天使と罪の街



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天使と罪の街(下) (講談社文庫)

2006年08月12日 天使と罪の街(下) (講談社文庫)

私立探偵ボッシュとFBI捜査官レイチェルは“詩人”こと連続殺人犯の跡を追う。ラスヴェガス、ネヴァダ州の売春街、そしてロサンジェルス。迫っ手をあざ笑うかのように捜査を撹乱する犯人。用意周到に計画された、その恐るべき企みとは?現代ハードボイルドの第一人者コナリーが描く壮大なサスペンス。 (「BOOK」データベースより)




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天使と罪の街の総合評価:7.97/10点レビュー 29件。Aランク


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全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(9pt)

悪の側と善の側を隔てる線

ボッシュシリーズ記念すべき10作目はこれまでコナリーが発表してきたノンシリーズが、本流であるボッシュシリーズと交わる、いわばボッシュ・サーガの要をなす作品となった。恐らく作者も10作目という節目を迎え、意図的にこのようなオールスターキャスト勢揃いの作品を用意したのだろう。

ノンシリーズで登場した連続殺人鬼“詩人(ポエット)”が復活し、その捜査を担当したFBI捜査官レイチェル・ウォリングが再登場し、また『わが心臓の痛み』で登場して以来、『夜より暗き闇』で共演した元FBI心理分析官テリー・マッケイレブが交わる。しかしなんとそのテリー・マッケイレブは既に亡く、ボッシュが彼の死の真相を探る。

とにかく全てが極上である。
味のある登場人物たち、物語の面白さ、謎解きの妙味。
ミステリとしての謎解きの味わいを備えながら、シリーズ、いやコナリー作品全般を読んできた読者のみ分かち合えるそれぞれの登場人物の人生の片鱗、そして先の読めない、ページを繰る手を止められない物語自体の面白さ、それらが三位一体となって溶け合い、この『天使と罪の街』という物語を形成しているのだ。

まず触れておきたいのは自作の映画化についてのことだ。

テリー・マッケイレブと云えばクリント・イーストウッド監督・主演で映画化された『わが心臓の痛み』(映画題名『ブラッド・ワーク』)が想起され、今までコナリー自身が作中登場人物にその映画について再三触れているシーンがあったが、本書では更にそれが加速し、随所に、なんとそれぞれ映画で配役された登場人物がこの映画について触れている。

また本書は前作に引き続き、ボッシュの一人称叙述が採られているが―レイチェル・ウォリングのパートは三人称叙述とそれぞれの章で使い分けがされている―、その中でも映画がさほどヒットしなかったこと、イーストウッドとテリー・マッケイレブの歳が離れすぎていたことなどが吐露されている。これは作者自身の不満であると思え、なかなか面白い。

私は幸いにして『わが心臓の痛み』読了後、BSで放送のあったこの映画を観ていたのでこれらのエピソードを実に楽しく読めた。
ボッシュ(=コナリー)が云うように、私自身大きな賛辞を贈った原作が映画になると何とも淡白な印象になるものだなと残念に思っていたからだ。

更にFBI捜査官側のモハーヴェ砂漠で見つかった大量死体の謎にテリー・マッケイレブが絡んでいることが発覚すると、しきりに「あの映画を観ていたら解るのだが」といった映画での引用が所々出てくる(さすがにマッケイレブの葬式にクリント・イーストウッドが出席していたという件はやり過ぎかと思ったが)。

もう1つ加えるならば砂漠に埋められた遺体の1つから発見されたガムの噛み跡があの稀代のシリアルキラー、テッド・バンディの物と発覚し、更にロバート・バッカスとレイチェル・ウォリングが彼の聴取をしていたという件も登場する。

