訣別



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初公開日(参考)2019年07月
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長編小説

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訣別(上) (講談社文庫)

2019年07月12日 訣別(上) (講談社文庫)

ボッシュは、ロス市警時代の旧知の知人が本部長を務めるロス北郊の小さな自治体サンフェルナンド市(人口二万人強)の市警察に誘われ、無給の嘱託刑事として勤務するようになっていた(一方で私立探偵免許をあらたに取り直していた)。 ある日、元ロス市警副本部長で、現在はセキュリティ会社トライデント・セキュリティの重役になっているクライトンに呼び出され、トライデント社の顧客の大企業のオーナーである富豪、ホイットニー・ヴァンス(八十五歳)が、ボッシュを名指しで依頼したいことがあると言っている、と告げられる。依頼内容は、クライトンも知らず、ボッシュにのみヴァンス本人から伝えるとのこと。 ヴァンスに会いにいくと、高齢と疾病のため、老い先短いことを悟った老人から、大学生の頃知り合い、妊娠させながらも、親に仲を裂かれたメキシコ人の恋人を、あるいはもしその子どもがいれば、探してほしいと頼まれる。ヴァンスは未婚で、ほかに子孫はおらず、彼が亡くなれば莫大な財産の行方が気になるところで、もし血縁者がいれば、会社の将来を左右する事態になるかもしれず、そのため、会社側の利益(ひいては自分たちの利益)を優先させる行動に出る重役たちがいることが予想されるため、調査はくれぐれも極秘でおこなってほしい、と念を押される。また、この調査に関する報告は、かならずヴァンス自身にのみおこない、ヴァンス以外の人間から調査への問い合わせは一切しない旨、告げられる。(「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点9.00pt

訣別の総合評価:8.85/10点レビュー 27件。Sランク


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全3件 1~3 1/1ページ
No.3:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

さようならの裏側

2017年3月に第1作を手に取り、2年7カ月を経てようやくここまで辿り着いた。
しかしその道のりは長いなんて全然思わなかった。なぜならこのシリーズはそのどれもが私に最高の読書体験をもたらし、そして読み終わるとすぐに次の作品を手に取らさせたからだ。

今回ボッシュが追うのは2つの事件。1つは免許再取得によって再開させた私立探偵稼業において、大富豪のホイットニー・ヴァンスから若き頃に別れることになった大学食堂の女性との間に生まれたと思われる子供の正体と行方を捜す依頼。

もう1つは嘱託の刑事として勤務するサンフェルナンド署の未解決事件、<網戸切り>と名付けられた連続レイプ犯を追う事件だ。

コナリーはこの2つの話を実にバランスよく配分して物語を推し進める。
これら2つの話はよくあるミステリのように意外な共通点があるわけではなく、平衡状態、つまり全く別の物語として進むが、コナリーは決してそれら2つの話に不均衡さを持たせない。どちらも同じ密度と濃度で語り、読者を牽引する。
そう、本書はボッシュの私立探偵小説と警察小説を同時に味わうことができる、非常に贅沢な作りになっているのだ。

さて、まず私立探偵のパートではチャンドラーへのオマージュが最初からプンプン匂う。それもそのはずで本書の原題“The Wrong Side Of Goodbye”そのものがチャンドラーの『長いお別れ』、原題“The Long Goodbye”へのオマージュが明確であり、大金持ちの家への訪問とこれまたフィリップ・マーロウの長編第1作『大いなる眠り』を髣髴とさせる導入部。

その富豪の依頼は親によって別れさせられた、かつて愛した女性が宿した自分の子供探し。この内容だけがチャンドラーには沿っていないが、私立探偵小説としては実に魅力的な内容だ。

そしてこの1950年に別れた女性の足跡を辿る、つまり約70年も前の過去の足取りを、それまで培ってきた未解決事件捜査のノウハウと刑事の直感で切れそうな糸を慎重に手繰り寄せるように一つ一つ辿っていくボッシュの捜査はなかなかにスリリングで、しかも人生の綾をじっくりと味わわせる旨味に満ちている。

一方連続レイプ犯<網戸切り>を追う警察パートもまたこれに勝るとも劣らない。事件の捜査の歩みは遅いが、レイプ未遂の事件が起きるとそこからの展開は警察捜査と犯人の不可解な行動から推測される現場に残された手掛かりを辿るきめ細やかさはボッシュが閃きと優れた洞察力を持った一流の刑事であることを示すに十分な内容だ。

そして同僚のベラの消息が不明になった後の怒濤の展開はまさにコナリーならではの疾走感に満ちている。

また一方でボッシュは非常勤の嘱託刑事という立場とロス市警を訴え、賠償金を勝ち取った、いわば売国奴的な目で警察官たちに見られている四面楚歌状態にある。特に署の内務のトップであるトレヴィーノはボッシュが公務ではなく私立探偵の立場で警察の施設を、データを利用していないかとボッシュがボロを出すところを虎視眈々と狙っている。

