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ビッグ4
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ビッグ4の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点2.94pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全35件 1~20 1/2ページ
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この作品、日本のファンの間では評価が低く、「面白くない作品が続くから作者がスランプだったのだろう」なんて言う人がいますが、それは間違いだと思います。 そもそも作者は、ジェットコースターのような展開の激しい冒険活劇を描くのが好きだったようで、この作品も楽しく書かれたように感じました。 それを後世になって、当時の文化も流行も知らない人が、スランプなんて決めつけるのはすごく傲慢だと思います。 ポワロものを買って、推理部分が少なくてガッカリした人も多いのでしょうが、私は面白く読めました。 | ||||
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こんなことでと思われる方もいるかもしれないけれど、本好きで大切に使って読みたかったのに、ダンボールに直に入っていて、数箇所表紙の端が折れていました。 本屋で購入すればいい話ですが、いざ利用した時にこのような状態で送られたのはとても残念です。雨でダンボールが濡れていたら本まで染みていました。 | ||||
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予告は受けていたwが、これほどとは思わなかった。 トミー&タペンスに代表される、著者のちょい緩めのスパイスリラーは嫌いじゃないので高を括っていたのだが、なにしろビッグ4の存在によって、頭のネジをもう二回ほど余分に緩めておく必要があったw この時期、著者のアマチュア気分のファン気質はまだ多分に残っていたと思われるので、ビッグ4の設定はモリアーティ教授のオマージュに過ぎないかもしれないが、英国の犯罪を裏で操作するモリアーティに較べて、世界の争乱を裏で操作するビッグ4は、ポワロを陰謀論の世界に強力に追いやってしまった……。【注1】 なにしろこの秘密組織、「やつらの目的は全世界を征服することなのです」(P.61)で、「やつらは、保有している磁気引力の新兵器をテストしてみたのにすぎないのです」(P.62)だとか。 そして不可思議な事件が起きれば、あのポワロが灰色の脳細胞で、「これは裏にビッグ4の手が回っているに違いない」と呟くのである……。 これではポワロは馬淵睦夫どころか、なんでもかんでもゴルゴムの仕業だと喝破する南光太郎も笑えないw 本書はもともと、『ポアロ登場』や『教会で死んだ男』に主に収録された初期短篇群と同じThe Sketch誌に、翌年の1924年に掲載された連作短篇だったが、著者は1926年末の例の事件を含む精神状態で執筆どころでなかったので、1927年の年明け間もない頃に長篇にまとめ直してやむなく?出版したものである。 予備知識なしで読んだら、トップ三人の影がやたら薄くて、ポワロはNo.4とばかりやりあっていることにも驚かされる筈だが、雑誌連載時の共通タイトルはThe Man Who Was No.4だったという。長篇にまとめ直すにあたっては、義理の兄(やらかした夫の兄ということだ)が協力しているらしく、どの程度の変更が入っているのか不明だが、もしかしたら、雑誌掲載の形で読むほうがツッコミ処は少なかったかも……そんなことないかw しかしできれば、元の連作短篇状態のものにも目を通してみたいものである。【注2】 プロットへのツッコミ以外に、なぜ前作?の「クリスマスの冒険」でヘイスティングスをせっかく南米に葬ったというのに、わざわざ家族を置いて一時帰国という無理やりな設定を組み込んでまで、彼を復活させたのかも理解できない。 ファン人気があって、編集部から命じられたのだろうか。 