汚名



※タグの編集はログイン後行えます

※以下のグループに登録されています。


【この小説が収録されている参考書籍】
オスダメ平均点

8.00pt (10max) / 3件

7.67pt (10max) / 6件

Amazon平均点

4.61pt ( 5max) / 28件

みんなの オススメpt
  自由に投票してください!!
2pt
サイト内ランク []A総合:172位
ミステリ成分 []
  この作品はミステリ?
  自由に投票してください!!

0.00pt

85.50pt

69.50pt

0.00pt

←非ミステリ

ミステリ→

↑現実的

↓幻想的

初公開日(参考)2020年08月
分類

長編小説

閲覧回数2,178回
お気に入りにされた回数2
読書済みに登録された回数7

■このページのURL

■報告関係
※気になる点がありましたらお知らせください。

汚名(上) (講談社文庫)

2020年08月12日 汚名(上) (講談社文庫)

サンフェルナンド市警の刑事として、自発的に未解決事件捜査にあたっているボッシュ。三十年ほど前に逮捕し、服役中の死刑囚連続殺人犯ボーダーズに関し、新たな証拠が出たとして、再審が開かれる見込みだと聞かされる。一方、薬局経営の親子が銃殺されるという事件が所轄で発生、麻薬捜査に駆りだされる。(「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

汚名の総合評価:9.10/10点レビュー 31件。Aランク


■スポンサードリンク


サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(9pt)

全身刑事としての生き様

コナリー31作目の本書は久々のボッシュシリーズ。前作に引き続きサンフェルナンド市警の予備警察官として無給で働いている。

御年65歳のボッシュが相手にするのは過去。彼が30年前に逮捕した強姦犯が最近のDNA調査により他の強姦犯の精液だったことが判明し、逆にボッシュが損害賠償請求の的になる恐れが生じる。その金額は7桁にも上る見込みで大学に進学中のマデリンを養うボッシュにとって破産宣告とも云える仕打ちが待ち受ける。

いやはや65歳と云えば日本では定年延長も終える年だ。長年働き、社会に尽くしてきた終末の時に逆に自分の仕事で訴えられ、そして余生を生きることもできなくなるような多額の賠償金を背負わされそうになるとは作者コナリーはボッシュを年老いてもなお窮地に陥れる筆を緩めない。

そんなボッシュの許に知らされるのはショッピングモールにある薬局で起きた経営者親子殺害事件。今まで過去の未解決事件ばかりを捜査してきたサンフェルナンド市警にとって久々の殺人事件だ。周囲をロサンジェルス市に囲まれたわずか6.5万km2の自治体サンフェルナンド市。このことからもボッシュが送られてきた市が犯罪都市LAの中でも比較的平穏な場所であることが解るというものだ。

さてまずボッシュにいきなり災厄が降りかかる。
30年前に逮捕した強姦犯プレストン・ボーダーズは当時売れない俳優であったが、そんな俳優の卵にありがちなバイトで生活費を稼ぎながら日々オーディションを受けるような苦労人ではなく、両親からの仕送りで生活しており、さらにクレジットカードの請求先も親の口座という、親のすねかじりのお坊ちゃんだ。

一方彼が殺害したとみられたダニエル・スカイラーは妹ダイナと共にフロリダのシングルマザーに育てられ、地元の美人コンテストでの成功とハイスクールの舞台での称賛から女優を目指してハリウッドに出てきた女性。レストランのウェイトレスをしながら日々際限なくオーディションを受けては落ち、受けては落ちを繰り返し、片手で足りるほどの端役での出演をしただけ。しかし彼女の精力的な活動により幅広い人脈が出来、キャスティング・エージェントの受付係の職を得る。
そんな凡百の苦労人である彼女が無残にレイプされ殺された事件だ。

彼の有罪がひっくり返される結果になったのはボーダーズの証拠品を収めたボックスに入っていた被害者のパジャマのズボンから容疑者のDNAではなく、ルーカス・ジョン・オルマーという他の連続強姦犯のDNAが見つかったためだ。しかも証拠品のボックス開封の模様はビデオに収められており、ボッシュのサイン入りの封印が解かれるのもバッチリ映っているという堅牢さ。

そしてその結果、ボーダーズ違法拘束の申し立ての審理が行われ、和解交渉中だが、それが決裂すれば当時ボーダーズを逮捕し、ムショに送ったボッシュを訴追でき、彼は7桁の賠償金を支払う羽目に陥る。
通常ならば市法務局が糾弾される一個人を保護しようとするが、ボッシュはロサンジェルス市と不当退職の訴訟を起こして莫大な賠償金をせしめたことでそんなことはありそうになかった。そうまたもボッシュは自身の行った正義のために自縄自縛状態になる。

