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帽子収集狂事件



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帽子収集狂事件の評価: 4.03/5点 レビュー 36件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.03pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全36件 1~20 1/2ページ
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No.36:
(3pt)

大時代ムードを楽しむ小説

ジョン・ディクスン・カー(1906-1977)没後47年、初めて読みました。
 原著刊行は1933(昭和8)年、刊本、1956(昭31)年に発行された宇野利泰訳で読みました。
 以後、東京創元社だけでもさらに2回も新訳がでているのですが(素晴らしい)刊行から91年後、宇野訳が出てから68年後に読んだ事になります。
 新訳の方がすばらしい、と多くのレビュアー様がおっしゃっているので、旧刊本の「今から見れば遺漏もあるのであろう」訳で見た感想で見て頂きたいのですが(さすがに歴代訳を読み比べるほどの根気がないので)この本は「ロンドンの霧の中で、鬼面人を嚇す、大時代な仮面で鎧われた怪奇ゴシック小説が半分、ミステリが半分ずつ」の印象でした。
 カー自体(カーター・ディクスンを含め)初めてなので、すでにしてミステリの古典を読む上に、その上執筆当初から「おどろおどろしく古色蒼然の怪奇趣味」の上にさらに90年の歳月が積み重なってしまったので、電子書籍と音楽配信が常態になっている2020年代、ある意味ではコナン・ドイルのシャーロックホームズよりも「古び」て見えるのは仕方ない。
 また、そうした、半分怪奇小説として読むことはカー本人にとっても望むところなのではないかしら?(本人憤然として否定したらすみませんが)
 
 謎解きは「ええっ、それってありですか?」と思わざるを得なかったのは桐野夏生やP・D・ジェイムズといった半世紀以上未来の同ジャンルの継承者をさきに読んだあとだから仕方がない所もある。
 また「現代の妖怪小説」でもある京極夏彦と一脈通じるかも知れないが、現実をどう見るか、夢と幻をむしろ意図的にまぶして楽しむことにしようではないか(京極夏彦はもっと現代的に現実と非現実の境界を彷徨逍遥している趣はあるが)という、意図的に骨董ものの装いとして楽しんだ。
 それは以後の日本のミステリ史とも関係があり、江戸川乱歩、横溝正史(1902-1981。なんとカーより4歳年上)を通じて、むしろ日本では通奏低音として松本清張以前は楽しくおどろおどろしき怪人二十面相、そして清張以後も因習と怨念うずまく金田一耕助の角川映画で人口に膾炙した(ということは日本人も湖から出た足のようにネタ、ギャグとして楽しみつつ、結局はそれを望み、受け入れたということにほかならない)因習ものの楽しさかも知れない。
 と言う訳で、カー以後の日本社会でたっぷりと乱歩・正史・京極と日本的にアレンジされた非現実路線の薫陶を受けたあとで、さかのぼってその英米における祖先を読む感じで、なるほどこれがかの怪奇趣味猟奇嗜好のお師匠さまでありますか、という風に読みました
(色々と間違っている所もあるだろうけれど、あたらずと雖も遠からずの理解だとは思いますが如何か)
 …小説としては色々と瑕疵もあると思うし、トリックは無理があるのでは?とも思ったし(けちょんけちょんである)第一、ギデオン・フィル博士はいまいち鼻持ちならない人物に見えて、考古学とはいえ非現実の境界的領域で筆者の厭世的基調を満足させるこれまた20世紀末、アーロン・エルキンズのギデオン・オリヴァー教授(その名もギデオンを引用しておられるあたり、カーの遺伝子というべきではないか)の方がエキセントリックでも、またパーソナリティでも好みだった。
 1933年(昭和8)では独立峰の風格でも、以後、あとにつづく崇拝者と弟子たちによって標高の面では乗り越えられてしまった所は否めない、とはいえその山脈を隆起させた草創者としての栄誉は揺るがない、でも申し訳ないけれど筆者は小説としてもミステリとしても怪奇ものとしても今一つ、というちょっと失敬な感想でした。
 しかし2024(令和6)時点では三世代が経過したのですから、いまだにこれが「怪奇趣味ミステリのパイオニアにして最高峰」であるよりか、それはなんぼかマシでしょう。
 憧れられ、その衣鉢を継ぐ継承者たちに恵まれ、そして乗り越えられたのだから、むしろそれは幸福ではあるまいか…とこれまたカー本人の意思を無視して勝手なことをほざく筆者。
 あ、いや、もちろん創造者としての敬意を払いつつ、ですが…(失敬きわまる感想ですいません)
帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488118305
No.35:
(5pt)