おかげで、ビッグ4という巨大なツッコミ処に目を瞑っても、ポワロが心配で残していけないという理由で、危険も示唆されている家族を放置して半年以上もポワロの側に居続ける、正義感が強いだけのまったくの無能なヘイスティングスを、こちらは我慢し続けなければならなかったw えっ、クライマックスの策略には、彼の存在が不可欠だった? いいえ、そんな言い訳は通じませんww もう一点、これはツッコミではないのだが、組織を束ねる影の薄いNo.1はチャイナ人である。 リー・リン・チェイリー・チャン・エイというチャイナ人【注3】で、レーニンやトロツキーも裏から操作していたそーな。 登場が1924年であることを考えれば、ノックスのツッコミに該当する一例ではあるが、元より本作でポワロと主に対決するのはNo.4なので、いわゆる「怪しげな術を繰り出す支那人」が前に出るものではない。しかし同じアジア人国として、日本の影が薄かったのはやや気になった。【注4】 まぁぶっちゃけたところ、著者に東洋への興味がそれほどなかっただけだった可能性が高いが、以下、一般的に英国人の目に映っていたであろう日本を描写してみるw 二流人種のくせに白人様の猿真似を始めたと思っていたが 日清戦争や北清事変で、意外に他の黄色人とは少し違うところを見せた。 われわれは以前からロシアの東方への拡大に警戒し続けてきたが 南アフリカ等の対応で手一杯だから 日本を利用して少しでもロシアの防波堤にするつもりで、日英同盟を結んで平等に扱ってやった。 ところが彼らは予想以上に働いて、日露戦争にまさか勝利してしまった。 その手柄で他の白人国とも平等条約を結ぶようになり 第一次欧州大戦でも役処を守って動いたから、名誉白人とおだてられたりもした。 そうすると生意気にも調子に乗って、人種差別反対とか人類はビョードーとか言い始めたこともあって 特に海を挟んだ隣国のアメリカは警戒を強めた。 彼らはわれわれが大戦中の巨額な借金で頭が上がらないのをよいことに 日英同盟を破棄させた。 ところがこんな背景に気づかず、日本人はわれわれを裏切り者だと言い始めて アメリカと同じように敵対視するようになった……。 こんなところか。 この流れの中で、日英同盟の破棄がまさに1923年。 つまり一年前まで同盟国だったというのに、多くの一般英国人にとっては、日本への関心などないのが普通だったのか……。 そこのところがもっと知りたい。 【注1】著者に並び称される女流推理作家のドロシー・L・セイヤーズの同時期の作品「アリババの呪文」にも、メンバーを数字で呼ぶ犯罪組織が登場しているので、当時この二人だけでなく、もっと広範囲にこの手の設定の流行を論じることができるかもしれない。 【注2】安直に考えれば、18章に分かれているので、18週に渡って連載されたのかもしれない。エピソードでざっくり分ければ、「導入および精神病院からの脱走患者の事件」「ダートムアのジョナサン・ホェイリイの事件」「サリー州の科学者、ハリデイ氏失踪事件」「パリでの後日談とヘイスティングスの潜入捜査」「ウースター州のペインター氏死亡事件」「チェスの世界的名手突然死事件」「ヘイスティングス誘拐事件」「No.4の絞り込みとフロッシー・モンロー事件」「ハートフォートシャーのテンプルトン氏中毒事件」「最後の戦い」の10件に相当。【注5】 【注3】リー・リン・チェイはジェット・リーの本名。デビュー時はこの名前だった。 【注4】ある人物に化けたNo.4は、ヘイスティングスを「日本の柔道」(P.86)で投げ飛ばすけれど。 【注5】ペインター氏が始末された原因は、彼が『中国の見えざる手』という本を書いたからw 100年近く後、同じ題名で大ヒットする書物が登場するとは……。 | ||||
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予告は受けていたwが、これほどとは思わなかった。 トミー&タペンスに代表される、著者のちょい緩めのスパイスリラーは嫌いじゃないので高を括っていたのだが、なにしろビッグ4の存在によって、頭のネジをもう二回ほど余分に緩めておく必要があったw この時期、著者のアマチュア気分のファン気質はまだ多分に残っていたと思われるので、ビッグ4の設定はモリアーティ教授のオマージュに過ぎないかもしれないが、英国の犯罪を裏で操作するモリアーティに較べて、世界の争乱を裏で操作するビッグ4は、ポワロを陰謀論の世界に強力に追いやってしまった……。【注1】 なにしろこの秘密組織、「やつらの目的は全世界を征服することなのです」(P.61)で、「やつらは、保有している磁気引力の新兵器をテストしてみたのにすぎないのです」(P.62)だとか。 