もう1つはショッピングモールの薬局で起きた経営者親子殺害事件は捜査が進むにつれて次第にスケールが大きくなっていく。
そしてその捜査の過程でかつての相棒ジェリー・エドガーと再会する。彼は薬事犯罪の現状を調査するMBCの職員に転職しており、ボッシュとそのパートナー、ルルデスに事件の背後に潜むアメリカ全土に亘る一大薬物犯罪の実情について説明し、サポートする。

そしてボッシュはなんと薬物依存症者に扮して囮捜査員になることになる。それはボッシュが65歳という高齢であることが条件に合致したからだ。

いやはやまだまだ走って戦う姿を見ていただけになかなか意識されなかったが、世間一般ではボッシュは既に高齢者であるのだ。
しかしまだ若いと思っているボッシュは何度も年寄りのように見られることにムッとしだすのが面白い。

しかしいつの間にボッシュシリーズはディック・フランシスの競馬シリーズのような題名をつけるようになったのだろうか。
前作『訣別』に引き続き、本書は『汚名』である。これは今回ボッシュが直面する30年前の事件が冤罪の疑いがあり、ボッシュがその件で訴追される恐れがあることを示しているのだろう。

原題は“Two Kinds Of Truth”と実にかけ離れた邦題である。これは作中に出てくる2種類の真実を意味する。1つは人の人生と使命の変わらぬ基盤となる真実、もう1つは政治屋やペテン師、悪徳弁護士とその依頼人たちが目の前にある目的に合うよう曲げたり型にはめたりしている可塑性のある真実を指す。つまり前者はありのままの真実であり、後者は全てを明らかにせず都合のいい真実だけを並べた恣意性の高い真実、つまり「嘘は云っていない」類の真実だ。

こうやって考えるとやはり本書の題名は原題に即してせめて『それぞれの真実』とか『真実の別の顔』とかにならなかったのだろうか。まあ、後者はシドニー・シェルダンの小説の題名みたいだが。

しかし今まで古今東西の薬物事件を読んできたが、とうとうアメリカはここまで来たかという思いを抱いた。
ウィンズロウは社会に蔓延する麻薬を売りさばく側を描いているのに対し、コナリーは薬物を売りさばく方に利用され、廃人にさせられていく薬物中毒者を色濃く描いている。特にボッシュ自身を囮にして詳細にシステムの一部始終を描いている件は迫真性があり、本書の中盤のクライマックスシーンと云えるだろう。

またその囮捜査の過程でボッシュは自身が囮捜査員になるのを避けていた理由に直面する。
通常の捜査は犯罪は行われた後であり、犯人を捕まえることで己が成した正義を実感できるが、囮捜査は自身が仲間であると演じる必要があるため、犯行が目の前になされても捜査継続のために看過せざるを得ない。それは悪を一刻も早く排除したいボッシュにとっては耐えがたきことなのだ。

さて結局本書でボッシュは結局3つの事件を解決する。

齢65歳にして八面六臂の大活躍を見せるボッシュ。

ボッシュに定年退職はあっても引退はなく、一生刑事であり、そして昼夜を問わず寝食も頓着しない全身刑事であり続けるだろう。

そしてボッシュは今回それらの事件で数々の世の中の不条理に直面する。

信念に基づいて強姦犯を突き止め、有罪にもこぎつけたにも関わらず、己の私欲のために証拠を捏造して誤認逮捕の汚名を着せられる世の中。

人生は皮肉に満ちている。
これまで刑事として数々の割り切れなさ、遣り切れなさを経験しながらもボッシュは改めて人間というものの恐ろしさ、そしてそれぞれの欲望が招いた業の深さを思い知る。

本来生きるべき者が死に、また報われていい働きをした者が謗られる世の中の不条理。企業が嘘をつき、大統領までもが嘘をつく今のアメリカ。そんな不条理の中で未だに己の正義に愚直に生きる気高きヒーローのためにボッシュはまだ戦う決意を固める。

そして実感されるのは時は確実に流れていることだ。

30年前の事件に自身の立場を追われそうになり、さらに15年間行方不明の母親が見つからずにいる一方でかつてボッシュが所属していたハリウッド分署に殺人担当部署はなくなり、ウェスト方面隊の刑事が所轄の殺人事件を担当する。
そしてかつての相棒ジェリー・エドガーも転職し、カリフォルニア州医事当局に勤め、薬剤の消費者問題の担当になっている。

そんな長き時を刑事として生きてきたボッシュが自分の正しい道を歩んできたことを上司のトレヴィーノに称賛されて顔を赤らめるボッシュの姿は、今まで一匹狼として誰にも称賛されずに生きてきた茨の道の長さを感じさせ、可笑しいやら悲しいやら複雑な思いを抱かせる。

今回製本上の都合か訳者による解説と未邦訳作品を含めた作品リストが付されていなかったが、ボッシュは本書の後に発表された2作でも登場し、なんと両作において『レイトショー』に登場した女性刑事レネイ・バラードと共演するそうだ。

