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ナイン・テイラーズ
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ナイン・テイラーズの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.88pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全18件 1~18 1/1ページ
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先日、英国ミステリ作家ジム・ケリーによる「水時計」という本を読みました。その小説はドロシー・セイヤーズ「ナイン・テイラーズ」に啓発されて書かれたものだそうで、イングランドのケンブリッジシャーという地方が舞台になっているのも同じということでした。それで、次はこの「ナイン・テイラーズ」を読んでみようと思い立ったわけです。 ところが、確か「ピーター卿の事件簿」だけは読んだはず・・と思って本棚を見れば、「ナイン・テイラーズ」もすでに持っているではありませんか。つまり読んでいたのにすっかり忘れていたわけです。最後まで読んでもまったく内容を思い出すことができず・・(汗)。 ぼんやりした記憶では「ピーター卿の事件簿」はイマイチだな・・と思い、でもとりあえず代表作ということだから「ナイン・テイラーズ」くらいは・・と思って読んてみたのでは、と。結果どちらもイマイチで、現在に至るまで他の作品を手に取ることもなく何十年が経過したようです。 まだ20歳前後だったと思いますが、今から思うと、この渋い作品を理解するにはまだ若かったような気がします。正直言うと今回も、6割あたりまではかなり退屈で何度も途中で寝落ちしかけました。それでもがんばって読んでいたら、後半になってからじわじわと味がわかってきたというか、楽しくなってきました。 主題になっている鳴鐘術というものに初めて出会ったのは、コニー・ウィリス作「ドゥームズディ・ブック」でした。鳴鐘術のチームというのが登場するのですが、教会の鐘といえば1人がカラーンコローンと鳴らすだけのものだと思っていたので、へえとびっくりしました。次はイーデン・フィルポッツの「だれがコマドリを殺したのか」で、主人公が一目惚れする令嬢の父親が、鳴鐘術のことなら話し始めたら止まらないほどはまっている聖職者という設定でした。よって漠然とした知識があったので、この小説でも、牧師さんや村人たちがチームを組んで熱心に取り組んでいる様子がすんなりと入ってきました。 ヨーロッパの教会では、鐘がひとつだけでなく複数あって、どの鐘をどういう順番で鳴らすかやその強弱などにマニアックなこだわりがあるようです。この小説では、鐘になにやら神秘的なものを感じる人々が多く、各鐘には名前までついていますし、ひょっとして人格を持つのではないか?と言う人まで出てきます。巨大な鐘が並ぶ教会のてっぺんの部屋で、次々に鐘が鳴る様を見、音を聞く機会があれば、怖いようなその雰囲気が感じられるのかもしれません。ただし、大音響で耳がおかしくなってしまうかもしれませんが・・。 ミステリではありますが、犯罪捜査とその真相をストレートに楽しみたい方には、じれったくて、はっきり言ってつまらないと思います。そこかしこにちりばめられた英国的ユーモアもわかりにくくて、ただ退屈でしょうし、どこかとぼけた味の探偵役、貴族のピーター卿もなんだかたよりなさげです。 私が思い浮かべたのは、たとえばオクスフォードの学寮なんかで、学者の先生が忙しい講義の息抜きに、暖炉の前でこの本を読みながらリラックスしてクスっと笑っている姿です。さまざまな古典や聖書からの引用、しゃれた警句などは、広い教養がなければくすっと笑うことさえできません。 このあたりは訳者の浅羽莢子さんが細やかに注釈をつけてくださっているので、その場で出所や意味を理解することができます。この方は「死者の書」をはじめとするジョナサン・キャロル作品のすばらしい翻訳で出会って以来、敬服しています。この作品に登場する田舎の農民たちの方言も、味があってとてもよく雰囲気が出ていると思います。人物ごとの言葉の使い分けも見事で、それがまたこの作品を味わい深いものにしています。 ラスト、水害で堤防が決壊し人々が教会に避難、村が水に沈んでゆく圧巻のシーンは、先に読んでいた「水時計」と同じでした。いや、「水時計」が「ナイン・テイラーズ」をまねたのですね。この作品を読んでいると、教会は村の中心であり、人々の心の支えであり、人生の通過点での数々の行事に関わり、いかに大切な存在かがよくわかります。昔の日本のお寺もこんな感じだったのでしょうか。1930年代の英国の村落や人々の生活もわかって興味深いです。 肝心の犯罪ですが、いったい殺されたのは誰なのか?なんのために?殺したのは誰か、は最後まで明らかにされません。真相は賛否両論あるかと思いますが、個人的にはとても良い終わり方だと感じました。 セイヤーズを楽しむにはまだまだ修行が足りない気がしますが(笑)年を重ねて昔よりは少しわかるようになったかもしれません。確かに忍耐がいりますが、今回はこれきりにせず他の作品も読んでみたいと思いました。 | ||||