そして不可思議な事件が起きれば、あのポワロが灰色の脳細胞で、「これは裏にビッグ4の手が回っているに違いない」と呟くのである……。 これではポワロは馬淵睦夫どころか、なんでもかんでもゴルゴムの仕業だと喝破する南光太郎も笑えないw 本書はもともと、『ポアロ登場』や『教会で死んだ男』に主に収録された初期短篇群と同じThe Sketch誌に、翌年の1924年に掲載された連作短篇だったが、著者は1926年末の例の事件を含む精神状態で執筆どころでなかったので、1927年の年明け間もない頃に長篇にまとめ直してやむなく?出版したものである。 予備知識なしで読んだら、トップ三人の影がやたら薄くて、ポワロはNo.4とばかりやりあっていることにも驚かされる筈だが、雑誌連載時の共通タイトルはThe Man Who Was No.4だったという。長篇にまとめ直すにあたっては、義理の兄(やらかした夫の兄ということだ)が協力しているらしく、どの程度の変更が入っているのか不明だが、もしかしたら、雑誌掲載の形で読むほうがツッコミ処は少なかったかも……そんなことないかw しかしできれば、元の連作短篇状態のものにも目を通してみたいものである。【注2】 プロットへのツッコミ以外に、なぜ前作?の「クリスマスの冒険」でヘイスティングスをせっかく南米に葬ったというのに、わざわざ家族を置いて一時帰国という無理やりな設定を組み込んでまで、彼を復活させたのかも理解できない。 ファン人気があって、編集部から命じられたのだろうか。 おかげで、ビッグ4という巨大なツッコミ処に目を瞑っても、ポワロが心配で残していけないという理由で、危険も示唆されている家族を放置して半年以上もポワロの側に居続ける、正義感が強いだけのまったくの無能なヘイスティングスを、こちらは我慢し続けなければならなかったw えっ、クライマックスの策略には、彼の存在が不可欠だった? いいえ、そんな言い訳は通じませんww もう一点、これはツッコミではないのだが、組織を束ねる影の薄いNo.1はチャイナ人である。 リー・リン・チェイリー・チャン・エイというチャイナ人【注3】で、レーニンやトロツキーも裏から操作していたそーな。 登場が1924年であることを考えれば、ノックスのツッコミに該当する一例ではあるが、元より本作でポワロと主に対決するのはNo.4なので、いわゆる「怪しげな術を繰り出す支那人」が前に出るものではない。しかし同じアジア人国として、日本の影が薄かったのはやや気になった。【注4】 まぁぶっちゃけたところ、著者に東洋への興味がそれほどなかっただけだった可能性が高いが、以下、一般的に英国人の目に映っていたであろう日本を描写してみるw 二流人種のくせに白人様の猿真似を始めたと思っていたが 日清戦争や北清事変で、意外に他の黄色人とは少し違うところを見せた。 われわれは以前からロシアの東方への拡大に警戒し続けてきたが 南アフリカ等の対応で手一杯だから 日本を利用して少しでもロシアの防波堤にするつもりで、日英同盟を結んで平等に扱ってやった。 ところが彼らは予想以上に働いて、日露戦争にまさか勝利してしまった。 その手柄で他の白人国とも平等条約を結ぶようになり 第一次欧州大戦でも役処を守って動いたから、名誉白人とおだてられたりもした。 そうすると生意気にも調子に乗って、人種差別反対とか人類はビョードーとか言い始めたこともあって 特に海を挟んだ隣国のアメリカは警戒を強めた。 彼らはわれわれが大戦中の巨額な借金で頭が上がらないのをよいことに 日英同盟を破棄させた。 ところがこんな背景に気づかず、日本人はわれわれを裏切り者だと言い始めて アメリカと同じように敵対視するようになった……。 こんなところか。 この流れの中で、日英同盟の破棄がまさに1923年。 つまり一年前まで同盟国だったというのに、多くの一般英国人にとっては、日本への関心などないのが普通だったのか……。 そこのところがもっと知りたい。 【注1】著者に並び称される女流推理作家のドロシー・L・セイヤーズの同時期の作品「アリババの呪文」にも、メンバーを数字で呼ぶ犯罪組織が登場しているので、当時この二人だけでなく、もっと広範囲にこの手の設定の流行を論じることができるかもしれない。 【注2】安直に考えれば、18章に分かれているので、18週に渡って連載されたのかもしれない。