ゴースト・スナイパー



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長編小説

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ゴースト・スナイパー 上 (文春文庫 テ)

2017年11月09日 ゴースト・スナイパー 上 (文春文庫 テ)

リンカーン・ライム、影なき凄腕スナイパーに挑む 国を跨いだ科学捜査、シリーズ史上最大のスケール! アメリカ政府を批判していた活動家モレノがバハマで殺害された。2000メートル先からの長距離狙撃。まさに神業、〝百万ドルの一弾〟による暗殺といえた。 直後、科学捜査官リンカーン・ライムのもとを地方検事補ローレルが訪ねてきた。その暗殺はアメリカ政府諜報機関の仕業であり、しかもテロリストとして射殺されたモレノは無実だったという。ローレルはこの事件を法廷で裁くべく、ライムとアメリア・サックスを特別捜査チームに引き入れる。スナイパーを割り出し、諜報機関の罪を暴け――。ライムたちは秘密裏に捜査を開始する。 しかし、バハマの現場は遠く、証拠がなかなか収集できない。しびれを切らしたライムは、遂にバハマ行きを決意する。一方、謀略を隠蔽するため、暗殺者は次々と証人を消していく。魔の手はやがてニューヨークで動くアメリア、そしてバハマのライムの元にも……(「BOOK」データベースより)




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ゴースト・スナイパーの総合評価:7.86/10点レビュー 35件。Aランク


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全6件 1~6 1/1ページ
No.6:
(7pt)

シリーズ10作目という節目の作品ではあるのだが…。

人間は感情の動物であるとかつて誰かが云った。本書はそんなことを強く思い知らされる作品である。

リンカーン・ライムシリーズ記念すべき10作目となる本書の敵はなんとアメリカ政府機関の1つ、国家諜報運用局(NIOS)の長官。バハマで隠遁中の政治活動家を暗殺した共謀罪で逮捕しようと計画するNY地方検事補のナンス・ローレルに協力する。

さらにコードネーム“ドン・ブランズ”で呼ばれる凄腕のスナイパーも捜査の対象だ。なんと2000メートルという驚異的な距離から標的を暗殺したほどの腕を持つ。
しかしアメリアによればスナイパーの最長狙撃記録は2500メートルらしい。まだ上の人物がいるのだ。

そしてライムたちの捜査の前に立ち塞がるのが殺し屋ジェイコブ・スワン。彼は秘密裡に情報を盗み取る技術に長けている。従って極秘裏に捜査していると思っているローレル地方検事補率いるライムチームの行動は既に筒抜けなのだ。しかも彼らはサックスの3Gのスマートフォンを盗聴し、ライムたちの捜査の先回りをする。
被害者ロベルト・モレノお抱えのリムジン運転手を先回りして殺害し、NIOSの密告者が情報をリークしたメールを送信したチェーン店のコーヒーショップを突き止めれば、先行してプラスチック爆弾を仕掛け、店内の防犯カメラの録画データをパソコンとサーバーごと破壊し、モレノお抱えの通訳を警察を装って訪ね、アメリアが訪問する前に拷問して殺害する。それはバハマでも同様で、事件のあったホテルの部屋はいつの間にか改修工事がされ、ライムたちが捜査を止めるよう、人を雇って脅したりもする。

更にサックス自身にもその魔の手を伸ばそうと尾行を続ける。

ジェイコブ・スワンは貝印の“旬”ナイフ―これはKAIという日本のブランドらしい―を愛用し、殺害対象を一気に殺さず、まず手刀で喉を潰し、声が出せなくなった状態で拘束し、料理をするようにじわりじわりと痛めつける殺し屋だ。料理を得意とする彼はまさに一流の高級料理を調理するが如く、対象者の肉を丹念に切り下ろす。

