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冷血



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【この小説が収録されている参考書籍】
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冷血(下)
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冷血(下)

冷血の評価: 7.80/10点 レビュー 5件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.80pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全5件 1~5 1/1ページ
No.5:
(5pt)

下巻が

合田刑事ということで手に取りました。上巻はすごく面白かったです。下巻は長い。まとまらなかったのかな。

部長
SGEH53OQ
No.4:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

冷血の感想

下巻を読み終えました。少し時間を置いて読んだせいか興奮も醒めフラットな気分で読みました。思うのは上巻が「動」なら下巻は「静」と云った印象です。逮捕された二人の取調べでの供述の裏付け捜査の様子や、地検とのあれこれ。そして調書を読む合田を通して、二人の生い立ちやこれまでの人生が浮き彫りになるが、何故一家四人を殺害したのかがハッキリしない。二人の行動の元になったものとはいったいなんだったのか。金が目的だった訳でもなく、ケータイサイトで知り合った二人が郵便局のATMを襲い失敗したあとも、別れるでもなくずるずると16号線を流れて赤羽まで行き四人を殺害した。混迷する合田雄一郎。そういった様子が長々と続きます。二人の行動を描写するところはその確かな筆力で読み応えがあります。生まれも育った環境もまるで違う二人。その二人の内面は調書を読む合田にはどれほど理解できたのかと思います。でも、こういった系統のものは久しぶりに読んだので面白かったです。佐木隆三の「復讐するは我にあり」や西村望の「丑三つの村」、宮部みゆきの「火車」などを読んで面白いと感じた人にはおススメできます。

ニコラス刑事
25MT9OHA
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

冷血の感想

始めに、まだ上巻しか読んでいません。でもこの上巻もほぼ一日で読み終えました。久しぶりに興奮しながら本を読み進むという時間を堪能しました。文章が凄いなぁというのが素直な感想です。言葉がひとつひとつうごめき波となってこちらの意識の中に入ってきます。形容する言葉、表わす言葉、表現することを生業とする人が持つ資質が炸裂している文です。云っちゃあ悪いですが凡庸なミステリしか書けない作家には逆立ちしたって書けない文章でしよう。
高梨あゆみの目を通して描かれる高梨家の日常と家族の様子とその小宇宙。そしてケータイの求人サイトで繋がったトダヨシオとイノウエカツミ。ふたりの行き当たりばったりの行動。16号線を行きつ戻りつ郵便局のATMを襲い、コンビニを襲い
6、7万の金を奪ってクルマを代え16号線を流れて北区赤羽にやってくる。マンモス団地の先に一戸建ての並ぶなかにある歯医者の家に目をつける二人。ここまでの第一章だけでも読み応えがありページを捲る手が止まらなかった。
そして、第二章は一転して警察側からの描写になる。事件の発見から警察組織の人的内容とその動きが綿密に描かれている。縦社会の人事的な動き、実際の捜査のあり方の様子が緻密に書き込まれているかのようにリアルで目を見張る描写です。どれほどの資料を用意したのかと思うほど警察内部の動きがとてもリアルに描かれていて驚嘆します。カポーティの冷血と同じタイトルをもってきた作者の意気込みとかエネルギーとかがストレートに読んでいるこちらに伝わります。
ノンフィクション的な小説と云うのでしょうか。早く下巻も読まなければ、と思うのが正直な感想です。

ニコラス刑事
25MT9OHA
No.2:
(7pt)

広漠とした高村ワールドへ

高村薫の最新作は、合田雄一郎シリーズの新作だけに、「晴子情歌」から前作まで続いてきた読みづらさが薄らぎ、エンターテイメントとして楽しめる作品だ。ただ、警察小説、ミステリーを期待していると裏切られる結果になるだろう。
物語は、実際の事件(いまだ未解決だが)を想起させる「歯科医一家4人殺し」の事件発生から裁判、死刑執行までを追うもので、犯人、被害者の背景描写から捜査の在り様、裁判過程における関係者の言動まで、いかにも高村薫らしい緻密な描写(ことに、犯人の歯痛、歯科治療の詳細さと言ったら・・・)で展開される。しかし、すべてが明らかにされたようでありながら、犯人の実像、心理、犯行動機などは、すべて霧の中での手探りの記録でしかなかったという茫漠さが最後に残り、きわめて微妙な読後感に悩まされることになる。作者は、合田雄一郎と読者を真実と虚偽が絡み合って延々と続く、広漠な精神世界に放り出すことを狙っているに違いない。
そこが高村ワールドであり、好悪が分かれるところだろう。

iisan
927253Y1
No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

冷血の感想

ミステリーでも謎解きでありませんが、一級の警察小説です。
フィクションでありながら、まるで実在の事件のドキュメンタリーを読んでいるような錯覚さえ感じました。
行き当たりばったりで何の計画もなくATMを襲撃し、その足でコンビニ強盗に入り、ちょっとした思いつきで空き巣に入った歯科医の家で一家4人を惨殺すると言う残忍な犯人2人。
捕まった後なんとか動機を明らかにしようとする警察だが、お金にも人にも全く執着を見せない2人に戸惑う合田をはじめとした警察官達。

何が2人をここまで過激な行動に走らせてしまったのか?をなんとか理解しようとする合田の揺らぐ気持ちには非常に共感しました。
他人への無関心や、想像力の欠如。まるで思い通りにならない子どもが暴れているのと変らないような無軌道な犯人の行動。
少しずつだが明らかにされる2人の子ども時代だが、読んでいて酷いと思うものの、果たしてそれほど特殊なものだろうか?と思ってしまう。

事件の前に少しだけ被害者家族の日常が娘の目を通して描かれているのだが、犯人のような極端なものではないものの、両親2人の目はともに自分のほうを向いているようで、規則正しい毎日の生活はあるものの、娘は醒めた目で2人を見ていて、正直家族としての濃い繋がりをあまり感じることができなかった。戸田の人生も挫折はしたものの、それほど違いはなかったのではないかとさえ思える。

携帯やネットなど対人関係を希薄にするようなツールばかりが出回り、人と向き合うことができない人達はちまたに山とあふれている現在。
東北の地震の後や沖縄の辛酸をニュースなどでみるにつけ、大方の人間はやはり他人ごとのように過ごしている毎日の中で、私達は知らないうちに2人のような人間を量産しているのではないかと感じてしまう。
家庭教育や、格差をより広げてしまうようなことをあからさまに押し進めようとする今の政治家達は本当の子ども達の現実を見る気があるのだろうかと思えてならない。

合田の目を通して、このままで良いのかと言う重い問いかけを向けられているのだと思います。

たこやき
VQDQXTP1

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