ラスト・コヨーテ



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    初公開日(参考)1996年06月
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    長編小説

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    ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)

    1996年06月01日 ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)

    ロサンジェルスを襲った大地震は、ボッシュの生活にも多大な影響を与えた。住んでいた家は半壊し、恋人のシルヴィア・ムーアとも自然に別れてしまう。そんななか、ある事件の重要参考人の扱いをめぐるトラブルから、上司のパウンズ警部補につかみかかってしまったボッシュは強制休職処分を受ける。復職の条件である精神分析医とのカウンセリングを続ける彼は、ずっと心の片隅に残っていた自分の母親マージョリー・ロウ殺害事件の謎に取り組むことに。(「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.67pt

    ラスト・コヨーテの総合評価:8.85/10点レビュー 33件。Aランク


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    No.3:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
    (8pt)

    傷を負ったハリネズミ、ボッシュの原点を描く

    L.A.市警のはぐれハリネズミ・ボッシュの第4作。大地震で家を失いかけ、署内トラブルで仕事を失いかけているボッシュが、自身の運命を決めた母親殺害事件の謎を解く警察ハードボイルド・ミステリーである。
    捜査に関わるトラブルで上司を暴行したボッシュは強制的に休職処分となり、復帰のためのカウンセリングを受けさせられていた。その退屈を紛らわすため、33年間、ずっと心に居座っている実母・マージョリーが殺害された事件の真相を暴こうと決心する。ボッシュには何の捜査権限もない事件であり、当然のことながらボッシュの捜査は周囲との軋轢を引き起こし、上司や内務監査部門から厳しい目を向けられる。それでもボッシュは強引に、時にはルールを無視しながらあらゆる障害を乗り越え、33年間隠されてきた事件の闇を明るみに出すのだった…。
    第1作から小出しにされてきたボッシュの生い立ち、常に傷を負ったハリネズミのような怒りを充満させている性格が形成されるまでの背景がメインテーマである。そういう面でも、本書はボッシュ・ファンは必読。また、本作だけでも十分に楽しめる傑作ハードボイルドとして、本シリーズ未読の方にもオススメする。

    iisan
    927253Y1
    No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
    (10pt)

    ボッシュの過去の因縁への終止符

    前作『ブラック・ハート』ではボッシュがハリウッド署に島流しされることになった事件、ドールメイカー事件の真相を探る物語であったが、シリーズ4作目である本書ではさらに彼の歴史を遡り、迷宮入りとなった娼婦だった母親マージョリー・ロウ殺害事件を休職中のボッシュが再捜査する物語となっている。

    そして本書は様々な暗喩に満ちた作品でもある。

    例えばボッシュが休職中に相棒のジェリー・エドガーが解決した事件は銃による殺人事件かと思って捜査すれば、単にエアバッグ修理中に起きた死亡事故に過ぎなかったことが判るのだが、事故当時にもう1人の人間がいた痕跡があったことから調べてみると7年前に起きた2人の女性が殺害された事件の犯人の指紋と一致し、犯人逮捕に至るエピソードが出てくる。
    実はこの何気ないエピソードが物語の最終、真犯人を突き止める最後の決め手になる指紋への暗喩となっている。

    さらに本書のタイトルにもなっている1匹のコヨーテの存在。ボッシュは事件関係者で母親と親友だった当時メリディス・ローマンと名乗り、今はキャサリン・リージスタとなっている女性と逢った帰り道に1匹のコヨーテと遭遇する。その痩せ細り、毛がばさばさになった風貌に今の自分を重ねる。
    地震前、ボッシュの自宅の下の崖には1匹のコヨーテがいたが、震災後それはいなくなった。そしてボッシュもまた今は刑事休職中の身でシルヴィアにも去られ、酒を手放せず、目の下の隈がなかなか取れないほど疲れ果てた表情をしている。そんなくたびれた自分は昔気質の古い刑事であり、出くわしたコヨーテももしかしたらLAの住宅地を徘徊している最後のコヨーテではないか、つまりいついなくなってもおかしくない存在だと思うのである。