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今回購入したのは三冊目です。 厚みがあるので落丁がひどい。 好きな作家でよみなおすので買いました。 | ||||
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クリスティと並ぶイギリスの女流推理作家、セイヤーズの最大傑作ということで期待して読んだが、前半はあまりの冗長さに忍耐の連続であった。後半から緊迫感が出て来るが推理小説という面だけで考えると全体の半分以下の頁数で十分な内容である。教会の鐘を鳴らす技術(鳴鐘術)や教会内部の建築、イギリスの小さな村の住民たちの生活や自然との関わり等がきめ細かく描かれる。また会話がピンポンのようなやりとりではなく一方的に喋りまくるというパターンが多く読みにくい。ただ、最後の3頁まで来ると今まで冗長と思われたものが壮大な建築物のようなものを生み出すといったスケールの大きさを実感できた。 全体は四つの巻から構成されている。巻の一はプロローグといえる内容で貴族探偵ピーター卿が大晦日の夜に鐘を鳴らすメンバーの一人となることや十年前に発生した宝石盗難事件が述べられる。巻の二は事件編といえる内容で、病で死亡した人を埋葬しようとして墓を掘り返した所見知らぬ人の死体が埋められていたという殺人事件がテーマとなる。捜査を開始したピーター卿と地元の警察署長は十年前に起きた宝石盗難事件が関係している事に気づく。巻の三は解決編といえる内容で、容疑者たちの証言で真相がほぼ明らかになる。巻の四はエピローグといえる内容で、最後の3頁で全てが明らかになる。 このエピローグは人間の本来持つ善意といった一つの理想的な姿が描かれており、それまで饒舌と思われた内容が説得力を持ちうまく生かされているように思う。 全体的におとぎ話のような雰囲気があり現実感という点では物足りない。登場人物は女性陣は上手く描き分けられているが男性陣は類型的で現実感がなく魅力に乏しい。また比喩や引用が多く訳注が無ければもっと読みにくかったと思う。原文の誤り等も指摘されており訳者に敬意を表したい。 | ||||
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教会の鐘がこんな物語を産むなんて作者はすごいです。鐘の詳しい説明ははっきりいって全くわかりませんでした。でも世界観、イギリスの田舎の寒さ、人物の描き方、しゃべり方、充分伝わってきました。住民のしゃべる方言は日本だとどこなんだろうと思って読みました。ミステリーとはいえ読後感が文学小説のようでした。解説が詳しいともっと良いと思います。翻訳者の浅羽さんの力量とご苦労が偲ばれます。 | ||||
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亡くなった女性を夫と同じ墓に埋葬しようとしたら、出てきた身元不明のもう一つの死体の謎。それに、以前に起こったエメラルド盗難事件をめぐる謎、行方をくらました自称自動車修理工の謎、暗号の謎など、様々な謎が絡みあって、ややこしく、わかりにくい話。翻訳作品特有の読みにくさも相まって、読み進めていくのが大変で、なかなかページが進まなかった。真相につながる情報が小出しで出てくるので、読者が謎解きできるような話ではないし、暗号の謎やエメラルドの隠し場所の謎の真相もぼんやりとしかわからない。最後から2ページ目まで読み進めて、ようやく、こういう話だったのかと納得。まさしく、神の裁きであり、ナイン・テイラーズというこの作品のタイトルにうってつけの真相。 | ||||
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460ページの文庫本で、100ページを過ぎても何も事件が始まらない。 うんざりして一度やめてしまったが、方々でミステリーの傑作に挙げられていたので気を取り直してもう一度読んでみました。 読み終わってみると、なる程の一言。 全ては意味があったのですねえ。 | ||||
