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逃げる幻
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逃げる幻の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.12pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全16件 1~16 1/1ページ
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内容紹介を読むと、探偵役が「人間消失と密室殺人が彩る事件に挑む」と書かれていて、ヘレン・マクロイってフーダニット物を書くような作家だっけ?と思って手に取ったが、結論からいえば騙されたという感じ。どちらもトリックと言えるようなものではないし、そもそも作家自身がこれらのトリックに自信を持っていたのだろうか。 本編の軸は得体の知れない邪悪な力が何なのか、その不気味な正体に迫ることであり、その点では彼女らしいサスペンス色豊かな作品であり、伏線はあちこちに綿密に張り巡らされており見事騙された。 内容紹介を読むと本格トリックものと誤解する可能性が高いので、これは再考すべきだと思う。 | ||||
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過去に何作かヘレン・マクロイの作品(『家蝿とカナリア』『幽霊の2/3』『二人のウィリング』 等)を読んだときは他のミステリーと比べても「それなり」「無難」という印象だったのですが、短編集『歌うダイヤモンド』でSFありデヴィッド・リンチばりのカルト風作品ありとその幅の広さと実力を見直し中だったところへ、今回のこれ。 小説としてもミステリーとしても重厚で、とても面白かったです。 ウィリング博士シリーズと言いつつ、中盤まで本人登場なしだったこともあり冒頭はまったくその色もなく。 休暇中ということだけど何か別の目的も匂わせるダンバー大尉が、行きの飛行機の中で知り合ったスコットランド貴族の男性から聞かされた繰り返される少年の家出騒動。偶然にも宿泊先がその近くだったことから、スコットランドの荒野で少年消失の謎や家庭教師が被害者となった殺人事件などを追って行きます。そして、その裏には第2次世界大戦の影が・・・。 途中までは、荒れ果て風が吹きすさぶ寂寥とした大地の描写に小説『嵐が丘』を重ねてみたり、終戦直後というその時代の不穏な空気を感じたり、他所から移住して来たという家族の謎めいた人間関係に興味をそそられたりと、殺人事件も起こりますが普通の小説としても興味深く、じっくりと読み進み・・・。 そこへ、ウィリング博士が登場するや、一転ミステリー色が強まり、それまでの伏線がどんどん回収され、犯人へと突き進みます。 この緩急の巧みさ、さらに人間消失や密室の謎への興味、犯人の意外性(私には)、それ以上に戦争が招いた悲劇とも言えるラストに言葉も出ず・・・。★5つです。 | ||||
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本書は、Helen McCloyの『The One That Got Away』(1945年)の翻訳。 ベイジル・ウィリングものの一冊だ。 第二次大戦直後のスコットランドを舞台に、とくに理由もないはずなのに家出を繰り返す少年と、幻のドイツ脱走兵の謎がからみあっていく。 ヒースの生い茂る荒涼としたハイランドで、重苦しいストーリーが展開していく。じっくりと濃厚な文章はいかにもヘレン・マクロイだ。 そして驚愕の結末。あまりにも哀しいが、ミステリとしてはきわめてよくできている。 | ||||
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まあ、湿地帯は死者の心霊を象徴しているのですね。 これはバスカヴィルの故意の二番煎じで。 マクロイはそこに、ドイツのドッペルゲンガーを入れる。 ドイルは妖精を研究し、終生その存在を信じていたし、その研究がいずれネックになると遺言した。ただし、寧ろ自身は愛さなかったホームズにこの問題の解決を任せることもしなかった。 マクロイは、心霊を心霊として語るようなことはしない。ホームズをちゃんと踏襲している。そして、もしかしたら心霊問題を解く重要な鍵になるかもしれないドッペルゲンガーをも本作でホームズ物語並みに敢えて退けて見せているんだと思いますね。 でもね、理想のディテクティヴが今からでも書かれるとすれば、心霊もドッペルゲンガーもそれとして認めないといけない形でちゃんと解明しているものにしないといけない。それが理想の理想でね。 | ||||
