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冷血



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【この小説が収録されている参考書籍】
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冷血の評価: 3.76/5点 レビュー 109件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.76pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全109件 61~80 4/6ページ
No.49:
(5pt)

美品

何度も読み返すと考え、新品に近いと思われる商品を選択しました。
購入商品は、その通りでした。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4101347263
No.48:
(4pt)

フィクションの限界

この作家のディティールへのこだわりは有名な話だが、この作品に関して言えば、その辺りは全く気にならなかった。というのもいわゆる”福澤家3部作”で折れかかったこの作家への期待が、全く違う形で報われたからだ。僕らはエレベーターの扉や拳銃や原発の構造に関して、この作家の作風として捉えて結構楽しんできたが、永田町や禅寺の修行やましてや宗教なんかに関しては、まったく作家の自恣としか受け取れなかった。自己満足ならご免蒙る、そう思って3作目は(彼女の作品としては初めて)投げ出してしまった。しかしこの作品でまったく違っていた。

久しぶりの合田刑事との再会に最初は戸惑いもあったが、さて、あのスニーカーの若者もこのような形で老熟していくのかと、自分の来し方と比べたりもした。しかしそれは第2章以後のことで、第1章の少女の日記で綴られる被害者家族の日常と、犯人たちの行き当たりばったりの行動、その比較はどういえばいいのだろう、つまり社会が表現を躊躇している格差やタブー、いやもっと深い部分にある現代社会に内在する不条理というものを感じざるを得ない。そしてそれを際立たせているのが前述のディティールである。初潮を迎えた13歳の少女の心の動き、青年期を終えた若者の行き場のない怒り、どのように表現しようにも陳腐に陥るが、それに加えて特筆すべきは情景に関する記述である。池袋の五差路に始まって国道16号線沿い、パチスロ、サウナ、ファミレス、全ての描写がこの作品の本質になっているように思われる。荘厳であろうが軽薄であろうが、秩序であろうが無秩序であろうが、この作家はどんなものであれ文字で表現できないものは無いと、僕は首根っこを押さえつけられた思いがしたものだ。そしてその本質が”ブレイド”、”パリ・テキサス”、”利根川図誌”というように具体化され、一気に身近なものとなる。

そういった意味で、この作品は上下巻でまったく違った作風であるとも言える。下巻一冊を占める第3章は、いわば上巻の各章で抽出されたテーマを固化している密室劇のようなものだ。この作家の好む人間の多面性や冷厳な司法制度、そして死生観といったものを合田刑事の思索を借りて作家は表現するが、ここで僕はふとフィクションの限界を感じた。これは世田谷で起きたあの事件ではなく作家の頭で創造された虚構なのだと思うとき、慄然とした思いになる。あなたは本当に人の営みを見てきたのですか、軽々しい思いは無かったですか?と問いたくなる。とくに分娩時低酸素症の医療過誤の被害者との面談では、あの”午後4時の男”のような不快感を感じざるを得なかった。

”否”という記述があるがこれは文字通り”いな”と読むより”いや”程度で捉えたほうがいいと思う。どちらにしても彼のカポーティは”冷血”以後、作家としての輝きが著しく失せていったが、彼女にはそうなって欲しくない想いだ。誰も予期しないようなまったく新しい荒野を目指して欲しいな
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4101347263
No.47:
(5pt)

