猿来たりなば
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少しピントのずれた人達がチンパンジー殺害事件を巡って右往左往する喜劇風ドラマですが、巧妙なパズルが仕組まれており、珍妙でさえある不可思議な謎が論理的に解決され、尚且つ読者に手がかりをばらまいている様は見事です。特にエンディングは洒落ており、やられた感があります。 探偵と助手の役割が逆転していてどこかパロディー風でもあり、2人のやり取りも軽快で楽しいです。 | ||||
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探偵役の一人称という、やや異例の形で綴られる、黄金時代末期の英国パズラー。最初に吐露されるとおり、この探偵トビーはかなり無能で、実質的な推理役は助手役の友人ジョージである。ただし、ジョージは風采が冴えないこともあって誰もに無視されており、大詰めの謎解きもトビーに代行させるのだ。この珍コンビにを中心に、冒頭の猿の刺殺事件ほぼ一本で長編をぐいぐい話を引っ張っていく。 とにかく人物の描き分けが最高にすばらしい。3人の美女が三者三様にエキセントリックで、特に超絶の美貌と空っぽの頭を併せ持つキャサリンの天然っぷりと、独仏伊3か国語に通じながら英語がうまくないヴィラグ博士の頓珍漢なトークが全体の笑いをリードする。全体にのんびりとユーモラスなのに、微妙に黒々としたものも漂っており、これがラストにガッと暗転する衝撃はかなりのものだ。 | ||||
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「なぜ猿は刺殺されたか?」動物を殺しただけでは器物損壊罪に しか問われないが、紙面の大半は登場人物たちの動機探り にあてられます。 殺人でもないのに探偵コンビが現場の邸に赴き、逗留するのが 不自然に思えた、ふたりはラストを予見していたのか、 話を引っ張るためか、それとも笑わせるためか。 軽妙なタッチでありながら、相関関係・時系列を巧みに織り込んで 体面を保っています。 真相につながる手がかりの提示が公明正大で、最後に明かされる トリックプレーをほのめかし、この点でフェアといえます。 フーダニットの観点からは、物語の後半を過ぎたところで、二転三転、 レッドへリングとしての犯人をなかば明示しますが、 自己完結的なので犯人当ての妙味をこちらに与えぬ間に、最後、自動的に だれが殺ったのか判ってしまう形式になっています。 本書の魅力はあくまで狡猾な離れ業と「なぜ」にあるといって良いでしょう。 猿が殺される事件をテーマにするなんて、まるで××の某短編の 逆パターンで、ふざけたアイディアだし、それをまともな着陸点としない のはあざやかに盲点をついていると思います。 | ||||
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本作品は1942年に発表され、 1999年版「このミステリーがすごい!」で 海外部門第4位にランクインした作品です。 学者のポール・ヴィラグから 「<アーマ>の誘拐未遂事件」の解決を手紙で依頼された 主人公トビー・ダイクは、相棒のジョージとともに ロンドンから5時間かけてダウンズ地方・ビュール駅へ。 しかし、迎えにくるはずのヴィラグの姿は見当たらず、 やがて現れた女性がアーマかと思いきや、 彼女はヴィラグの娘であり、 アーマは飼っているチンパンジーでした。 かくして、彼女の車でイースト・リート村に到着した 彼らを待ち受けていたのは、無残にも刺し殺されたアーマの死体…。 この珍妙なチンパンジー殺害事件に取り組む トビー&ジョージの活躍を描く本書は、 黄金時代を引き継ぐ純本格ミステリです。 物語はこのあと、怪しげな人物が次々と登場し、 最後には関係者を集めての真相解明となるのですが、 そこに至るまでのトビー&ジョージの軽妙なやりとりは 絶妙で飽きることはありません。 ちなみに表紙の絵は、事件の構図上、 興味深いものといえるのではないでしょうか。 本作品の最大の謎は、 「なぜチンパンジーが殺されたのか」ということで、 この点を明快に解明しているところが本作品の高評価の所以でしょう。 そして、最後の最後にある驚くべき事実が明かされるのですが、 多くの読者にとって忘れられないエンディングになるのではないでしょうか。 ところで、この著者は、 英国推理作家協会の会長も務めたことのある人物で 1995年に亡くなるまで71の長編を残したほどですが、 日本では1950年代に2作品が翻訳されたのみとなっていました。 ようやく1990年代に入り、 本書をきっかけとしてトビー&ジョージシリーズの5作品が 翻訳されたものの、2010年現在、いずれも絶版状態となっており、 本書も中古本で手に入れた次第。 このような秀作が埋もれてしまうのは、惜しいような気がします。 | ||||
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私自身「私が見たと蝿は言う」しか読んだ経験がなく、「ドメスティック・ミステリ」作家のイメージが濃い作者の、一風変ったパズラー。題名に惹かれて本書を手に取ったのだが、意外な収穫だった。探偵役を務めるのは記述者を兼ねるトビーと相棒のジョージ。二人は決して名探偵タイプでなく、トビーは直情型、ジョージは慎重派と描き別けられている。舞台は英国の僻村。トビーの所へ、ポールと言う教授から「私のアーマが誘拐された」との手紙が届くのが発端。トビー達はロンドンから汽車で五時間掛かるイースト・リート村に赴く。 そこで発見するアーマの死体。ところが、アーマはチンパンジーだった...。ポール教授は霊長類学者で、アーマともう一匹のレオフリックと言うチンパンジーを飼育しており、共に"誘拐"され、アーマが死体で発見されたと言う次第。これは、そもそも事件なのか、と言う想いがするし、加えて、事件関係者が揃いも揃って奇矯な人物なため、作者がミステリを書こうとしているのか、単なるナンセンスものを書こうとしているのか前半は疑念が湧く。特に作者が一人称ミステリの原則を守って、トビーが見聞きした事を順番に綴っているので、人物関係や背後にある動機の可能性が見えずらい。しかし、登場人物も出揃い、証拠らしきものも揃い始めた後半は俄然パズラーの体裁を成して来る。上述の通り、奇矯な人物揃いの中で、犯行に係る部分だけロジカルに説明されるのは如何とも思うが、充分楽しめる内容になっている。 英国の田園を舞台にした、ミステリ黄金時代末期のパズラーとして中々の出来。かつての英国人は、週末のティー・タイムにこうした作品を読んで楽しんでいたのだと思わせ、読後感が良かった。 | ||||
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