しかしボッシュはそれまでの経験と直感で自ら周囲の尊敬を得て、サンフェルナンド署の正規雇用の警官として雇われるまでになる。

そして大富豪ヴァンスの隠し子の捜索も紆余曲折を経てようやく血の繋がった孫に辿り着く。
ヴァンスと別れた後、シングルマザー用の養護施設で自分の子供を産みながらも、養子に出さなければならない苦痛から自ら命を絶ったビビアナ。

その息子ドミニク・サンタネロはボッシュ自身も従軍したヴェトナム戦争で戦死し、既にその存在はない。そんな絶望の中で彼のカメラの中に納まっていた写真から彼に未婚の子がいることが判明。

そう、これは血の物語なのだ。それについてはまた後で述べよう。

ボッシュが関わった2つの事件に共通点があるとすればそれは報われなさによる感情の歪みが起こした犯行だろう。

人は長い間、何かを抱えて生きている。それはまたボッシュもまた同じだ。
今回探していた人物が自身と同じヴェトナム戦争に従軍し、もしかしたら同じ船に乗っていたかもしれない奇妙な繋がりをボッシュは感じる。そして彼の思いはヴェトナム戦争へと向いていく。

息子ドミニクが鉄鋼王で航空産業も手掛けていたヴァンスの会社が製作に関わったヘリコプターによって墜落死した運命の皮肉。

戦場の現実から逃避するために自身もまたトールキンの『指輪物語』を読んでいたこと。

悪天候にも関わらず、慰安に訪れたジャズプレイヤーの粋な計らいと数年後そのうちの一人と再会した時の胸温まるエピソード。

一方トンネル兵士として敵を斃すため、匂いで悟られぬようアメリカ人の食事ではなく、ヴェトナム料理を食べて体臭を敵と同じにしてきたこと。それがゆえにヴェトナム料理が食べられなくなったこと。

そんな過去を抱えてボッシュはそれでもなお犯行を起こす側でなく、犯罪者を捕まえる側にいる。その理由は彼が最後に述べる。それについては後述しよう。

さてヴァンスの忘れ形見を巡る物語は血縁のビビアナ・ベラクルス発見後、ヴァンスの遺産を狙う会社重役連中から彼女を守るためにボッシュはミッキー・ハラーと組み、追手を出し抜いてDNA鑑定、遺言状の保管を行う一方、ヴァンスの死の真相を突き止め、犯人逮捕の引導まで行う。

よくよく考えると本書は警察小説に私立探偵小説だけでなく、これにリーガルミステリも加わった、1粒で3度美味しい、非常に豪勢な作品ではないか。

彼が最後に同僚のベラ・ルルデスを鼓舞するように話す、自身の血に刻まれた警官というDNA。
やはりこのヒエロニムス・ボッシュことハリー・ボッシュは全身刑事なのだという想いを強くした。

彼は我々とは訣別しなかった。
原題“Wrong Side Of Goodbye”。
それは物語のエピローグに登場するヴァンスの忘れ形見で彫刻家のビビアナ・ベラクルスの作品のタイトル『グッドバイの反対側』でもある―しかしこの訳はどうにかならなかったのか。私なら『さようならの裏側』と付けるのだが―。この訳に従えばそれは別れではなく出逢いを意味する。

しかしもう1つ考えられるのは“Born on the wrong side of the blanket”で「非嫡出子として生まれる」という意味があり、それは即ちホイットニー・ヴァンスとビビアナ・デュアルテとの間に生まれたドミニク・サンタネロとその子供ビビアナたちを意味する。
色んな意味を含んだ、言葉の匠コナリーらしいタイトルだ。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

まるでお手本のような警察小説

ここまで仕上がりが良いと絶賛というより脱帽ものです。
1ミリの不満もない。

これもハリーボッシュシリーズではあるのですが、連続ものによく見受けられる「マンネリ」や「あ〜、またいつもの展開ね!」といったこともなく淡々とミステリーが続きます。
マイクル・コナリー氏には、更なる飛躍を期待します。彼ならきっとできると信じています。


ももか
3UKDKR1P
No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

少しも歳を感じさせないハリー・ボッシュ!

ハリー・ボッシュ・シリーズの第19作。私立探偵として、パートタイムの警官として、経験と体力にものを言わせて難事件を解決するボッシュの活躍を描いた傑作ハードボイルドである。
私立探偵免許を取り直して個人的な仕事をする一方、ロス市警時代の友人に誘われてロス近郊の小都市・サンフェルナンドで無給のパートタイマー刑事として働いていたボッシュのもとに、大富豪の老人・ヴァンスからの依頼が届けられた。極秘で依頼されたのは「学生時代に付き合い妊娠させたのに、親に仲を引き裂かれたメキシコ人の恋人か、その子供を捜して欲しい」というものだった。生涯独身を通したヴァンスには子孫がなく、死亡したときには莫大な遺産を巡って混乱する恐れがあるため、別れた恋人か子供が見つかれば全財産を遺贈したいという。ヴァンスのわずかな記憶を手がかりに調査を進めたボッシュは、別れた恋人には男の子がいたことを発見する。同じ頃、サンフェルナンド警察では連続女性暴行事件が発生しており、ボッシュは同僚の女性刑事・ベラとともに捜査をすすめていたのだが、同じ犯人によると思われる暴行未遂事件がおき、捜査が急展開する。二つの事案の板挟みになったボッシュは、気力を振り絞って奮闘するのだった。
私立探偵としての人探し、警官としての犯人探し、どちらにも手を抜かないのがボッシュで、文字通り寝る間も惜しんで走り回る。さらに、アクションシーンにも果敢に立ち向かい、正義を貫き通す。ボッシュ・シリーズの醍醐味を凝縮したようなエンターテイメント作品である。
リンカーン弁護士・ハラーが重要ポイントで協力するところも嬉しい限りで、コナリー・ファンには自信を持ってオススメする。

iisan
927253Y1
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.24:
(4pt)