後半一気に読みました。

僕はすべて高村さんの作品をすべて読んでいないので単純にエンタテイメントとして面白かったかどうかで判断させていただきますと、下巻になって実に面白かったです。上巻でやや疲れながら下巻に来ましたが疲れも吹っ飛んで読んでしまいました。1日です。こういうのは久しぶりです。
初めは一言でいえばこういう人間が出現してきているということかなと思いました。従来の犯罪の物差しで測れない、単純に不条理、衝動とかという名前が当てはまらないもの、それを何とか捕まえようとする合田さんね。そんな構造のように思って読んでおりましたが、井上はともかく戸田のほうはあり得るかなとさらに井上の感覚もひょっとしたら今の世では起こり得るかなと思いながら読みました。題名から当然カポーティを連想しますが、設定がこちらは架空の話なので全くのフイクションです。(世田谷の事件を連想させますが、似させなかったほうがよかったような気がします)。個人的にはこちらのほうが面白かった。まあ今の時代を取り扱ってますから当然と言えば当然です。設定が突飛すぎるという書評も読みましたが小説は突飛の集約なんでいいかなと思います。
それと村上春樹にも通じるけれど作品の中に作者の世代感が出る(当然ですが)「パリ・テキサス」「ナスターシャ・キンスキー」「ライ・クーダー」・・・妙に納得してしまいます。
でも最後のあたりになってこの本の主題って、理由もない殺人の犯人を死刑に処するために正当な理由を見つけねばならないあ司法のジレンマを書き表しているのかなと思ったり、なかなか単純に痛快丸かじりという本ではありません。
それとちょっと前の事実が出てくるので(たとえば中村紀洋の移籍問題とか)昔々読んだ「赤ずきんちゃん気をつけて」を思い出した。いしだあゆみの「ブルーライトヨコハマ」が出てきて当時は新鮮な小説だった。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4101347263
No.46:
(3pt)

チェーホフはチェーホフなのであってドストエフスキーではないということだろう。

合田が帰ってきた。

高村節のリズム感が戻ってくるのは事件現場に合田が到着してからである。

現場検証、捜査会議の詳細を極めるリアリティ表現はさすがの高村さん。

ただ事件はありふれた強盗殺人事件、犯人逮捕もあっけない。

あえてシンプルな舞台設定にして、

「冷血」な犯人の深層心理を表現しようとするのだが成功していない。

例えば、

T「その汚い安っぽいアメリカに、赤いドレスを着たナスターシャ・キンスキーの下品さがぴったりで、泣けたのです。下品のなかにも、髪の毛一本の差で美になるものがあることを発見したのが、私の『パリ、テキサス』でした。」

本書の中で、もっとも印象深い手紙文であるが、さて今日『パリ、テキサス』のナスターシャ・キンスキー髪の毛一本を記憶にとどめている読者がどれほどいるのだろうかと思ってしまう。

I「いつの間にかひとりで畑に戻っていて、キャベツを金属バットで叩き潰して回っている。ああ、いいえ、だからどうだということではないけども、やっぱり怖いこともありますよ、身内でも・・・」

中学生のいたずらなら、やっぱりだからどうだということではないだろうし、

キャベツが殺人の動機になるかという問いならやはり「ならない」。

よくよく高村ワールドを振り返ってみると、

エンターテイメント小説「レディジョーカー」後の「晴子情歌」から前作「太陽を曳く馬」まで純文学は書けていない。

ごく普通の事務員がある日当然天啓を受けてワープロをたたき始め、

「マークスの山」「レディジョーカー」と驚異的な劇的世界を生み出したが、

人間の原罪を書くほどの天啓は受けていない。

つまりチェーホフはチェーホフなのであってドストエフスキーではないということだろう。
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255
No.45:
(4pt)

"心理分析の限界"をテーマに、新しい物語構成手法を模索した意欲作

カポーティの代表作と敢えて同題名とした上に、二人組という犯人設定も含めて、背景となる事件の構造もほぼ同一という設定の中で、作者が何を描こうとしたのか大いなる興味を持って本作を手に取った。カポーティの方は実際の犯人検挙後に、綿密な取材の下、ルポタージュと小説の間のギリギリの線(この"さじ加減"がカポーティの力量)で再構成したものだが、こちらは未解決の事件である。現実の事件を基にしていながら、基本設定以外は全て作者の手に委ねられているという点で、「レディ・ジョーカー」と同系列の作品だが、同一テーマを扱うとは考えられない。「レディ・ジョーカー」では社会構造の歪み・矛盾とそこから生まれる悲哀や"やるせなさ"を、「太陽を曳く馬(渾身の力作)」ではオウム事件を背景とした認識論・宗教論を扱ったが、本作で何を見せてくれるか楽しみだった。