    孤独で育った少年は大人になりコヨーテになった。しかも最後のコヨーテに。本書の原題にはそんな寓意が込められている。

    またボッシュの捜査自体も実に危うい。今回休職中の身であるから拳銃もなければ警察バッジもない。しかも上司パウンズの反感を大いに買っていることから警察が支給する車も取り上げられる。
    刑事から初めて一己の市民となったボッシュはバッジと拳銃がいかに自分を守る鎧となっていたかを知らされる。

    しかし彼はそんな不利な状況でも持ち前の強引さでことを進めていく。
    パウンズの名を騙って警察のデータベースに記録を照合したり、勝手にロス市警に入り込んで指紋照合を頼んだり、母親の事件の捜査資料を持ち出したり、更にはパウンズの警察バッジを盗んだり、更には容疑者と目される、今では街の有力者となっている大手法律事務所経営者のゴードン・ミテルのパーティーに潜り込んで―この時もパウンズの名を借用する!―、揺さぶりを掛けたりと、そのアウトローな捜査ぶりは確かにコヨーテを彷彿させる。

    しかしこのアウトローな行動が意外な展開を及ぼす。この展開にはかなり驚いた。そして同時にハリーの疫病神ぶりがこの展開によっていっそう際立つ。
    いやはやコナリーの構成の上手さには唸るしかない。

    また本書では次々に登場するキャラクターが実に魅力に溢れている。

    シリーズを重ねるにつれてレギュラーキャラクターの存在感が増すのは当たり前だが、ちょっとした端役にも瑞々しい存在感を感じさせるほどコナリーの筆致は熟練されている。

    まずボッシュが母親殺しの調査のために最初に訪れる母親の親友だったキャサリンの造形が強烈な印象を与える。娼婦という暗い過去を持ち、名前も変えて今の生活を手に入れたこの女性はしかし、警察連中にも容赦と引き替えに自分の身体を売り物にしてきた自分の過去に対して恥じず、人生最悪の時期であった娼婦としてのプライドも今も持ち、泰然自若としてボッシュに向き合い、そして語る。彼女の気高さこそが今の生活を手に入れる原動力になっていたことが実に深く心に沁み込んでいくのである。

    また当時事件を担当した元ハリウッド署殺人課刑事のマッキトリックも忘れ難い。残された資料の内容の薄さからボッシュは彼を愚鈍な警官かチンピラどもに小銭をたかる腐敗警官かと思っていたが、実際は事件を道半ばで取り上げられた優秀な警官だったこと、そして彼自身マージョリー・ロウ殺害事件が迷宮入りしたことに悩まされている男だと気付かされる。休職中のボッシュが身分を偽り、近づくが簡単にその偽装を見破り、逆に返り討ちにしようとする老練ぶり。
    またボッシュが当時の被害者の子供だと知ると一転して協力的になり、一緒に魚釣りへ乗り出す―このシーンは個人的にはかなり気に入っている―。彼がボッシュに事件の顛末を話すのは彼の悔恨をボッシュに託したかったからなのだろう。

    そして何よりも本書において特筆なのはボッシュの母マージョリー・ロウの造形だ。ボッシュが母親殺しの捜査を進めていくうちにこの母親のボッシュに対する深い愛がひしひしと滲みだしてくる。
    娼婦という仕事で女手一つで息子を育てようとしていたが母親不適格として子供を養護施設に入れられ、毎週通っては慈しんでいた母親。いつか親子2人で暮らせるよう、ボッシュの父親である弁護士に手助けを頼んでいたが、その願いが叶う前に路上で遺体となって発見されてしまう。
    一介の娼婦の殺人事件はいつそんな目に遭ってもおかしくない数多ある最下層の人間に起こる事件として片付けられ、十分な捜査が成されないまま、今日に至る。

    しかしそんな風に片付けられた事件の背後には今では街の各界の有力者たちとなった人々のある暗い過去と母親への繋がりがあったことが次第に見えてくるのだ。

    それと同時にボッシュは今まで直視しなかった母親について事件を調べることで思い出を手繰り寄せ、母の大いなる愛を知らされ、また悟る。

    「どんな人間でも価値がある。さもなければ、だれも価値がない」

    これがボッシュの信条だ。
    しかし彼は母親に対してはその信条に従わなかった。
    しかし彼は母親殺害事件の捜査資料を当たるうちに当時の警察が彼女の価値をおざなりにしていたことを知る。それはまた自分もまた同類であったと悟り、信条に従い、母親の死の真相に向き合うことを決意したのだった。

