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マークスの山
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【この小説が収録されている参考書籍】
マークスの山の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.77pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全271件 1~20 1/14ページ
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(上下巻を通じて) 髙村薫の名前も作品群も、以前から知っていたが敢えて手にすることを避けてきた。「この著者にはまるとまずいかも」という予感があったからだが、今回一読し、その予感通りだった。30年前にこのような作品を書いていたとは驚いた。 文庫本上・下2冊、活字だらけで行間のスペースも殆どないが読みやすい。特に下巻の中盤以降、展開が早くなると、あっと言う間に数十ページを読んでいることに気付く。 この小説、取っ付きにくいかもしれないがpage turnerである。種々のエピソードがちりばめられ、それぞれの描写も細かく、遅々としてストーリ―が進まないようでいながら、徐々にそれらが結びつき、話の展開に巻き込まれ夢中で読むうちにエンディングに。まるでジョン・ル・カレの作品を読んでいるようだ。 本庁と所轄署・幹部と現場・刑事同士・所轄署間-多くの軋轢、思惑や縄張り意識がストレートに交錯する中、事件解決にひた走る合田。重苦しい雰囲気の中、徐々に事件の全容が明らかになるー作者の筆力に感服した。 オリジナル作品で直木賞受賞である。いわんや、受賞後十年近く経って全面改稿された本作だが、相当綿密な作業が行われたのだろう。ここまで書き込める日本の作家はそう多くないと思う。 一方、ミステリーとしての謎解きはこれで良いか?という点は残る。「マークス」については読み進めるうちにおよその答えが浮かぶと思うが、霞が関や桜田門は長い間真実を隠蔽し続けてきたのか、犯行に及んだ直接の動機は何であったのか―大トロかマスクメロンか、それとも・・・ エンディングの描写は衝撃的と言えなくもないが、ここに至る犯人の「暗い山」の部分は、行間から読み取らねばならない。この点、いささか不満は残る。 しかし、総じて国内ミステリーとしては高いレベルの作品であることは間違いない。 数日、夜更かしした甲斐はあった。 | ||||
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無事に到着しました。 まだ読んでませんが、短編"地を這う虫"を読んだことがあります。 | ||||
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文庫本より字が大きく、値段も安く、きれいだった。 | ||||
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人間関係がかなり複雑ですが、過去の事件から繋がる現在の事件を追いかける刑事と犯人の心情がしっかりと書かれておりとても読みごたえがありました。 最後は少し悲しい気持ちになりました。 | ||||
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素晴らしい内容に引き込まれるが、著者の今までの作品通り、内容が細かくて登場人物が区別しにくいのが難点である。 登場人物の数も多くて一人一人の個性が豊かなのだが。登場人物の一覧があればよい。 しかし、今回も楽しませていただきました。 | ||||
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著者の高村薫は改稿を重ねることで有名な作家です。しかも始末に負えないことに、改稿を重ねると作品がよくなっていくので最後の版をチェックすればいい、というのではなく、改稿前の版はそれはそれで別の風味があって異なる印象や書き込みがされていたりするので、最後の版のみをチェックすればよいというのでもないのです。 なかでも本作は(ここはあくまで個人的な感想ですが)、ハードカバー版から文庫版への改稿で細部の書き込みが意図的に薄められた場面があったり、ラストシーンが異なったりとかなり変わっていると感じています。もちろんどちらがよいというのではなく、同じストーリーを少しだけかもしれませんが、違った視点で見ることができるような印象なので、本作についてはハードカバー版も読む価値があります。 | ||||