上巻では犯行場面の描写が省かれたが、その代り、下巻では取調べを通じて犯行場面の徹底的な再現がなされ、それと共に徹底的な動機の追求がなされる。茫漠とした(韜晦なのか本音なのかも判然としない)動機しか示さない犯人達、検挙上の都合もあって、説得力のある動機を求める捜査側......。結局は、「人は他人の心理や行動原理を理解出来るか否か」という"心理分析の限界"がテーマの様に映った。その意味で本作は、体裁こそ変わったものの、「太陽を曳く馬」の上巻の認識論と同系列の内容で、物語構成は三部作以前のものという作者の新しい試みと言って良いのではないか。想像だが、「太陽を曳く馬」が小説としては読み難いという(多分あった)批判に応える事を意図したものの様に思えた。同時に、上巻でも抱いた、人生には様々な岐路があり、道の僅かな選択の差でその後の人生が大きく変わり得る事、その上で、どのような道を選択しようと各人に"立ち位置"の不確かさが付き纏う事というテーマ性を改めて感じた。それ位、犯人の生育過程及び逮捕後の姿勢に関する書き込みが精緻を極めている。そして、合田の"立ち位置"もまた不確かなのである。

更に、犯罪(警察)小説としても楽しめる内容としている(このため、"ミステリ作家"との誤解を招くのだが......)辺りは作者のサービス精神と言えよう。数多の作家の中で、筆力は勿論の事、現代社会やその中で生きる人間に対する観察眼の鋭さ・深さで作者は一歩抜きん出ていると思う。今後も意欲的な作品の発表を期待したい。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4101347263
No.44:
(4pt)

人間の"立ち位置"の不確かさがテーマか〜下巻の展開が楽しみ

上巻のみの感想(下巻は未読)。カポーティの代表作と敢えて同題名とした上に、二人組という犯人設定も含めて、背景となる事件の構造もほぼ同一という設定の中で、作者が何を描こうとしたのか大いなる興味を持って本作を手に取った。カポーティの方は実際の犯人検挙後に、綿密な取材の下、ルポタージュと小説の間のギリギリの線(この"さじ加減"がカポーティの力量)で再構成したものだが、こちらは未解決の事件である。現実の事件を基にしていながら、基本設定以外は全て作者の手に委ねられているという点で、「レディ・ジョーカー」と同系列の作品だが、同一テーマを扱うとは考えられない。「レディ・ジョーカー」では社会構造の歪み・矛盾とそこから生まれる悲哀や"やるせなさ"を、「太陽を曳く馬(渾身の力作)」ではオウム事件を背景とした認識論・宗教論を扱ったが、本作で何を見せてくれるか楽しみだった。

「太陽を曳く馬」は小説というよりも論文(あるいは禅問答?)に近い体裁だったが、本作は三部作以前の体裁に戻った。事件に至るまでの過程を、底知れぬ不気味さを秘めているのか単なる軽薄・粗暴なのか判然としない二人の言動と被害者家族の模様とのカットバック形式で描き、犯行場面は描かず、合田達の捜査が始まるという進行。各種のメカや警察の組織・内部権力闘争・捜査手法に関する記述は相変わらずの"精緻"の一言に尽きる。捜査現場が持つ独特の雰囲気や微妙な人間関係が余す所なく活写されている。このように、犯罪(警察)小説としても楽しめる辺りは作者のサービス精神と言えよう(このため、"ミステリ作家"との誤解を招くのだが......)。舞台の一部となる町田・相模原周辺、特に16号線沿線についての詳細な描写にも、(地元住民として)驚いた。やはりこちらも、執筆前の取材が半端ではないのだ。

上巻はアッケナイ終わり方だったが、人生には様々な岐路があり、道の僅かな選択の差でその後の人生が大きく変わり得る事、その上で、どのような道を選択しようと各人に"立ち位置"の不確かさが付き纏う事がテーマとなっている様に映った。強行犯捜査を外されて、にわか農作業が頭を占める合田の"立ち位置"も不確かであり、冒頭に出て来る被害者家族の13歳の長女の日記の「子ども以上、メス未満」という言葉もそれを象徴している様に思われた。「太陽を曳く馬」では上巻が認識論、下巻が宗教論とハッキリ区別がなされていた。この先何が出て来るか、下巻の展開が楽しみである。
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255
No.43:
(3pt)