エピソードでざっくり分ければ、「導入および精神病院からの脱走患者の事件」「ダートムアのジョナサン・ホェイリイの事件」「サリー州の科学者、ハリデイ氏失踪事件」「パリでの後日談とヘイスティングスの潜入捜査」「ウースター州のペインター氏死亡事件」「チェスの世界的名手突然死事件」「ヘイスティングス誘拐事件」「No.4の絞り込みとフロッシー・モンロー事件」「ハートフォートシャーのテンプルトン氏中毒事件」「最後の戦い」の10件に相当。【注5】 【注3】リー・リン・チェイはジェット・リーの本名。デビュー時はこの名前だった。 【注4】ある人物に化けたNo.4は、ヘイスティングスを「日本の柔道」(P.86)で投げ飛ばすけれど。 【注5】ペインター氏が始末された原因は、彼が『中国の見えざる手』という本を書いたからw 100年近く後、同じ題名で大ヒットする書物が登場するとは……。 | ||||
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色々指摘される痛い点(痛い点以外にこの作品の特徴があるのか?)は差し置き、ポアロにこんなアクティブな行動ができるのだろうか? 大陸からスタイルズ荘近辺に避難してきた時点ですでにベルギーの警察署長を定年退職していたはず。それから13年も経ってまだ元気すぎる。 | ||||
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地上波オリエント急行映画を見た後、今更のように電子書籍でポアロ物を読み続け中です。こちらはアニメや漫画好きなら全然問題ないご都合展開and荒唐無稽さです、というかアニメや漫画を見ているようなノリであっという間に読了。ヒリヒリと緊張するような堅苦しさや陰惨さが好きになれない私としては、たいへん楽しく読めました。ポアロとヘイスティングズの友情が熱いです。古典のはずが、今読んでも古く感じないクリスティはやっぱりすごいと感じます。本格ミステリとは違うかもですが、楽しく読めるという点では良いです。 | ||||
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内容については★3。 しかしポアロの台詞で、例えばかつての田村隆一氏の訳では「方法」と訳していたのを「メソッド」とカタカナ語で済ませているところなどが気になった。 新訳「このエルキュール・ポアロのやり方は独特のものですからね。秩序とメソッド、それに灰色の脳細胞ーーそれだけがものをいうんですよ」 田村訳「このエルキュール・ポアロの捜査方法は、わたし独特のものなのです。秩序と方法、そして”小さな灰色の脳細胞”があればいいのです」 他にも「ブラッドハウンドよろしく」といった下りでカタカナ語が目立つ。 ブラッドハウンドが猟犬だと知っている日本人、あるいはハウンドが吠えるという意味から犬、ブラッドが血で「猟犬」を意味するのだと想像できる日本人がどれだけいるというのだろう。 たしかに英語に近いカタカナ語は響きが良く恰好いいかも知れない。しかし分かりやすい日本語に訳して読者に提供するという本来の翻訳の目的としては不親切だと思う。 私は英語もそこそこ読めるしカタカナ語でも分かるのだが、日本語の文章としては田村氏の「人間猟犬のように」のほうがずっと親切で読みやすいと感じた。 訳者と編集部は日本語として定着しているかどうかも分からないカタカナ語を安易に使うよりも、カタカナ語訳を極力減らすべきである。日本語への翻訳なのだから。 | ||||
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そんなにダメですかね。 私、頭おかしいのかも知れませんが、そこそこ面白かったです…… 荒唐無稽なんて言われたりしていますが、その荒唐無稽さが面白いじゃないですか、と…… クリスティ物、ポワロ物と思わず?に読んだら面白いと思います。 多分…… | ||||
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一般の人は読まれない方が良いと思います。 著者はアガサ・クリスティーとなっていますが、実際にはクリスティーの義兄がまとめ上げた作品とのこと。 クリスティーを読破するつもりだったのですが、この作品を読んで本当に消耗してしまいました。 クリスティーのファン(初級・中級)、ならびにクリスティー本人の名誉のためにも、この作品はアガサ・クリスティーのオリジナル作品とは区別したほうが良いように思います。 | ||||
