを理解し、ボッシュの期待に応えようとするルシアの姿もまた健気に映り、なんともこの2人のやり取りが今までにない爽快感をもたらす。
    なかなか相棒に恵まれなかったボッシュが退職間際でようやく自分と同じ価値観を持つ相手を得たことが読んでいるこちらも嬉しく思わされてしまう。

    そしてそんな刑事の運はボッシュにも働く。捜査令状は自分に好意的な当番判事だったことで容易にもらえ、出張先のタルサでは地元警察に協力的で有能な捜査官に恵まれ、帰りのフライトはファーストクラスにアップグレードされるという幸運を得る。

    私はしかしルシア・ソトが幸運の星の下にいるのではないと思う。
    人は努力をすれば報われることを単に証明しているだけなのだと思うのだ。信念をもって何事にも取り組めば自ずと運はついてくることをルシアとボッシュの2人の捜査を通じてコナリーはメッセージとして載せているのではないか。
    それは常に作品に真摯に向き合い、上質なミステリを読者に提供し、楽しませることに心を砕き、ボッシュという刑事を中心にして緻密な作品世界を描いてきたことが現在のベストセラー作家の地位まで自分を押し上げることになったことを作者自身がそれとなく述べているように思える。

    メルセド襲撃事件。ボニー・ブレイ放火事件。この2つの事件は結局結び付きがないまま終わるがどちらもボッシュ×ルシアのコンビで真相に行き着くがその結末はいつものように苦いものだった。

    どれも完全に割り切れない。特にその後の続きを読むに至っては。

    悪はきちんと裁かれなければならないと云う信念をこの男は決して曲げない。それはルシアに告げることで彼は自分の信念を、刑事としての魂を引き継ごうとするかのようだ。

    今回の結末は前途ある有望な刑事ルシア・ソトに事件解決の現実を教えるための物だったように思う。

    ボッシュ2人が辿り着いた事件の結末についてルシアは複雑な思いを描く。彼女は自分を含め友人と保母を悲惨な目に遭わせた放火犯を何年経っても自分の手で探し出し、そして罪を償わさせること。それが彼女が警察官になった時に描いていた図だった。

    悪は暴かれ、裁かれなければならない。

    しかし物事はそんな単純に割り切れる物ではなかったことを彼女は悟らされる。胸の中に燃えていた思いの行き先は一気に燃え立ち、そして消失する者だと思っていたが、燻ぶり続け、心に熾り続けていくことを彼女は経験した。たとえそれが事件を解決したことになっても。

    我々読者がミステリや物語に求める物は何か。
    それはその時その人によって違うだろうが、明らかに大きな1つの共通項としてあるのは物事が解決し、爽快感をもたらされることだろう。

    事件が起き、そこに謎があり、もしくは主人公がのっぴきならない境遇に陥って先行きが読めない状態にあり、それが主人公たちの行動によって見えなかった部分が明らかになり、収まるところに収まって物語が閉じられる。

    それは我々の日常生活において起こること、世間で起こる現実の事件が物語で語られるようにすっきりとした形で終わらないからだ。

    小説とは、物語とは率直に云えばその中身にどんなにリアルが伴っても、作り事、虚構に過ぎない。
    しかしだからこそそこに割り切れる結末を求め、読者は日常生活で抱える鬱屈を解消するのだ。

    しかしコナリー作品は決して100%の結末を我々に提供しない。なにがしかのしこりを常に残して物語は終わる。それはある意味リアルであり、もしくはある意味イーヴンであれば申し分ないと云う妥協、いや物事への折り合いをつける着地点を示しているかのようだ。

    それが逆に読後感に余韻を残し、しばらく読者の胸に留まるのだ。言葉を変えれば読者の胸の中に物語が、登場人物たちが生き続けるのだ。

    ボッシュがこの後も登場するのは我々は判っている。どのような形で我々の前に姿を現すのかは不明だが、再会するボッシュは、頭の先から爪先まで変わらぬボッシュであることだろう。


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    Tetchy
    WHOKS60S
    No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
    (8pt)

    上物ではあるのですが、期待以上のものはありませんでした

    ボッシュシリーズです。
    このシリーズはどれもこれも面白くて殆ど読んでいます。
    この「燃える部屋」も良くできた小説だと思います、でも、それ以上は?

    感動というか、極み!と思えないのは何故だろうと考えてみたのです。
    それは今回のハリーの相棒がなんかイマイチだったのです。翻訳者が意図的にそうしているのかどうかは分かりませんが
    言葉の選び方がなんかチグハグなんです。
    もう少しハリーとの会話の絡みが良かったら、もっと面白いと思えたのかもしれません。

    難しい事件をハリーと相棒が繰り返し考察することで、読む側としては理解しやすく、その点はコナリー氏は手腕のある作家だと思います。



    ももか
    3UKDKR1P
    No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
    (8pt)

