チェイシング・リリー



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初公開日(参考)2003年08月
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長編小説

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チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)

2006年12月31日 チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)

「リリーはいるか?」引っ越してきたばかりのピアスのもとに、間違い電話が次々にかかってきた。ナノテク学者でベンチャー企業の代表も務めるピアスが興味を覚えて調べてみると、リリーはネット上に広告を出している評判のエスコート嬢だった。その彼女が失踪していることを知ったピアスは、行方を捜し始める。だが直後、彼を物騒な男たちの手荒な警告が襲った―ハードボイルドの旗手が放つクールでホットなサスペンス。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点5.50pt

チェイシング・リリーの総合評価:6.55/10点レビュー 20件。Dランク


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全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(7pt)

コナリー版『幻の女』

コナリーのノンシリーズである本書はIT業界の若き社長ヘンリー・ピアスを主人公にした、消えたエスコート嬢の行方を追うミステリだ。

まず本書の題名はそのままピアスに間違い電話が掛かってくる原因となったエスコート嬢に電話番号を変えてもらうために探す内容そのままだが、原題は“Chasing The Dime”。直訳すれば「十セント硬貨を追って」となるが、これは将来高性能コンピュータが十セント硬貨ぐらいの大きさになることが予想されており、それを実現させたものが次世代のコンピュータ産業を制することになることから、コンピュータ技術者たちが鎬を削っていることを示している。それがIT産業でナノコンピュータの分野である分子コンピュータ開発で一足先に抜きんでいるピアスを取り巻く現状を表している。

まず驚くのがコナリー作品とは思えぬほど、全体的に軽みがあることだ。それは本書の主人公ヘンリー・ピアスはこれまでのコナリー作品では考えられないほど、浅薄で未成熟な人物として映ることに起因していると思われる。

34歳の新進のIT企業の若き代表は会社の部下の1人だったニコールという女性と別れ、未練たらたらな状況を変えようと彼女と住んでいた家を出て新しいアパートメントに移るが、新しい電話番号にはひっきりなしにエスコート嬢のことを尋ねる電話が掛かってくる。気になって調べたところ、これが飛び切りの美人で、自分と同じ電話番号をサイトから削除してもらうよう頼むためと口実にして消えた彼女の行方を追う。
若くしてIT業界の寵児となったために女性経験が浅い男の、実に青く身勝手な捜査なのだ。そしてその我儘な捜査に周囲の人間も巻き込まれて辟易する。

つまり他者との距離感に対して非常に鈍感で、自分の目的達成のためにどんどん他人のプライヴェートな部分にも踏み込んでいく。特にリリーの行方を追うために情報提供と協力をお願いするロビンは彼の行動が原因で自分も手ひどい目に遭う。それに責任を感じるピアスは何もできやしないのに助けると親切の押し売りのように何度も連絡を取り、終いには相手の怒りを買ってしまう。

更には過去に犯した悪戯半分の犯罪歴によって逆に刑事に失踪者捜しを装った失踪者殺人の容疑者として目を付けられ、窮地に陥ることになる。

更にはロビンとリリーがエロサイトに掲載したSMシーンを会社のPCで食い入るように見ているところを秘書に見られて、秘書の解任を求められるなど、いわゆる社会人としての常識に欠けた所が多々見られる。

このように技術オタクの若造が社会不適合者ぶりを発揮して自己中心的に振る舞い、周囲の目に気付かずに狼狽する様子がアクセントとして織り込まれ、ユーモアを醸し出しているため、私はてっきり彼が追っているリリーも元締めによってどこかで消されたと思わせつつ、物語の最終で元気な姿で登場し、そしてこのサエナイ君と最後は恋人となる予感をはらませてハッピーエンドを迎えると云うお気楽ミステリのように考えていたが、やはりコナリー、そんな非現実的なロマンティック・コメディを一蹴する。

リリーは結局遺体となって発見される。しかも何者かによってピアス名義で借りていたトランクルームの中に置かれた冷蔵庫の中に保存されるような形で。しかもそのトランクルームは6週間も前に借りられていた。
つまり一連の電話番号がエスコート嬢のそれと同じであることから始まる騒動はピアスを陥れるために仕組まれた罠だったことが判明するのだ。