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クリスティの短編サスペンス集(>ハヤカワ文庫:リスタデール卿の謎)でもやはり荒唐無稽・おとぎ話すぎてげんなりさせられましたが、これもわざわざ買って読むほどのものでは全くなし。NHK放映のTV版ポアロの「ビッグ4」を見て、これも原作を読んでみようと思う方がいたら絶対おやめなさいって言います。TV版ビッグ4は完全オリジナル脚本です。TV版ですら荒唐無稽さを抑えきれないのですが、この原作と較べたら秀作に見えちゃいます。ポアロものとして世に出すことに迷いはなかったんでしょうかね~(タメ息) | ||||
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何の予備知識もなく読んだ。出だしから性急で変だな、と思ったら、国際犯罪組織対ポアロと言う驚愕のB級スパイアクション。愛すべき愚かな相棒ヘイスティングズのみならず、ポアロまで敵に引っかき回されて何度も絶対絶命のピンチを迎えるが、駄作マンガ級の切り抜け方をする。そして驚天動地の結末を迎えるのだが。 正直ツッコミ所満載で、クリスティーの作品とは思えない怪作だが、そういう作品なんだと気持ちを切り替えればメチャクチャ面白い。夢にもいつもの本格ミステリと勘違いしない事だ。 スパイアクションものとしてもいろいろ酷い作品だけど。 | ||||
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この作品を読もうと思った方は、次の各項につき、イエスかノーかを確認してください。 ・クリスティの作品ならどんなものでも読んでみたい、あるいは読める ・ポアロ物ならどんなものでも読んでみたい、あるいは読める ・スパイ物が大好き。荒唐無稽でバカバカしい設定のほうがより楽しめる ・世界征服という言葉を聞くと、それだけでワケもなく心が躍る ・映画007シリーズの最高傑作は誰が何と言おうと『ムーンレイカ-』である ・連作短編とは何なのか、普通の長編や短編集とどう違うのか知りたい ・ヘイスティングス大尉の魅力は勇敢さ、無謀さ、愚かさであり、特に最後が一番惹かれる ・大人になっても中学生男子の心は失いたくない。女性の場合、そうした男性が好き、ないし許せる 上記8項目のうち、できれば全部、最低でも4つはイエスと答えられる方、どうぞ早速にでもお読みください。おそらくハラハラドキドキ、ワクワク大コーフンの時間が過ごせることでしょう。一方、イエスが3つ以下の方には正直オススメできません。それでも読もうというのなら、覚悟の上で手に取ってください。その場合、自分で一度決めたことなのですから、読んだ後で怒ったりするのはやめましょう。 ……と、ここまでお断りした上で。 この作品は、ポアロとその親友であるアーサー・ヘイスティングス大尉が、世界征服を目論む巨大な犯罪組織「ビッグ4」と対決していく物語です。中でも、4人いる組織の最高幹部の一人であり、デストロイヤーの異名を持つ殺し屋、ナンバー・フォーとの戦いがメインになっています。 ナンバー・フォーは変装の達人で、さまざまな人間に自由自在になりすまし、組織の邪魔になりそうな人物を次々と殺害していきます。ポアロは個々の事件は解き明かし、誰がナンバー・フォーだったのかまでは看破しますが、捕らえるには至りません。こうして2人の死闘が続いていくのです。 加えて、ナンバー・ツーやナンバー・スリーとの直接対決もあり、首魁であるナンバー・ワンもつねにその絶対的かつ圧倒的な存在感を漂わせます。序盤は押され気味のポアロが少しずつ相手の実像を知り、やがて反撃に転じる過程が一番の読みどころといえるでしょう。 特徴的なのは、各章ごとの独立性が高く、長編というより連作短編になっていることです。これはもともとが短編として発表された12作を、1つの作品に結合したためです(本来の形について関心のある方は後述「初出について」をお読みください)。そのため、1つの事件を扱い、その中で謎が謎を呼び、物語が二転三転していくという、他のほとんどのクリスティの著作とはまったく趣が違います。その代わり、クリスティがキャリアの初期にあたる1920年代の短編で見せた、ストーリーテリングの上手さを何度も繰り返し味わうことができます。