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猿来たりなば
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猿来たりなばの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全11件 1~11 1/1ページ
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少しピントのずれた人達がチンパンジー殺害事件を巡って右往左往する喜劇風ドラマですが、巧妙なパズルが仕組まれており、珍妙でさえある不可思議な謎が論理的に解決され、尚且つ読者に手がかりをばらまいている様は見事です。特にエンディングは洒落ており、やられた感があります。 探偵と助手の役割が逆転していてどこかパロディー風でもあり、2人のやり取りも軽快で楽しいです。 | ||||
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探偵役の一人称という、やや異例の形で綴られる、黄金時代末期の英国パズラー。最初に吐露されるとおり、この探偵トビーはかなり無能で、実質的な推理役は助手役の友人ジョージである。ただし、ジョージは風采が冴えないこともあって誰もに無視されており、大詰めの謎解きもトビーに代行させるのだ。この珍コンビにを中心に、冒頭の猿の刺殺事件ほぼ一本で長編をぐいぐい話を引っ張っていく。 とにかく人物の描き分けが最高にすばらしい。3人の美女が三者三様にエキセントリックで、特に超絶の美貌と空っぽの頭を併せ持つキャサリンの天然っぷりと、独仏伊3か国語に通じながら英語がうまくないヴィラグ博士の頓珍漢なトークが全体の笑いをリードする。全体にのんびりとユーモラスなのに、微妙に黒々としたものも漂っており、これがラストにガッと暗転する衝撃はかなりのものだ。 | ||||
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「なぜ猿は刺殺されたか?」動物を殺しただけでは器物損壊罪に しか問われないが、紙面の大半は登場人物たちの動機探り にあてられます。 殺人でもないのに探偵コンビが現場の邸に赴き、逗留するのが 不自然に思えた、ふたりはラストを予見していたのか、 話を引っ張るためか、それとも笑わせるためか。 軽妙なタッチでありながら、相関関係・時系列を巧みに織り込んで 体面を保っています。 真相につながる手がかりの提示が公明正大で、最後に明かされる トリックプレーをほのめかし、この点でフェアといえます。 フーダニットの観点からは、物語の後半を過ぎたところで、二転三転、 レッドへリングとしての犯人をなかば明示しますが、 自己完結的なので犯人当ての妙味をこちらに与えぬ間に、最後、自動的に だれが殺ったのか判ってしまう形式になっています。 本書の魅力はあくまで狡猾な離れ業と「なぜ」にあるといって良いでしょう。 猿が殺される事件をテーマにするなんて、まるで××の某短編の 逆パターンで、ふざけたアイディアだし、それをまともな着陸点としない のはあざやかに盲点をついていると思います。 | ||||
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本作品は1942年に発表され、 1999年版「このミステリーがすごい!」で 海外部門第4位にランクインした作品です。 学者のポール・ヴィラグから 「<アーマ>の誘拐未遂事件」の解決を手紙で依頼された 主人公トビー・ダイクは、相棒のジョージとともに ロンドンから5時間かけてダウンズ地方・ビュール駅へ。 しかし、迎えにくるはずのヴィラグの姿は見当たらず、 やがて現れた女性がアーマかと思いきや、 彼女はヴィラグの娘であり、 アーマは飼っているチンパンジーでした。 かくして、彼女の車でイースト・リート村に到着した 彼らを待ち受けていたのは、無残にも刺し殺されたアーマの死体…。 この珍妙なチンパンジー殺害事件に取り組む トビー&ジョージの活躍を描く本書は、 黄金時代を引き継ぐ純本格ミステリです。 物語はこのあと、怪しげな人物が次々と登場し、 最後には関係者を集めての真相解明となるのですが、 そこに至るまでのトビー&ジョージの軽妙なやりとりは 絶妙で飽きることはありません。 ちなみに表紙の絵は、事件の構図上、 興味深いものといえるのではないでしょうか。 本作品の最大の謎は、 「なぜチンパンジーが殺されたのか」ということで、 この点を明快に解明しているところが本作品の高評価の所以でしょう。 そして、最後の最後にある驚くべき事実が明かされるのですが、 多くの読者にとって忘れられないエンディングになるのではないでしょうか。 ところで、この著者は、 英国推理作家協会の会長も務めたことのある人物で 1995年に亡くなるまで71の長編を残したほどですが、 日本では1950年代に2作品が翻訳されたのみとなっていました。 ようやく1990年代に入り、 本書をきっかけとしてトビー&ジョージシリーズの5作品が 翻訳されたものの、2010年現在、いずれも絶版状態となっており、 本書も中古本で手に入れた次第。 このような秀作が埋もれてしまうのは、惜しいような気がします。 | ||||