すでに100年経とうとしているのにこの素晴らしさ。感動です

この作品は、1933年の作品なのだが、ある意味、『奇想』の原点とも言えるのではないか、と感じている。つまり、フツーでは無いことを題材とし、それを最終的には論理的に帰結させてしまうというものだ。島田荘司の作品などがそれに当たると思うのだが、島田荘司もジョン・ディクスン・カーのこういった作品に、強い影響を受けているのが解る。

カーは歴史にとても強いのが、この作品でも解る。ジョン・ディクスン・カー名義の『三つの棺』でも、実際の歴史を取り込もうとしているのが成功している。なんと言っても、ルイ16世が処刑された時代のフランスとイギリスを歴史そのままに下敷きにして、この本を構築していた。このジョン・ディクスン・カーの『帽子収集狂事件』の舞台は、ロンドン塔だ。つまり、ロンドン塔を密室にしてしまっているのだ。

H・M卿こと、ヘンリ・メリヴェール卿にそっくりなフェル博士がこの謎に挑む。あなりの面白さに、かえって読むのがもったいなくなり、ゆっくりゆっくり愉しんでいる。

すでに100年経とうとしているのにこの素晴らしさ。感動です。
帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488118305
No.34:
(3pt)

遺体発見現場の図が分かりづらい!

もうほとんどロンドン党敷地内の内部での状況説明が横溢なのだが、とにかく分かりにくいことか。戦前ミステリ黄金期の見取り図や地図って、たぶんオリジナルからの転載なんだろうけど、出来の悪いものが多すぎる。訳も残念なのが多いし・・・。本格ものの探偵が鼻持ちならないのはいつものことだが、「帽子収集狂」はいきなり最後に真犯人が名乗り出て饒舌にセルフ謎解き。探偵フェル博士は、「初めから分かっておったのじゃ」的したり顔。トホホです。帽子にからむ謎など面白い部分もあったが、全体的にカーは、ミステリとして一級のものでも、小説としては奇形的にバランスが悪い。あまつさえ帽子収集狂はミステリとしても凡庸。
帽子収集狂事件 (創元推理文庫 118-4)Amazon書評・レビュー:帽子収集狂事件 (創元推理文庫 118-4)より
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No.33:
(4pt)

霧深いロンドン塔での殺人、E.A.ポオの未発表原稿などカーらしい要素が満載

フェル博士初登場となった「魔女の隠れ家」から時系列的に続きだということで、こちらの作品を読んでみました。何十年前の再読なのですが、内容はすっかり忘れていて初読同然でした。

めずらしく、密室殺人ではなかったのですね。この作品も登場人物それぞれの事情や人生ドラマが多様に交差した内容です。カーの魅力というのは、怪奇趣味、オカルト、密室などの不可能犯罪、そしてそれらに相反してユニークな探偵役が演じるドタバタ劇のファース趣味が混じりあって渾然一体となったものだと思います。ただ初読の時は、なんせ中学生くらいだったと思うので無理もないのですが、そのファースのユーモアが少しもわかっていなかったような気がします。こんなに笑える話だったのか?と改めてびっくりしています。特に最後の方、フェル博士が警察関係者の振りをして参考人に尋問している時、おもちゃのネズミがポケットから飛び出して机の上を走り回るシーンでは声をあげて笑ってしまいました。

怪奇幻想、恐怖、ホラー系が好きだったので、英国の古城や古い貴族館を舞台に、心霊学や幽霊、自動人形、魔女、祟り、伝説などがテーマのカー作品は、ミステリの中でも一番好みでした。この作品も舞台は霧深いロンドン塔で、昔は監獄でもあり数々の処刑が行われ、今でも幽霊が出ると言われている所です。帽子を集めてはおかしな所へ置いていくふざけた犯罪者と、むごたらしい殺人のコンビネーションがユニークで、いかにもカーらしい趣向です。カーの代表作のひとつと言えると思います。
帽子収集狂事件 (創元推理文庫 118-4)Amazon書評・レビュー:帽子収集狂事件 (創元推理文庫 118-4)より
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No.32:
(5pt)

28版求!!