スパイ・スリラーと本格派という、2つのスタイルを同時に楽しめるという点で、贅沢な面も持っています。 しかし、一般的にこの作品に対する評価は辛く、駄作、珍作、失敗作の烙印を押されることもしばしばあります。その理由は、やはり設定のトンデモぶりにあるでしょう。他のクリスティのスパイ・スリラーと比較しても話のスケールが大きすぎ、しかも世界制覇を目論むとされるビッグ4の描き方がステロタイプで、相当に荒唐無稽なため、子供心を失った読者にはなかなか厳しいところがあります。クリスティの名前に惹かれて本格派を期待する人、リアルなスパイ物が好きな人、そのいずれをも裏切ってしまい、それが不評に繋がっていると推察されます。 ただし私は、確かに万人受けする作品ではないものの、そこまで貶めるのは不当ではないか、と考えます。その最大の理由は、キャラクターの魅力です。ナンバー・フォーやナンバー・ワンにはその設定を使ってスピンオフ・ストーリーが作れそうなほどの面白さがあり、ポアロシリーズのレギュラーであるヴェラ・ロサコフ伯爵夫人やジャップ警部といった面々も実に活き活きと描かれています。そして何よりヘイスティングス! ここでの活躍ぶりは、まさに史上もっとも愚かなワトソン役と呼ばれる彼の面目躍如。ここまで愚かでありながら、読み手をイライラさせず、まあヘイスティングスなんだからしょうがないよね、と納得させてしまうのはまさに彼の人徳のなせる業でしょう。特に事件の折々に見せる迷推理は、想像力豊かだなあ、と感心させられます。また、つねに身の危険に置かれている状況だからこそ光るポアロとの友情。これがまたいい味を出しています。 そんなわけで、冒頭のチェックリストをクリアした方であれば、世上の評判に囚われず、読んでみてもらえれば、と思います。特にポアロとヘイスティングスの、互いの欠点を十分に理解しながらなぜか深い友情で結ばれているという関係を、これほど鋭角的に見せている作品は他にはありません。繰り返しになりますが、とにかくヘイスティングスがイイんです。 なお、創元推理文庫版に付された厚木淳氏の解説は、本作が持つ魅力を端的かつ的確にまとめています。肯定的な意見を知りたい方は是非目を通してみてください。 ■初出について 短編作家としてのクリスティがデビューしたのは、1923年3月7日に発行された週刊誌The Sketch magazineの1571号で、作品はポアロ物の「戦勝記念舞踏会事件」(『教会で死んだ男』収録)でした。以降、同年12月18日発行の第1612号まで、クリスティは同誌で25作に上るポアロ物を発表し続けます。この連載は半年ほどの休載を挟んで、前半の12作と、後半の13作に分かれていました。 そして年が明けて1924年、クリスティは新たな、そしてこの時点ではクリスティ自身が最後だと考えていたポアロ物の連載を開始します。前2シリーズとの違いは、ビッグ4という共通の敵との戦いをテーマにした連作だったことです。そのため、“The Man who was No. 4.”という副題も付けられました。なお、余談になりますが、トミーとタペンス物の短編集『おしどり探偵』で、トミーがポアロのメソッドを用いて事件に挑むエピソードが「16号だった男」となっているのは、このナンバー・フォーの自乗を意味しています。 The Sketch magazine連載時のラインナップは以下の通りです。 1.The Unexpected Guestten……第1614号(1924.01.02)。本書の1及び2章の原型 2.The Adventure of the Dartmoor Bungalow……第1615号(1924.01.09)。本書の3及び4章の原型 3.The Lady on the Stairs……第1616号(1924.01.16)。本書の5及び6章の原型 4.The Radium Thieves……第1617号(1924.01.23)。本書の7章の原型 5.In the House of the Enemy……第1618号(1924.01.30)。本書の8章の原型 6.The Yellow Jasmine Mystery……第1619号(1924.02.06)。本書の9及び10章の原型 7.The Chess Problem……第1620号(1924.02.13)。本書の11章の原型 8.The Baited Trap……第1621号(1924.02.20)。