この自作が映画化された事実、さらに実在のシリアルキラーと自作の登場人物を絡ませてメタフィクショナルな作りになっているのが本書の大きな特徴の1つと云えるだろう。

上に書いたように本書はレイチェル・ウォリングと新聞記者のジャック・マカヴォイが挑んだシリアルキラー“詩人”に、レイチェル・ウォリングが再戦し、そこにテリー・マッケイレブとハリー・ボッシュが挑むという実にサーヴィス精神旺盛な作品となっている。

例えるならば東野作品で稀代の悪女が登場する『白夜行』、『幻夜』の犯人に加賀恭一郎と湯川学の2人が挑む、それくらいのサーヴィスに匹敵する内容だ。

更にボッシュがラスヴェガスに長期間滞在しているモーテルの隣人ジェーン・デイヴィスはその様子から『バッドラック・ムーン』の主人公キャシー・ブラックだと思われ、繰り返しになるが、これまで以上にオールスターキャスト登場の趣を見せる。

そしてそれがサーヴィスに留まらず、物語の、いや本書の謎解きの主軸となっているところがまた凄いのである。

詩人に敗れ、命を落としたマッケイレブの遺品と遺したメモを手掛かりにボッシュは犯人の足取りを辿るのだが、それらは断片的に遺された、ほとんど暗号に近い内容だ。
それをじっくりと読み解いていくプロセスはまさにミステリにおける謎解きの醍醐味に満ちている。物語の中盤、上巻から下巻にかけて詩人がどのように被害者たちを狩っていたのか、その足取りを辿る件は久しぶりに胸躍る思いがした。

そうそう、忘れてはならないのが、テリーの相棒バディ・ロックリッジ。彼もまた例によって例の如く、自身が好むミステリの登場人物たちのようなヒーロー願望を前面に押し出し、ボッシュの捜査に絡んでいく。

しかしこのバディ・ロックリッジが、ボッシュにとっても面倒な男だと思われているのは思わず苦笑いしてしまった。彼はやっぱり誰にとってもうざい存在のようだ。

また気になるのはボッシュとエレノアのその後の関係だ。

前作では長く別居生活を送っていたエレノアとの再会し、更には実の娘がいたという、実に晴れやかなラストを迎え、本書ではてっきり幸せな結婚生活が再開されているものと思われた。

それを裏付けるかのようにボッシュはとにかく愛娘にぞっこんで、彼女と電話して話をしたり、また寝顔を見るためだけにエレノアの家を訪れる。
そう、彼は娘と逢いにエレノアの家に通っているのだ。つまり再び別居生活を送っているのだ。

前作では警察を辞め、LAに留まる理由が無くなり、エレノアへの渇望感、愛情再燃の様相さえあったボッシュ。実際彼が自身をLAに留めているのが単に再会することで失うものを恐れていたのだが、LAを捨て、エレノアのいるラスヴェガスに向かい、同居生活を試みたものの、上手くいかなかった。
それはエレノアがもはやラスヴェガスで名うてのギャンブラーとして生計を立てているため、そこを離れられないのだが、ボッシュはこのギャンブルとエンタテインメントを生業にする町は娘を育てるのにいい環境だとは思わなかったため、そのことでエレノアとは衝突を繰り返し、関係がぎくしゃくしていたのだった。

男と女。その考えは常に異なる。それは古来から伝わる世の常である。
世の夫婦はお互い、それぞれの価値観との相違によって生じる衝突を繰り返し、時にはぶつかり、そして時には妥協し、折り合いを付けて共に人生を歩んでいく。それが夫婦なのだ。

しかしボッシュとエレノアはそれが出来ない。彼らはお互いに愛し合いながらもそれぞれの主張が、主義が強すぎ、折り合いを付けられてないのだ。
愛し合いながらも離れていた方がいい男女の関係と云うのは確かにある。それは時には強い斥力で以ってお互いを突き放すが、時間が来るとお互いどうしようも抗えない引力によって引き合う、磁石のような存在となる。
元刑事のボッシュと元FBI捜査官のエレノア。それぞれ強くなくてはいけない世界で生きていたことで、相手に譲歩することが出来なくなってしまっているのだ。