28版求!!
帽子収集狂事件 (創元推理文庫 118-4)Amazon書評・レビュー:帽子収集狂事件 (創元推理文庫 118-4)より
4488118046
No.31:
(4pt)

道具立ては最高だが、尻すぼみのような

奇妙な帽子蒐集狂事件、ポーの幻の原稿、霧のロンドン塔での殺人事件と道具立ては最高で、ユーモラスなHM卿、そのほかの笑劇的シーンの面白さと、良いこと尽くめのようです。
しかし、現代の感覚で読むといささか、展開がくどいように思います。また、以前、他のカー作品を読んだときも思いましたが、この方法でほんとに出来るの?という印象を解決編に持ってしまうもどかしさが残ります。
読んでつまらなくは無かったけど、最初のわくわく感が尻すぼみになったように思います。
帽子蒐集狂事件 (1959年) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:帽子蒐集狂事件 (1959年) (新潮文庫)より
B000JASGZ2
No.30:
(4pt)

密室以上と評判の独創的なトリックに納得したが人間ドラマとしては今一つか

学生時代に初めて読んだ時は本作のどこが優れているのかよくわからなかった。六十代となって今回じっくりと読み直してようやくその独創性に納得できた。確かに密室以上の不可能性が鮮やかに解決され華麗な奇術を見せられたという感じである。ただし物語として見ると喜劇と悲劇がごちゃまぜになっている点やフェル博士の役割が中途半端である点など完成度は今一つという気がする。

前半は霧の深いロンドン塔を舞台に謎めいた帽子収集狂の不気味さやエドガー・アラン・ポオの未発表原稿の盗難に絡む駆け引き等でグイグイ引き込まれた。中盤の古書収集家の尋問場面あたりから空回りしているようで冗長感があるが終盤は深夜のビットン邸を舞台としてその驚愕の展開に圧倒された。

登場人物は女性陣の個性が光る。「新しい女の見本」(p115)のローラ・ビットン夫人、戦闘的なラーキン夫人、可愛らしいシェーラ・ビットン嬢がうまく描き分けられている。ただ人間ドラマとして見た場合悲劇的な事件の中でコミカルに描かれているため現実感は今一つではなかろうか。男性陣の個性はそれぞれ納得がいき読み応えがあるがフェル博士については登場させず実直なハドリー警部の単独捜査にしたほうが格調が高かったような気もする。

謎解きの面ではハドリー警部が自説の推理を述べる場面があるがそれ以外は推理の記述はほとんど無く伏線もフェル博士の奇妙な言動が申し訳程度にあるだけで読後に感銘を与えるようなものではない。またカー作品全般にいえることだが会話を途中で切る等して肝心の手掛かりの記述が断片化されており読みにくい。このあたりは読者を惑わそうとしているだけという感があり面白いのではあるが堂々と勝負してくる作品と較べるとやはり完成度の低さを感じてしまう。

ラストについては賛否両論があるようであるがやはり根拠を考えると安易であり蛇足だと思われる。
帽子収集狂事件 (創元推理文庫 118-4)Amazon書評・レビュー:帽子収集狂事件 (創元推理文庫 118-4)より
4488118046
No.29:
(2pt)

ラストの一行が気にくわない

乱歩がハードルを上げ過ぎたため、かえって評価が下がってしまった可哀想な作品。私はミステリとしてかなり面白いと作品だと思いました。皮肉や冗談で溢れていて、現代の感覚ではそれが読みづらさに繋がっていますが、まあそれは古い作品を鑑賞するときの楽しみともいえるでしょう。なぜこんなに星の数が少ないかというと、ラストの一行が気にくわない。古い推理小説にはしばしば見られる価値観(倫理観)なのですが、嫌いなものは嫌いなのです。
帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488118305
No.28:
(4pt)

霧のロンドン塔(残念ながら観光ミステリではありません) 1933年作 新訳2011年

四十年ほど前、創元推理文庫の旧版(1960年田中 西二郎さんの訳)で読んで、なんだかパッとしない印象だったのですが、創元新訳カーシリーズの非常に良い印象で1930年代のJDC/CDを全部読みたい!と思って再読。冒頭から全然覚えていなくて、ほぼ初読状態。語り手の存在意義が良くわからないのですが(まーいつもそうです)展開が素晴らしく、ハドリーとフェル博士の漫才も珍しく笑える良い探偵小説でした。でも登場人物に良いネタがたくさん転がってるのに全然生かしてない…(シーラちゃんだけ何故か生き生きと描かれていました) 物語の全貌が明らかになり、読者が色々補うと立派な「悲劇」です。二次創作意欲を掻き立てる類の作家なのかも。(乱歩が惹かれたのもそのせいか?)ところで田中西さんの訳が悪いはずがない、と思って昔の文庫を見たら… セリフがちょっと古臭くて新訳は正解ですね。(旧訳は冒頭の地図もかなり端折っています)
帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488118305
No.27:
(5pt)

