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まるで天使のような
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まるで天使のようなの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.08pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全20件 1~20 1/1ページ
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小泉喜美子の『弁護側の証人』を読んだとき、あ~あというような思いにとらわれた。よくできた作品なのだが、あまりにどんでん返しがすごいと版元が煽るので、図らずも結末が読めて、かえって驚きが半減してしまったのだ。 本作にも同じようなこと(版元による煽り文句の過剰)が言える。結末は読めなかったのだが、かえって、この程度かという索漠とした感想がよぎった。いや、よく考えるとすごいのだが、どこか拍子抜けした感があったのも否めない。 それでも読んでいる間は、普通に面白かった。カルト集団を描くことで不思議なムードを持った作品になっていると思う。しかし『まるで天使のような(How Like An Angel)』というタイトルの意味は、実のところよくわからない。 作者のマーガレット・ミラーは、同じく推理作家として知られるロス・マクドナルドの奥さんだったとか。ほかの著作は読んだことがないけれど、本作の作風にはややハードボイルドな味を感じる。基本的には心理サスペンスものが多いようだ。 | ||||
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カジノで磨った探偵がある隔絶された宗教団体に救われて・・・というお話。 一応申し上げると、以前の訳で過去に読んだ事があり、漠然と覚えていて、最後に驚いた記憶がありますが、今回は細部を忘れていたので、初読と言ってもいい感じで読みましたが、最後は意外性はありますが、それ程驚かなかったので、私がミステリを沢山読んだ性で免疫が出来ていたのか、ちと残念でした。 その代りに、今回は筋の方を慎重に読みまして、結構細部まで疎かにしない感じの推理小説になっているのに気づきました。かなり細かく配慮して書いてあるので、精読をしないと、筋が判りにくくなりますが、ある程度まで読めると、完成度の高い話しになっているのが判ります。旦那のロス・マクドナルドがこの頃書いた物で、「ウィチャリー家の女」、「縞模様の霊柩車」、「さむけ」といった代表作が多い頃で、確か「さむけ」の犯人設定を、奥さんのミラーが助言したという事があったという話を聞いたので(多分:違ったらすいません)、夫婦でお互いに刺激しあいながら、代表作と言える作品を創作していた、クリエイティビティがピークに達していた頃だったらしいです。 解説で我孫子さんが指摘されてらっしゃる通り、色々な宗教絡みの事件が起こってから、宗教とは何かを突き付けられた日本の読者に、この作品でも、他人事ではない、我々の問題としての宗教とは何なのかという答えの出ない問題を問われている様で、今読んでもアクチュアリティのある作品にも思いました。社会から隔絶された環境で、集団生活を送る信者の様は、否応なくオウム真理教を想起させるし、最近解散させられたカルト系の宗教の異様な戒律(強制的に結婚相手をマッチングされる)等もこの小説に出てくる異様な感じの集団を想起させられました。 トルーマン・カポーティもファンだったというミラーの透き通る様な文章も、極みに達している感じで、文章を読む醍醐味を味わえました。訳者の方も相当文章力があるみたで、感謝です。 宗教をネタに、巧妙に仕組まれた精緻なサスペンス。是非ご一読を。 | ||||
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"『ある人を捜してほしいの。いえ、見つけるというのじゃなくて、その人がいまどうしてるか確かめてほしいのよ。わかる?』"1962年発刊の本書は"心理サスペンスの女王"の代表作にして『最後の三行』で意味が変わるミステリ傑作。 個人的には良質な海外ミステリが読みたくなったので本書についても手にとりました。 さて、そんな本書はギャンブルで無一文になってしまい、しかも山道で知り合いの車からも降ろされてしまった青年クインが仕方なく"塔”と呼ばれる新興宗教の施設に助けを求めることになるのですが。そこで彼は今度は一人の修道女『祝福の修道女』からパトリック・オゴーマンという男の身辺調査を依頼されることになってしまい。。 と、冒頭から流れるように展開していくのですが。主人公のクインが【やる気があるんだかないんだか】とぼけた感じの私立探偵役で、その"あー言えばこう言う"的な口調も含めて面白かった。(翻訳の方、頑張ってます) また、物語自体は主に"塔"と近くにある小さな町"チコーテ"を行ったり来たりしながら、少しずつ【登場人物たちの関係性が浮かび上がってくる】のですが。それでもラストの"どんでん返し"は全く予想がつかず"お見事!"と驚かされました。 古き良き私立探偵ミステリが好きな方にオススメ。 | ||||