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初版が出版されたときに読み、高村薫ファンとなった。 今回読み返して、やはり濃密な描写に圧倒されている。 ドラマも、ドラマとしてはよくできてはいたが、省かれていることが多すぎる。 次は文庫版(加筆多し)を読むつもり。 | ||||
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単行本から30年ぶりに文庫版を読みました。廃材置き場に人が立っていた場面しか覚えておらず、こういうストーリーだったのか...と。 但し、作者は文庫版になると結構改稿するらしいので、どこがどう違っているのかはわかりません。 流石に重いし、よくある警察小説と違って同じ係内でゴタゴタしているのも良いと思うし面白かったのですが、私の読みが浅いのか、読み終わって次の点に引っ掛かりました。再再読が必要かな? ・両親を亡くしたことは関係なかったの? 精神を病んだだけ?本当は病んでなかったの? ・何で狙う人達のことが分かったの? Aさん宅に侵入して見つけた遺書からなんだろうけど、なぜAさんがMARKSの一味であることが分かったの? どこでMARSKのことを知ったの? ・動機は金だけだったの? だとしたら何かつまらないのだが。 ・なんで養父・養母に対してあんなことをしたの? 私の読みが甘いのかなぁ... この辺のところにモヤモヤが残りました。 | ||||
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(上下巻通してのレビューです) 連続殺人事件の捜査、その背後にちらつく《山の話》。組織の上からの圧力。現場の意地と執念。国家組織の内部のわちゃわちゃをねっとり描く警察小説を堪能しました。でも心に残ったのは、そんな下界の人間模様と断絶したところに生きていかざるをえない水沢裕之。と看護婦高木真知子。「真知子と一緒に富士山を見る」その姿が、悲しい。 | ||||
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先に出版されたハードカバー版よりこちらの方が好きです | ||||
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①傑作であることは間違いない。山岳ミステリーであるが、学生運動や大学理事、事件の揉み消し等政治的社会的内容が盛り込まれている。 ②圧巻のラスト、犯罪者の不幸な生い立ちと精神疾患、健忘症、犯人と暮らす看護婦、人生の不幸と犯罪の理由。考えさせられることが詰まった小説である。警察の人間関係を描くのも、上手い。 お勧めの一冊だ。 | ||||
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講談社版で上下巻を読了、 全面改稿で物語全体の通りがよくなっている、 単行本版ではとくに序盤で多く見られた文章の雑さも高村薫らしい美文に推敲されている、 結果、単行本版に顕著だった疾走感に満ちた推進力のような魅力が薄れたが、物語全体のヘビーさはこちらがよい、 単行本版がスピード感あるハードボイルド、文庫版は純文学調の趣きのある重厚な捜査小説といってよいかと、 もちろんそれ以上の世間の広がりを描写した傑作であることも間違いない、 二作を読むことで物語全体に並立感以上の立体性を感じられるので、もし物語が好みなら、どちらを先にしてもよいのでぜひ二作品読破をお奨めしたい、 解説者の指摘にあるが、物語の流れの中ではそれほど目立たない存在でもある真知子の造形こそ、本作に最大の深みを加えていることは間違いなく、映像を見る趣味のある方にはWOWOW版ドラマの鑑賞も強く推薦します、 本作のマークスたちは五人組、次のレディジョーカーに登場する犯人たちも五人組、 二組共に何も起きず、何も起こさなければ、とても仲の良い理想的な友人同士である、 しかしどこかで歯車がひとつ狂えば、次に待つのは取り返しのつかない破滅だった、と思えば合田が立ち向かわざるを得なかった魑魅魍魎物語として本作とレディジョーカーは双子ということになるだろう、 著者の登場人物たちの性格描写は委細細々に及んでいるが、じつは彼らの相貌がいまひとつ詳らかではない、 で、本書の中で山梨県警の佐野が合田を初めて見かけるシーンの描写が秀逸に思う、 