踊りつかれて
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SNSのタイムラインに潜む底知れぬ恐怖を、塩田武士が突きつける一冊、それが『踊りつかれて』です。これは単なる小説ではありません。スマートフォンを持つ私たち一人ひとりへの、痛烈な警告の書です。 物語は、元タレントの転落事故をきっかけに、SNSの底なしの闇へと深く潜っていきます。そこにあるのは、あまりに身近になったSNSが生んだ、私たちのネットリテラシーの麻痺。人々は悪意なく、あるいは浅はかな正義感から、誰かの人生を破壊する言葉の刃を振りかざします。 特に「匿名」という仮面は人間の残酷さを増幅させ、執拗で容赦のない個人攻撃へと発展させます。そして最も恐ろしいのは、一度ネットに刻まれた悪評が「デジタルタトゥー」として残り続け、終わりの見えない精神的なリンチが続くこと。攻撃側は飽きれば去りますが、被害者の絶望に終わりはありません。 著者の卓越した筆致は、この現代の悲劇を、決して他人事として読むことを許しません。 SNSに少しでも疲弊している方、そしてその利便性を疑ったことのない全ての人に、手に取ってほしい一冊です。この本を閉じた後、あなたのタイムラインは、きっと昨日までとは違って見えるはずです。 | ||||
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前作(2023年)の傑作長編『存在のすべてを』が候補にあがっておれば直木賞は受賞できたのではないかと思われる本書、『存在のすべてを』と比較すると少しパワーダウンかなと思わせるところがあり、直木賞受賞には至りませんでした かと言って本作のクオリティが低いのかというとそうではなく、前作が良すぎたので期待度が高く、厳しめの評価になってしまいましたが、人生というものを感じさせさせる、塩田武士らしい味わいのある作品で、標準以上のレベルはしっかりキープしており、きっとそう遠くない時期に受賞される力のある作家さんだと思います 本作で取り上げられているのは、まさに今社会問題となっているSNSに対する警鐘 ネットのインフラ化によって瞬時に答えが分かり、好きなものだけ手に入れられるという前提が浸透し、その結果「自分が信じたい情報ばかり集める」「承認欲求を満たすために感情を吐き出す」人たちが増え、それが思考力の欠如、間に合わせの正義感、自分に親しいものを評価して満たす自己愛により、呆れるほど幼い大人たちを生み出している そのうち承認欲求が抑えられなくなり倫理観のタガが外れ、いつしか何を言っても構わないと勘違いする「安全圏のスナイパー」となり真偽不明の情報を弾丸にして悪と思い込む相手をひたすら撃ち続ける 数年前、一人の女子プロレスラーがこの「安全圏のスナイパー」による数多くの弾丸により死に追い込まれたという事案がありましたが、それから数年たった今も、その状況が改善されたとは思えません SNSにより多様な意見が自由に言い合える状況になるかと思いきや、実はSNSは、バラバラにあった多様な数々の物差しを画一的にしているのではないか、名もなき者が荒く編んだ「正しさの網」に絡まっているのが現代人なのではないか 多くの人は本書が提起するSNSに対する上記のような問題提起にはうなづけるのではないでしょうか ただ、本書はそこがテーマのすべてではありません SNSや週刊誌のゴシップにより消えていった天才女性歌手奥田美月の過去を遡っていくことで判明するある事実 ここでも実際にあった事件をうまく取り込んでおり、おおっ、そっちの方向に行くのか、とちょっと意外な展開を見せてきます ある人の過去を遡っていくにつれて意外な事実が判明し、ばらけていた事実が繋がり、物語全体に「生きる」ということそのものを感じさせる感動的な奥行きを見せてくる手法、これは塩田武士の得意なところではないでしょうか 『存在のすべてを』を読んだ後には、ホキ美術館の写実画が見たくなりAmazonで『超写実の人物画 ホキ美術館コレクション』を買ってしまいましたが、本作を読んだ後は、松田聖子や中森明菜といった真に歌唱力ある昭和の女性歌手の歌が効きたくなってきました 塩田武士の作品にはそれだけの影響力があるということですね | ||||
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SNSの誹謗中傷という現代的なテーマに挑んだ意欲作だが、残念ながら塩田武士の従来の切れ味が感じられない。 例えば『罪の声』では限られた登場人物に焦点を絞り、複雑な題材に切り込み、うまく調理してくれた。『歪んだ波紋』では企業不祥事の内幕を丁寧に描写しながらも、テンポが良い。この切れ味は、焦点の絞り方にあるのかもしれない。 そして本作……最大の問題は登場人物を増やしすぎたことにあるだろう。これは単に物語における登場人物だけではない。たとえば、キャラクターの輪郭が同定されないところの不安定さ、である。 例えば、弁護士にとってもそうである。開示請求に長けた弁護士のエッセンスと、作者と親交の深い弁護士のエッセンス、これらが混在しているように見受けられる。 つまり根本的な問題は、名誉棄損という繊細な題材を扱うゆえに「八方美人」の姿勢を感じるところである。傷つけることを恐れることは、フォーカスを一点に絞らないこと。 誰かを責めれば名誉棄損、世間を風刺すれば政治や創作芸術。 この「名誉棄損」という壁を越えずに安全牌を切るというところ、役を作ろうと思ったがベタ降りした作品展開の変調、これは塩田氏の創作の「つかれ」なのではないだろうか。 塩田武士さんらしい社会派の視点や問題意識は健在だが、それを小説として昇華させる構成力としては、皆が求めすぎたかもしれない。 もう少し登場人物を絞り込み、核となる部分を深く掘り下げていれば、踊り切れる作品になったのではないだろうか。 テーマ切り出しの意欲は評価するが、名誉棄損事案も陳腐化している。 週刊文春いう庇護下での創作という点も、却って保守的でともいえる。 一つ言えることは、敢えて読むより現実を覗く方が、深遠だと思わされる分には深い。 | ||||
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読みごたえはあった。まず、自殺したお笑い芸人をSNSで誹謗中傷した匿名の数十名を、個人情報をさらすという方法で指弾する事件で、小説は始まる。なかなかの迫力だ。そしてその波紋が多角的に描かれていくのだが、だんだん内容がシフトしていって、芸能人とプロデューサー/マネージャーの強く美しいきずなの物語に変化してしまっている。 強いインパクトで始まったのに、結局裁判ものになってしまって、過去をたどって真実を探るという地味な展開になっていく。お笑いのネタでいうなら「出オチ」っぽい。 無責任な中傷や悪意を増幅させるネット社会について、途中で登場人物に何回か長々と語らせるのも、少し冗漫だった。その理屈を直接語らず、行動やストーリーで描いていくのが、小説家の仕事だろうと思う。 そして、天童ショージという才能豊かなお笑い芸人の物語と、奥田美月という不世出の歌手の物語が、どんどん二つの物語に乖離していってしまったような気がする。 大作で読みごたえもあったが、今期の直木賞候補作としては、受賞作に一歩及ばず、という感じに思えた。 | ||||
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SNSで誹謗中傷されたお笑い芸人と週刊誌にスクープされた昭和の歌姫。 ”人間への興味”のまま、階層深く掘り下げていき、その真理を求めていく。 旋律を奏でるそこには壮絶なドラマがあった。 情報化社会の脅威を肌で感じる。 乱れ飛ぶ情報フィルターバブル現象の危険性と情報倫理の立ち遅れを問い質している。 | ||||
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