物足りない

待ちに待った、高村薫の新作長編です。
緻密で骨太な文章は相変わらずで、非常に読みごたえたっぷりでした。が、何かが
足りない感じは常にありましたね。

そのひとつとして、細かいミスが見受けられること。
日産シルビアを4ドアセダンと書いてしまったり、2002年末から2003年にかけての話なのに、
ソフトバンクの携帯が登場したり(当時はまだボーダフォンでした)。ちょっと調べれば
わかることなのに、女史も筆が鈍ってきたかな、と思いました。

それと、登場人物の会話文。
60歳近い著者が無理やり若者言葉を書こうとすると、読んでるこっちが苦しくなります(笑)。
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255
No.42:
(1pt)

残念です!

冷血(下)に同じ。

しばらくの間、読みたい作品が見つからなかった頃に、高村さんの「マークスの山」を思い出し、他の作品も読んでみたいと思い

購入しましたが、期待外れでした。
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4620107891
No.41:
(1pt)

残念です。

直木賞を受賞した作品「マークスの山」を読んで素晴らしい作品だと思い、二作目としてこの作品を読みましたが、

内容がだらだらとしていて面白さがどこからも伝わってきませんでした。

高村さんの作品を読むことは、今後ありません。

復活作品を期待します。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4620107905
No.40:
(4pt)

人の行動に理由はあるのか?

上下巻、読み終わりました。

上巻の最初は、13歳になる少女の生活が丁寧に描かれ
続いて、刑務所から出所したばかりの男が
携帯電話の求人サイトで犯罪に手を染めようとしているところが描かれ

少女の一家と
無計画にすすむ男二人の行動が交互に描かれ

どうか無事で会って欲しいと思うところで第1章が終わります。

そして第2章は一家4人が殺されたところから始まります。

ここまで本当に一気読みしました。

下巻の第3章では、捕まった犯人2人の取り調べ。
なぜ4人を殺すことになってしまったのか?
第1章では、男の一人は「子どもは殺してはいけない」と
明言していたにもかかわらず。

作者の丁寧な筆致は、ついに
なぜ4人を殺したのか、その理由にはいきつきません。

でも、本当の犯罪もそういうものかもしれません。
裁判で争われるのは、分かりやすく単純化された部分だけなのかもしれません。

物語を読みながら、オウム真理教の麻原彰晃のことを考えていました。
彼はほとんど意思疎通できない状態とのこと。
そういう人間を死刑にする意味はあるのか?
しかし、あれだけの人々を殺害しておいて、本人は税金で食事を受けている矛盾。

「反省させると犯罪者になります」という本も読んでみたくなりました。
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255
No.39:
(5pt)

創作ノンフィクション小説

下巻では、二人の容疑者が犯行を自供し、事件の詳細と犯行理由が次第に明らかになる。相変わらず著者の視点は冷めており、ノンフィクションを読むかのよう。

キャベツ。合田雄一郎も犯人も見方は違うのだが、奇しくも同じ表現をしている。

フィクションでありながら、警察機構や捜査の様子、犯人が強盗殺人に至る背景から犯行シーンまでをよくぞここまで書き込んだと驚くばかり。

創作ノンフィクション小説と呼ぶべきか。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4620107905
No.38:
(5pt)

まるでノンフィクションのような…

久々の合田雄一郎シリーズ。冒頭から幸せな四人家族の日常と二人の男の出会いから悪の道にのめり込んで行く過程が交互に描かれる。そして、最悪の事件はクリスマス・イヴに発覚する。

著者の狙いなのだろうか、まるでノンフィクションのような著者の冷めた視点が、極めて克明に事件の過程を描いているようだ。それだけに現実に起こった事件であるかのような錯覚を覚え、不気味さを感じる。

上巻では事件の発覚から容疑者の二人が確保される所までが、じっくりとまるでこの世を俯瞰するかのような視点で描かれている。

果たして…
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4620107891
No.37:
(5pt)