    そして捜査が進むにつれて法曹界の大物へと事件は繋がっていく。

    また今回物語の重要なファクターの1つとしてボッシュのカウンセリングを担当している精神科医カーメン・イノーホスの存在がある。ストレスによる強制休職中であるボッシュは精神科医のカウンセリングを受け、復帰が可能であることを証明してもらわなければならないのだが、その相手がカーメンである。
    しかし彼女こそが本書におけるボッシュの行動を後押しする存在となっているのが興味深い。

    現在のボッシュを形成する原初体験をその不遇な過去に見出し、彼の過去を語らせることでボッシュは殺害された母親に向き合い、そして未解決であるその事件の調査を始めることを思いつく。定期的に行われるカウンセリングはボッシュに内面と対峙させ、またそのことで彼もまたそこからヒントと自分の存在意義をも悟っていく。

    さらに彼女は物語の最終でボッシュに事件の真相を突き止める、女性ならではの視点を提供することにもなるキーパーソンとして機能する。

    そしてこのカーメンとの面談は今まで断片的に語られてきたボッシュの生い立ちを1本の線として繋いで読者に示すことにもなる。

    娼婦であった母親と暮らしていたボッシュは彼女が行政によって不適格とみなされて養護施設に入れられ、離れ離れになる。いつか一緒に暮らすことを夢見ていた母親はボッシュの父親であった弁護士に助けを借りてことを進めていくがその願いが叶う前に殺害されてしまう。
    ボッシュはその後も養子に出されるが、引き取った家族から何度か養護施設に戻され、そして16歳になって、ボッシュがサウスポーでいい球を投げるという理由で大リーグ選手を育てたいと願う男の許に引き取られるが、その願いには従わず、ボッシュは陸軍へ入隊しベトナム戦争へ出兵する。
    帰還後警察官となり、ロス市警で優秀な成績を修めて、メディアにもたびたび登場するヒーロー刑事となるが、ドールメイカー事件の責任を取らされて停職処分を受けた後、現在のハリウッド署勤務となる。

    そんな生い立ちで孤独を幾度となく経験しながらもボッシュには常に女性が近寄ってくる。

    1作目ではFBI捜査官で相棒を務めたエレノア・ウィッシュが、2作目は死亡した麻薬捜査官の元妻シルヴィア・ムーアと同棲していたが、彼女が去った後、本作ではマッキトリックの許を訪れた出先のフロリダで亡き父の家を売りに出して面倒を見ている画家志望の女性ジャスミン・コリアンと食事と一夜を共にするようになる。
    確かにデビュー作においてテレビにも出演していたスター刑事で見た目も悪くないと書かれていたが、なんというモテぶりだろうか。

    ボッシュが彼女に魅かれたのは彼女の中に自分と同種の暗闇を見出したからだが、また同時に彼女もまたボッシュが他の警官とは違う人間臭さを感じ、そこに魅かれていく。父親の遺産で暮らし、画家を目指す彼女は実は過去に人を殺したことのある女性だったことが判明する。実に謎めいた女性だ。

    ところで書評家の池上冬樹氏が指摘しているように作者コナリーは過去の名作を取り込み、自分というフィルターを通じて物語へと消化している。

    例えばチャンドラーを敬愛するコナリーだが、先にも書いたボッシュの信条、
    「どんな人間でも価値がある。さもなければ、だれも価値がない」
    を読んでニヤリとしたのは私だけではあるまい。これはまさにマーロウのあの有名な台詞へのオマージュであろう。

    またボッシュが母親の当時の親友に話を聞きに行った帰りに立ち寄ったバーで出くわす、ルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」を口ずさむ25歳くらいの女性のエピソードもチャンドラーが『長いお別れ』で書いたバーでマーロウが浸る女性に関するエピソードを想起させる。

    更に本書の核を成す娼婦の母親殺しは作家ジェイムズ・エルロイの半生がモデルとなっているのは明確で―池上氏はこの作家の心酔者であり、その特異な過去、つまり情念の作家としてのエルロイの特異性を借り物のように取り込んでいるコナリーの創作姿勢が気に入らないようだが―、作中でも娼婦だったエルロイの母親が殺害された実際の事件『ブラック・ダリア事件』にも触れている。