佐野は合田を同業者とは認識できないまま、とても精悍な青年と観察しているのだった、 加納を美貌と描写しながら、合田の相貌のあらましを読者が想像できないようにしているのは意図したものか、 以下蛇足、 妄想としての合田雄一郎の日記より 平成七年(1995)1月17日 火曜日 天気晴れ 気温平年並 本日未明、神戸を震源地とする関西圏で巨大な地震発生、 被害はニュース映像を見る限りでも目を覆いたくなるレベルであり、まだ全貌が見えてこないが警視庁からも救援隊派遣がすでに決定している、 当方現在は大井町で大みそかに起きた傷害致死事件送検に向けた追い込みに忙しく、ヴォランティアとしても出かける時間はなく、おそらく何らかの被害を受けただろう生まれ育った町にただ思いをはせるだけである、 本日はほぼ定時にあがれたので森や吾妻を誘い新橋の関西風うどん屋で一時間ほど歓談してから帰宅した、 二人ともバッテラ付きのうどんは初めてとのことで、なかなかイケると喜んでいた、 新橋とくに烏森周辺は大阪の法善寺に似た風情があり、都内のどの繁華街よりも私には和める場所だ、 吾妻がこんどはおれが津軽ソバの店に案内すると言っていたが、さていつになることか、 とにかく住吉の低地で液状化など発生していないことを祈りたい、 本日は午前中にもう一件、私的に重要な連絡を受けた、 すでに済んだ事件の後始末のようなものだが、山梨県警の佐野刑事からの電話だった、 先年、警視庁はおろか周辺官庁まで巻き込み大騒動となったマークスの山事件の主犯格ともいえる林原の自殺死体が北岳の麓で見つかったとのことである、 忘れられるなら忘れてしまいたい忌々しいあの事件、 忙しさにかまけ何も備忘録を採らなかったので時間のある今夜、ここに思い出せる限りを記しておく、 加納が歳暮に持ってきたエイジド・シングル・モルトをさきほど開封し15ミリ注いだグラスが一杯だけでは済まなくなりそうだが、とりあえず睡魔が来るまで書けるだけ書いておく、 マークスの山事件は警視庁の事務処理としては連続殺人犯水沢の死で容疑者死亡のまま書類送検され不起訴で終結している、 それでも事件の裏側について水沢逃亡時から各マスコミは活発な調査と報道を行っており、関わった人物たち全員の実名と役職が報道され、平成五年まで長々とワイドショーを賑わし、事件の全貌をまとめた書籍も数冊出版された、 結果、何もしなければ政権が持たないと政府も判断し、法務大臣の更迭、実名が上がった役人たちそれぞれが更迭なり左遷、またある者は依願退職し、組織としての体面だけはどうにか保ったものだった、 加納はどうにか検察内でのステイタスを持ちこたえ、特捜本部内での発言力を増したようだ、 加納直属の上司が左遷されたことで佐伯建設に対する捜査は一時中断したものの、新任の上司のもとで加納がチームを実質しきることで強制捜査にこぎつけた、 結果、特別背任・脱税・政治資金規正法違反等により副社長1、専務1、常務2人を含む十名ほどが逮捕され、芋づる式に収賄側として大臣経験のある代議士1、県会議員3人が逮捕された、 佐伯建設は長期の指名停止により経営に大きな打撃を受けたが、技術力に関して定評があったため現在ではどうにか回復基調のようである、 佐伯の自殺によって社長は生え抜きが抜擢されたが、佐伯家の保有株式数が巨大なので佐伯の長男の成長を待って社長職は大政奉還されるだろうと噂されている、 院長の自殺と遺書がマスコミによって公けになったことで浅野医院は一時的に患者数が減ったが、こちらも診察・診療に関しては定評があったために現在では経営は元通り順調ときく、 いったいどこから遺書がマスコミに漏れたかは警察の捜査では確たるルートは特定できなかったが、松井の遺族の可能性が最も高いとされている、 松井の葬儀における官庁からのかん口令をはじめとして松井家に対する様々な締め付けが遺族をひどく追い込んでしまったらしい、 グレイゾーンの印象が濃くなってしまった松井の退職処理は遺族の心情をまったく考慮しない単なる役所仕事として冷淡に進められてしまったことも遺族の対役所心証を悪くしたと誰もが推測している、 松井が優秀な官僚として多くの部下に慕われながらも殺害後にはまるで津波が引くように誰もが松井の人柄も功績も語ることなく、官舎住まいだった遺族はひどい孤立を感じる状況となり、早々に退去する以外の選択肢がなかったといい、遺書をマスコミに売ったとしても何の不思議もないだろう、 