今回特徴的なのは犯行現場がバハマということで現場捜査を担当するアメリアもすぐには現場に行くことが出来ず、ライムと共に部屋で捜査を担当し、情報収集に徹する。

一方ライムは現場の遺物の情報を得ようとバハマ警察の捜査担当者に連絡を入れるが、これが南国の後進国特有の悠長さと捜査能力の不足から非常に不十分でお粗末な状況であり、全く有効な手掛かりが得られない。現場検証も事件が起きた翌日に成されているため、新鮮なほど有力な情報が集まる物的証拠が失われた可能性が高く、ライムはその捜査のずさんさに悶々とさせられるのである(しかしこのバハマ警察の担当者マイケル・ポワティエの愚鈍さはそのすぐ後に解消されるようになるのだが、それはまた後述しよう)。

このようにいつものように遅々として進まない捜査に読者はライム同様にストレスを感じさせられるようになる。

従っていつものようにお得意のホワイトボードに次々と新事実を埋めていくそのプロセスも滞りがちだ。しかも書かれた情報は人づてに教えられた情報と憶測ばかり。通常のライムシリーズとは異なる進み方で読者側もなんともじれったい思いを抱く。

そんな膠着状態を作者自身も察したのか、ライム自身がバハマに赴くことになる。
前作の『シャドウ・ストーカー』でライムはキャサリン・ダンスの捜査の手助けをするために自らフレズノに赴いたが、今回は更に海外まで進出する。リハビリと手術により指だけだった可動範囲も右手と腕が動かせるようになったことでずいぶんと活動的になったことが解る。
最新型の電動車椅子ストームアローに乗って野外活動に励むライムの進歩は同様の障害に悩む人々にとって希望の姿でもあるだろうし、また最新鋭の補助器具があれば重篤な障害者でも、介護士の補助が必要であるとはいえ、外に出て行動することが出来ることを示している。
優れたアームチェア・ディテクティヴのシリーズだった本書もまた科学と医学の進歩に伴い、その形式を変えようとしているのが解る。

しかし一方で現実はそんなに甘くないこともディーヴァーは示す。バハマ警察の上層部の意向に背いてライムに協力するポワティエ巡査部長と共に独自で捜査するライムたちを暴漢達が襲い、なんとライムはストームアローごと海に放り出されるのだ。
事件捜査という犯罪と紙一重の活動は健常者にも危害が及ぶ。まして障害者にとっては過分なことだと示すエピソードだが、それでもライムは屋外に、数年ぶりに海外に出たことが非常に楽しいようで、これからも外出したいと述べる。それほどまでに日がな一日屋内生活を強いられるのは苦痛だからだ。

ライムはニューヨークの自宅に戻り、新たな電動車椅子メリッツ・ヴィジョン・セレクトを手に入れる。それはオフロード走行機能も付いた機種で今回のバハマ行で外出の醍醐味を占めたライムの行動範囲が今後もっと広がることだろう。

さてこのバハマ行で彼らの有力な協力者となるのが愚鈍と思われていた捜査担当者マイケル・ポワティエ。経験が浅いながらも刑事という誇りを大事に上司の目を欺いてライムたちに協力する。それが上司にバレて異動を命じられるが、ライムの機転によってそれも解消される。ライムがアメリカに招待して自分のチームの一員に加えたいとまで思わせる好人物だ。

しかし一方でライムの手足となり、フィールドワークを担当していたアメリア・サックスは逆に今回のチームに加わった特捜部のビル・マイヤーズ部長から持病の関節炎を見透かされ、更に健康診断の不備により、捜査を外れることを通告される。
ライムの身体能力の向上と反比例するかのようにアメリアの関節炎は悪化してきており、逆に捜査活動に支障を来たす様になってきている。何とも皮肉な話だ。

またナンス・ローレルとライムたちが対峙するNIOSの長官シュリーヴ・メツガーはいつにも増して短気な人物である。自分の意にそぐわなければ怒鳴り散らし、物を投げつける。気分を害しただけでなく、その人物が気分を害するようなことをすると想像しただけで怒りが沸々と沸き起こる、異常なまでの癇癪持ちだ。店で買ったコーヒーが思いのほか熱すぎれば、店に車で突っ込んで営業できなくしてやろうかと本気で思い、軍人時代では自分たちを罵る酔漢を徹底的に傷めつけ、性的な快感を覚える。