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私はミステリーファンではなく、クリスティでもクイーンでも、作品世界の雰囲気とか登場人物たちのクセとかを楽しむ方なのですが、この作品も、お調子野郎の主人公や謎のカルト集団の連中など曲者揃いで、なかなか楽しめました。アメリカの田舎町の風物や人々の描写も興味深かったです。ストーリー展開も、十分に読者を引っ張っていく力があります。謎解きは私にはまあどうでもよかったのですが笑、驚愕はしないのではないかと。 | ||||
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パット・マガ―にマーガレット・ミラー どちらも20年くらい前に一気読みしました。 ちょうど 日本で 海外の女流推理小説家や海外女性SF作家の本が 次々と翻訳されていた頃です それゆえ懐かしいです 当時に比べて 文庫本もずいぶん高くなりましたが、この二人の女性作家さんの本は どちらもおすすめです。 よかったら 両方の作家さんの作品を読んで見てください。 | ||||
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就寝時にベットの中で読む習慣なのですが、読み始めたらやめられなくて困りました。50代の夜更かしは後に響きますね。サスペンスだけど特別ドロドロした感じもなく、最後の驚きに「スゴッ」と若い人みたいに言ってしまいました。 | ||||
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心理サスペンスの女王ミラーがお得意の分野に私立探偵小説の要素を色濃く反映させた評価の高い代表作です。初めにこのレビューでは私事に渉る感想をいろいろと書くつもりでありまして、もし気分を害した方がおられたとしたらどうかお許し願いたいと思います。 リノのカジノで保安係をしていた元私立探偵クインは行きずりの男に乗せてもらった車から山中で降ろされ、近くにあるザ・タワーと呼ばれる宗教団体に助けを求める。クインは親切に世話してくれた修道女「祝福尼」からオゥゴーマンという男について調べてくれと頼まれ、やがて町に来た彼は調査の結果「既に5年前に死にました」と告げられるのだった。 私が本作を初めて読んだのはハヤカワ・ミステリー・マガジンの長編分載という形で、後年、文庫化された本書を古書店で格安で買いまして最近になって再読しました。読み直そうと思った理由は、最近創元推理文庫で新訳出版されて話題になっていた事と、30年以上の時が過ぎて内容が全く記憶から消えていたからです。私が昔感じたのは海外ミステリーの長編分載は読書には適していないなという思いと本格推理が好きだった所為もあってかそれ程の傑作とは思えなかった事ですね。まあ、今回の結果も昔と大きくは違わなかったのですが、偶然に最近の創元推理文庫に掲載された新訳版の宣伝文「心臓を貫く衝撃の結末」という表現を読んで「そうか成る程ね」と深く納得しましたね。ハヤカワ版の旧訳の訳文からはそれ程の迫力は感じられず、罠を張られているから大丈夫だろうという安心感が漂っていました。これは翻訳された菊池光さんが躍動的でなく抑えた表現で訳されるタイプの翻訳家だからなのでしょうね。私は新訳版を読んではいませんが、その緊迫感と新鮮な感動を盛り上げる表現が想像されまして、本書の場合は後年に新訳で出版されて本当によかったなと痛感した次第ですね。私は主に経済的な理由からですが、新訳本は殆ど買わない主義でして(R・チャンドラーの村上春樹訳シリーズは例外ですが)、新刊も続々と出版される中で既に昔買って持っている本までわざわざ改めて手を伸ばす余裕などないというのが実情ですね。しかしながら本書に限って言えば新訳によって前より多くの読者を獲得する「本にとっての幸せ」という例は確かにあるのだなと再認識させられましたね。 さて、前置きが長くなりましたが本の感想については、新興宗教団体と言ってもあの悪夢のオウム真理教の様な危ない組織を描く事がテーマではなくこの当時もそういう空気感は全くありませんでしたね。本書での宗教と犯罪の関わりの面で著者が示したかったのは、どんな人間でも無条件に信じて受け入れてしまう自由平等の思想のある面での危うさの問題点なのでしょうね。