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楽園のカンヴァス
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楽園のカンヴァスの評価:
| 書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.43pt | ||||||||
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全502件 461~480 24/26ページ
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| 絵に詳しい人はいいかもしれないが、そうでない人のために白黒でいいから絵が掲載されていればよかった。文章は文句なくいい。 | ||||
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| 老眼になって、親の介護や仕事、家事など忙しくていつのまにか好きだった小説も読まなくなりました。でも、kindleのアプリは本当に読みやすくて、読書が楽しくなりました。この楽園のカンヴァスは美術好き、サスペンス好きな私にとって本当に素敵なプレゼントをもらったような本でした。これからはまた、昔のようにいろんな小説も読みたいと思っています。 | ||||
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| とても面白かったので、本来なら星五つ。 ただ先日著者がラジオ出演した際の言葉で、一気に興醒め。 多くの人が読後、美術館に行きたいモードになったと思う。 当方もその一人で、著者の狙いも当然そのあたりにあったらしい。 それについて著者はラジオでこう表現。 「しめしめ、してやったり」 すべての作品には意図や狙いがあるわけで、その作品が好きに なるという事は、著者の術中にハマっていると言えなくもない。 ただそれを「しめしめ、してやったり」と言われてしまうと、 手のひらで転がされたような不愉快な感覚が残る。 当方の人間的小ささも大いに作用していると思うが、 面白い作品だっただけに思わぬミソがついて残念。 | ||||
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| 知り合いの某ミステリマニアが、2012年のベストワンに推していたので、読んでみました。 率直に言って、それほどの傑作だとは思えません。 ルソーの未知の大作の真贋判定を若い男女二人の研究者が競うという設定には惹きつけられます。 20世紀初頭に書かれた古書が作中作として提示され、それが手がかりとなるという構成は、 よくあるパターンですが、うまくできています。 そこに描かれているルソーをめぐる人間模様も生き生きとしていて、臨場感もあります。 上品で甘口の読書タイムを与えてくれる小説です。 ただ、肝心の真贋判定の決着の箇所にスリルがなく、二人の説明もありきたりでやや失望しました。 また、推理小説としてはひねり・オチが弱いのではないでしょうか(ネタバレになるので具体的には書きませんが)。 本書を勧めてくれた某マニアはどちらかといえば本格ファンなので、意外な感じがしましたが、 主人公の二人の国を越えたロマンスという味付けに、目がくらんだのかもしれません。 | ||||
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| 絵の好きな私には興味津津で読みましたよ。現実にある絵に対するミステリーも珍しい。なんか久し振りにいい本にあったなあ・・・・。という感じでした。 一枚の絵に対する美術館の対応なども知ったし、絵の好きな人には是非読んでほしい。エログロもないし、とても読みやすくワクワクドキドキしました。楽しかったですよ! | ||||
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| アンリ・ルソーを愛するキュレーター、MoMAのティム・ブラウンと パリで活躍する新進の美術史家、織江は、伝説のコレクターと言われる コンラート・バイラーに招かれ、バーゼルに飛んだ。 ルソーの名画について意見を聞きたいというのだ。 ルソーの代表作「夢」はMoMAにある。 それと非常によく似た「夢を見た」と題する画を前にして、困惑する二人。 大作「夢」を2枚描けるほどの体力が、晩年の画家にあったのだろうか? 1枚が贋作なら、いったいどちらが偽物なのか? 暗躍する画商や美術館のキュレーターの思惑。 画と係わりがありそうな、謎のノートに書かれた物語。 緊迫する中で繰り広げられる真贋論争は、最高に面白い! | ||||