窮地に陥ったピアスはこれが姉の死を模したものだと察し、その死について知る者こそが今回の一連の工作を実行した者だと推理する。

さてコナリー作品にはハリー・ボッシュシリーズを軸にしたいわゆるボッシュ・サーガが繰り広げられるが、ノンシリーズである本書も例外でなく、まずリリー殺害の容疑を掛けられた主人公のヘンリー・ピアスが紹介される弁護士はジャニス・ラングワイザーである。
彼女は『エンジェル・フライト』でボッシュと組んだ後、『夜より深き闇』でボッシュが手掛けた事件の次席検事補として登場し、華々しい活躍を見せ、読者に強い印象を残した人物。その後彼女は検事を辞め、刑事弁護士に転職したことが判明。そして彼女からは前作『シティ・オブ・ボーンズ』でのボッシュの―具体的に名前は出ないにせよ―退職も明かされる。

しかしシリーズのリンクはそれだけでなく、もっと驚くのピアスがなんとドールメイカー事件と関わりがあったことが判明することだ。

このことから本書はその他大勢として片付けられる人物にも一つの人生があり、そしてその人の死によって人生を変えられた人がいることを1つの作品として描いていることが判る。
やはりこれは9・11の同時多発テロで多くの尊い命が奪われたことに対する、コナリーなりの追悼の書と云えるだろう。大量死の中に埋もれた人々に名を与え、そしてその人の人生と遺族の人生を語ることを強く意識していると思われる。

インターネットが普及した時代でも幻の女を探すのは非常に困難であることが解る。しかし昨今のウェブ事情、町全体に仕掛けられた監視カメラやGPSなどの位置情報システムを駆使すればもっとたやすくなっており、ドラマ『CSI』を観ると実に鮮やかにミスター/ミスXの身元は明かされていく。
本書はインターネットが普及し始めた頃だからこその『幻の女』だった。
美しさを武器に大金を稼ぎ、母親に仕送りをしていた娘の結末にコナリーはあくまでも現代アメリカの残酷な現実を突きつける。

チャンドラーを敬愛し、その影響を包み隠さず自作に反映し、そしてロス・マクドナルドばりのアクロバティックなサプライズを物語に取り込む、まさに現代ハードボイルド小説の雄コナリーがノンシリーズで挑んだのはアイリッシュの変奏曲。
しかもそれを現代風にアレンジし、いささか軽めのテイストで信仰させながらも、やはり最後はコナリー独特の苦みを残す。

本書を最後にノンシリーズは書かれていない。いわばボッシュシリーズを幕を下ろそうとして新たな作風を模索していた頃の作品だ。
この後リンカーン弁護士シリーズという新たな地平を見出し、ボッシュシリーズと並行して書いていく。
本書はコナリーがそこに至るまで暗中模索、試行錯誤しながら著した非常に珍しい作品だ。現代ハードボイルド小説の第一人者として名高いコナリーもそんな時期があったことを示す貴重な作品としてファンなら読むべきであろう。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:
(4pt)

マイクルコナリーの小説は殆ど読んでいますが

この小説は全く頂けませんでした。
どうしてこんな野暮な?ミステリーを書いたのでしょう??そちらの方がミステリーでした。

ももか
3UKDKR1P
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No.18:
(2pt)

普通、探すかなあ?

普段、小説や映画の主人公を自分に置き換えて、もし自分ならばどうするだろう?と考えながら鑑賞している。

しかし、間違い電話から見ず知らずの女性を探し始めるという、この小説の主人公の行動には全く共感できなかった。物語の途中で主人公の行動の理由の説明がなされるが、あまり説得力は感じられなかった。

自分が主人公であれば電話番号を変えて小説は即終了となるだろう。
チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4151752021
No.17:
(4pt)

名手がいつも通りの手腕を発揮したサスペンス

ある化学者の引っ越し先で間違い電話が多発し・・・というお話。

上記だけだと何だか判らないと思いますが、間違い電話を追求していく内に様々な人の欲望の渦巻く事件に主人公が巻き込まれ・・・という巻き込まれ型サスペンスの典型を行くサスペンスでした。

書いているコナリー氏が、ボッシュ・シリーズで名手である事は良く知られていると思うので、最後まで飽きずに読める事は保証できます。最後のひねりも流石。

ボッシュ・シリーズのある事件が主人公の過去に反映されていて、ファンにははっとさせられその辺もキング先生みたいでやはり余裕のある作家だと思いました。

個人的な事ですが、私も自宅の家電の番号が似た感じの番号の人がいて、その人宛ての電話がよくかかってきましたが、間違い電話に関わると怖い事になる、というこの小説の発端を読んで、なるべく関わらない様にしようとか思いました。

名手がいつも通りの手腕を発揮したサスペンス。機会があったら是非。
チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4151752021
No.16:
(5pt)

コナリー作品に外れはない!