それから著者は本格推理に興味がなくて、謎が解かれるのに際し名探偵が皆の前で誇らしげに真相を披露するといった定番のシーンを意識的に書かない主義らしく、本書でもクインにもうちょっとの所の惜しい推理を述べさせて見事的中とならない失敗の場面を演出していますね。私が本書で一番の愚か者だと思ったのは単独行動に走ってクインと接触を避け続けたウィリイ・キングだと思いますね。本書は私立探偵小説とは言っても男っぽいアクション・シーンは皆無でそこは女流らしい落ち着いた心理ドラマの要素が強くて、クインが町で調査を開始してから事件が活発に動き出しやがて新たな殺人事件を呼んで遂に全てが終息するまでの全体の流れはお見事だと思いますが、著者としては最後の場面に狂気の持つ人間の恐ろしさを込めて強烈なクライマックスを描きたかったのでしょうね。また最後の場面にはクインと未亡人のマーサが結ばれる事となって無事に生きている事の幸せを噛み締めるといった余韻も漂っている気がします。最後にこの「まるで天使のような」というタイトルはやや意味が難解に思えますが、もし自由な解釈が許されるならば私は誠に可哀そうな運命を迎えた「祝福尼」の自分が殺されると知りながらも犯人を庇って真実を告げなかった人として優しく気高い行為を指しているのだと思いたいですね。 | ||||
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あっという間に入り込めるストーリーと、奇妙に明るく不思議な共感があるミステリー。 「いいの?」って思うほどあっけらかんとストレートな主人公が面白い。 | ||||
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マーガレット・ミラーが描くアメリカ人の心象風景の寒々しさを味わうたび、かの地に生まれなかった我が身の幸福と、高見の見物とばかりに我が母国語でミラー作品を堪能出来る幸運に、神様有難う…と呟かざるを得ない。 タイトルに引用されたハムレットのように、悲劇的に着地する「最後の一撃」を読了すると、これが1962年に描かれた事実にも関わらず、アメリカという国は、いつでも最先端の人工物の景色を人間に見せる為に存在する国なんじゃないかと思う。自由と平等の理想郷も、砂を噛むような極北の孤独も全て。 サスペンス愛好家で本書を未読の方々、今からこれが読める未来を祝福します。 | ||||
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名前だけは知っていたのですが、読んだことがなく、 新訳が出ていると知って手に取りました。 いや、まいりました。名作の呼び声に偽りはありませんでした。 て、いうか。評判を上回る感動でしたよ。 カジノで働きながら博打で身を持ち崩した元私立探偵という設定が ストーリーに雰囲気だけでなく説得力を与えているんですよね。 ともすれば、頭のおかしな連中の集まりと描かれがちな 新興宗教の集団も、主人公の目を通して語られると、 町の生活になじめず逃げ出して肩を寄せ合う弱者の寄り合いとなるわけです。 事件調査に赴く町で暮らす人間たちも、 友人知人の不幸を飯の種にしている地方紙の編集長に、 親の死を知らせるという大切な役目を主人公に押し付ける保安官、 健康に取りつかれて家族を不幸にする老女、 ダメな夫を支える事を身の拠り所にしていた未亡人など、 立派な人たちとは言いかねる連中として語られるわけです。 町で暮らすことが決して容易いことではなく、 新興宗教に身を投じることが決して他人事ではないことが、 主人公の目を通して語られてゆきます。 ずいぶん昔の小説ですけど、しっかりした視点を持った作家さんだったんですね。 誰もが身の拠り所がなければ暮らしてはいけない。 でも、時としてそれが人を追い詰め、 連鎖反応的につながって、凶行を招き寄せてしまう。 見事な展開でした。 特に後半に入ってからの疾走感が素晴らしく、 見事な心理描写に、グイグイ読まされてしまいました。 もっと書きたいことがイッパイあるのですが、 ネタバレになってしまうのでよしておきます。 読んで損はない、どころか、 ミステリファンなら、何をさておいても 読むべきですよ。 | ||||
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本書は新訳再登場本である。旧訳版は1980年代に菊池光の訳でハヤカワ文庫から出ており、興味があったが、中古市場で結構高値なので、新訳を買うことにする。本書のウリはラストに驚愕するとあり、こういった惹句に弱い私は、腰を据えて読むことにした。 ただラストに驚愕する分、それに至る過程は面白くないだろうなと勝手に考えていたが、それは杞憂だった。ひょんなことから山奥の宗教施設のシスターに、或る人物の消息を依頼された主人公が軽いノリで面白く(後半はいたってまともになるが)、少ない登場人物なので、猥雑でなくて読み易い。 後半になるにつれて、小さな疑問がどんどん解決されていき、ストーリーの骨格が判ってくるので、それを上回る大ドンデン返しが有るのか不安になってきた。期待させてショボイのは、ご免だぜという心境だ。そしてついに最終頁の最後の三行にやってきた――。ああ、こういう事だったのか! | ||||