本書の12及び13章の原型 9.The Adventure of the Peroxide Blonde……第1622号(1924.02.27)。本書の14章の原型 10.The Terrible Catastrophe……第1623号(1924.03.05)。本書の15章の原型 11.The Dying Chinaman……第1624号(1924.03.12)。本書の16章の原型 12.The Crag in the Dolomites……第1625号(1924.03.19)本書の17及び18章の原型であり、クリスティがThe Sketch magazineで発表した最後のポアロ物短編 ご覧の通り、1924年の1月から3月まで、毎号欠かさず連載されています。また、連載終了の1924年3月には短編集『ポアロ登場』の初版が発売されており、これ以前に書かれた長編は『スタイルズ荘の怪事件』『秘密組織』『ゴルフ場殺人事件』の3作しかありません。クリスティのキャリアにおいて、まさに最初期に書かれたシリーズであることがお分かり戴けるでしょう。同時にクリスティがかなり早い段階でポアロ物を止めようと思ったことも分かります。 世界制覇を目論む犯罪組織との戦いというのは、ポアロを引退させる花道として用意した設定だったのでしょう。しかし、出版社も読者もそれを認めず、引退後の事件として『アクロイド殺し』が書かれ(初版刊行は1926年6月)、本作(シリーズを再構成し、長編相当の作品として刊行されたのは1927年1月)を経て、ついに『青列車の秘密』(初版刊行1928年3月)で事実上引退はなかったことにされています。クリスティは後年、『青列車の秘密』を書くのが辛かったと語っていますが、ここにもポアロを嫌っていたクリスティの志向が表れているといえるでしょう。 | ||||
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アガサ・クリスティを敬愛し、その作品はすべて読破している。 彼女はときどき面白くない作品も書いてしまうが、それらも彼女独特の安心感があり、なんだかんだ理由をつけて許せてしまう。 しかし、本作のみはかなり異色である。 酷評する表現はいくらでもあるのだろうが、まるでミステリー作家を目指している小学生が出来心で書いたのかと思うような陳腐な絶対的駄作である。 彼女の作品でなければ10ページも読み進まない内に書庫の奥深くに眠らせ、そのまま評価もせず、語る事も無いだろう。 物語としては中心軸に大きな犯罪組織の存在を据えた設定になっているが、なんの事は無い、小さな事件が起っては無理矢理ある組織と関連づけられ、それが立体的に謎を深めるでもなく、何か奥の深い謎が解き明かされるでもなく、ドタバタしながら繰り返されるだけ。 残念ながら説明がなければ、とても巨悪の組織を思い浮かべる事などできない。 最後の幕引きなど目も当てられない。 このように酷いのだが、この作品は現にアガサ・クリスティの名を冠している。 ミステリーの女王の名を冠してしまっている以上は、この体たらくに対して何らかの意味づけ、位置づけをし、厳格に解釈させていただくのが礼儀なのであろう。 一体全体このような愚作が如何にして生まれたのだろうか。 実は、本書の刊行される少し前にアガサ・クリスティはご主人の不倫が原因で失踪事件を起こしている。 そうした彼女の辛い身の上を案じて義兄が考えたのは、それまでに某誌に掲載された短編をつぎはぎにして長編にし、彼女の作家としてのキャリアが中断しないようにしようというもの。それが本作品となったようだ。 実際、どこまでアガサが校正し直したかは分かっておらず、かなりの部分が義兄の手によるものとも言われている。 物語としてのプロットの尋常ならぬ出来の悪さ、他のポアロ作品に無い異常なまでの話のこじつけぶり、どんなにレベルの低いアガサ作品でも有している独特の安心感が本作からは得られない事などを考えると、義兄が単独で本作を校正したのではないかと訝ってしまう程だ。 よって、個人的にはこれをアガサの作品と呼ぶのも憚られる。 そもそも短編が苦手と思われるアガサの底の浅い短編を集めてきて、ほぼ素人の義兄がつなぎ合わせたのだとすると面白くなるワケが無い。 しかし、当時の彼女のおかれた状況を考えると同情を禁じ得ない。 そして、また、考え方によっては、逆にこの作品を出版したからこそ、その後のアガサ作品が存在しているともいえる。 そういう意味では非常に重要な作品ではないだろうか。 内容ではなく、その存在という意味で。 という訳で、こんな作品でも、なんだかんだ理由をつけて許してしまうのであった。 まぁ、しかし、彼女の作品の良さを知らない段階では読むべきではないし、多々秀逸な作品がある中で本作を選ぶ理由も無いだろう。 余程好きでもなければ、最後まで敢えて読まずとも良い作品とすら言える。 | ||||