水沢を逮捕できず、林原と木原を任同さえできなかったわれわれ現場捜査員たちの苦渋だけはただ各自が腹の中に飲み込んだのは恒例だったかもしれないが、それでも責任を取らざるを得ない連中が組織から排除されることで、我々の留飲も少しは下がったのだったが、もし水沢の所在をもう数日早く突き止めていればと豆腐屋捜索の遅れなど反省すべき点は多々ある、 まさに言葉通りの後の祭り状態だが、なぜもっとも単純かつ容易でもあった確認を誰も思いつかなかったのか、 それだけ参加者全員が行き詰っていたということだが、本部でどっしり構え全体の采配を採るリーダー不在が現場全体の統制を疎かにしてしまい、捜査員の先走りと競合ばかりを発生させてしまったのはまさに我が警察組織の悪弊だ、 すでに我々現場の刑事たちの間でも携帯電話が普及しはじめている、 おれも次のボーナスまでには購うつもりだ、 先週秋葉原で捜査していると、店員から今年は年末にWINDOWS95の発売が予定されており、年末商戦から個人向け小型コンピューター商戦で電気街が好景気に湧くだろうと聞き及んだ、 遠からず携帯電話を誰もが持ち、小型のコンピューターが各自の机の上に置かれる時代がやってくる、 新鮮な情報が瞬時に行き渡り、現場と本部が直結することで、捜査参加者の抜け駆けも競合もただ捜査の効率性を阻害する時代になるのかもしれない、 その時、軍事における戦略・戦術に類似する合理的な組織捜査の在り方を模索しなければならなくなるに違いない、 マークスの山事件は捜査妨害を組織的に受けながらも我々はやるべきことはやったという自負も確かにあるのだが、最大級で苦い後味を捜査に参加した誰もが忘れることはないだろう、 マークス五人の生き残りは二人だけ、木原と林原である、 殺人については時効、殺人教唆は証拠不十分で不起訴となったが、どこからか流出した浅野の遺書がマスコミに流れ、テレビのワイドショーも週刊誌も盛んに取り上げ、結果、グリコ森永事件やロス疑惑並の劇場型犯罪の様を呈したものだった、 同時進行中の事件ではなかったが、ちょうどバブル景気終了後の白けた雰囲気が世間に漂っていたため、金もステイタスもある連中の裏の顔を明かしたいマスコミの格好の標的になってしまったともいえる、 木原は事件当時すでに各種の基礎疾患があり体力が低下していたが、マスコミ報道の過激化による心労から重篤化し、退院できないまま表舞台から引退した、 現在は完全介護の車いす生活らしい、 結果、大学の経営から創業家が手を引く状態となり、学内の風通しがよくなったという評判が立ったことは学校にとっては不幸中の幸いだったかもしれないが、事件翌年の受験者数は目立った減少だったと聞く、 対世間にも対警察にも最も悪知恵を巡らした林原は妻から三下り半を突き付けられ、かつ慰謝料を請求されたため、おおかたの蓄えを吐き出さざるをえなかったようだ、 強烈な上昇志向を持ち、かつ果敢に目的を達成してきたある面では極めて優秀な人物だが、表の顔とは別に激しく規範意識に欠けた裏側を持つ人物が表の社会から排除されたのは法治国家のあるべき姿のようにも感じる、 まして林原はおれが落ちた司法試験に合格した現役の弁護士なのである、 同じ法の執行に携わりながらも林原が落ち込んだ陥穽の深さはおれにも加納にとっても改めて自分が立つ地平を再確認するよう強く迫ってくる、 結果、林原は弁護士会から懲戒処分を受け、弁護士業は事実上の開店休業、噂ではヤクザ方面の相談をこなすことでどうにか日々しのぐ暮らしだったらしい、 捜査時にも感じたが、ある種の精神障害を抱えていたと推測できる林原が病状の進行によって、発作的にかもしれないが、魔の山の積雪の中に向かっていった心持ちはある程度理解できる、 佐野刑事の聞き及んだ噂の類には、林原がヤクザの裏金処理で中抜きしたために自殺を装って殺害された可能性を否定しきれないらしいが、県警の書類上はあくまでも自殺であり、他殺の疑いで捜査が実行されることはないという、 佐野警部はこの三月で退官し、警察学校の嘱託職員として数年勤務する由、 岩田に関する捜査不手際の責任を取り、一時は本部預かりの不安定な身分になったと聞くが、無事退官を迎え、再就職も決まったとは喜ばしい限りである、 四課の吉原さんは内臓は元から不調だったが膝を痛めてしまい現在は内勤に移動している、 自分にはまだ数十年先のこととはいえ、次の昇進時期には退官後も視野にいれた準備のようなものが必要だろうか、 おれも加納も現状では将来もこのままであり、おそらく子を持つことはないだろうから遠い将来の相続処理のためには法定相続人を作る必要はある、 そして貴代子は、 高木真知子はほどなく回復し、身のこなしに多少難が残ったが厳しいリハビリに耐えることで日常生活に不自由はなくなり看護師に復帰した、 