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マーガレットミラーの作品は2冊目になりますが、この作家さんは、冒頭から読者を引き付ける文章が本当に上手ですね。 主人公クインは、カジノで持ち金をスってしまうような、どうしようもない男なんですが、探偵としては活躍してくれます。しかしなんといっても、主人公クインと他の人々との会話のやり取りは、ジョークの応酬で笑いどおしでした。この主人公の活躍を見るだけでも、この本は一読の価値があるかもしれません(笑)。 小説全体の感想としては、前半は謎に引き付けられて非常に楽しめましたが、後半に入ってくると、謎のつながりが複雑になってきて、面白さがペースダウンしてしまいました。サプライズエンディングが売りの作品ですが、最後のページを読んでも、私はそんなに驚かなかったです。 あと、登場人物に話を聞いてまわる中盤がちょっと長く感じてしまったので、★4つ。 でも読んで損はないと思います。 ところで、クインとマーサがあのような関係になるキッカケはなんだったのでしょうか・・・? | ||||
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マーガレット・ミラーらしからぬ淡々とした展開。 抑制のきいた文章は、読みやすくストーリーも追いやすい。 決して息もつかせぬノンストップミステリーではありません。 それなのに、なんで騙されちゃったのかしら?? 分かってみれば手がかりはあちこちに散りばめられていたのにね。 | ||||
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この作者の作品は初めてです。数々のミステリーを読んできましたが、ここのレビューにあった通り、本当に完成度の高い作品でした。 当初、あらすじを読んで「硬質な文章かつ陰鬱な内容で読みにくそうかな?」と一瞬警戒しましたが、予想に反して会話文が多く、主人公クインのアンチヒーローっぷり(ややありがちですが)も好感が持て、物語にぐいぐい引き込まれて行きます。 人里離れた新興宗教施設の世界と、平凡な地方都市(なのかな?)の世界がどのように関わって行くのか。途中「これは犯人捜しなのか?それとも、何が起きたのかの事件捜しなのか?」と、それ自体が謎として読む者を飽きさせません。 計算し尽された一切の無駄がない展開、リアリティのある人物像と会話、硬すぎず且つくだけすぎてもない簡潔な文章、そしてラストに向けた盛り上がり。でも何より、暗く陰惨な話の中で、一部の温か味ある登場人物の存在が、この作品全体を救っているような気がします。 ただ、これだけ多くのミステリーが世に出回っている昨今では、ラスト近く(犯人の独白手前)には「あ、これは・・・」と大方の予想がつき、「衝撃のラスト一文」というのは少々オーバーかもしれませんね。しかし、それでこの作品の価値が下がるという訳ではありません。 もっと読まれていいはずの名品。 | ||||
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以前ハヤカワミステリ文庫で読んだが、新訳で久しぶりに再読し、読後やっぱり深く感嘆していた。 ミラーの他の代表作である『鉄の門』や『狙った獣』といった、均衡を崩した精神が紡ぎだすサイコサスペンスを念頭にして読み始めると、ちょっとアテが外れる。夫であるロス・マクドナルドが書くような、依頼を受けた探偵がこつこつと調査を重ねる、私立探偵小説のスタイルをとっているのだ。 しかし作品の重要な舞台となる、一般社会から隔絶した山奥で特異な共同生活をおくる宗教団体が、いかにもエキセントリックな心理の病巣を秘匿しているようで、リュウ・アーチャーやフィリップ・マーローが導くような結末には到るまいことを予想させる。そして期待どおり、真相の際までたどり着いた探偵から犯人へと視点が切り替わったクライマックスは、まさにミラーの真骨頂。 自らの罪業によって、少しずつ病み壊れていった精神のレンズが映しだす、倒錯した世界の像。不穏にぶれ、不気味に歪む焦点の混濁に、崩壊してゆく人格の悽愴がうかがえる。そして堰を切ってなだれこんでゆく、巧妙にして哀切なラスト数行のカタストロフィ。登場人物の悲痛な叫び声が、あたかも幻聴のように読後の耳に長く残響し続ける、ミラー中期の傑作である。 | ||||