マイケル・コナリーのシリーズものは全作読み終えたがノン・シリーズだけは『わが心臓の痛み』他の二作は未読だったのでまず『チェイシング・リリー』(2002年)を入手して読むことにした。
 原題は「Chasing The Dime」であり直訳すると「10セント硬貨(ダイム)を追う」である。  これは本書の主人公ヘンリー・ピアスが「コンピューターを10セント硬貨の大きさにするぞ!」という意気込みで仕事を始めたときオフィスの壁に掛けられたシンボルマークなのである。
 コナリーが本書を、2002年に物語構想して書くときには分子コンピューターなどは最先端の研究であり、コナリーのこの分野での知識の豊富さに驚いてしまった。
 名門スタンフォード大学を卒業して立ち上げたベンチャー企業で成功したヘンリー・ピアスは恋人ニコールと別れて新居に引っ越した。
 引っ越し先の家に引いた新しい電話にかかってくるのが男ばかりで「リリーは居るか?」と言う。
 どうもリリーという女はエスコート嬢であるようだ。
 興味をもったピアスはリリーの行方を探し始める。
 この執拗なリリー探しを読みながらたいていの読者は苛立ちを覚えてしまうだろう。
 電話番号を変えれば面倒なことは回避できるからである。
 なぜピアスがここまでリリー探しに拘るのか著者のコナリーは小出しに明らかにしてくる。
 とにかくコナリーの完全主義的偏執狂とでも(解説の典廐五郎氏のコナリー評)いえるような細部への拘りで構築されたストーリーだから、読者はどんどんストーリーの中へ引き込まれてゆく。
 絶対絶命に瀕したピアスはどうなっていくのか?
 ノンシリーズ一作目『わが心臓の痛み』も傑作だったが、本書『チェイシング・リリー』もコナリーならではの傑作だから、ついつい夜更かしして楽しみながら読み終えました。
チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4151752021
No.15:
(3pt)

コナリー作品の中では・・・

自分がボッシュシリーズファンというのもありますが、コナリー作品の中では少々物足りなかったです。面白いですが。
あと、これはしょうがないですが、当時は最先端だったIT技術も、現在はあたりまえだったりするので、
その点理解したうえで読んだ方がいいかもしれません。
チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4151752021
No.14:
(5pt)

いつも感じるコナリー作品のレベルの高さ

賭けてもいい。コナリーの作品を読んだ多くの読者は、「この作者の作品には、外れはない」と思うはずだ。私は、彼の作品をほぼすべて
読んでいるが、何時も同じ感想、「はずれなし」ということをAmazon Reviewに載せている。「はずれなし」とは、コナリーに些か失礼な言い方
であり、要はすべて傑作ぞろいということである。巻末の書評で典厩五郎が全く同じ言い方をしている。典厩は、これだけの名作を常に
世に出しながら、世の中のコナリーに対する評価は低すぎないかという意味のことを述べているが、これも同感。コナリーの作品のコアとなる
シリーズは、刑事ボッシュシリーズだが、この作品「チェイシング・リリー」では、ピアスという名前の化学者でベンチャー企業の若き社長が主人公である。
彼が転居した部屋に間違い電話が相次ぐ。全て、この電話番号を以前使っていた売春婦リリーを尋ねての電話だ。ピアスは、興味本位で
このリリーを探ることになる。この後、彼はとんでもないトラブルに巻き込まれていく。このストーリー展開はさすがと言うしかない。どんどん、
読者は作品に引き込まれるはずだ。そして、意外な事件の結果が彼を待つことになる。とにかく面白い。ボッシュも登場はしないが、
以前の作品「ナイト・ホ^クス」の殺人事件と絡んで、犯人を射殺した刑事という表現で出てくることも興趣をそそられる。決して寡作な
作家ではないコナリーがいつもこれほどのレベルの作品を世に出し続けることにまたも、驚嘆させられた作品である。
チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:チェイシング・リリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4151752021



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