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靴に棲む老婆



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靴に棲む老婆の評価: 4.00/10点 レビュー 1件。 Dランク
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(4pt)
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凡作だが、今後のクイーン作品への繋がりもあり

前作『災厄の町』から始まった第3期クイーンシリーズだが、この2作に共通しているのは事件が起こる前にクイーンが渦中の家族の中に潜り込み、その過程に隠された秘密を探っていくという趣向にある。これは調査を進めるうちに家庭内にどんどん入り込むチャンドラーのマーロウやロスマクのアーチャーなど私立探偵小説に通ずる展開がある。
もっと下世話に云えばドラマ『家政婦は見た!』のようなワイドショー的な立入り捜査となるだろうか。

今回は6人の息子を持つ靴屋チェーン店をアメリカに展開する老婆の家で起こる殺人事件を扱っている。その6人の息子というのが前夫の間に生まれた3人が気違いであり、現在の夫の間に生まれた3人が優秀でそのうち双子の兄弟は実質的に会社を切り盛りしているといった具合。
そしてこの靴屋の老婆と6人の子供という状況がマザーグースの歌に出てくるのだ。そしてその歌の歌詞を具現化するかのように事件が起きる。

マザー・グースの歌に擬えた殺人事件。この童謡殺人というテーマは古今東西の作家によっていくつもの作品が書かれているが、クイーンも例外でなかった。

しかしクリスティの『そして誰もいなくなった』然り、ヴァン・ダインの『僧正殺人事件』然りと、他の作家たちのこのマザー・グースを扱った童謡殺人の作品が傑作で有名なのに対して、本書はクイーン作品の中ではさほど有名ではない。
読了した今、それも仕方がないかなという感想だ。

今回の事件というのは、空砲での決闘になるはずだったサーロウとロバートの異父兄弟が実弾が放たれたがためにロバートが死に、そしてまたその双子の弟マクリンも決闘する段になってその前夜、何者かに撃たれて死んでしまうという物。
さらにポッツ一族の長であるコーネリアが死の間際に遺した告発状に自身がそれをやったのかと残されていたが、その告発状は偽物である事が発覚する。

空砲にすり替えたはずの銃弾を誰が実弾にすり替えたのか?
そしてマクリンはマザーグースの歌に擬えるが如く、死んだのか?
さらにコーネリアの告発状を偽造したのは誰か?
これらが謎の焦点になっているのだが、事件としては小粒でいささか牽引力が弱い。

最後の蛇足交じりの重箱の隅を。
ロバートが決闘にて射殺される事件が起きるにいたり、ポッツ製靴会社の社主コーネリアはスキャンダルによる株価下落を予想して自身の所有する株を売りに出すことを命じるが、これは明らかにインサイダー取引だ。
まあ、恐らく本書が刊行された1940年代にはそういったモラルが確立されていなかったのだろうから、インサイダー取引に関する法律も整備されていなかったのだろう。当時の常識を知る意味でもなかなか興味深い一幕だった。


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