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とにかく評価がどんどん独り歩きしてしまって、 読む前から「これは手ごわいぞ」と思わせる小説がある。 本書もそんな1冊ではないだろうか。 しかし「案ずるより産むがやすし」で、 読んでしまえば「こんなものか」というようなところがある。 本書をミステリとして鑑賞する場合、 「まあ、そういうこともあるかもしれないね」という真相なのだが、 伝説化ならしめている理由はそこではあるまい。 鳴鐘術のペダンティズムであり、エピソードこそが、 本書を「手ごわい」といわしめている理由だろう。 確かにそれによって厚みというか、物語に奥行きが生まれている。 現代のライト級のミステリばかり読んでいる日本の読者には、 この「こってり感」は少々つらいかもしれない。 「もっとあっさり味がいいな」と思わないでもない。 しかし、フランス料理のフルコースを食べたような達成感はある。 探偵役のピーター・ウィムジィ卿は、 ちょっと気取っていて面倒くさいところもあるけれど、 こういうキャラクターは嫌いじゃないです。 | ||||
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図書館にて、乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10に入っていたので読みました。 そして、読破後即購入。 今までこんな素敵な作家を知らなかったとは…! 作者のセイヤーズは「ナルニア」の作者と交流があり、また、 「指輪物語」の作者はウィムジイ卿シリーズの愛読者だったといいいます。 普通の推理小説とはひと味違います。 まったりと時間が流れ、「楽しい川辺」等の古き良きイギリスの児童文学を思い起こさせるような、イギリスの田舎の人々と探偵のやりとり。 純粋に謎解きの面白さを追求したい方にはこれらの描写は退屈に感じられるかも知れません。 個人的には、推理小説ファンよりもむしろ、イギリスの文学や児童文学が好きな人にお勧めしたいです。 セイヤーズが日本では「推理小説好きの間で知る人ぞ知る」的な扱いなのはとても残念です。 ピーター卿の個性がいいですね。引き際を心得た軽妙な皮肉とユーモア。 いかにも英国紳士らしい、抑えた大人の魅力です。 なかなか女性作家の書いた男性主人公にははまらないんですが、彼にははまってしまいました。(笑) 謎を解いてよかったのかと、思い悩む人の善さが凄くいい。全シリーズ読んでみたいです。 ラノベ全盛、軽快なミステリーが好まれるご時世に真っ向から反逆するような作品ですが、それでももっと多くの人にこの作品を知って欲しいと思いました。 すばらしい出会い、江戸川乱歩に感謝です。 | ||||
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推理小説史上最も意外なトリック・犯人といっても過言にならない作品でしょう。セイヤーズはクリスティと並んでミステリの女王と称されたり しますが、クリスティが多分に論理にアバウトで柔軟且つ革新的なトリックを創案してったのに対して、どちらかというと筋道に重きが置かれて いて(つまり過程が愉しい)、パッとしない所もあるセイヤーズだが、本作品に関してだけは別で脅威の夢幻的アクロバットを用意しているので すね。。 でも、それは意図的に作風をチェンジしたというより、論理に徹しすぎて逆に論理から乖離・遊離しちゃった感なんですね。だので、この作品は 本当に二面性を感じます。現実すぎるけど決して覚めない夢のようなね。いきなり絶頂ともいうべく魅力的すぎる導入部あれば間延び感ありーの 舞台となる田舎の芳醇さに愚鈍さ、それが人工的に侵略される利便さに寂しさ、、、 そしてその中心部にそそりたつ教会の不気味なほどの静謐さ胡散臭さとね。でも何よりは最初に記した通りで、どこまでも事件と推理の枝は伸び て分かれるのに衝撃の真相は幹にあるというね...おっとくどいなぁーいけないいけない(笑)。 まあ総合すると、よく崩壊せずに成り立ったなぁ〜って作品ですね。俺は謎解きには自信があるぞ(!)って玄人の自信を瓦解させる事請け合い の一冊であります。 | ||||
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1934年の作品。乱歩による評価は正当だと思います。 | ||||
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古典推理小説の名作という事でいつかは読まねばとずっと心の片隅に引っかかっていた作品。 推理についてはこれといったトリックがある訳ではなく、 プロットの複雑さで読者を混乱させるたぐいのもの。 誰もが指摘しているように鐘の演奏法についての記述が分かりにくく、 いい加減な理解のまま読み進めてしまったが、 このあたりは妙な事にこだわりを持つ英国人のマニアックな面が垣間見えて面白かった。 | ||||