    刑事生活最後の年も、ボッシュは衰えず

    ハリー・ボッシュ・シリーズの第17作。定年延長制度での勤務も最後の年を迎えたボッシュが、これまでと一つも変わらぬ激しさで2つの難事件を解決して行く、傑作警察小説である。
    ラテン系の若い女性刑事ソトとコンビを組むことになったボッシュが取り組むのは、10年前に銃撃されたときに体の中に残った銃弾が原因で死亡した、マリアッチ楽士・メルセドの事件である。検屍解剖で銃弾が取り出されたことから、再捜査が始まったのだった。事件で車椅子になったメルセドが市長選に利用された経緯もあり、捜査は政治的な案件として注目され、警察上層部や外部から様々なプレッシャーを受けた。
    また、ソトは7歳のときに遭遇した火災事件にとらわれており、ひとりで密かに捜査を再開しようとするのだがボッシュに知られ、メルセドの事件と並行して捜査することになった。10年前、20年前の事件だけに物証はほとんどなく、事件関係者もバラバラになっており、捜査は難航するのだが、引退した元刑事の話からボッシュたちは新たな事件解明の糸口をつかむのだった・・・。
    一見無関係な2つの未解決事件が思わぬところからつながって行くというのは、よくあるパターンだが、本作ではそれぞれの事件捜査が丁寧に描かれているので、ストーリー展開に無理がない。ただ、最後の真相判明が徹底的ではなかったのが、ちょっと物足りない。
    定年延長も最後を迎えたボッシュだが、シリーズはまだ続いており、2018年には21作目が発表された。ボッシュは、まだまだ衰えそうにない。
    シリーズ読者には必読。警察小説ファンにも自信を持ってオススメできる。

    iisan
    927253Y1
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    ※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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    No.16:
    (4pt)

    いい刑事になりたいなら、外に出てドアをノックしろ

    ボッシュシリーズも25周年ということですが、高いクオリティをしっかり維持し、コンスタントに作品を発表し続けているマイクル・コナリーはホント凄いです。
     作品を面白くしているのは、これまでの作品にもあったように、取り上げられる事件が一つではなく、ある事情により、私的にもうひとつ別の事件の捜査も行い、二つの事件を同時進行的に、もしくは、勢いがついてきたと認識した事件を優先し、解決に向けて捜査をすすめる過程がしっかり描かれているところでしょう。
     本が二冊書ける内容で一つの作品を生み出しているだけあって、物語の序盤は調書の確認といった地味でゆったりした滑り出しながら、事件の真相が明らかないなってくる後半に向けて物語に勢いがついてきます。ボッシュらは、どちらの事件に今まさに勢いがついているかに応じて、事件捜査の重きを置く案件を選択しています。

     ロサンゼルスの犯罪発生率は劇的に減少してきていることもあり、過去の未解決の処理に重きが置かれる状況になっているという。
     過去50年間で未解決の殺人事件は1万件以上あり、その調査には膨大な作業を要するがため、未解決事件班には優秀なベテラン捜査員と育成を兼ねた若手捜査員が配属されている。
     そんな未解決事件班において、定年後Drop制度を利用して刑事として働き続けるボッシュ、「もう十分働いただろう」と言われようが、被害者の代弁者として事件解決のため身を粉にしての働き続めの日々。
     本作の後にもすでに数冊のボッシュものが発表されていますが、いったいどこまで刑事を続けることができるのか。
     まだまだしばらくボッシュシリーズを読み続けることができるのは幸福なことだと思います。
    燃える部屋(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:燃える部屋(上) (講談社文庫)より
    4062938901
    No.15:
    (4pt)

    まだまだタフで冴えまくっているボッシュ

    ボッシュ・シリーズ17弾。相変わらず息もつかせぬおもしろさで一気読み。
    ボッシュは定年延長したが、それでもとうとう残り1年。今回パートナーとなったのはメキシコ系新人女性刑事ルシア・ソト。とても一生懸命で真面目で好感度大にて、ボッシュは今まで以上に積極的に指導している。
    (これまで優秀だったのはキズミン・ライダーくらいだったが、彼女は野心も強く、関係がいまいちになってしまった経緯がある)
    ※ここからは一部ネタバレあり
    内容はとてもよかった。ただ、世に注目されている未解決事件を抱えて上層部からのプレッシャーもあるのに、さらに並行して別の過去の事件にも取り掛かるところに違和感があった。こんなに忙しいのに実際ありえるのか?混乱しないか?コナリー作品はほとんどどれも長編だが、短く別々にしてもよかったのでは?とも思えた。繋がりがあるわけでもないのに。分けてしまうと物語として小ぶりになってしまうからか。まあ、重大事件をふたつも解決したにもかかわらずラストの仕打ち、というところを強調したかったのかもしれないが。
    だらしない+クソ野郎の上司たち。本当に腹立たしい!ボッシュがいなくなったら検挙率、解決率が下がるぞ!以前そのためにボッシュは再雇用されたのではなかったか?ま、これは部署の成績のみ気にしているヒラメ中間管理職どもに返って来るだろう。次巻がどう展開していくのか、もう楽しみでたまらない。
    燃える部屋(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:燃える部屋(上) (講談社文庫)より
    4062938901
    No.14:
    (5pt)