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第二次大戦直後のスコットランドはハイランド地方が舞台となるミステリ小説。オリジナルは1945年の発表である。 マクロイ作品は「幽霊の2/3」に続いて2作目の読了。 家出を繰り返す少年が荒野の真ん中で突然姿を消す人間消失事件が発端となる。ものがたりの前半は、なぜ少年は家出を繰り返すのか、そこに理由はあるのか、といったところに焦点がおかれる。探偵役と思われる米国人・ダンバー大尉は精神科医としての専門知識を活かしてこれに立ち向かうのだが・・・、再び起きる人間消失、そしてさらには殺人事件が勃発し・・・というストーリ展開である。 最終的には事件のカギともなるスコットランドの風習や歴史について、いちおう作中で簡単な説明が行われるのだが(米国で出版された作品ゆえ)、基礎知識がないとこれがなかなか難解で、まずそこのとっかかりで苦労した。また、戦後すぐという状況から作者と読者が共有していたであろう時代の雰囲気がよくわからないのも辛い。これらもあって、特に前半は読み進むのが少々苦しい状態が続いたのが本音。しかし殺人事件が勃発し、ダンバーの上官であるウィリングが登場するあたりから事態は俄然活気を帯びる。そしてラスト、周到に引かれた伏線が一気に回収され、おぅそう来たか!と膝を打つ謎解きで物語は急転直下、幕を降ろすのである。 「読者への挑戦」がないのが不思議なくらい、謎解きのヒントは読者の目の前にいくつも並べられている。 いや、なかなか楽しめました。 | ||||
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この数年来、ミステリ好きの間に、新しい楽しみが加わっていることは間違いないでしょう。 それが、本作品の著者、ヘレン・マクロイの再(というか、日本では初?)評価です。 1940年代から60年代を中心に活躍した、このアメリカ人女流作家は、本国では、探偵作家クラブ会長を務めるほどでしたが、日本では一部のマニアを除き、全くの無名。 翻訳された著作も、長らく絶版状態。 ところが、復刊された作品を読んでみると、高水準で、この数年、復刊と初邦訳が続いています。 本作品も、1945年発表後、2014年に初めて邦訳され、同年末の各種ミステリランキングで上位に挙げられています。 内容は「人間消失もの」。 アメリカ人のダンバー大尉は、訪れたスコットランドのハイランド地方で、何度も家出を繰り返す少年の話を聞く。 宿泊先で偶然に発見した少年は何かに怯えていた。 やがて、少年は再び姿を消し、殺人事件が発生する…。 荒涼とした土地(ムア)の果てには、どんな秘密が隠されているのか――本作品は、トリッキーな仕掛けより、1945年という時代の持つ社会背景を取り入れているのが秀逸。 その時代の空気が巧みに織り込まれているため、21世紀の現在でも、古びた印象はありませんでした。 むしろ、「歴史」という範疇に足を踏み入れている、ある事柄が、読者の胸を強く揺さぶることでしょう。 思えば、この題名(原題は、THE ONE THAT GOT AWAY)はよく出来ていて、読後、その意味合いがよく理解できます。 ミステリの達人は、題名からして、緻密に構成していると、感心させられます。 | ||||
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他の方も言及しているが人間消失や密室トリックは、あくまで手段として 用いられており妙味に欠ける。 しかしマクロイは、家出少年の秘密、殺人に関して who, why に 力点を置いて筆を進め、俄然読者の興味を惹き、これらを謎解きの骨子としている。 トリックではなく手順を愉しむミステリといえるのではないだろうか。 大胆なトリックを使わず、手続き上の大技で驚嘆させるのだ。 もうひとつの特徴は、伏線がかなりあからさまな点である。 たとえばダンバーとブレインの政治哲学談義のなかにも重要なヒントが かくされていると思われる。 著者は、ブレインのような使嗾者・エゴイスト・狡辛い思想家こそが、 単純にファシズムに染まる愚か者よりも唾棄すべき人物と見て糾弾している。 作中、彼が無残な殺され方をしたのは、ひょっとして当てつけか。 | ||||