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| 43歳のシングルマザー早川織絵は倉敷の大原美術館で監視員として働いている。ある日、彼女を訪ねて新聞社の文化事業部の人間がやってくる。アンリ・ルソーの傑作『夢』をMOMAが貸し出す可能性があると言う。しかしMOMAが日本側の交渉窓口として、一介の美術監視員にすぎない織絵を指名してきたというのだ。MOMA側の責任者の名はティム・ブラウン。ティムと織絵は今をさかのぼること10数年前、スイスのバーゼルで出会っていた…。 物語の現在である2000年の倉敷、織絵とティムが密命を帯びて出会った1983年のバーゼル、そしてアンリ・ルソーの晩年にあたる1906年のパリ。3つの時代と場所を往来しながら アンリ・ルソーの隠れた傑作を巡って織絵とティムの不思議な縁(えにし)が回顧されていくという美術ミステリーです。 大学の美術史科で学び、美術キュレーターとして働いていた著者だけに、美術への造詣が行間ににじみ出ており、幻影的な物語を紡ぎだしていく流麗な文体には魅了されます。 ルソーと同時代を生きたヤドヴィガが「永遠を生きる決心をする」場面は大変美しいものです。間違いなく、アンリ・ルソーの作品を次回目にする機会があれば、この小説が描いたルソーとヤドヴィガの物語に思いを馳せることでしょう。 ただし、世紀の発見の可能性をめぐって織絵とティムが美術講評対決をおこなう後段が、少々迫力に欠けるように感じたのが残念です。二人の講評が思いのほか堅固で説得力のあるものには思えなかったのです。 なお、幻の絵画の発見をめぐるミステリーとしてお勧めしておきたい作品に、マイケル フレイン『墜落のある風景』(創元推理文庫)があります。 *残念ながら著者は「すべからく」という言葉の使い方が誤っています。 「この手の古書はすべからくそういうスタイルなのだが」(93頁) 「ご婦人というのは、すべからくこういうものが好きかなと思っていたのでね」(101頁) 「すべからく」は「須らく」であって「全からく」ではありません。つまり「皆すべて」という意味ではないのです。作者はその点を理解していないようです。 | ||||
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| アンリ・ルソーの最後の作品「夢」それと対となる「夢をみた」を巡る物語。ルソーについて、それほど知識のないままに、この物語を読んだのですが...フランス画家のルソーのなんたる不思議さ。ルソーは遅咲きの画家で、40歳を過ぎてから絵を描き始め生前には全く評価されず没した人です。彼の生きた時代は、写実主義から抽象画、シュールレアリズムへと変化する時代、ピカソ、ドガ、トゥールーズ・ローレック、コクトー、アポリネール、ローランサン等との交流があり、どちらかというと彼らに影響を与える先駆者となった人です。とは言えこのアンリ・ルソーは、未だ絵画の評価も定まっていない画家と言われています。(もちろんファンも多いですが...) 美術館の運営、キュレーターという仕事、美術館の監視員、新聞社の展覧会、絵画コレクター、そして画家。絵画を巡る世の中の仕組みを垣間見ることができ、この分野の素人でも十分に楽しめ勉強になる。そしてミステリー仕立てでワクワク楽しめるそんな作品です。 ルソーの幻の作品「夢をみた」の真贋を巡ってMoMAのアシスタント・キュレーター、ティム・ブラウンと日本人研究者、早川織江の2人が競う訳だが、芸術作品、絵画を巡ってこんな、ミステリーが作れるのかと感心してしまう。驚きの仕掛けがいっぱいあって大変楽しめました。この物語を読んで、途轍もなくルソーの絵にとても興味が出てきました。ルソーを愛してやまない登場人物達とルソーの人柄...さらに著者もルソーがとても好きなんだろうなぁ!それが読者にも影響を及ぼしてルソーに引き込む!それがこの本の凄さだと思う。この作品に必須で重要な超有名人物パブロ・ピカソが登場するのですが、そのピカソとルソーが織成す仕掛けが面白い。そして最後は感動できます。 読む価値ありです。 | ||||
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| 楽しかった、映画を見ているような気持ちの良さ。読んだ後、とても気持ちが幸せな気分になりました。私がもっと美術史を理解していたら、モットモット面白かったのでしょうか?絵画を友と呼び、ただ見つめる幸せを持つ主人公たちが羨ましかった。そんな絵画に出会いたい、気持ちを揺さぶられました。絵画でなくても映画でも、あぁ出来たら本がいい…いつでも戻ってこれる原点みたいな本に出会いたい。 さてさて、お話はアンリ・ルソーの絵画の真贋を頼まれた。研究者?二人の話?専門的な知識の展開もあり、絵画取引の裏話がミステリーの様に繋がり、研究者二人の間にはほのかなロマンス?あまりせっつかれた感じも無く、ゆったりと時間が流れていような、それでいてドンドン読み進んでいく不思議な感覚でした。読んで正解。 | ||||