乱歩さんが激賞する理由

帽子を盗み取ってはロンドンの目だつ場所に置き回るという帽子収集狂。事件はエスカレートして、鋼の矢で胸を貫かれて死んだ男の頭上に、盗まれたシルクハットが晒される事態になるという設定。そこにポーの未発表原稿と盗難事件が絡んでゆく妙。
 当時、凡百の密室トリックやら、切断された女の太ももが送りつけられてくるというような、エログロな話に食傷していた江戸川乱歩さんは、さぞや感動したのではないでしょうか。何と独創的でファンタスティックな設定。言うところの「発端の怪奇性」とはこういうことをいうのだと。そしてテンポよく、物語の進展と共に謎のヴェールが一枚ずつはがされていく構成は見事に「中段のサスペンス」を作りだし、さらにラストで明かされるトリックは、横溝正史を驚嘆させ「獄門島」へと受け継がれてゆく「結末の意外性」充分なもの。
 カー作品として、大衆受けという点では、「火刑法廷」や「ユダの窓」「ビロードの悪魔」等には及ばないでしょうが、「ミステリーとはこうあるべきだ」という見事な模範作だと思います。乱歩・正史がなぜ激賞したのかを考え、味わいながらの一読をお薦めします。ちなみに本作はドロシー・セイヤ-ズの激賞を受けたカーの文壇での出世作でもあります。
帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)より
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No.26:
(4pt)

こつこつ積み重ねていき

読み始め、なんか面白くなるのかな、とふあんでしたかが、カーの話の中では安心して楽しめた。 結末にも満足。
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4488118046
No.25:
(3pt)

初めて読むカーの作品

”乱歩推し”という事で興味をもってみたのですが・・・。

シンプルな”事故”なのに、同時期にあった帽子収集狂騒ぎや、
当事者の不倫の件などで、複雑怪奇になっているというお話。

昼下がりに”事件”の知らせを聞いて、(小説の中の)12時間くらいで
解決に至ってるとこだけ面白いと思いました。

カーということで、”密室”を期待してたんですが、これはそうではなかった・・・。
(”意外な犯人”モノではありますが)
帽子収集狂事件 (創元推理文庫 118-4)Amazon書評・レビュー:帽子収集狂事件 (創元推理文庫 118-4)より
4488118046
No.24:
(4pt)

もしかして、キャロル的ばかばかしさ(absurdity=不条理)のような?

江戸川乱歩が大傑作とあまりに絶賛しすぎた反動で、昨今は、この小説は「乱歩が言うほどの傑作じゃないじゃん」というのが定説のようだ。確かに、乱歩が評した「密室以上の不可能トリック」という宣伝文句を真に受けて、カー特有の度肝を抜く不可能トリックを期待して読んだならば、肩透かしを食らうかもしれない。

我々にとってこの「死体**トリック」がどうもしっくり来ないのは、不可解な状況を呈するはずの死体発見現場と、そこを微妙な時間差をもって徘徊する人物達の動きが、ロンドン塔の立体的でやや複雑な構造を知らない我々にとっては、付属の簡易な平面図を見ながらあれこれ想像しても、もうひとつイメージとしてピンとこない、ということだと思う。これは訳が新しくなってもどうしようもない点だ。

むしろこの作品の醍醐味は、「帽子泥棒」の謎と「ポーの未発表原稿」の謎、そして「殺人事件」の謎が三位一体で複雑に絡み合いながら、綱渡り的なバランスで解決編に収束していく手際と、マッド・ハッターをモチーフにした奇妙な味わいのユーモア感覚にある、と言っていい。

この作品の解決篇は、犯人の自白によって否も応もなく納得させられるが、フェル博士の推理のプロセスはいささか論理性に欠け、勘と想像の積み重ねに過ぎないように見える。エラリー・クィーン流の「論理的に正しい」推理プロセスを愛好するミステリ・ファンにとっては、こうした論理の曖昧さが稚拙さと映るのだろう。即物的(realistic)な論理によらず、ある種の抽象的(abstract)な論理で推理を展開するのはチェスタートンの影響が濃厚だが、この”奇妙な味”の好き嫌いが、カーの評価を極端に分ける要因になっている。

ミステリ作品としては、「ハッター家」の殺人を描いたクイーンのあの傑作に遠く及ばないが、カー・ファンにとっては愛すべき魅力に満ちた逸品のひとつであろう。
帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488118305
No.23:
(5pt)

奇想天外?