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びっくりした! まさかこんな結末だとは思わなかった。 その意味では「2015本格ミステリベスト10」の 第1位も大納得なのだが、うーむ… どういうわけか、少々複雑である。 なぜ複雑なのか? 作品そのものには、何の問題もない。 叙述も達者だし、どんでん返しの破壊力もすごい。 それまで読んでいた世界がみずみずしく揺らぐ、 というような経験ができる。 で、結局このモヤモヤの原因は、 帯の文句とか裏表紙の説明文にあるのだと思う。 あまり書いてしまうとネタバレになるので、例えでいうと、 僕は勝手にカーのようなミステリを想像していたのである。 ところがどっこい、実際はクリスティーだった。 というようなことなのだが、うまく伝わったでしょうか? そりゃあんたが勝手に思ってただけだろ、 といわれれば、まあそれはその通りなんだけど。 それに、読者にそう思わせることで、 サプライズも倍増されるだろうことを考えれば、 これはこれでいいのかもしれないな、という気もするが。 とにかく、びっくりしたことは間違いないのだから。 | ||||
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イギリス北部の王族の歴史、ムアというスコットランドの地形、終戦後の混沌とした社会など、プロットされている要素は徒然に拾って温めてきたのだろう。何度かWikipediaを紐解いて学ぶことも多かった。 しかし、スコットランドの数千年の歴史や、寒冷な土地独特のムアなどを絡めている構成の割に、ミステリーション小説としての分脈的アイデアは乏しかった、というよりも、アイデアプロットのタイミングが遅すぎると思うカ所が何度もあり読み進む意欲が削がれた。とはいえ、知らなかった歴史、地理に興味を覚えたことに★二つです。 追伸:Amazonではなくリアルな書店では、書棚に並ぶPOPや帯のベスト10を頼りにできるのが楽しみなのだが、今回はちょい外れでした。 | ||||
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最終的にはあっと言わせる結末でしたが、全体のはこびが古すぎると思いました。(時代背景が古いためではなく。)アルセーヌ・ルパンもどき。 | ||||
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面白くない,評価されている程の面白さはない。我慢して読んでいた。 | ||||
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様々な伏線がページを読み進めるうちに姿をもたげてきます。 上手にストーリーを構成するもんだなあ、と感心、おもしろいです。 | ||||
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帯に『人間消失と密室殺人、そして』の惹句。 ディクスン・カーの本にいつも張り付いているような文句。 トリッキーな古典本格好きを釣り上げるためにあるような常套句。 こういうのに何度あざむかれ、アホな魚みたいに釣り上げられてきたことか。 それでも懲りずに買ってしまう本格好きの悲しさ…。 精緻な風景描写に人物描写、飽かさず読ませる筆力。 これならば謎解きが少々陳腐でもゆるせるかな。 そして、いよいよ謎解きへと突入すると感想は三転。 “がっかり”…やはりこの程度のトリックか。 …まあ半ば予想して買ったことだし。 “びっくり”…おお、あの“がっかり”はこの“びっくり”に転化するものだったのか。 …伏線の妙、そしてこれはあの有名作の着想を深化させたものでは! “どっきり”…真相の奥から迫ってくる時代と人間の残酷さ、愚昧さ、哀切さに“どっきり”…。 創元さんの惹句に、アホな魚みたいに釣り上げられて今回は正解だった。 なるほど帯の『人間消失と密室殺人、そして』の『そして』の方がミソだったわけだ。 『人間消失と密室殺人』に気を惹かれすぎたことが、ある種のミスディレクションにもなった。 にくいね、芸がこまかい。 傑作です。 | ||||
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第二次世界大戦の終戦の年1945年に出版された当時としては非常にタイムリーな内容の技巧派ミステリーの女王マクロイ女史の稀な傑作です。私は今1977年に日本で刊行されたハヤカワ・ミステリ文庫「暗い鏡の中に」を再び読み返している途中なのですが、そのあとがきで本作が「逃げる者」の仮題で本国では絶賛された名作であると紹介されている事に気づきまして、それから37年後の今年2014年に漸く創元推理文庫で出版された事はとても喜ばしい事だなと思いましたね。ちなみに本書の前年に書かれたノン作品の「パニック」も暗号物の良作と紹介されていましたが、こちらは果して何時か読める日が来るのでしょうか。 米国の軍人ダンパー大尉が休暇旅行で訪れたスコットランドのハイランド地方のある一家の少年が、何度も家出を繰り返す内に荒野(ムア)の真ん中から忽然と消失してしまったという。