そのボッシュとタッグを組むレイチェル・ウォリング。『ザ・ポエット』では活躍した彼女はしかし、8年前のその事件を解決した後のFBIでの道のりは決していいものではなかった。

その事件の後、ノースダコタのマイノットという捜査官1人、つまりレイチェル唯一人の部署に異動させられ、その後も、いわゆるお荷物捜査官の巣窟へと異動させられた、出世街道の梯子を外された存在である。

彼女がそのような左遷を繰り返される閑職に追いやられたのは詩人の事件がきっかけだった。自分の上司が連続殺人鬼でそれを取り逃がしたことも一因だが、それよりも彼女はその事件の捜査の最中でFBIの天敵である新聞記者ジャック・マカヴォイと寝たことが知れ、FBIの厄介者になってしまったのだった。

この似た者同士の2人が手を組み、お互いを認め合う。背中を預けられる存在として。特にボッシュは無意識のうちに彼女をエレノアと呼び間違えるまでになる。

バッカスの仕掛けた爆弾で危うく吹き飛びそうになった2人は、恐怖を共有した者同士が生き長らえたことで共通の生存意識が芽生え、お互いを求め合う。
死を乗り越えた人間は生きている歓びとそして死んだかもしれない恐怖を分かち合い、性にしがみつくために将来の生を残そうとするかのように躰を求め合うのだ。レイチェルはエレノアとの関係が上手くいかないボッシュの新たなパートナーとなりそうな雰囲気を醸し出して物語は進む。

邦題の『天使と罪の街』はボッシュが住むLAとエレノアと最愛の娘マデリンが住むラスヴェガスを指している。前者が天使の街で後者が罪の街とボッシュは語る。

いやそうではないのかもしれない。天使と罪の街とは即ちLAとラスヴェガス両方を指すのかもしれない。

ボッシュが罪の街と呼ぶギャンブルが主な収入源となっているラスヴェガスはしかし彼にとっての天使マデリンが住んでいる。一方その名に天使を宿すLAは文字通り天使の街だが、長年そこで刑事をやってきたボッシュにとっては彼が捕らえるべき犯罪者が巣食う街だ。
罪を犯す者が住む天使の街、そして天使が住む罪の街。その両方を行き来するボッシュは再び刑事としてLAへ還っていく。

一方原題の“The Narrows”は「狭い川」を指す。普段は小川だが、暴風雨が降るとたちまちそれは濁流と化し、人を飲み込む大蛇へと変貌する。このナローズこそは普段はFBI捜査官の長として振る舞いながらも実は連続殺人鬼だったバッカスそのものを指し示しているのだ。
彼に対峙する直前ボッシュは母が頻りに云っていた「狭い川には気を付けなさい」の言葉を思い出す。

相変わらずコナリーは含みのある題名を付けるのが上手い。

なおコナリーは2003年から2004年に掛けてMWA、即ちアメリカ探偵作家クラブの会長を務めていた。本書は前作『暗く聖なる夜』と本書がまさに会長職にあった頃の作品だが、ウィキペディアによれば前作がMWAが主催するエドガー賞にノミネートされたものの、会長職にあるとのことで辞退している。

また本書ではイアン・ランキン、クーンツのサイン会が書店で開かれたことや、初期のジョージ・P・ペレケーノスの作品は手に入れにくい、などとミステリに関するネタが盛り込まれている。これはやはり当時会長としてアメリカ・ミステリ普及のために、細やかな宣伝行為を兼ねていたのではないだろうか。
そういえば前作ではロバート・クレイス作品の探偵エルヴィス・コールが―その名が出ていないにしても―カメオ出演していた。こういったことまで行うコナリーは、自分の与えられた仕事や役割を、個性的なアイデアで遂行する、几帳面な性格のように見える。