捜査場面はリアルで読み応えあり

「レディ・ジョーカー」以来の高村薫作品。
「晴子情歌」でくじけて、なぜ?どうして?難解作家になってしまったの???と、
それまでの「好きな作家=高村薫」を名乗れないさみしさを感じていましたが、
とりあえず読みやすい!それだけでうれしくて★5つ(レビューになってない)

まず上巻は淡々と警察調書のような文章で、それが却って事件の凄惨さを浮上がらせ
迫力満点でかなり怖かったです。
とにかく上巻はいつから合田が園芸おじさんになったのかが疑問なくらいで
違和感とか、疑問は持ちませんでした。
問題は作品の要のはずの下巻ですが…
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255
No.36:
(4pt)

あれれ?犯人像にちょっと疑問

上巻は警察調書のような文体と相まって、捜査の描写に現実感があり、とても面白く読んだ。
そして肝心の下巻は確かに読み応えたっぷり、なのだが…
同時に様々な違和感も感じた。

「戸田=歯痛男」はこちらまで歯が痛くなるくらい気の毒な男で、合田もある種の共感を
寄せているようにも見える。分かりやすい動機も一応あるといえばある。
問題は「井上=双極性の男」です。
彼は人たらしで魅力的な男と設定されているけれど、どうにもそこが伝わってこない。

また二人とも、意外な趣味を持っていて、そこから本の差し入れという形で、彼らと
合田の交流があり、本作の最も重要な部分になるのですが、その彼らの趣味がなんだか
取ってつけたみたいで違和感が残ります。
また合田との手紙の中の彼らと、上巻での彼らがどうも繋がらない。

と思いつつレビューを見たら、「カポーティではない高村薫の限界」というレビューが
私の疑問に答えてくれました。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4101347263
No.35:
(4pt)

問いかけ

殺人の法的要件はやはり理屈が優先で形式的な部分があって、特に、被疑者に精神疾患があると、取り調べや裁判の過程で法的要件を整えようとする際に、実態とのギャップが生じるケースも出てくるだろう。

そうしたギャップを通じて人の生死とは何かを問う手法やその問いかけ方は、流石、高村薫でありレベルが高い。

作者は百も承知で書いているのだが、死に伴う喪失感は主観でしかありえない。軽度の精神疾患があるとはいえ、「冷血」な殺人犯に喪失感を覚えた人をどう捉えるかは万人共通ではない。
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255
No.34:
(1pt)

ここまで書くのであれば、犯罪ドキュメンタリーの書き手になっていただきたく候。

作者精魂込めた渾身の力作の小説に対して星一つをつけることは大変、失礼な行為です。
従いまして、私の星一つの評価は小説に対しての評価ではなく、私のこのような小説に関しての考え方だとご理解ください。
つまり、本書は世田谷一家殺人事件を意識しての小説でしょうが、世田谷の犯罪の犯人は逮捕されていませんし、犯人のない経歴や内心も不明です。本書は世田谷一家殺人事件と同種の事件を仮想し、犯人像を仮想し、小説化したものですが、フィクションはあくまでもフィクションです。
ここまで架空の事件を小説という形でノンフィクションであるかのように人間描写をするからには、やはり、小説は小説である以上、ノンフィクションではない小説としての何かが必要であり、そこには小説としてのダイナミズム、面白さが必要だと考えます。
宮部みゆき女史の小説の「火車」と「理由」も本書と同種のものがあり、私自身は彼女のファンでもありませんが、好きか嫌いかは別にして、宮部女史の小説も細かい描写で長々と描いてリアリズムを追求してはいますが、他方でミステリーとして引き付ける要素はありました。本書にはそれはありませんでした。
「愛犬家殺人」の関根が、どういった幼少期を過ごし、どんな生育をしてきたか、その経歴には不明なことが多々あります。池田小学校大量殺人の宅間にしても、ある程度、その経歴は明らかですが、彼の誕生以降の人生を詳細に描いた書物はありません。山口の光市の母子殺人事件の福田の家庭環境や人格形成の歴史についても裁判で明らかになったこと以外にももっと知りたいと私は思っております。
私はこのような小説を高村女史が書くのであれば、関根や宅間、福田の人生を調査取材して書いたほうが活字を使い、書物を書くという行為として、意義があるのではないかと考えます。この小説よりも上記の現実の事件の方が、説得力や迫るものがあると思うからです、小説やミステリーとしての面白さを求めず、リアリズムを追求するのであればそうすべきだと考えます。小説という形態でリアリズムを追求して表現するのであれば、インパクトがある何かがないと採点不能というのが私の正直な感想です。
現実の犯罪を小説のリアリズムは超えることはできない、だから、それを小説で表現しても無意味とは言いませんが虚しさが残る、しかしながら、小説が描く犯罪は現実の犯罪をフィクションにおいて超えることはできる、そこに小説の面白さがあるのであります。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4101347263
No.33:
(1pt)