退院後に一通りの事情聴取を我々が行ったが、水沢の死亡を鑑み調書を作成しただけで起訴は見送られた、 もし水沢が生き延び逮捕された場合には、彼女は水沢の何らかの犯行に気付き、以降の犯行を止められる立場だったとして訴追は免れなかったに違いない、 リハビリ中に彼女の妊娠がわかった、 父親はもちろん水沢である、 真知子は父親の欄に水沢裕之と記入し、無事男児を出産したという、 女は強く、かつ母になった女は更に強いと思う、 水沢の母親は母性の強さを完遂できなかったが、高木真知子ならやり遂げるに違いなく、男児が水沢の秀でた面を受け継ぎ、健康に育つことを祈るばかりである、 年末来、カルト教団某のうわさがそれとなく庁内で囁かれているが、暴発することなく何も起きないとよいが、 注: 合田は捜査能力は高く評価されているが、劇中でも見られるように暴走気味の性格が嫌われ、この日付以降のある時、捜査一課を離れ大森署に移動になる、 結果、レディジョーカー事件を矢面にたって捜査することになる、 貴代子は911テロでワールドトレードセンターとともに亡くなった日本人の一人となる、 | ||||
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ハードカバー単行本1997年7月15日第77刷で読了、 上下二段、440ページの本の重さがそのまま物語の大重量感をもの語る、 古い本なので活字が小さく、一冊にまとまっている点は良いが、これから取り組み人には最新の文庫のほうが読みやすいと思う、 文庫化に際し大部の改稿がなされたようで、続いて文庫に突入し比較を楽しみたい、 舞台は昭和から平成初期、 なにやら中央に魑魅魍魎が蠢くおどろおどろしい時代を巧妙に料理した一大捜査物語、 事件当時33歳という合田雄一郎もまだずいぶんな血の気の多さであり、考えすぎる性格は根っからのものらしい、 登場人物たちは誰もが自意識過剰かつ自信過剰、 男だけの世界で時に衝突は激突となり、ある時は速やかな和解が結ばれ、どれほど対立していようとも同じ目的の為に集合したキャラクタたちだからこその友情と同業者意識が派閥と利害を超えてどうにか事件解決に向かってゆく、 レディジョーカーのような大河感はないが、クライマックスに至るほど疾走感が増して行く筆力の圧倒性、そして描写される色彩濃いエピソードの積み上げがもたらす高揚感は読書家なら一度は試すべき作品だと推薦したい、 以下蛇足、 WOWOW版の映像に馴染んでいたのでは原作に取り組むのが遅れたが、WOWOW版の脚色の上手さも確認できた、 特に真知子と裕之の恋愛を主軸の一つにすることで映像的な娯楽性が倍加されていると思う、 警察組織に蔓延る人事力学の細部も、捜査の詳細も細大漏らさず書き込まれているが、ひとつ?がある、 それは、先端作用面が小さく、長さと重さがあり、周囲に凹凸のある棒状の鈍器、とまで凶器が特定されながら、可能性としてありえる形態に関する考察が少しも成されないことである、 如何様な形状なのか、捜査員全員で知恵を巡らせば、ドライバーではないが似た形でより太く重く周囲にデコボコがある形のあれこれが図示され、登山家でもある合田が早々にアイスハーケンを想起するのがまっとうな順序だと思う、 誰か果敢な脚本家がいるなら、早々にアイスハーケンを凶器に特定し、山岳会メンバーの裏の顔に注目が集まる物語を150分程度のスピード感あるサスペンスにまとめると面白いと思う、 WOWOW版に敬意を払い、別々に捜査していた警視庁と山梨県警が中盤で合流し、怒涛の北岳追跡に持ち込むのがいいかと、 山岳会方面の捜査からそうそうにマークスの意味にたどり着くのも捜査の鉄則だろう、 そして原作を尊重しラスト・シーンは北岳から望む富士山で観客の涙腺を刺激し、続いてエンド・クレジットの中で林原の逮捕もしくは発狂を暗示して終了させるのが清々しいはずだ、 もしそんな映画が予定されるなら私が岩田役か吉原役に手弁当で出たみたい、ってお前いつ俳優になったのかと自分でツッコむしかないが、国内で標高二位の北岳を暗い山と定義し、絶対王者富士山に対比することで醸されるalways second bestな情緒と裕之と真知子、合田と刑事たち、そして破滅してゆくMARKSたちの姿に当時の日本そのものを感じるのも正攻法な解釈かもしれない、 バブル景気時期を網羅する物語だが筆者の筆から少しの好景気感も感じられないのは、同じくバブル期を舞台としながら時代感を無視し当時最大レベルのバイオレンスを描いた北野武監督映画「その男、凶暴につき」に通底するものも感じた、 とかなんとか呑気なことを考えていたら、「エクソシスト」を思い出してしまった、 脳髄に直接聞こえる声、幻声は裕之の症状が一酸化炭素中毒の後遺症、劣性遺伝など一通り説明されるが、現在ならスペクトラム障害で語ることが可能に思う、 「エクソシスト」の特に原作小説が他を圧する物語なのは現代医学ではまったく治療不可能であると執拗に描写を繰り返し結論を出した後に至り、ようやくキリスト教の教会が派遣する悪魔祓い師が登場する点であり、語り方次第では本作をオカルト面のサスペンスを強調した物語にも作り得るように感じる、 | ||||