物語の冒頭、ボッシュの語りでこう述べられている。

真実が人を解放しない。

その真実とはマッケイレブの死の真相のことだろう。

そのことに気付いていたレイチェルはマッケイレブの遺族のために隠すことにしたのだが、それをボッシュに悟られたことでレイチェルは敢えてボッシュと決別する。
その直前まで彼女はボッシュが移り住んだLAの自宅を訪れ、自分の異動先をLAに希望するとまで云っていたくらい、彼女はボッシュが気に入っていたのだった。しかし似た者同士はあまりに似ているため、同族憎悪をも引き起こす。相手に自分の嫌な部分まで見てしまうがゆえに、一度嫌悪を抱くとそれは過剰なまでに肥大する。

似ているがゆえに共になれない。ボッシュとレイチェルはボッシュとエレノアの関係によく似ている。

読み終えて思うのは本書はハリー・ボッシュ、レイチェル・ウォリング、テリー・マッケイレブ、そしてロバート・バッカス4人の物語だったということだ。そして彼らは人生に訪れた困難・苦難を乗り越えて生きてきた人たちでもあった。

ボッシュはそのアウトローな独断的な捜査方法ゆえに検挙率はトップでありながら常に辞職の危機に晒されてきた。その都度ギリギリのところで踏み留まり、困難をチャンスに変えてきた男だ。

レイチェル・ウォリングは8年もの長きに亘って島流しに晒されたFBI捜査官だったが、彼女はいつかの再起を信じ、決して腐ることはなかった。以前よりも生気が失われたと思われた目にはまだ野心が残っており、そして部外者扱いされながらも捜査の中心に我が身を置いて、8年前に自分を閑職に追いやった因縁の相手に決着をつけた。

テリー・マッケイレブはFBI引退後も過去の事件に向き合い、未解決の事件の犯人逮捕に執念を燃やし続けた。彼は心臓病という大きな病を抱えながらもそれを続けた。

そしてロバート・バッカス。彼の苦難は幼少時代に途轍もない暴力を父親から振るわれ、それを母親が助けてくれなかった過酷な境遇だ。
しかし彼はそれを乗り越える、最悪な方法で。
彼は父親からの暴力の鬱憤を小動物を殺すことで晴らし、やがてその行為が父親に及んで事故死に見せかけることに成功する。その歪な成功体験が彼を稀代の殺人鬼へと変えた。FBIの行動分析課の長として捜査に携わりながら、その地位を利用して自分に捜査の手が及ばないように犯行を重ねた。
彼も困難をバネに生きてきた男だ。ただ彼はダークサイドに陥ってしまったのだが。

ボッシュとレイチェル、そしてマッケイレブ。彼らは人間の闇の深淵を覗いてきた人々だ。しかし彼らはバッカスにならなかった。ただそれは、今はまだ、というだけの差しかないのかもしれない。
悪の側と善の側を隔てる線。その線引きを自ら行えるうちは大丈夫だろう。しかしその一線を超えたら、彼ら彼女らもまたバッカスになり得るのだ。

今回もコナリーは期待を裏切らなかった。

ただ惜しむらくは本書はあまりに『ザ・ポエット』の続編の色を濃く出しているため、作者が明らさまに『ザ・ポエット』の内容と真相、真犯人を語っている。従って『ザ・ポエット』の内容を知りたくないならば本書を読む前に是非とも読んでおきたい。
まあ、実に入手が難しい作品であるのだが。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