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| アンリ・ルソーの絵画をめぐったミステリー小説で、絵ばかりでなく、それに絡む人物たちの思惑も重なり、幾重にも謎に包まれたストーリーです。作家の確かな美術の知識に、綿密に考えられた構成で、テンポも良く、ぐいぐい小説にひきこまれ、もともと絵画に関心があったこともあり、かなり面白く読めました。 新しい事実が次々にでてくるので、読み進めるほど続きが気になって仕方がなく、謎の絵に驚愕な話がひそんでいたり、登場人物たちに知られざる顔があったり、さらに小説で鍵ともなる古書が謎をいっそう深め、最後の最後まで、謎解きを楽しめました。また、アンリ・ルソーに更なる興味を抱かせてくれました。 ただ欲を言えば、表紙の「夢」の絵ばかりでなく、小説内に出てくる他の絵も、本の巻頭にでも写真を掲載してくれれば、よりイメージが湧きやすくなり良かったような気がします。 読後に強い印象を残す本で、小説内に、この作品(絵)には情熱がある、という言葉がでてきますが、作家の経歴からしても、この小説には情熱がある、作家の渾身の力をこめた作品のような気がしました。山本周五郎賞の受賞作というばかりでなく、読み応えのある本で、お薦めです。 | ||||
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| 本の装丁と某フリーペーパーの告知に惹かれ手に取ってみました。 名前だけしか知ることのなかったルソーやピカソのバックボーンを知り心が熱くなり、名画を取り巻く人々の心理戦にページを捲る手が止まりませんでした。 ラストシーンは思わず涙が出たほど!! 美術の専門家の作者ならではの作品の緻密さもさることながら ルソーとルソーを愛する人達の熱い気持ちが心を揺さぶる珠玉の作品でした。 いい本に巡り合えて、フリーペーパーに感謝です!! | ||||
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| 絵画でも音楽でも小説でも詩でも哲学でも、圧倒的なものに独り対峙するとき、 人は没頭して「あっちの世界」にいってしまう。多感な十代には、小生も 古今東西に巨人の友達がたくさんいた(ルソーは残念ながら友達ではなかったが)。 大人になるにつれ、目の前の日常をやり過ごすことに汲々とし、人はそうした 鳥肌立つような、忘我の境地を忘れてしまう。 この本は、そのような圧倒的な美、圧倒的な生、圧倒的な情熱への強い憧れを 思い出させてくれる。その意味では、文句なく楽しめる作品だった。 しかしながら、本書自体が「鳥肌もの」とはならなかった。 著者自身の熱い想いがストレートに伝わってくる「古書・夢を見た」部分は 非常によかった。読んでいて、文句なく「あっちの世界」に行ってしまった! 20世紀初頭のパリの空気を、若き芸術家たちの集う長屋のさんざめきを 直に肌身に感じた。革の表紙を閉じないでくれ……!と思った。 だが、全体の構成、細部のスケッチ、人物の描写、 なかんずく早川織絵とその母・娘の描写にいたっては、お粗末過ぎた。 早川織絵という女性がそもそもこの物語に必要だったのかどうか――、 読後に考えれば考えるほど、疑問符が浮かぶ。彼女の言動には一貫性がなく、 40何年間か、しかも決して平たんではない人生を生きてきた女性とは 思えない。いきいきした女、生きている人間に感じられなかった。 ほかのレビューにもあったが、ひと言でいって、魅力がなかった。 「古書」のアイデアを最大限に生かすのであれば、岡山での妙にリアルな日常から物語を はじめなくても、もっと壮大で圧倒的な、鳥肌もののストーリーを展開できたのでは ないかと思う。その点がとても残念。 でも、間違いなく読者を引き込む力のある作品である。 最近、夢中になれる本に出会っていないという向きにはオススメしたい。 | ||||
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| ニューヨーク近代美術館に勤務経験のある著者の本領発揮といった作品ですね。 アンリ・ルソーへの熱い想いも伝わってきました。 真贋の判定にかかわる物語もルソーの生きた時代が垣間見られて味わい深く、 書庫より『ルソーの夢 (イメージの森のなかへ)』(二玄社)を 取り出してきて傍らに置き、美術の世界も堪能しました。。 正直言って、ミステリーとしては詰めが甘いところや、 主人公の人生が、ある事件を境にしてあまりにもかけ離れるなど、 構成としてはどうかなって思うところもありましたが、 それでも、ルソーの「夢」をあれだけ大胆に提示した意欲作で、 こういった欠点を吹き飛ばすだけの魅力があります♪ ルソーが大好きなあなた、ダヴィンチ・コードにはまったあなたには特にお薦めですよ♪ | ||||
