なにげない日常の延長線上に広がる、この世ならざる世界。

逢魔が時の謎めいた光に浮かびあがる血ぬられたスクリーン…芥川賞作家・松浦寿輝がつむぎだす官能の迷宮…形而上学的推理小説。

生とは、一瞬のきらめきにすぎないのか？　「現在」が亡霊として揺らめいているだけの、時間のない世界。

異界と現し世を自在に行き交い、読者を迷宮へ誘う極上の語り。「結ぶ」―問答無用で縫われ、丸められていくからだ。

インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。

希望を失い、にわか地上げ屋となった中年男。

勤めていた大学に辞表を出し、寂れた島に仮初の棲み処を求めた迫村。

18世紀英国。

わたしは「みんな」を信じない、だからあんたと一緒にいる―。

1941年12月8日未明、日本軍はハワイオアフ島の真珠湾軍港を奇襲攻撃、太平洋戦争が始まった。

冥界への入り口に咲くというあやめの名を持つスナックで同級生との再会を待ち望む男。

異常な寒波のなか、私は少女の家へと車を走らせた。地球規模の気候変動により、氷が全世界を覆いつくそうとしていた。

物欲の権化のような父フョードル・カラマーゾフの血を、それぞれ相異なりながらも色濃く引いた三人の兄弟。

作家M・Mが常連の喫茶店の密やかな性戯を描いた「影を買う店」他、皆川博子、最大の「偏愛幻想/奇想」小説集、ついに刊行!

三島屋伊兵衛の姪・おちか一人が聞いては聞き捨てる変わり百物語が始まって一年。

著者のエッセンスが満載された最後の短編集 八人の子供がいる家庭へ脅迫電話。「子供の命は預かった」。

鋭敏な頭脳をもつ貧しい大学生ラスコーリニコフは、一つの微細な罪悪は百の善行に償われるという理論のもとに、強欲非道な高利貸の老婆を殺害し、その財産を有効に転用しようと企てるが、偶然その場に来合せたその妹まで殺してしまう。

著者自ら「わが最高傑作にして、おそらくは最後の長篇」と宣言する究極の小説、ついに刊行! 河川敷で発見された片腕はバラバラ事件の発端と思われた。

すべての絵には、物語がある。 名だたる作家17人による文豪ギャラリー 奇才エドワード・ホッパーに捧げる短編集。

一つ年上の幼馴染、千種と付き合う十七歳の遠馬は、父と父の女の琴子と暮らしていた。

“あなた”と“私”…名前すら必要としない二人の、密室のような恋。島本理生の新境地。

出産を控えた姉に毒薬の染まったジャムを食べさせる妹…。

上海の租界に暮らしていたクリストファー・バンクスは十歳で孤児となった。

昭和十年、春。数えで二十歳、女子学習院に通う笹宮惟佐子は、遺体で見つかった親友・寿子の死の真相を追い始める。

愛したはずの夫は、まったくの別人であった。 「マチネの終わりに」から2年。

人はなぜ人を殺すのか――河内音頭のスタンダードナンバーで実際に起きた大量殺人事件＜河内十人斬り＞をモチーフに、永遠のテーマに迫る渾身の長編小説。

宮沢賢治は祖父の代から続く富裕な質屋に生まれた。

美しくも凶暴な南海の自然、風と波にさらわれた白い流木、巨魚と闘う少年、不毛の愛を酒と官能に溺れさせる男女――ここにはヘミングウェイ最高の自然描写があり、我々の知る作者のすべてに加えて、生前さまざまな伝説に覆われていた作者自身の心の秘密がさらけだされている。

母の死の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、映画をみて笑いころげ、友人の女出入りに関係して人を殺害し、動機について「太陽のせい」と答える。

極端に臆病な幼い有里の初恋の相手は、文房具屋で買った銀のステッキだった。

現実が終わり、伝説も終わる―。アメリカ大統領に迫る核テロの危機。

娘はボダ子と呼ばれた。ボーダーだからボダ子。

俺たちは踊れる。だからもっと美しい世界に立たせてくれ！　極道と梨園。

こうして書棚の秘密は私とＢ、 二人だけのものになった―― ハリウッド俳優Ｂの泊まった部屋からは、決まって一冊の本が抜き取られていた。

受験を控えた私の元にやってきた家庭教師の「先生」。授業は週に2回。

「あなたの人生の物語」を映画化した「メッセージ」で、世界的にブレイクしたテッド・チャン。待望の最新作品集がついに刊行。

その男は決して屈しなかった。人が一生に一度出会えるかどうかの大傑作。

私の中に巣喰う狂気が、さまざまな夢を見させる―さらなる広がりと魅力を増した皆川博子の恐怖世界。

今から100年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。

降りしきる薔薇のはなびらで窒息することを夢見て、縊死した劇団員を描いた「薔薇忌」、水を汲んだ桶を覗きこむと、その人のために祈ってくれているなにものかが水に映るという「祷鬼」、現実のセックスでは不感症であるが、眠りの中で濃密な性の悦びを得られるという女を描い

恋愛ではない場所で、この飢餓感を冷静に処理することができたらいいのに。

一級建築士の青瀬は、信濃追分へ車を走らせていた。望まれて設計した新築の家。

1938年秋。流行探偵作家の小柳逸馬は、従軍作家として北京に派遣されていた。