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この作品は’本格ミステリ/探偵(推理)小説’などという区分には分類し難いが、話自体の面白さでは傑作の類に値すると思う。それぞれの人物描写が素晴らしく、読み進むうちに彼らに対して愛着を感じざるにはいられない。また他でもたびたび言われていることだが、事物描写も大変魅力的かつ印象的である。ミステリー+[プラス]良き古き(しかし恵まれない)イングランドの田舎とその人々・教会又はその鐘などの雰囲気を好む方にはおあつらえ向きの一冊だろう。少しだけ不満を言えば、Lord Peter Wimseyはもっと早くに例の男の身元・死因に気付くべきだと思う。せめて読者より先に。私はHarcourt版と創元推理文庫版を両方読んだが創元の翻訳の巧さにはとても感心した。但し二・三箇所訳し漏らされていたが。派手なお話ではないけれど最後まで興味をそがれない一編だ。一読の価値あり!!! | ||||
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セイヤーズ女史らしくかなり専門的な「鐘」についてのミステリー。イギリスの田舎の風景が偲ばれます。長編ですので途中退屈を覚えるかもしれませんが 意外なところに犯人あり。是非にも完読されたし! | ||||
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セイヤーズによる極めて「変則的」な作品。どこがどう変則的なのか、というと……言えません(笑)。だってミステリーなんだから。謎解きの部分にかかわってくるから、言ってしまったら楽しみが半減するじゃないですか。玄人の読者ほど引っかかってしまうんじゃないでしょうか。「謎」が読んでる途中で判った人は極めて柔軟な頭を持っているでしょう。 | ||||
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セイヤーズは同時期のクリスティと比較して日本では評価されていなかった不遇の作家ですこの本や東京創元社の一連の翻訳で見直されたのが救いですディレッタント探偵ウィムジー卿の蘊蓄が楽しめる作品乱歩的には田園ミステリを楽しんでいると言うより異様な殺人方法を楽しんでいたのでしょうが文章の巧みさはクリスティよりも数段上のセイヤーズです読み飽きないこと必至です | ||||
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日本ではあまり知られてはいない探偵、ピーター卿シリーズを翻訳・出版している創幻社はかなりすごい。ピーター卿ものでももっとも複雑でキャラクターが多いのではないかと思われるのが「ナイン・テイラーズ」。登場人物をじっくり吟味しながら読み進むことが出来る。また、風景描写も素晴らしい。寒寒とした村で起こる奇怪な事件、といった風情たっぷりである。 これを読む前に、できれば『ピーター卿の事件簿』(創幻社刊)を読んで欲しい。そうするとピーター卿と執事バンターの関係なんかがつかめてよいと思う。その後『殺人は広告する』を読むと重厚な作品を作るセイヤーズが軽妙な作品も書ける、という幅広さがわかってよいです。 | ||||
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ナイン・テイラーズは翻訳の困難な代表的古典推理小説といわれていたが、現代的な翻訳に見事成功。「鐘」についての理解は難しいながらも、古さを感じさせずに読み応えのあるストーリーが展開されている。骨太な黄金期ミステリーを十分堪能させていただいた。翻訳に拍手。 | ||||
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ピーター卿の秘められた趣味がまたひとつ読者に紹介される。それは「鳴鐘」、教会の鐘を鳴らすことだ。英国式鳴鐘法に関する薀蓄をたっぷりと堪能したところで、殺人事件が発生。今回ピーター卿の謎解きは遅々として進まない。果たして真犯人とは?イングランドの田舎の風物をのんびりと味わえます。乱歩のイメージには少々そぐいませんが。それにしても鳴鐘がこんなに奥の深いものだったとは、「ドゥームズディ・ブック」を読んでもわかりませんでした。知的好奇心を満たしてくれる作品ですよ。 | ||||
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