従って他の職員は彼の姿を見ると視線を合わせようとしないし、ある者は方向転換をしさえもする。また家族はその怒りに怯え、離婚し、時たま会ってもソワソワし通しといった具合だ。

その怒りを抑えるために彼は沸き起こる憤怒を精神科医のアドバイスに従って具体的な物としてイメージする。その象徴が“スモーク”。かつて中学生の、まだ太っていた頃にキャンプファイアで隣に立っていた女子に煙から逃れるふりをして近づいて話しかけた時に、無碍に断られたことから想起したイメージである。この“スモーク”がメツガーの怒りのバロメーターとなっている。

キングの作品や他の海外作家の作品にはよくメツガーのような怒りを抑えきれない人物、衝動的な怒りに取り込まれ、我を失う人物というのは必ず出てくる。
どうもこのような癇癪を欠点とする人物はアメリカ人にとっては共通の特徴のようだ。テレビでも大きな声で怒鳴る姿をよく見るし、いい大人がテレビの前で怒りに駆られ暴力を振るい、喧嘩沙汰になったりするのを目の当たりにしたこともあるだろう。感情豊かな国民性は逆に怒りに対しても率直であり、おまけにそんな人たちが合法的に銃の所持を認められているのだから、やはり非常に物騒な国だ。

さて相変わらず真相は二転三転、三転四転する。

ただ振り返ってみれば非常におかしい部分もある。さすがにこれはどんでん返しを考えすぎて物語が破綻したとしか云えないだろう。

さらにディーヴァーはどんでん返しを仕掛ける。

価値観の反転はミステリとしては読書の愉悦を味わえるが、実際面としては実に恐ろしいと思わされる。
高度な情報を扱う仕事は常にその情報に隠された意味を考え、判断することに迫られている。しかしそこに感情が加わるとその情報は右にも左にも容易に傾く。それこそが本書のテーマであろう。

これらの人々は共に自らの信条に従い、正しいことをしていると思っていながら、実は好き嫌いという子供の頃から抱く非常に原初的な感情にその判断を左右されていることに気付いていない。そのことが彼ら彼女らをして情報を読み誤り、また読み誤ったと勘違いしたりする。そんな権力を持つ一個人の感情のブレで対象となる人間の生死をも左右されることが実に恐ろしい。

思えば本書は鑑識の天才リンカーン・ライムが現場から採取した証拠という事実だけを信じ、緻密に推理を重ね、論理的に事件を解決するところが魅力であるのだが、その実理屈っぽく終始不平不満を呟くライムの感情っぽいところ、つまり人間臭さがシリーズの魅力でもある。
そしてそのパートナー、アメリアもまたとにかく動き続けることで自分の生を感じ、またライムからそれを求められていることを生き甲斐にしている。そして気に食わない人には容赦なく冷たく当たる。
特に本書では感情の起伏を見せないナンス・ローレルに嫌悪感を示す。ライムの部屋に自分のパソコンを持ってきて仕事をするその姿を見て、自分の居場所の一部を取られたように感じ、その嫌悪感をますます募らせていく。丁寧な言葉が自分をかえって見下しているように感じる。そんな感情の起伏がローレルのアメリアに対する配慮を見誤り、衝突を繰り返すことになる。

そしてまた本書ではライムがバハマに赴いて地元の警察と捜査をしている間、アメリアはアメリカで捜査を続け、その距離がお互いを強く意識し合い、そしていつも以上に求め合うことになる。

緻密な論理を売りにしているこのシリーズは実は人の感情を実に豊かに捉えた作品であることを再認識させられる。またその感情ゆえに生れる先入観が登場人物のみならず読者の感情を動かし、どんでん返しへと導かれていくのだ。

実は本書は人気シリーズの第10作と記念的な作品ながらシリーズ作で唯一『このミス』で20位圏内から漏れた作品だった。ランキングがその面白さと比例しているわけではないとは解っているが、それはこのシリーズの特色である、ある分野に精通した悪魔的な頭脳の持ち主や超一流の技能を持つ殺し屋が登場しないことが他の作品に比べて魅力がないように思われる。
もしライムの敵が超長距離狙撃を完遂させる技能を持った殺し屋だとすれば、いつどこからでも狙撃する恐れがあるというサスペンスが味わえたはずだが、今回は政府機関のNIOSが相手ということもあって情報戦に終始し、いわゆるいつも感じるヒリヒリとした緊迫感に欠けたように感じた。