主役級キャストが勢揃いの豪華版

ハリー・ボッシュ・シリーズの第10作。私立探偵になったボッシュが連続殺人犯を追い詰める、サスペンスミステリーである。
自分が所有する釣り船の中で死亡した元FBI捜査官テリー・マッケイレブの死因について、彼の妻から調査を依頼されたボッシュは、友人のために調査を開始し、テリーがある事件に関心を持っていたことを知る。同じ頃、ラスベガス近郊の砂漠で男性ばかりの多数の死体が埋められている事件が発覚し、犯人「詩人」からのメッセージによって、左遷されていたFBI捜査官レイチェル・ウォリングが現地に呼び出された。紆余曲折を経た後、ボッシュとレイチェルの行く道が交差し、二人は力を合わせて連続殺人犯「詩人」の足どりを追跡することになる。狡智に長けた「詩人」に翻弄されながらも、二人は反発したり共感し合ったりを繰り返しながら「詩人」にじりじりと迫って行く。
話の始めの方から犯人は分かっており、ストーリーの中心は犯人とボッシュたちの知恵比べ、逃亡と追跡、反撃というサスペンス・アクションに主眼が置かれた派手なストーリー展開。しかも、ボッシュ、レイチェル、テリーという、コナリー作品の主役たちが揃い踏みするというサービス満点のエンターテイメント作品である。さらに、連続殺人犯「詩人」が驚異的な頭脳の持ち主で、「悪役が魅力的なほどサスペンスミステリーは面白い」というセオリーを再認識させられた。
ボッシュ・シリーズのファンには絶対のオススメ。単発で読んだサスペンスミステリーのファンも絶対に失望させない、傑作ミステリーである。

iisan
927253Y1
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

やっぱりコナリーは上手い!

ここまでくると、上手さに酔いしれるようにサクサク読めます。
最後までハラハラドキドキの小説でした。こういうジェットコースター的ミステリーは好きですね。というのも、ボッシュとの付き合い?が長くなり、瞬時に顔の表情まで頭に浮かぶので映画のように展開していきました。コナリーがボッシュは「スティング」のマックィーンが一番似合う云々の文を読んでから、それから小説を読む時はマックィーンを浮かべています。

ももか
3UKDKR1P
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未読の方はご注意ください

No.26:
(1pt)

カバーは確かに下巻だったけど…

まあまあキレイな状態で腰帯まで付いてましたが、さぁ読もう、としたら中身は上巻でした。受け取ってすぐ確認しなかったこちらも悪いのですが…
天使と罪の街(下) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:天使と罪の街(下) (講談社文庫)より
4062754932
No.25:
(4pt)

LAやVegas、その間の砂漠、すべてを体験したかのような気になれる

前作「暗く聖なる夜」で警察やFBIという組織を離れながらも協力して事件を解決したボッシュとマッケイレブだったが、本作はマッケイレブが移植心臓の不調で死去したところからスタート。

今回の敵は、生きていた「ザ・ポエット」。(これは冒頭で明らかにされるのでネタバレではないが、「ザ・ポエット」は先に読んでいないと本作は読めないと思った方がよい)。マッケイレブの死の疑惑からはじまったボッシュの捜査線とザ・ポエットにおびき寄せられたFBI捜査官レイチェルの捜査線が、中盤で見事に合流。

レイチェルはじめFBI側の官僚主義的で目の前の危機に鈍感な感じと今や警察官でもないのに渋いボッシュとが対比的に描かれる。

読みどころは、荒涼としたネバダの砂漠とトレーラハウスと売春の街のすさんだ風景での転回と、大雨で氾濫するロサンゼルス川での最後の闘いの場面。

私立探偵になって不自由だったボッシュが次作では退職者再雇用制度でLAPDに戻りそうだ。
天使と罪の街(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:天使と罪の街(上) (講談社文庫)より
4062754762
No.24:
(4pt)

