逃亡者は北へ向かう
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| 書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点8.50pt | ||||||||
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2023〜24年に週刊誌連載された長編小説。東日本大震災に見舞われた東北を舞台に、自然災害と殺人事件を重ねて人生とは何かを問うヒューマン・サスペンスである。 | ||||
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震災を経験している著者だけに、震災の被害を受けた登場人物や状況の描写はピカイチ。被災者の恐怖感、絶望感がよく出ていたのは著者ならでは。今までの著作からも期待どおり。 | ||||
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| 子供の頃の生い立ちが、殺人の要因になるのか?というテーマが多いなぁ。 福島の大震災に絡めての物語。ちょっと、あざとい感じもする。 主人公は真柴亮。22歳は、3月11日東日本大震災の3日後、福島県さつき市で殺人事件を起こした。相手は、半グレの男で、逆恨みされ、揉み合ってナイフが相手に刺さったのだ。その現場を真柴は逃亡する。その翌日、逃亡先の会津市で警官に職務質問されたことで、またしても揉み合い、警官の持っていた銃が警官にあたってしまい死亡させる。2件とも、真柴には殺意はなかった。しかし、二人も殺人したことは、凶悪犯として指名手配される。その場で、人を殺したにもかかわらず自首せず、北に逃亡する。なぜ、真柴は北に向かったのか? 真柴亮の生い立ちは、まさに親ガチャだった。真柴亮はおじいさんの惣一に育てられた。母親は、亮を産んで離婚し、惣一の家で育てていたが、子供の頃に亡くなった。おじいさんの惣一は、孫の亮を育て、亮に、「お前の親父は酒を飲んで、スピード違反をして、人を撥ねて殺した。お前の父親は人殺しだ」と言い続けた。父親の話はおじいさんからしか聞けなかった。亮は、ひどい父親だと刷り込まれた。その交通事故には、理由があった。でも、飲酒運転は許されない。 中学生の亮は、図書館で、『飲酒運転ひき逃げ女性死亡』と言う記事で、父親の名前を見つけ、おじいさんの話は、本当だったと知った。そして、おじいさんが「お前は酒を飲むな」と言われたことを守り、酒を飲まない決意をした。おじいさんもなくなり、児童養護施設に預けられた。18歳の就職するときに、身元保証人を父親を探した。父親は生きているらしいことはわかった。しかし、父親はもういないと決め、保証人は施設長にお願いした。 亮は、社会人になり、職場の先輩に人付き合いが悪いと言われ、飲み屋にしかたがなくついて行って、半グレに絡まれ、喧嘩となる。それがもとで仕事を辞めさせられた。その上、地震で半グレの男が亡くなったことで、逆恨みされ、弾みで刺してしまった。逃走中に、職務尋問の警察官を誤って銃殺した。とにかく、北に逃げるのだ。 生い立ちが、悪かったので、殺人者になる。父親が殺人者なので、殺人者になるというテーマだ。 一方、真柴亮を追いかける刑事の陣内は、震災で子供が行方不明になっていた。妻からは、娘を一緒に探すように言われるが、凶悪犯を追いかけることで精一杯だった。妻からは、娘と仕事のどちらが大切なのか?と問われた。まったく、妻から言われていることは、難しい選択だ。陣内は、真柴を追うことに専念する。娘が夢にまで現れる。お父さんは私を助けにこなかった。 真柴は、とある空き家に入り込むと、一人の子供を見つける。直人という無口な5歳くらいの男の子だ。直人は、真柴寮に懐く。その場に置いておこうとするが、離れずついてくる。そんな直人に心を通わせ、逃げ終わったら、直人と一緒に生活できたらいいなとさえ思う。真柴は、ひき逃げした父親の手紙から、父親のいる病院に向かうのだった。しかし、その病院は津波にあって、父親は行方不明になっていた。 亮は、「俺は誰かに愛されたのか。誰かに求められ、必要とされたのか。俺はこの世に生まれてよかった人間なのか。それがわからないまま死ぬのはいやだ」と心の中で叫ぶ。 真柴は、追い詰められ、直人と一緒に避難所に立てこもる。そこで、何が起こったのか? 真柴は、父親がなぜ交通事故を起こしたのか?その日は、真柴の誕生した日だった。そして、なぜ離婚したのか?亮のためを思っていたのだ。亮は、父親に会うことができたのか?亮は、父親の手紙を読んだ。 亮は、「誰のせいでもない。その時々で道を選んだのは自分だ。これは、なるべきしてなった結果だ。俺は、とてもひどいことをしたんだ。その罪を償わなければならない」と自分を受け入れる。 | ||||
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| 本作における「震災」という設定は、物語の主題そのものというより、 あくまで状況を立ち上げるための“味付け”に近いものだったのではないか、と感じた。 極限状況、社会の混乱、個人が押し流されやすい環境—— そうした前提を自然に用意するための装置として、震災が置かれている。 その点で、この物語は、近年の実際の事件における 「環境や境遇をどこまで斟酌すべきか」という議論とも、 どこかで重なって見える部分がある。 追い詰められた事情や周囲の要因に目を向けることは必要だが、 それだけで行為そのものが説明し尽くされるわけではない。 印象的だったのは、物語の終盤で、容疑者自身が 他責の思考から離れ、私怨や正当化ではなく、 自分の意思決定がこの結果を招いたのだと受け止める地点に戻ってくることだった。 環境のせいにし続けることもできたはずの中で、 最終的に責任を自分の側に引き取る。 そこに、声高な救済や赦しが描かれるわけではない。 それでも、すべてを外部に押し付けて終わらなかった、 その一点にだけ、かすかな「救い」が残されたように思えた。 | ||||
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| 長くて中盤まで退屈でした。 初めの犠牲者は正当防衛だし、2人目の警官はなぜ安全装置を付けてなかったのだろうと思いました。都合のいいように物語が進むと思いました。 子供のなおと君の行動も不可解でなぜ主人公にだけなつくのか、ついて来るのか説明もなし。 最後は緊迫した展開になりますが、最も収まりのいい形で、予想通りに終わってがっかりでした。 | ||||
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| ネタバレ含みます。 逃亡者が北へ向かう理由、そして北へ向かった結果。 なにもかもがアンハッピーエンドで救いのない話だった。とはいえ、最後に主人公が手にする手紙によって 望んでいた愛を知ることになるとはいえ、その瞬間、彼の夢も潰える。 彼の人生はいったいなんだったのか。 生まれた時から不幸で、投げかけられた言葉も辛いもので、呪いをかけられ、 社会人として真面目に働いていた職場でも先輩に恵まれない。 しかし、現代社会において彼のような生き方をし、何にも恵まれていない人は多いのではないだろうか。 主人公の生い立ちで、犯罪を犯してしまう、というだけの話ならありきたりだし既視感もあるし巷にあふれている。 そこに投じられるのが「震災」という状況だ。 犯罪をおかしているわけでもなく、さっきまで幸せに暮らしていた人も、病気だった人も、不幸だった人も 一瞬で命を奪われてしまう状況。それは主人公の結末と何ら変わらない。 その「忖度のなさ」にこそ残酷さを感じる話だった。 震災の状況下をリアルに感じる小説は他にもあるので、この作品ならではの視点というものは少ない。 しかし災害時における犯罪という視点は目新しいものだったと思う。 ただ、読み終えた時に「あと一つ何かが足りない」と感じる物語だった。 ラストにすべてのピースがぴしっとハマるような、何か。それが感じられなかった。 しかしそんな都合のいいものはない、というのが震災というものなのかもしれない。 | ||||
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