当時この作品のランキングを見た時にとうとうこのシリーズも終わりが来たかと、どんな作家でもいつかは訪れるアイデアの枯渇、品質の低下を想像した。
しかしその翌年ディーヴァーは復活する。ライムシリーズ次回作『スキン・コレクター』で『このミス』1位を獲得するのである。

確かに本書では上に書いたような不満を抱いたが、まだまだディーヴァーの筆は衰えていないことは既に立証済み。
どんなシリーズにもある谷間の作品として記憶するにとどめ、次作に大いに期待することにしよう。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.5:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

サックス大活躍

シリーズ10作目。シリーズの中でも結構好きな作品となりました。今回はクーパーやセリットーはやや控えめで、サックスの活躍が目立ちます。見どころは、ある程度、四肢麻痺が改善され行動的なライム、コフィンダンサーやウォッチメーカーに劣らぬ個性的な暗殺者、サックスとの息詰まる格闘、意外な展開。これまでのシリーズ以上のハラハラドキドキが味わえました。特に良かったのはやはり暗殺者対サックス!サックス、かっこいいです。次作もまだまだ楽しみなシリーズです。

タッキー
KURC2DIQ
No.4:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

緊迫した展開の連続

ライム対スナイパー。容赦なく証人を消していく犯人との闘いが序盤からテンポよく進んでいきます。スナイパーによる盗聴、爆破など、サックスもライムもピンチになり、緊迫したストーリーですごく良かったです!下巻が更に楽しみ。

タッキー
KURC2DIQ
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

ゴースト・スナイパーの感想

たしか映画の原作だったよね?と思っていたら
暫く前に読んだ事を忘れていて再読でした!
ディーヴァーの初めて読んだ本でしたが
それほど映像的。
ジェイコブ スワンは私の脳内では
ジェイソン ステイサムでした。


ラキチコ
3QPWRMVI
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

ゴースト・スナイパーの感想

衝撃を受ける程のどんでん返しは無かったが、相変わらず予想外の展開で面白かった。

松千代
5ZZMYCZT
No.1:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

どんだけ「どんでん」したら、気が済むねん!

リンカーン・ライム・シリーズの10作目。今回も期待に違わず、最後までどんでん返しの連続だ(正直、ちょっとあざとさを感じるのだが・・・)。
アメリカ政府批判を繰り返していた活動家が、バハマで射殺された。スナイパーが潜んでいたと思われる場所から現場までは2000mの距離があり、犯人は超一流で、彼を雇ったのは米国の秘密諜報機関ではないかという疑いがもたれた。「法の正義」を信奉する地方検事補ローレルが、秘密諜報機関の長を起訴するための証拠集めをライムのチームに依頼する。現場はカリブ海、しかも遠距離からの射撃のため得意の微細証拠が集められず捜査が難航しているうちに、証拠隠しと思われる残酷な犯行が次々に発生した。
本作品のメインテーマは、「まだ罪を犯していない者に、権力は力を行使できるのか?」という難問。諜報機関が「テロリストの疑い」だけで暗殺することと、パトロール警官が「武器を所持している」と判断した人を射殺することとの間に、どれだけの違いがあるのか? 最近のアメリカでの白人警官による黒人射殺事件の数々を想起させる、重いテーマである。
今回は、微細証拠から科学的に犯人を追い詰めるという側面と、動機の面から犯人像を描いていくという側面が同じような比重を占めているところが、これまでのシリーズ作品とは異なる印象だ。また、極めて重要な証拠をライムが見逃し、サックスに指摘されたり、どんでん返しにつながったりするところも、これまでには無かったような気がする。
とまあ、全体的にピリピリしたところが減って、シリーズ物の安定感が増してきたというところか。それでももちろん、ジェットコースター並みのスリルとサスペンスが楽しめるのは、今回も保証付きだ。

iisan
927253Y1
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