自分をこの世に引き戻し、わが身を守るための喜びの盾を得たボッシュ

衝撃かつ感動のエンディングを味わった『暗く聖なる夜』に引き続き警察をやめたボッシュ2作目の本作は、新聞記者ジャック・マカヴォイを主役とする単発作品『ポエット』の続編でもあり、『わが心臓の痛み』の主役テリー・マケイレブに別れを告げる作品でもあります。
 特に『わが心臓の痛み』は、個人的にはこれまで読んだコナリー作品の中でも一二を争う面白さであり、その後ボッシュシリーズでの共演『夜より暗き闇』でも存在感を見せていただけに、本作でテリーに別れを告げなければならないというのは、なんとももったいない気がします。
 一方、『ポエット』からの続投となったは、マカヴォイ記者ではなくマカヴォイとともに殺人犯ポエットに迫るFBI捜査官のレイチェル・ウォリング。
 彼女の言動には少々イラっとさせられるところがありますが、さすがいぶし銀のボッシュだけあって、大人の対応です。
 そんなボッシュも、警察を辞め、ともすれば、世間から隔絶し世捨て人となりそうなところ、人生の晩年になって得た娘の純真さに触れることで、自分をこの世に引き戻し、わが身を守るための喜びの盾を得たと感じます。
 自身の娘の黒い瞳のなかに、おのれの救いを見たボッシュ。
 わが娘を愛し、彼女の世界観を愛す。彼女が世界を把握し、咀嚼している直截な方法を愛する。もちろん、彼女のそういう物の見方が長く続かないのは分かっており、それゆえ娘の見方を見聞きするひとときひとときが宝物のように大切になる。
 その思いは、自身が危機的状況に追い込まれた時に、娘はまだ自分を必要としている、娘のためにも生き抜かなければならないとの気持ちが沸き起こり、諦めず生にしがみつく最後の力を振り絞る原動力にもなる。
 娘に対するこのようなボッシュの気持ちは痛いほどに分かります。
 守るべきものができたボッシュの生きかたは、無意識ながらも大きく変わることになるのではないでしょうか。
 ともあれ、警察を辞めたボッシュの捜査姿勢は、警察時代に培われた「細部こそ重要。答えは常に細部にある。今は重要ではないと思えることが、のちに極めて重要なものであると判明することがある」との考え方に貫かれたもので、常にFBIの捜査より一歩前を進んでいます。
 ともに行動するレイチェルの活躍も、ほとんどボッシュの力によるもので、FBI内でレイチェルが評価されるようになったとしても、それは棚ぼたのように見えますね。
天使と罪の街(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:天使と罪の街(上) (講談社文庫)より
4062754762
No.23:
(3pt)

レイチェル邪魔するな

FBIの窓際女捜査官が邪魔で邪魔でどうにかしてもらいたい。ボッシュのおこぼれにあずかってるだけでして、これじゃ窓際に追いやられて当然でしょう。確か「スケアクロウ」にも出てたけど、共演者とすぐ寝るのはいかがなものか。
天使と罪の街(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:天使と罪の街(上) (講談社文庫)より
4062754762
No.22:
(4pt)

シリーズ10作目は(読者にとっても)ショックと怒りから始まる

ボッシュ・シリーズ10弾、加えてノン・シリーズ『ザ・ポエット』の続き。『わが心臓の痛み』等関連。
冒頭からショック!こんなのあり⁉ ……コナリーの非凡さを思い知った。
それと同時に不気味な恐怖感が漂う。コナリー作品は、前半は比較的退屈で終盤一気に怒涛の展開というのが多いように思うが、本作は序盤からどんよりといやな雰囲気だった。
『ザ・ポエット』では真犯人の動機が今一つはっきりしないまま終わったが、ここで念押しした印象。
ラストで明かされたエピソードは、読者の怒りとショックに対するせめてもの慰みとしたのか。
それにしても、かつてはそれぞれの後輩だった女たちのかわいげのないこと。レイチェルの後輩もさることながら、キズミン・ライダーも前巻あたりではすっかりでかい態度になっている。
ボッシュの、エレノアに恋焦がれる気持ちは冷めたよう。
ベガスにある仮宿の隣室女性の謎とかも今後明かされたりするのかな?(⇒次巻でキャシー・ブラックだと知る!)
天使と罪の街(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:天使と罪の街(上) (講談社文庫)より
4062754762



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