本書はコナリー31作目の作品である。これほどの冊数を出しながらもこのハイクオリティ。
そしてさらにそのクオリティを次も凌駕しようと魅力的なアイデアを放り込んでくるコナリーの創作意欲の高さと構成力の確かさにはファン読者になったことへの喜びを常に感じさせてくれる。

あとは訳出が途切れぬよう一読者として願うばかりだ。彼の作品を読み続けるためなら身銭を払って買うだけの価値があり、見返りはある。

ボッシュが一生刑事なら私も一生コナリーファンであり続け、彼の作品を買い続けよう。


▼以下、ネタバレ感想

※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[]ログインはこちら

Tetchy
WHOKS60S
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

コナリーは面白い

読みやすく、面白い。
期待を裏切りません

御福頂戴
1UFU3QOD
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

60歳を過ぎても潜入捜査に手を挙げるボッシュ

ハリー・ボッシュ・シリーズの第19作。還暦を過ぎたとはいえ正義感にあふれ意気盛んなボッシュが自ら信じるところを貫く、安定の警察ミステリーである。
サンフェルナンド市警の予備警官として勤務するボッシュは、地元で起きた薬局の強盗殺人事件をきっかけに、ロシアマフィアが支配する麻薬組織への潜入捜査を行うことになった。一方、かつてロス市警時代に逮捕した死刑囚が「ボッシュが証拠をねつ造した」と主張して再審を請求し、ロス市警と検事局はその訴えを認めて再審を開始し、ボッシュはいわれなき罪を問われそうになる。二つの難問に直面するボッシュは、異母弟であるミッキー・ハラーの助けを借り、超人的な働きで正義を追い続けるのだった・・・。
60過ぎの予備警官なのに麻薬組織に潜入するというボッシュの元気なアクションがメインテーマで、証拠をねつ造した警官という汚名をそそぐための調査がサブテーマ。潜入捜査はアクション・ミステリー、再審請求対策はリーガル・ミステリーという、一冊で二作品分の面白さを堪能できる。
ボッシュ・シリーズのファンは必読。アメリカ警察ミステリーのファンにもオススメする。

iisan
927253Y1
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.28:
(5pt)

探し物

集めているので、気に入ってます。
ブックオフとは違う綺麗さ
汚名(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:汚名(上) (講談社文庫)より
4065169526
No.27:
(1pt)

集めてます

綺麗て気に入ってます
汚名(下) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:汚名(下) (講談社文庫)より
4065206294
No.26:
(5pt)

これだけ贅沢な作品、どう見ても最高得点

コナリー作品の読後感想はいつも同じになるが、「まったくはずれがない」ということだ。いや、もっと積極的にいうなら、どれを読んでも、今までの最高傑作に思える。ということは、コナリーがそれぞれの作品において新たな刺激的なプロットを創り出し、主人公、例えばハリー・ボッシュには都度試練を与え、そして最近のボッシュシリーズでは特にそうだが、ボッシュの周りの人間に主人公クラスを配置するなど、ファンサービスも並大抵では
ないということだ。この作品「汚名」は、ボッシュシリーズの中で読み落としていたので、今回読むことになったが、まさに、「今までで一番面白い」と言ってもいい。冒頭からボッシュが昔の事件でトラブルに巻き込まれるシーンが出てくる。30年前逮捕した死刑囚が、被害者の衣服についた体液のDNAで自分が犯人でないと主張しているというのだ。ボッシュには誤認逮捕と証拠捏造という汚名がつくことになる。そして、もう一つの事件は、現在ボッシュが無給刑事として働いているサンフェルナンド市警管轄下での、2人の薬剤師殺人事件。この事件
でボッシュは潜入捜査という難しい任務を負うことになる。わくわくするようなアクション場面もあれば、知的ゲームともいえる法廷劇も挿入されている。これだけこのシリーズでたくさんの作品を世に出しているコナリーが
またまた新鮮なプロットで楽しませてくれる。贅沢な1冊だ。
汚名(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:汚名(上) (講談社文庫)より
4065169526
No.25:
(4pt)

詰め込み過ぎ

上巻のボッシュが潜入捜査を開始するという段階では、一体どういう展開になるのだろう?と、コナリーの作品では久しぶりにワクワクしながら下巻を読み進めたが、何だかアッサリ潜入捜査(犯人の正体や結末も)が終わってしまい、期待外れに終わった。

最近のボッシュシリーズでよく見受けられる、上下巻という短さの中で2つの事件を同時に扱うパターンは焦燥感はあるが、やはり一つ一つの事件に関してはいずれも内容が薄くなってしまう気がしてならない。
汚名(下) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:汚名(下) (講談社文庫)より
4065206294
No.24:
(5pt)

いい

やはり、ハリーはかっこいい。そして、リンカーン弁護士も、やり手で、面白い。
汚名(下) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:汚名(下) (講談社文庫)より
4065206294



その他、Amazon書評・レビューが 28件あります。
Amazon書評・レビューを見る     


スポンサードリンク