面白い。

面白い。
訣別(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:訣別(上) (講談社文庫)より
4065123100
No.23:
(4pt)

面白い。

面白い。
訣別(下) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:訣別(下) (講談社文庫)より
4065123119
No.22:
(5pt)

引き離された恋人たち、果たされなかった夢、ある家族の歴史

ボッシュ・シリーズ19弾。
縁あって新たな警察署における無給(!)非常勤の刑事としての仕事、再取得した私立探偵としての仕事の、またもや事件は”2本立て”。
2本立ては前々作『燃える部屋』に続いてだが、私が慣れたのか、今回のふたつの職務に応じているためか、前回ほど違和感を覚えなかった。
刑事として取り組む連続レイプ事件は本シリーズらしい。詳細は伏せるが内容はとてもひどいものだ。
私立探偵として取り組む富豪の子孫探しに関しては、悲しみと情緒を感じた。第2次世界大戦後~ヴェトナム戦争時代は、現在よりもまだまだ家族のしがらみやヒスパニック系への差別があった。
ボッシュの生い立ちと共通するところがあり、さらにヴェトナム戦争も経験していることから、彼がその背景をより理解し共感できるようすが伝わった。
結末に向けての細々としたいきさつの記述は(あえて)ないが何となく想像つくし、エピローグはよかった。

ボッシュの加齢に伴い、シリーズの内容もそれに応じて変遷している。
まず体力的な衰えを自覚している。
孤独なアウトローだったボッシュが、途中からイクメンになり、最近は気難しい思春期にある娘マディの顔色伺いとご機嫌取りに終始していてちょっと呆れる面もあったが、本作では言うべきところでちゃんと言っている。
加えて、何かと同僚の中に敵を作ってきたボッシュだが(これは相手がクソ野郎だからだが)、本作ではボッシュの仕事ぶりで、ふたりも見直させたところも良かった。

翻訳者の古沢氏はあとがきで次作の紹介を記述しすぎだ。何作か前のレビューで同様の意見があったが、今回は私も思い知った。前作『贖罪の街』で、今作の下巻前半の内容まで記述されていた。ありえん…。
ミステリ研究家の霜月蒼氏は#10『天使と罪の街』で「コナリー作品を最大限に楽しむコツは、何の予備知識もなく読むことだ」と解説し、#11『終決者たち』で古沢氏もあとがきで裏表紙のあらすじ紹介も読まないことを勧めているのに。自分が書いたことを忘れたのか?実は本質的おしゃべり男か?
読者によっては予め先を知りたいタイプもいると思うが、私は霜月氏と同様の考えだ。
訳者は今作でも、またもや長々と次作紹介をしているようだが、もうその部分は読まないことにした。
訣別(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:訣別(上) (講談社文庫)より
4065123100
No.21:
(5pt)

環境は変わってもますます元気なハリー・ボッシュ

ボッシュももう65歳を超え、今は私立探偵の免許を持ちながら、一方では無休の非常勤刑事として
勤務している。彼にとって無給でも、刑事のバッジが限定的とはいえ、それなりに捜査上役に立つ
ことがうれしい。さて、この作品では、まさに今のボッシュの二つの顔、私立探偵と刑事、両方に事件が
起き、特に私立探偵として、大富豪より自分の子どもや孫の居所を探るように依頼を受ける事件が、この
作品の主流となる。だが、そこはマイクル・コナリー、刑事としてのボッシュにも非常にハードな仕事もやらせる
ことになる。それは連続婦女暴行事件。これは、富豪の子孫探しとは色合いもことなり、アクションも出て
来て派手だ。どちらのストーリーも基本クロスすることはないが、希代のストーローテラーであるコナリーは見事な
プロットを練り上げ、最後は意外性のある結末も用意してくれている。いつも思うが、コナリーはこれだけ
たくさんの作品を書きながら、「はずれ」が一切ないと言っていい。すべての作品でわくわくさせてくれる。
ボッシュもまだまだ元気そうだ。当分、ボッシュシリーズが終わる心配はする必要がないだけでもうれしい。
訣別(上) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:訣別(上) (講談社文庫)より
4065123100
No.20:
(5pt)

疾走感

久々と、言うと失礼かもしれないが
焦って読みすすめてしまう内容でした
2度3度とくる疾走感がとても好きです
訣別(下) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:訣別(下) (講談社文庫)より
4065123119



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