文体が気になってなかなか読み進めません

まだ上巻を読み終えただけですが、下巻を読む気力がなくなりつつあります。
原因は内容ではなく文体にあり、ほぼ2ページに一度の割合で段落の文頭が「とまれ」で始まるのです。
ここまで繰り返し出てくるとうんざりして、内容に集中するのが困難です。
週刊誌での連載であればこれほど気にならないかもしれませんが、単行本化する際には
加筆なり修正なりしてほしかったです。
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255
No.32:
(3pt)

多少違和感が否めない

「太陽を曳く馬」まで持続した「暴力」と「命」への問いかけが、「冷血」では拡散してしまった印象だ。おそらくこの理由なき犯罪は、成立する社会の「わからなさ」を前提とするが、では、その反対の分かりやすい社会とは何だろう。その社会ではこのような犯行は理路整然とあたかも調書のように抹殺されたのだろうか。そうではあるまい。「わからなさ」はこのハイパー資本主義制社会ゆえに発生しているのではなく、人間の存在そのものに付随するものだ。そこを刑事の視点から描くのではなく、別の人間を新たに登場させることで問い詰めていく展開を期待していた。そこに違和感が残った。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4101347263
No.31:
(2pt)

意欲作ですが。

切羽詰まった状況でもなく、激しい怨恨でもなく、成り行きで起こってしまった一家惨殺事件。なんとなく勢いで取り返しのつかない犯罪を犯してしまった二人の男たちの心境はよく表されてると思います。とくに前半の犯行に至るまでのふたりの描写には引き込まれました。
ところが、逮捕されてからの尋問あたりから、文章には「否」と「とまれ」の連続で、失礼ながらいささかげんなりしてしまいました。
何ページにもわたって、同じ内容が繰り返されてる気がしますが・・。犯人から刑事への手紙の中の文面にまで「〜とまれ〜」が登場して、30歳ちょっとの男性が、「とまれ、何とか〜」って話したり書いたりはしないのでは?って後半は冷めた目で読んでしまいました。
それにしても、殺人を普通の人間が起こしてしまったという事件は現実に頻繁にニュース流れます。現代でも通じるカポーティーの題材を、意欲的に捉えられた作品とは思います。
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4101347263
No.30:
(3pt)

健康を損なう恐れ…

残念ですが、この上巻の3分の2を読んだところで断念してしまいました。読む私の体調が凄く悪かったからかも知れません。酔いやすいフェリーの中で読んでいたからかも知れません。広い空と濃い緑の沖縄にいたからかも…。

結果、頭痛と吐き気でボルタレンよりは軽いですが、ロキソニンを飲むことになったのは、主人公と似ているなと自分を思いましたが。

この作品は、犯罪小説より、調査報道に近いかなと思います。裏社会と表社会の間の遠くない場所に潜む日常や動機を克明に記録して、これからに活かそうとみて取れる姿にそう思います。

この本が読めたら健康、若しくは対岸の火事か。読めないと相当に弱っているか、身近に感じることが出来る…そんな風に思いました。

有能だから組織と合わなくなる公務員の合田刑事の描かれ方が好きです。合わなくても続ける様は、「こういう人がいるから税金を払う義務も喜びもあり、社会が安定する秘密でもある」と頭が下がります。架空の人物なのに。公務員に限らないかも知れませんけれど。

ただやっぱり、体調が悪い人や、日々に心配事が多い人には、娯楽にはならないですよ、と先に言っておきたいです。
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255

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