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私自身「私が見たと蝿は言う」しか読んだ経験がなく、「ドメスティック・ミステリ」作家のイメージが濃い作者の、一風変ったパズラー。題名に惹かれて本書を手に取ったのだが、意外な収穫だった。探偵役を務めるのは記述者を兼ねるトビーと相棒のジョージ。二人は決して名探偵タイプでなく、トビーは直情型、ジョージは慎重派と描き別けられている。舞台は英国の僻村。トビーの所へ、ポールと言う教授から「私のアーマが誘拐された」との手紙が届くのが発端。トビー達はロンドンから汽車で五時間掛かるイースト・リート村に赴く。 そこで発見するアーマの死体。ところが、アーマはチンパンジーだった...。ポール教授は霊長類学者で、アーマともう一匹のレオフリックと言うチンパンジーを飼育しており、共に"誘拐"され、アーマが死体で発見されたと言う次第。これは、そもそも事件なのか、と言う想いがするし、加えて、事件関係者が揃いも揃って奇矯な人物なため、作者がミステリを書こうとしているのか、単なるナンセンスものを書こうとしているのか前半は疑念が湧く。特に作者が一人称ミステリの原則を守って、トビーが見聞きした事を順番に綴っているので、人物関係や背後にある動機の可能性が見えずらい。しかし、登場人物も出揃い、証拠らしきものも揃い始めた後半は俄然パズラーの体裁を成して来る。上述の通り、奇矯な人物揃いの中で、犯行に係る部分だけロジカルに説明されるのは如何とも思うが、充分楽しめる内容になっている。 英国の田園を舞台にした、ミステリ黄金時代末期のパズラーとして中々の出来。かつての英国人は、週末のティー・タイムにこうした作品を読んで楽しんでいたのだと思わせ、読後感が良かった。 | ||||
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「なぜ、猿が殺されたのか?」というシンプルながらも強烈な謎を中心に据え、 レッドへリングとなる関係者それぞれにダミーの動機を持たせて読者を誤誘導 しつつ、最後にはきれいに背負い投げを決めてみせる鮮やかな手際がお見事。 ある決定的な事実に対する、冒頭と幕切れの照応も印象的でした。 また、本作では、一人称の語り手であるトビーと、その親友のジョージが探偵役を 務めているのですが、二人の役割分担が従来の〈ホームズ‐ワトソン〉のパターン から逸脱しているのが面白いところ。 語り手がトビーである以上、彼がワトソン役、と考えても間違いではないのですが、 関係者には彼が探偵と認識されていますし、最終的な謎解きのプレゼンも、彼が 行います。 そうした定型外しが、巧まざるユーモアを生み出すと同時に、どちらが真の探偵 役か読者に予断を許さないことで、作品に緊張感をもたらしているのが秀逸です。 | ||||
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「春きたりなば」ではなく「猿きたりなば」。 このネーミングは翻訳の方のセンスで決まったのでしょうが、このタイトルのおかげでインパクトがものすごくあって思わず手にとった人も多いでしょう。日本ではあまり翻訳がされていないエリザベス・フェラーズの小説群の中でも、珍しいシリーズ物の翻訳第一号がこの「猿きたりなば」です。 このシリーズには、ハンサムだけれど実はあんまり推理力がない探偵トビーと、助手のワトスン役ながら実は頭脳明晰で何でもできるジョージの二人が登場します。このシリーズは、二人のキャラクター造詣がかなり楽しくてついつい読んでしまうシリーズです。 さて。本作では、二人のもとに南イングランドの片田舎から誘拐事件を解決して欲しいという依頼が舞い込んでくるところから始まります。手紙を受け取った二人は、約5時間の汽車の旅を終えてやってきたものの約束の迎えはきておらず、すでに終バスも終電もありません。あまりに田舎すぎて、ホテル兼パブも一軒のみしかありません。ある意味陸の孤島のような場所です。 こんな風変わりなところでの誘拐事件なんて、と思っている二人がすったもんだのあげくに依頼人にあったと思いきや、誘拐されたのはチンパンジーだと分かります。馬鹿にされているのか悪質な冗談なのかと疑りつつも、依頼主の博士のもとへとやってきた二人の前に、惨殺死体となったチンパンジーが横たわっていました。 かくして、二人は歴史上稀にみる珍事件、チンパンジー殺人(殺猿?)事件を解決する事になるのですが。。。 ということで、ユーモア溢れる珍ミステリー、「猿きたりなば」。かなり面白いと自分は思います。意外に本格推理ものでもあるし、お勧め。5の4でお勧めします。 | ||||
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イギリスのドメスティックミステリーです。「猿が殺されている」ところから始まる事件。始終、なぜ猿なんだ?という思いが頭をつきまとい、新しい感覚でミステリィが楽しめます。謎解きのテンポと、緻密に計算されたプロットが嬉しいですね。イギリスという国を知っている人の方が、イメージがわきやすく楽しめるかも。 | ||||
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相変わらず豊満な想像力のおかげで解決をはずしてしまうトビー物今回は何故チンパンジーは殺されたか?についてご自慢の想像力を活躍させます猿殺しの理由は洒脱ですが人物描写がいやな人間ばかりに偏っているのが気にかかります | ||||
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相当昔の作品だが、長らく邦訳が存在しなかった本。また、エリザベス・フェラーズの本自体がそもそも邦訳が少なかったのだが、本書以降、立て続けに翻訳され始めた。 そして、本書は、そのフェラーズ作品の翻訳ラッシュの嚆矢となるだけのことはある内容。古井作品にもかかわらず、ちっとも内容が古びていない。一応ホームズ役、ワトソン役らしき登場人物がいるのだが、どう考えてもワトソン役の方がキレまくりで、ホームズーワトソンの構造が捩じれているのも面白い。会話も洒脱。最高。 | ||||
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未読とは未来の読書ということだ。まだエリザベス・フェラーズの作品を読んだことがない人は幸いである。これからたくさんの面白い作品に出会えるのだから。 この作品では探偵は「迷」探偵だし、被害者はチンパンジーという本格派のパロディのような設定だが、だからといってユーモアミステリではない。陰惨な描写はなく会話は洒脱で登場人物は個性にあふれていて楽しいが、それだけのミステリではない。 じっくり噛み締めてみてほしい。 まことに美味なミステリが味わえるはずである。 | ||||
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