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ミステリマガジン(1982年1月〜3月号)に連載された時以来、久々に再読した。人生経験の浅い若い頃には物語を追う楽しみしか感じなかったが、今回の新訳で改めて真価を知った。ミステリとしての驚きと豊かなドラマ性があまりに高次元で両立されている。 カリフォルニアの小さな新興宗教のコミュニティーが崩壊して行く悲劇が精緻で陰翳深い人間描写の魅力とともに生き生きと綴られる。ジュリアン・シモンズやE・D・ホックが評価しているように傑作揃いのミラー長編中でも最高峰に位置するだろう。 カジノの保安係崩れの男の視点を通して語られる錯綜したプロットの中に1960年代アメリカの病理を暴いて行く様は夫であったロス・マクドナルドとの共通点を感じさせるが、あくまで端正な私立探偵小説のフォーマットを遵守し続けたマクドナルドに比べ、本書の終盤の展開はミステリの枠さえ超越した迫力を感じさせる。ことに末尾の数行がもたらす戦慄、あまりに見事な結末には息を呑む。 いささか武骨に過ぎた菊池光の旧訳に比べ、今回の滑らかな訳文こそ、この傑作の素晴らしさを味わうに相応しい。 | ||||
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マーガレット・ミラーの数多い傑作中でも特に傑出した1冊で、ある意味、夫君ロス・マクドナルドの作風と思いっきり接近してます。 探偵のキャラクター、登場人物の陰影、ラストの恐るべき衝撃などロスマク作品と似たところがあり、完成度は「さむけ」と同等です。 ただし、とっつきやすい作風ではないので、手当たり次第にミラー作品を何冊か読んで免疫を作り、忘れたころに再読すると真価がわかると思います。 | ||||
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異常心理ものを得意とする作者だが、本作は人間の愛憎・運命をミステリ的手法で描いた傑作。文学的にも優れていると思う。 ある事情から新興宗教団体に紛れ込んだ探偵。そこで人探しを頼まれる。そして、それとは別に描かれる浮浪者の姿。いわゆる交差型のストーリーで、複数流れる話のどこに接点があるのか読者には分からない。そして、最後に待っているカタストロフィ。私は、目前の壁が崩れるかのような衝撃を受けた。「さむけ」を感じた程。 精緻な描写と大胆な仕掛けで人間の運命を描き切った作者の最高傑作。 | ||||
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話のあらましはこんな感じ。私立探偵ジョウ・クインが、たまたま立ち寄ることになった新興宗教団体の共同生活場所で、奇妙な依頼を受けます。「パトリック・オゥゴーマンという男を見つけてもらいたい」オゥゴーマンの身辺調査を始めたクインは、過去に起きた事件と遭遇。さらにこの事件の謎を調べていくうちに、登場人物たち相互の緊張関係や愛憎が浮かび上がってきます。果たして五年前の事件で、パトリック・オゥゴーマンに何があったのか?読んでいてじわじわっと来たのは、登場人物たちそれぞれの愛憎関係が徐々に明らかになってくるところでした。彼らの心の中にある愛憎、そこから生まれる緊張感。静かなんだけど、強くて深かった。本書の二年後に書かれたロス・マクドナルドの名作『さむけ』に通じる味わいも感じました。そしてエンディングがあああ!いやはや凄かったこと、衝撃的だったこと!げっ! こ、これは何とまあ………(絶句)心底震え上がりましたってば。主人公クインの気の利いた台詞も面白かったし、文章がまた見事でした。抑制の利いた押さえたタッチで、話の緊張感をひたひたと盛り上げ、エンディングまで引っぱっていく辺り。うーん、うまいなあと思いました。 | ||||
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マーガレット・ミラーの最高傑作の一つ。邦訳は最初ミステリ雑誌に掲載されたが,この作品を雑誌で読んだ時の衝撃は忘れられない。 賭博で無一文になった私立探偵が,ヒッチハイクをするが,砂漠の真ん中で降ろされ,運転手の助言に従い,あるカルト教団の施設に泊めてもらう。翌日町に戻る前に,探偵が教団内の一人の女性に人捜しを頼まれたことから,過去の忘れられた事件の真相が明らかになっていく。 マーガレット・ミラーの描く探偵は,夫君ロス・マクドナルドの小説で活躍するリュー・アーチャーよりも,ポール・オースターの作品の登場人物を連想させる。 最後の一行で明らかになる真相は,悲嘆と絶望に満ちている。 | ||||
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