大筋はわかりますが、しばらく前に購入したので。。。でも面白い作品だったと思います(^^ゞ
帽子蒐集狂事件 (1959年) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:帽子蒐集狂事件 (1959年) (新潮文庫)より
B000JASGZ2
No.22:
(4pt)

ミステリーの良品!

まだ肌寒く霧の多い3月のロンドンで発生した事件であり、月曜日の昼の発端から翌未明に解決するまでの顛末が物語られます。
帽子収集狂による犯行を暗示するシルクハット、現場の霧のロンドン塔、凶器のクロスボウの矢による刺殺などの趣向は、
この作者にしてはいささか地味に感じられます。
しかしながらこの作品の魅力は何と言っても、登場人物の設定とあの印象的な事件の解決場面に至るまでの展開です。
特に天真爛漫なお嬢様、快活で奔放な人妻、いわくありげな女性探偵の3人の女性は、事件の展開に深くかかわりを持ち、
場面によっては事件解決の重要な伏線を示す役回りを果たします。また物語の終盤で自殺を遂げる男も実に魅力的な人物として描かれています。
そして皮肉な運命に翻弄される犯人と、対するフェル博士、ハドリー警部、ランポール青年が結末に下す審判が、物語に忘れがたい余韻を残します。
新訳は読みやすく、作品と作家の評価を見直す良い機会となりました。お薦めします。
帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488118305
No.21:
(3pt)

カーの代表作!かな???

1933年発表のフェル博士物の2作目です。前作「魔女の隠れ家」にあったオドロオドロしい怪奇趣味はありませんが、ロンドン塔という舞台設定で怪しいムードを作りあげています。相方は前作にも登場したアメリカ人青年ランポールと、これ以後レギュラーとなるハドリー警部が初登場しています。
 内容は、霧深いロンドンで帽子収集狂が話題になるころ、ポーの未発表原稿の盗難の件で友人に呼ばれたフェル博士。そして友人の甥がロンドン塔の逆賊門で、胸にクロスボウの矢を突き刺され死体で発見される。ゴルフウェアを着ていたが、なんと頭にはシルクハットをかぶっていた!というもの。
 乱歩が激賞し、カーのA級作品7作を選んだ際も本作を1番目に挙げたというが、私的にはちょっと理解しかねる。たしかにストーリーは面白く謎も多いのだが、帽子の盗難、原稿の盗難、殺人と続いていくと感の良い読者ならある程度先が見えてしまうのではないだろうか。フェル博士の推理も憶測の域を脱しておらず、明解な論理の過程は示されていない。
 しかし終盤で明かされる犯人と真相は、さすがはカーの面目躍如たるものがあると思う。後の作品でも出てくるあるパターンが使われているのだが、どんどん窮地に落ちていく犯人に哀愁さえ感じてしまうのは私だけだろうか。
 この作品はカー初心者にはあまりお勧めはできない。カーを好きになるか、嫌いになるか非常に微妙な作品だからである。できれば何冊か読んだ後で読まれることをお勧めする。(と言っても現在絶版ばかりで難しいのだが・・・)
 最後になるが、真相を知った3人(フェル博士、ランポール青年、ハドリー警部)があることをするのだが、フェル博士とランポールは良しとしても、ハドリー警部、あんた警察官でしょ!そんな勝手なことしていいのっ?ってエピソードがでてきます。思わず笑ってしまうオチですが、こういうところがカーマニアにはたまらないんですよネ。
 カーの一応代表作と言われているが、傑作とは言えない(すいません。よく解らない表現で・・・)作品ですが、本格の黄金時代を築いた巨匠の初期の佳作と言えるのではないでしょうか。興味のある方はどうぞご一読を。
帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488118305
No.20:
(4pt)