ダンパーはお世話になる家に着いた夜に家出少年ジョニーを見つけたが彼は何かに怯える様子を見せるだけで謎はさっぱり解明されず、やがて不審な死が二件立て続けに起きるのだった。 本書の語り手を務めるのは米国の軍人ダンパー大尉で、精神科医である名探偵ベイジル・ウィリング博士が登場するのは全体の2/3が過ぎた辺りなのですね。ウィリング博士は無駄口を叩かず必要最低限の言葉を発して全く偉ぶった所のない不言実行タイプの(例えは古いですが)ドカベン山田太郎みたいな人物だなと感じましたが、数多くの名探偵の中ではやや個性に欠ける面があってそのせいで不運にも日本での翻訳の機会が少なかったのかなあと思えますね。主人公のダンパー大尉は誠に愛すべき性格の好青年なのですが、関係者の中の美しい女性アリスに恋心を抱いてえこひいきをしたりして非情に徹し切れない所がプロとしては考え方が甘いと言わざるを得ませんね。さて、本書の推理について話を進めますと、人間消失や密室のテーマは著者本来の持ち味ではないと言う事もあってこの不可能犯罪トリックについては肩透かし気味の内容に多少がっかりした方もおられたかとは思いますが、けれどその反面やはり著者の本領である心理の領域に仕掛けられたトリックは一級品の出来栄えで、人間心理の盲点を鋭く突いた真相には多くの方が驚愕し大満足されただろうと思いますね。また全体を通じては読者を終始五里霧中状態にして翻弄させ、まさに見果てぬ幻を追いかけさせられているかのような不安な気持ちに陥らせる効果が実に素晴らしいと思います。ミステリーは読後にどうしてこのもしかしてという可能性や後から考えれば歴然とした真相に気づけなかったのだろうかなと大いに悔やむ事も多いですが、でも私は見事に騙される快感を味わうのが大好きな性格ですのでそれはそれで良いのだと思いますね。それから謎解きの興味以外にも、読み終えた後に戦争の恐ろしさについて改めて深く考えさせられる部分には時代を超えた普遍性を持つ文学としての良さがある事も忘れてはならないでしょうね。尚、既に読み終えた方はうなずかれるだろうと思いますが、本書の趣向は10年以上前に書かれたある世界的名作ミステリー(作者を含めこれ以上は書けません)をそのままではなくアレンジした形で上手く活用されている事に思い至りまして、著者は後年「殺す者と殺される者」でも怪奇小説の古典名作のアイディアを発展させておられますので得意技なのだなと改めて納得しましたね。 巻末の著作リストによりますと長編29作の内で既訳が11作で、まだ未訳が18作も残されていますので願わくは今後も少しでも多くの作品が紹介されますようにと期待したいと思います。 | ||||
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既出のレビュー通り予備知識0で読むのがいいのですが読みだして期待と違う、 という事もあるかもしれませんので書いておくと、殺人や人間消失は有りますが、物語の主題はそこではありません。 この話の主題は最初から最後まで「少年はなぜ何度も家出を繰り返すのか」の1点です。 登場人物が少なく容疑者も絞られているので殺人の犯人は容易にわかります。 それらの周辺の謎が少年にまつわる主題へと繋がっていくのがこの話の醍醐味で、 いわゆるアリバイ崩しが、トリックが、という本格ミステリではないことは念頭に置いた方がよいと思います。 探偵役のウィリング博士もここでは主人公ダンバーを導く役割で、ピーター・ダルース物のレンズ博士に近い雰囲気を持っています。 またストーリーとは直線関係ありませんが、作中のある人物の「俺はあと40年は生きる、その間に2回は世界大戦があるだろう」 という台詞はショッキングで、人々がそう思う下地があった時代だという事が伝わります。 最後まで読むとこの時代に書かれたことが非常に納得のいくサスペンスの佳品です。 | ||||
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原題 The One That Got Away (原著1945年刊行) 出来れば予備知識無しで読む事をお奨めしたい。悠然とした冒頭から読者の予想を外し、それを上回るスリリングなプロットの傑作であり、ことに終盤の怒涛の如き展開に心地よく身を委ねるのは快感だ。 スコットランド、ハイランドの荒涼たる原野の描写がもたらす幻想性、そして第二次大戦の生々しい傷痕(作中言及される激しいナチズム批判は興味深い)という相反するような要素が絶妙に絡み合って物語に反映されている。 二大傑作『家蠅とカナリア』(1942年)と『暗い鏡の中に』(1950年)の狭間、マクロイ円熟期の筆の冴えを満喫出来る作品で、特に伏線の張り方はため息が出るほど巧妙。今まで未訳だったのは不審にしか思えない。 | ||||
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