    そして私が思うに、最たるオマージュは本書は実は『マイ・フェア・レディ』や『プリティ・ウーマン』の裏返しの物語であったということだ。

    身分違いの男と女が出逢い、男はその屈託ない女の魅力に惹かれ、結婚まで誓う。それは実に素敵なシンデレラ・ストーリーだったが、それがお伽話に過ぎなく、現実の世界は利害関係によってそんなものは抹殺される。それが現実なのだ。
    本書は実に現実的な『マイ・フェア・レディ』だったのだ。

    そしてもう1つ物語がある。事件の真相に纏わる2人の女のエピソードだ。

    しかし人の死の多い事件だった。
    葬り去られたマージョリー・ロウ殺害事件の真相を探っていくうちに現れる容疑者たち、関係者たちが次々と死んでいく。

    誰もが過去に隠した罪に苛まれて生き、いつそれが暴かれるかを恐れながら生きてきた。
    ハリーが現れることでその時が来たと悟り、ある者は観念して、またある者は必死にそれに抗おうとして、またある者は更なる秘密を暴かれるのを防ぐために死出の旅に発つ。

    過去に縛られ、過去を葬り去り、忘れさせようとした人たち。しかし同じく過去に縛られながらもその過去に向き合い、克服しようとした1匹のコヨーテに彼らは敗れたのだ。

    ハリーの母親の事件を解決したことでハリー・ボッシュの物語はここで第一部完といったところか。
    デビュー作の時点で盛り込まれていたハリーに纏わる数々の謎は本書で一旦全て解決を見た。さらに彼はかつてスター刑事としてテレビ出演していた時に得た収入で購入した家も地震によって失った。

    カウンセラーのカーメン・イノーホスはボッシュに母親の事件を解くために彼が警察官になったのだと示唆する。つまり母親の事件を解決した今、彼は警察官であることの意味が無くなったのだ。だからこそ最後ボッシュが警察を辞めることを決意したのだ。
    実際、当時作者はここでハリーを永遠に退場させようと思ったのかもしれない。

    ただ彼に新しく現れたジャスミン・コリアンという新たな謎がまた生まれた。彼女が過去に犯した殺人については結局詳しく語られないままだった。
    アーノウ・コンクリンはボッシュに自分に合う人がいたら、過去はどうあれ命懸けでしがみつけと説く。

    ボッシュはジャスミンこそが今の自分に合う者であり、命がけでしがみつく存在であると確信した。
    ただ自分と同類と感じていたシルヴィア・ムーアとも結局は別れてしまったボッシュ。自分と同じ暗闇を持つと目を見て確信したジャスミンもまた行きずりの女となるのだろう。

    母親の愛の深さを知り、また過去に葬り去られた母親殺害の事件を解決したことで母親の無念を晴らしたボッシュ。しかし彼の捜査によって犠牲となった者達の死は一生背負うことになる十字架になるだろう。
    しかしジャスミン・コリアンという新たなパートナーを得たボッシュの再登場を期待して待ちたい。今までとは違ったボッシュと逢える気がしてならないからだ。それはきっといい再会になるだろうとなぜか私は確信している。しばらく私はボッシュに、いやコナリー作品にしがみついていくことにしよう。


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    Tetchy
    WHOKS60S
    No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
    (8pt)

    ラスト・コヨーテの感想

    今作は母の事件の真相を私的に調査するHBに、キャラクターや人間像を強く印象付けられました
    読者はHBに深く感情移入すると思います
    話の展開も次々に真相が判明し、後半はいっきに読んでしまいました
    私はこのHBシリーズ4作目が今までによんだM・コナリー6作中、最も面白かったです
    中年男の新たな恋愛の行方も気になりますし、次回作以降も楽しみになりました

    のぶくん
    UIM2AM2N
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    No.30:
    (3pt)

    良かった

    探していました
    ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)Amazon書評・レビュー:ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)より
    4594020003
    No.29:
    (3pt)

    良かった

    探していました
    ラスト・コヨーテ〈下〉 (扶桑社ミステリー)Amazon書評・レビュー:ラスト・コヨーテ〈下〉 (扶桑社ミステリー)より
    4594020011
    No.28:
    (5pt)

