これよりさき怪物領域
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ミステリとは広大無辺な領域をカバーをするもので、この作品はその中で「怪物領域」担当という事か…と、ミステリははるか昔、江戸川乱歩、ヴァン・ダイン、クリスティ、クイーンといった外国の古典ぐらいは読みました、程度の通りすがりの筆者は呆然としてしまった。 じつは凡庸な登場人物たちと設定で、正直ミステリというより昼ドラのようなどうでもよい暇つぶし二時間ドラマのような話として始まる。(とはいえここでもただならない滑り出しだが) ・アメリカ西部の農村地帯、20台の若妻の一日という牧歌的かつ凡庸な出だし ・主人公は1年前に失踪、彼に死亡宣言を法的・公式に出す裁判が始まる(なのでこの主人公は初めから終わりまで登場しない) ・主人公の妻を事実上の主人公として進むが、英米小説の常か、視点・立場を変えて他の人物から見た「失踪事件へのアプローチ」も描かれ、彼女が確固とした不動のヒロインとして読者の「感情移入の定点」になる訳ではない ・主人公(失踪中。その真相は結末付近で判明)は好青年に見えるが、じつはティーンエイジャーの時代に年上の女性と不倫してたり、不倫相手にそっくりな女性(冒頭の若妻)と結婚してたり、とけっこうとんでもない履歴があり、もしかしたらすでに殺人者だったのかもしれない? ・主人公の父の死も問題があり、それを隠蔽する為の行為がまた主人公の人格形成をさらに複雑怪奇にしていた。 ・この主人公、このまま存命だったとしても、この家庭なり妻は無事に人生をまっとうできたんだろうか? と思わせる人物だったり、その一方では社会の書き方も ・1972年発表の作品だが、アメリカは当時から出身国(メキシコからの不法移民)や経済力(出身から来る社会的地位)といった分裂、日本国内であれば国内の格差で済む問題が、アメリカは人種・経済力・文化でももともと「人種の坩堝」と言えば聞こえは良いが、実質では統一していながら同時に分裂した国家でもあることをありありと示していた。そうした分断のなかでも一つの社会を構成する異質さをうかがわせる。だが、これは21世紀日本が国内で経済的に分断されてきたから読み取れるので、たぶん刊行当初の日本での読者はそうした部分はスルーしたと思う 結末で衝撃が訪れる。 主人公は「法的に」死に、妻はこれからの人生を始め、と未来へと進むところで、主人公にも主人公の父にもちらほらと現れていた異常さが最高度に実現され、タイトル・ロール「怪物領域」へと20世紀アメリカの平凡な人物と見える人間がやすやすと踏み越え、異様きわまる所業が展開し、最後…静かな朝の情景が描かれた一行で、音楽がとつぜん途絶えるように素っ気なく終わる。 作風なのか、ミラーの文章は淡々と静かに進み、この結末も平坦に描かれるので、読みようによっては大したことがなく見えかねない。しかし、最後の2ページの「余白」「行間」に展開したであろう情景はいくつも思い浮かぶのだが、その想像はどう転んでも異様なものである。 少年であった筆者、古典的な名探偵の活躍するミステリをいつしか読まなくなった。 一世代が経過したとき、桐野夏生がミステリを「詰め合わせ弁当」と表現していたという話を聞いたとき、おそらくそれに似た理由でミステリが作り事じみており、むしろ大人はそれをジャンルのお約束と分かった上で楽しむのだが、少年だった筆者にはその余裕というか懐が無かったんだろうと思った。 だが、マーガレット・ミラーはそうした「古典的な、論理の娯楽として、大人の楽しみとしてのクリスティ・クイーン的名探偵もの」でも「現代の不条理とか論理のあやふやさを描く進化した京極とか桐野とかの社会性や認識論を取り込んだ現代小説」でもない、個人の心理に秘められ、開花したときに鬼面人を驚かす特異な性質を描くことで、サスペンスでもスリルでも、心理小説でも刑事ものでもない、凡庸な農村地帯の人間模様のなかから「これよりさき怪物領域」(Beyond this point are monsters)、人間が、平静で正気で同時に怪物的所業を繰り広げる、極端な人間性の領域を描いていた。 それはミステリを越え、人類の一つの普遍に達した高み、ないし深みがあった。 本当に恥ずかしながら、筆者四十路半ば、この様な「人間領域」を指摘した本は初めて読んだ。 この傑作がポケミスのままで、文庫化もされておらず、電子書籍になっておらぬのは日本の読書界の損失に思う。 古本で探すしかない幻の名作であるのが惜しい。刊行から半世紀後、震撼した筆者だった。 | ||||
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『まるで天使のような』と並ぶ代表作です。 最近やたらと「心の闇」という言葉を耳にしますが、 ミラーこそ真の「心の闇」を描ける作家ではないでしょうか。 筆致は淡々としていますが、それだけにラストが怖い。 読み終わって当分の間、心の中で悲鳴を上げ続けていました。 | ||||
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この作品では、メキシコ国境付近の農場主の失踪事件が描かれている。『狙った獣』のようなスピーディさはないが、作者は一流の筆さばきで、読者をあきさせずに、ゆっくりとラストまで牽引する。 そして明らかになる衝撃の展開・・・。想像できてしかるべきなのに実に意外なラスト。読者は、ミラーがなぜ心理サスペンスの女王と言われるかを思い知るだろう。 はたして怪物領域は「どこから先」なのか? | ||||
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