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| 久しぶりに出会った、一気に読むのがもったいない作品でした。 本格的なアートミステリーで、ある作品を軸に世界中のプロフェッショナルが鎬を削る様にドキドキハラハラ。 漫画の『ギャラリーフェイク』に似た雰囲気なので、そういう意味では新鮮さはないのですが、主人公たちの情熱にグイグイ引き込まれました。 | ||||
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| ルソー 絵画のお話。 絵画なんて、どこがよいのかしら。と思う方にこそ、読んでもらいたい。 絵画って、そのうんちく(画家の人生。時代背景、エピソードetc)があって、 楽しめるところがあるとおもいます。 ピカソとルソー関係の描写は、興味がわきました。 登場する絵なんかは、ネットで画像検索して、眺めてたりしてました。 なかなか絵画なんて、記憶に残らないですけど、 このようなストーリーで読むと、新しい発見もあるものです。 ミステリ、サスペンス的なところは、期待し過ぎないほうがよいのですが、 (僕は予想どおりだったので、ちょっと残念) 逆に、無理なストーリや伏線ではないのも好感があり、読後感は気持ちいいです。 サラッと読めて、情熱、恋愛、絵画があり、描写が女性的なので、女性にオススメ。 | ||||
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| 絵画作品を愛する私にとって、小さなエピソードがさりげなくちりばめられていたりして、なかなか質の高い小説だと思いました。なにより、アンリ・ルソーの絵画制作に対する情熱が描かれていて、これはもちろん史実とは異なった作者の創作でもあろうが、人生を豊かに生きる力を再確認できたりして、単なる推理小説でなく、ちょっとした人生書だとも思いました。ルソーって好きではなかったのですが、もっとじっくり作品に向かいたいと思いました。 | ||||
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| 絵の鑑定をさせる謎のコレクター、この人がいったい誰なんだろう?と考えながら読んでください。私が読み手として未熟だったんでしょうか、読んでる途中全くノーマークでした。 最初、女性の生い立ちがなかなか詳しく述べられててそこからどう展開していくのかな、とかなり興味をそそられましたけど、・・それから男性の方に視点がシフトしていってしまいました。それ以降の展開じゃなくて、それ以前の話に戻る展開だったんですね。期待と逆でした。 テレビで有名タレントが付箋をいっぱい貼り付けたこの本を片手に推薦して「美術館に行きたくなる」って言ってたので、ものすごく期待しましたけど、そうでもなかった。 | ||||
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| 美術(アート)の世界を題材にした異色作。ニューヨークにあるMoMA(Museum of Modern Art)には、アンリ・ルソーが画いた「夢」が所蔵されている。不思議な風、熟れた果実の香り、獣たちの遠吠え、名も知れぬ花々の花弁を揺らすミツバチの羽音。そして、赤いビロードの長椅子に横たわる裸身のヤドヴィガ。彼女は左手を突出し何かを指差しているかのよう。スイスのバーゼルにあるバイラー・コレクションにはこれと似た構図の作品(「夢をみた」)があるという。 そのオーナーである長老のバイラーは、その真贋を見極めてもらうために、MoMAのアシスタント・キュレーター、ティム・ブラウンとソルボンヌ大学でルソー研究で博士学位を26歳の若さで取得したオリエ・ハヤカワ(早川織絵)に鑑定を依頼した。それはただの鑑定依頼ではなかった。アンリ・ルソーについて書かれた古書(7章から成る物語)を一週間、二人がかわるがわるに読み込み、7日目に講評し、説得的な解釈を述べたほうに、取り扱い権利(ハンドリング・ライト)を与えるという。この権利を獲得すれば、コレクションにあるルソーの「夢をみた」をいかように処分してもいいと言うのだ。ふたりは互いに牽制しあいながら、この「競技」にはまっていく。 アンリ・ルソーはしがない税関吏であったが、50歳を過ぎる頃から奇妙な画を書き始めた。日曜画家と呼ばれ、その構図は嘲笑の的となった。くわえて、この画家のことはあまりわかっていない。何百点もあるはずの画は散逸している。古書にはその画家のこと、「夢をみた」の下絵にピカソの「青の時代」の大作があるかもしれないという秘密が書かれていた。確かに笑われ者だったルソーを評価したのはピカソであり、交友関係もあり、ルソーの画に出会わなければあのピカソはいなかったといわれている。ティムの背後にはMOMAが、そして織絵の背後にはテート・ギャラリーがひかえ、その絵をねらっている。古書を読み解くうちに、ルソーの人となり、また彼が恋い焦がれたヤドヴィガ、そしてその夫のことがわかり、またピカソ、アポリネール、ローランサンとの関係もあぶりださていく。このあと、ますます面白くなって一気に結末へ。 最後の場面はちょっとウルウルくる。この小説を読んで、知識としてルソーのこと、彼の画がシュールレアリズムの登場に果たした役割、キュレーターの仕事の内容なども理解できた。著者の才能に乾杯。 | ||||