    サミュエルズ警部補のような現場を知らない上司はどこにでもいる。

    評者は、マイクル・コナリーのハリー・ボッシュ・シリーズを、90年代からランダムで読んできたが、このところほぼ時系列で再読&初読をふくめて読んできた。
     リンカーン弁護士シリーズもあわせてすべての作品を読み終えた。
     ハリー・ボッシュ・シリーズで翻訳されているもので未読の作品として『贖罪の街』と『訣別』の二作を残すのみとなった。
     1992年に『ナイトホークス』で始まったこのシリーズの『燃える部屋』は2014年の作品となる。
     1950年生まれのハリー・ボッシュは、刊行開始時点で42歳。
     それ以降は、現実の時間とほぼ同時進行で物語が進み、何とすでに本作で64歳になっている。
     定年延長制度で現役復帰してから数年が過ぎロス市警の予算削減のためレイオフの対象として管理職は虎視眈々とボッシュの首を切る機会を狙っている。
     が、有望な新人女性刑事(メキシコ系アメリカ人)のルシア・ソトと本作『燃える部屋』でも未解決事件捜査に没頭していた。
     本書では、二つの事件をボッシュとソトが取り組み捜査を進めていく。
     一つめは、2004年にマリアッチ・ギタリストがロスのダウンタウンで演奏しているとき銃撃され、脊椎に残った銃弾のせいで10年間苦しみ続けた挙句に亡くなってしまう。
     未解決だった銃撃事件も摘出された弾丸が明らかにしたのは麻薬がらみの争いの流れ弾でないことが判明する。
    、弾丸が狩猟用の銃から発射されたことが突破口として犯人像が見えてくる。
     二つ目は、(21年前に起きた共同住宅の保育所でソト自身も遭遇した放火事件(子供を含めて9人が犠牲になった)の再捜査である。
     ネタバレになるからストーリーの詳細は書かないが、放火事件の全容は判明したが、ソトの心が晴れるような結末ではなかった。
     ギタリスト殺害事件の犯人はあえなくソトの銃撃で死亡するが、政治案件がらみの共犯者のトップまで追求することができなった。
     怒りを抑えることができないボッシュに追い打ちをかけるように些細なことを理由にボッシュに停職勧告がなされる。
     刑事部屋を去るボッシュを、部屋にいた刑事たちが、一人、二人、やがて部屋中にいた刑事たち全員が手を叩いてボッシュを称えて送り出す感動的シーンでこの物語を終えている。
     本書には、シリーズ20作目(未訳の『Tow Kings Truth』)を、記念して著者が書いたエッセイ「逃げる男」が巻末に掲載されていた。
     コナリーが犯罪小説を書きたいと何故思うようになったのかをエッセイにしたものである。
     コナリー16歳ときに経験した実話を書いたものだが、このシリーズでたびたび語られるロス市警が抱えている一万件という未解決事件の多さを物語るエピソードとして語られていて興味深く読んでしまった。
     本作のラストで別れ惜しんで泣きそうになったソトへ「きみを待っている事件があと一万件しか残っていないんだぞ」と励ますところでも未解決事件の多さを、ボッシュが(コナリーが)語ろうとしているメタファーを、多くの読者は感じとることができるだろう。
    燃える部屋(下) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:燃える部屋(下) (講談社文庫)より
    406293891X
    No.13:
    (5pt)

    コナリーの創作意欲満々なのがうれしい。

    ハリー・ボッシュ・シリーズの17作目『燃える部屋』(2014年) 上巻を読み終えた。
     メキシコ系新米女性刑事ルシア・ソトとコンビを組んだボッシュは、定年延長制度最後の年をロス市警未解決事件班で迎えていた。
     マリアッチ・バンド・メンバーのメキシコ人オルランド・メルセドが演奏中に銃撃を受けてから10年過ぎ、その後遺症で亡くなった。
     事件は未解決のまま過去のものとなっていたが、市警本部長の政治的思惑から殺人事件として未解決事件班のボッシュとソトのコンビに捜査を命じた。
     ソトが7歳のとき集合住宅の地下にある無認可保育所に預けられていたとき火事に遭遇し、友達や先生の多くが亡くなったが、ソトだけは救急隊員に助けられたのである。
     ソトは、密かにその放火事件の捜査を始めたが偶然にボッシュの知るところとなる。
     問題がある独自捜査を避けるためボッシュは、あるとき市警へ匿名で公衆電話からへメルセド事件と関連つけるようなタレコミをした。
     このタレコミが功を奏して放火事件も公に二人の捜査の対象となる。
     このあたりのディテール作りなどコナリーならではのプロット構成の巧みさを表している。
     前市長だったアルマンド・ザイアスの州知事選への思わくも交錯してきた事件を、ベテラン刑事と聡明な新人刑事との阿吽の呼吸で捜査を進めていくコナリーの筆の冴えはあいかわらずである。
     ソト運の良さ(火事から救出されたことや強盗犯との銃撃戦で生き残るなど)を、ボッシュが如何につかみとるか、下巻を楽しみに上巻を読み終えた。
    燃える部屋(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:燃える部屋(上) (講談社文庫)より
    4062938901
    No.12:
    (5pt)

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    4062938901



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