乱歩好み

かつて江戸川乱歩がカーの代表作として絶賛した作品だが、正直かつて中学生の頃に読んだ時は評価の高さがよく判らなかった。
再読してみると乱歩の好みに合致したであろう趣向の面白さが「なるほど」と理解できた。とはいえカー作品中でも「死人を起す」などと並んでマニア度の高い長編にはほかならず、これからカーを読んでみようという方には「火刑法廷」や「三つの棺」などをお勧めする次第。
帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488118305
No.19:
(3pt)

帽子に隠された謎。

正直クイーン・クリスティ・カーなどの『本格黄金期』の作品より、日本の25年前からの『新本格ミステリ』の方が倍以上面白いと思っていましたが、この作品には驚かされました。カーと言えば『三つの棺』のメイントリックがよく分からなかったり、『魔女の笑う夜』が大爆笑珍密室トリックだったり、かと思えば短編『妖魔の森の家』の密室トリックがあまりにもすごすぎたりと、よく分からない作家です。この作品は出だしが暗く、スローペースで物語が進むのでかなり退屈でしたが、後半の謎解きシーンではのけぞりました。メイントリックは普通ですが、『帽子』に隠された謎の真相に、心底驚嘆しました。それにしても、どんでん返しの連続って、この時代にもうこれほどのクオリティであったのですね。別に日本人の発明じゃなかったんだ…。どんどん新訳、出して欲しいなあ…。『ユダの窓』とか未読で、読みたいのに読めないし。もう売ってないんですよね…古本って外見も中身も古すぎるし。新訳ブラボーだ!
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4488118305
No.18:
(5pt)

作者初期の傑作。

カーの作品は、ベスト5を選ぼうものなら皆違う作品を並べ、誰一人として同じ組み合わせ・順位はないというほど、人によって評価が分かれると聞くが、この作品も、日本では江戸川乱歩が高く評価したため知名度こそ高いが、表面的には密室のような不可能性は薄く、またカーの持ち味である怪奇趣味も影を潜めており、一般的にはカー・ファンはそれほど上位に挙げていないようだ。

しかし、連続帽子盗難事件とポーの未発表原稿盗難事件に絡ませたロンドン塔での殺人は、それぞれが別々の事件のはずが裏側で見事なまでに結合し、最後の最後でフェル博士に明かされる緻密な真相には、玄人ファンほどうならされるのではないだろうか。

また、本作品には怪奇趣味は薄いと前述したが、実際幽霊だの魔術だの魔女だの呪いだの、そういったオカルト性は皆無にも関わらず、本書の雰囲気は怪奇ムードに満ちている。そういうオカルト的な言葉を用いずに怪奇な雰囲気を醸し出すところもまた、本書のすごいところだと思う。

なお、ポーを敬愛してやまないカーは、本書で未発表原稿を扱っている他にも、処女作の「夜歩く」でポーの作品の一節を引用したり、とある短編作品にポー本人を登場させたりしている。
帽子収集狂事件 (創元推理文庫 118-4)Amazon書評・レビュー:帽子収集狂事件 (創元推理文庫 118-4)より
4488118046
No.17:
(4pt)

〈いかれ帽子屋〉の跳梁とポオの未発表原稿の盗難、そしてロンドン塔の殺人

〈いかれ帽子屋〉なる人物により、紳士たちの帽子が、相次いで盗難されていた頃、
ウィリアム・ビットン卿は、手に入れたばかりのポオの未発表原稿を盗まれてしまう。
いっぽう、ウィリアム卿の甥で、新聞記者のフィリップ・ドリスコルは、
〈いかれ帽子屋〉の記事を書いていたのだが、そんな彼が、ロンドン
塔で心臓を太矢で貫かれた死体となって発見される。
そして、ドリスコルの頭には、ウィリアム卿の盗まれたシルクハットが被せられていて……?!
ふたつの盗難とひとつの殺人――それらによって構成
される事件の全体像の解明が、本作の主眼となります。
ロンドン塔という場を活かした不可能状況の設定は、巧妙なのですが、
見取り図がお粗末で、現場の様子がいまいち伝わってこないのが残念
(そもそも、“○○○○もの”であることを読者にわかりやすく提示すべき
なのではないかとも思いますし)。
とはいえ、計画犯罪ではなく、不運な偶然の連鎖によって、加速度的に
袋小路に追い詰められてしまった犯人の姿は、滑稽でありつつ、哀れで、
忘れがたい印象を残します。
帽子収集狂事件 (創元推理文庫 118-4)Amazon書評・レビュー:帽子収集狂事件 (創元推理文庫 118-4)より
4488118046

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