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| ニューヨークにあるMoMA(Museum of Modern Art)には、アンリ・ルソーが画いた「夢」が所蔵されている。不思議な風、熟れた果実の香り、獣たちの遠吠え、名も知れぬ花々の花弁を揺らすミツバチの羽音。そして、赤いビロードの長椅子に横たわる裸身のヤドヴィガ。彼女は左手を突出し何かを指差しているかのよう。スイスのバーゼルにあるバイラー・コレクションにはこれと似た構図の作品(「夢をみた」)があるという。 そのオーナーである長老のバイラーは、その真贋を見極めてもらうために、MoMAのアシスタント・キュレーター、ティム・ブラウンとソルボンヌ大学でルソー研究で博士学位を26歳の若さで取得したオリエ・ハヤカワ(早川織絵)に鑑定を依頼した。それはただの鑑定依頼ではなかった。アンリ・ルソーについて書かれた古書(7章から成る物語)を一週間、二人がかわるがわるに読み込み、7日目に講評し、説得的な解釈を述べたほうに、取り扱い権利(ハンドリング・ライト)を与えるという。この権利を獲得すれば、コレクションにあるルソーの「夢をみた」をいかように処分してもいいと言うのだ。ふたりは互いに牽制しあいながら、この「競技」にはまっていく。 アンリ・ルソーはしがない税関吏であったが、50歳を過ぎる頃から奇妙な画を書き始めた。日曜画家と呼ばれ、その構図は嘲笑の的となった。くわえて、この画家のことはあまりわかっていない。何百点もあるはずの画は散逸している。古書にはその画家のこと、「夢をみた」の下絵にピカソの絵があるのではないかという秘密が書かれていた。確かに笑われ者だったルソーを評価したのはピカソであり、交友関係もあり、ルソーの画に出会わなければあのピカソはいなかったといわれている。ティムの背後にはMoMAが、そして織絵の背後にはテート・ギャラリーがひかえ、その絵をねらっている。 古書を読み解くうちに、ルソーの人となり、また彼が恋い焦がれたヤドヴィガ、そしてその夫のことがわかり、またピカソ、アポリネール、ローランサンとの関係もあぶりださていく。いよいよ、講評の当日。当初は冷たい関係にあったティムと織絵。ふたりは「競技」のなかで次第に相手を尊敬し、心惹かれていく。講評の場で、ティムは意外な結論を出す。驚く織絵。そして、分った意外な事実。 古書の物語の執筆者も明らかになる。これにもビックリ。ハンドリング・ライトは、予想外にもバイラーの孫娘に。「競技」は終わり、ティムはニューヨークに戻り、織絵とも長の別れに。この小説、最初は大原美術館の監視員(セキュリティ・スタッフ)であった早川織絵の家族と仕事関係者との日常の話からまり、大原美術館がMoMA の「夢」(アンリ・ルソー)を借り出す計画がきっかけとなり、織枝の訳ありの人生が見えてくる仕掛けになっている。 そして、終章ではMoMAとの交渉に立ち会う大原美術館の代表者のひとりとして織枝がニューヨークにとび、彼女は17年ぶりでティムと再会する。最後の場面はちょっとウルウルくる。この小説を読んで、知識としてルソーのこと、彼の画がとシュールレアリズムの登場に果たした役割、キュレーターの仕事の内容なども理解できた。著者の才能に乾杯。 | ||||
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| 話題作だからと手に取り読んでみたら、一気に作品に引き込まれてしまいました。 作中の中心人物たちが絵を愛してやまない姿がこの作品を清く美しくしているのだと思います。 久しぶりに読了後すぐに「もう一度読みたい!」と思いました。 ミステリーのジャンルに分けられているこの作品は、冒険(アドベンチャー)、ラブストーリー、あるいは美術史、どのコーナーに置かれていても良いと思います。 現在は、作中に出てくる絵画をネットで検索して見れる時代です。 気になる作品をパソコンの画面に映して読み進めると、また違った味わいがあります。 表紙の絵「夢」を描いたルソーだけでなく、きっと別の画家にもいろんな物語があって、美術館に展示されている様々な作品にはいろんな気持ちや想い、さらには人生そのものがこめられているんだろうなと、今までとはまったく違った視点で絵画を見れるようになったと思います。 週末に美術館に行ってみよう!っていう気にさせてくれます。 | ||||
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