    おれは、長い間自分が任務を抱えていると思っていた。

    ボッシュシリーズ4作目の本作は、ボッシュのかかえるトラウマを克服する4部作の最終作と言えるのではないでしょうか。
     ボッシュのかかえるトラウマ、つまり、自分のせいで母は殺されたのではないかという心の深淵にある意識の克服を、これまでの作品をとおして、まさに本作で決着をつける、といった趣を感じます。
     本作が精神分析医カーメン・イノーホスとの面談場面から幕を開けることが象徴的に示しています。
     第一作「ナイトホークス(原題Black Echo)」からすでに母親のことが触れられており、前作「ブラック・ハート」では、ボッシュがハリウッド署に左遷される原因となったドールメーカー事件に絡む民事裁判の中で、ボッシュの心の深淵に、ボッシュの母親が娼婦であったことを原因とする復讐心があるのではないかと指摘されるなど、今のボッシュという人間(不寛容さ、フラストレーションを昇華できず、腹を空かせて、悲しくて、同時に脅しつけるような何かがある最後のコヨーテのような存在)が形成される根底に、ボッシュの母親が殺害されたことが大きな影響を与えていることが触れられてきました。
     そして、ついに本作において、ボッシュが自身のトラウマと正面から向き合うことになります。
    「おれは、長い間自分が任務を抱えていると思っていた。ただ、おれは、それが何なのか知らなかった。あるいは、つまり・・・それを認めていなかったんだ。たぶんおれは怖かったんだ。おれはそれを避けていた。長い歳月。とにかく言わんとしているのは、おれがそれをようやく受け入れたということなんだ」
     母親の死は、長い間価値のある人間と見なされていなかったがため、真剣に捜査されず闇に葬られたまま放置されていることを知りながらも、これまで向き合うことができなかったボッシュ。
     そんな本作、ボッシュが自身の内面に向き合うカウンセリング場面が多く描写され、ゆったりとしたスタートを見せるものの、事件が動き出す中盤以降、グイグイと読ませるスリリングな展開もあり、前作同様、最後まで飽きさせません。
     特に、母親に関するトラウマにあわせて、自身の行動から引き起こすことになる新たな事件の責任を感じ、その対価を支払う必要を感じるボッシュの気持ちがヒシヒシと伝わってくる展開には驚かされます。

     思うに、マイクル・コナリーは、「ナイトホークス」執筆の段階で、本作にいたるまでを、ボッシュという人間が自身のトラウマを克服する物語を4部作構成でつくりあげるということを、すでに頭の中で作り上げていたのかもしれません。
     コナリーは、本作でボッシュシリーズは一段落させ、ボッシュが登場しない「ザ・ポエット」を発表した後、再び一段間ステージがあがったボッシュシリーズをスタートさせます。
     Amazon Primeのテレビドラマでボッシュを初めて知り、その後原作を読み始めたのですが、ドラマと違った原作の面白さにすっかりはまっています。
     マイクル・コナリー作品には、エンタメ要素をバランスよく取り込みながらも文学的クオリティーの高さを持つ筆の巧さを感じます(レイモンド・チャンドラーに近いかもしれません)。
     次のボッシュシリーズスタートの「トランクミュージック」では、ドラマではすでに結婚、離婚している、もとFBI捜査官エレノア・ウィッシュが再登場するようで、ボッシュクロニクル的にとても楽しみです。
    ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)Amazon書評・レビュー:ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)より
    4594020003
    No.27:
    (2pt)

    マージョリ・ロウ殺害の真相究明に尽きる。

    世田谷の図書館になかったので止むをえずAMAZONで古本を買って読んだ。
    物語のためかいつになく古い記録ばかりをあさっていてつまらなかった。大事件を解く刑事の本領が出ていなくて面白くなかった。最後に驚愕の事実が分かるのが驚き程度だ。
    物語の中でロスアンジェルスの中のストリートが良く出てくるが実際に地図で見ると其のとうりにストリートがあるのがわかって面白かった。Googleで地図をドンドン拡大し、細部のウッドロウ・ウイルソン・ドライブも分かった。
    ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)Amazon書評・レビュー:ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)より
    4594020003
    No.26:
    (4pt)

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    4594020003



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