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大変面白く拝読させて頂きました。さすがの一言でした。マークスの山は一度読んでみたかったのですが、登場人物の描写といえ、文句のつけようがありませんでした。さすが髙村薫だと圧倒されました。唯、以前に比べ作品を書かれていないようですので、少し残念な気がしました | ||||
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合田始めそれぞれのキャラの捻くれまくった描写に最初はめんどくせーなと思っていたけど、読み進めるうちに七係の面々に愛着が湧いてきました。 初めて高村薫さんの作品を読みましたが、重厚で簡潔な文章というイメージがあったのですが、ちょっと違いました。 人物描写が落語家が語っているかのような、節がついているような言い回し。 それでいて徹底的に執拗な箇所もあって、リズム感が狂う。 でも読みやすくないのもじわじわと面白いというのが高村さんの小説なんだなと思いました。 ネタバレですが、ペコと林原の対決はペコに一本取ってほしかったです。 林原の負ける顔が見たかった。そういう小説じゃないんだろうけれど。 | ||||
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とにかく無駄な心理描写全てが気取っていて、登場人物が多い割に個性があまり見えず魅力的な人物が皆無 著者だけが自分の書いた文に酔ってるような感じだけは伝わる 最後まで読んでもつまらなかった | ||||
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根っからの高村薫ファンと自称(自負にあらず)しています。これだけの作家はもう出てこないでしょう。推理小説から、近年純文学の方向に傾倒して来ているなどと、訳知りに物申される方々が少なくないけれど、高村薫は昔から高村薫だと思って読んでいます。小説や物語を大衆小説-エンターテイメントと、純文学と分ける必要あるのでしょうか。あるとすれば、芥川賞と直木賞の区別をつけたい文藝春秋社だろうか。満足のいく読書ができたら、私たちはジャンルなど問題にしない。高村薫の前に高村なし、そしてその後にも高村なしなのだと思う。稀有な存在だろう。九割がた読ませてもらったが、彼女の作品の後が続くか、今大いに気にかかる。未読分が若干残っているが、後期高齢者入りするまで棚上げするか、今思案のしどころだろうと考えている。今度Amazonで取り寄せるのは、いつの日になだろうか。楽しみな日々である。(晴耕雨読) | ||||
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知ってる場所なので状況が目に浮かんだ | ||||
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おもしろかった | ||||
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マークスとは、山登り仲間の5人の頭文字を取ったもの(MARKS)。この5人が北岳山中で起こした事故(事件)が物語の核心。 犯人の北沢は心を病む26歳の青年。これを追う本庁の合田刑事。とにかく克明な刑事捜査、警察と検察の縄張り争い、捜査を巡る人間模様、政界・財界からの横やりなど、ほとんど刑事・警察ミステリーと言っていい内用で、これが全体の3分の2を占める。今までにこのような刑事物はなかった。 読み出したら止められない。3日で上下を読み通した。最後員犯人が北岳山頂で恋人だった女を想いながら凍死す場面は少し哀しさを覚える。解説者も作者はスタンダールやトルストイのような本格小説を目指していると書いている。 次は「レディー・ジョーカー」を読んでみたい。 | ||||
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