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うーん、ぱらぱらとエピソードが登場しては消えるパターンで、古さを感じさせるものかもしれません。 今回クリスティ文庫を順に再読しているのでよんんだのですが、昔創元社の文庫を途中で放り出した覚えがあります。 | ||||
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この本でクリスティーをすべて読みました。 できはまあまあですが、本はとても綺麗でした。 | ||||
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新品同様で、感謝しております。内容も大変おもしろく、クリスティ作品のなかでも、出来のいい小説だと思います。ありがとうございました。 | ||||
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クリスティーの作品の中ではあまり評価の高くない作品なのですが、個人的には一番好きなお話になりました! ポアロとヘイスティングスさんがたった二人で四人の首領からなる国際的な犯罪組織と戦います。とてもワクワクして楽しかったです!仲のいい二人がみられるし、ポアロの憧れの女性ヴェラロサコフさんも出てきます。他の方は酷評なさっていますが私はおすすめします! | ||||
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夢のような作品。 第二の銃声と並ぶミステリー史に残る傑作だが、 後のクリスティ自身によるコンパクトな「推理」小説の流れからは、外れている。 しかし、「終わりなき世に生まれつく」やクイーンの「三角形の第四辺」と並んで、ミステリーはこういう夢見るように寓話的で、 とりとめのない可能性をはらむ作品が作られ続けても良かったはずなのだ。 セカイ系であり、犯罪は現実とは関係ない寓話的な不安の意識であり。 | ||||
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多分ポアロシリーズでサスペンスなのは 珍しいかと思います。 犯人はあらかじめわかっているので (名前はわかりませんが…) そんなに頭を使わずに読むことができるはずです。 ちなみに相方のヘイスティングズは やっぱりかわいそうな役回りで 何回もビッグ4のものに脅されたり あわや生命まで狙われたり… 本当だませない人間ってかわいそうなものです。 もちろん見所は読者も だまされてしまう ラストの場面です。 真相を知ったら 「灰色の脳細胞め…」 と思うこと間違いなしです。 | ||||
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本書は異色のポアロのスパイ・スリラーもの。 本格推理作家として知られる作者だが、1920年代は『茶色の服の男』『チムニーズ館の秘密』『七つの時計』と、むしろスパイ・スリラーものが充実している。 しかし、その中において唯一本書のみが駄作である。 まず、ご自慢の「灰色の脳細胞」で推理するポアロで、スパイ・スリラーものを演じさせるという設定自体が既に間違っている。ポアロがまるで狂言回しのようである。 こういう作品はトミーとタペンスのような行動派探偵向きで、推理派探偵向きではない。 それにナンバー・スリーと対峙したときのタバコの件、私が昔(幼稚園か小学生の頃)に見たマンガやアニメの中でしか見たことのないような、子供だましにさえならない馬鹿馬鹿しすぎる仕掛けである。 それでもこれがトミーとタペンスものだったら、多少荒唐無稽でも面白いと思えたかもしれないが。 | ||||
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