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カラマ-ゾフの兄弟



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カラマ-ゾフの兄弟の評価: 4.26/5点 レビュー 681件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.26pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全681件 621~640 32/35ページ
No.61:
(5pt)

ゾシマの教え

3度めのトライでようやく2巻読了。読書ガイドがとてもすばらしく、「カラマーゾフ」の世界がくっきりと目に浮かんできます。何といってもゾシマ長老の部分に感動しました。なかでも「謎の訪問客」が印象的でした。これまで、ここを読むのがいやで、挫折してきたのが、逆にここが何かとても崇高な感じがするのは、ゾシマ長老の言葉遣いの優しさでしょうか。すらすら読めるというより、ふんわかした感じがとても心地よい。ドストエフスキーのイメージがすっかり変わりました。
カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)より
4334751172
No.60:
(5pt)

おそらく、文学史上最高の達成。

20世紀最高の哲学者の1人とされるウィトゲンシュタインが、「最低50回は読んだ」、
「全てを暗記している」と豪語するほど読む耽った小説です。

心理学的には、フロイトが「ドストエフスキイと父親殺し」う評論において、実際の人物
であるかの如く研究の対象としています。フロイトは小説としても絶賛しています。
(心理学者のフロイトがここまで褒め称えるのは、異例です)

稀代の天才哲学者ニーチェも賞賛しています。おそらく彼は多大な影響を受けたものと思われ
ます。(主として「超人思想」など)

偉大な哲学者や心理学者にここまで愛されてきた小説は、おそらく他にはないでしょう。
小説を芸術として捉えるのなら、史上最高の小説は「アンナカレーニナ」に落ち着くでしょう
が、哲学的な要素や心理学的な要素に富んでる「カラマーゾフの兄弟」に、自分はそれ以上の
達成を感じます。

エンターテイメントとしては、「地下室の手記」の弟二部や、「悪霊」の「賢しき蛇」以降、
「罪と罰」の殺人以降などの面白さには及ばないかもしれません。
それでも、「反逆」〜「大審問官」の2章は非常に面白いので、まずはそこまで読んでほしい
です。
カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)より
4102010106
No.59:
(5pt)

深い!深すぎる、アンタは鬼だよ・・・

P259〜のドミートリイの熱い語りが良い感じだと思います。詩情あふれるというんでしょうか?もちろん深く考えさせられる文章もバリバリ出てきます。三島由紀夫の「仮面の告白」の冒頭の抜粋文も出てきますよ。

ドストエフスキーはデビュー作を、「これで失敗したらネワ河に飛び込む」覚悟で書いたそうですが、さすが、それくらいの狂おしいほどの念を持った芸術家だからこそ、数々のモンスター的な作品を残せたんだろうな・・・と思います。
カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)より
4102010106
No.58:
(4pt)

翻訳者と作家本人の主張

まだ全4巻のうち2巻め、ですので「確かなことは何も言えない」(作中人物の台詞より)ことを前提にしてのレビューです。

「いま、息をしている言葉で、もう一度古典を」これが光文社の同シリーズに掲げられたコピーです。
事実この「カラマーゾフの兄弟」の中で、登場人物たちは「現代風」の言葉遣いで会話、独白していて、地の文でも平仮名と外来語の割合が高いようです。
これを馴染みよいとするかどうかは、読者それぞれの感覚しだいですが、今までの訳でも十分口語体の勢いを活かしたものがあったと思います。
それにしても「亀山カラ兄弟」たちは若々しいです、…少々無理を感じるほどに…。
逆に言えば、もう少し時期が過ぎると古臭さにつながるかもしれません。

また、本文での注釈を減らし、巻末で「読書ガイド」が設けてありますが、読者にとって親切なのか不親切なのか、難しいところです。
30ページの長さで当時の教育制度、推察される貨幣価値についても丁寧に記されてあり、作品の背景を知るのに役立ちます。
反面、あまり強調しないほうが良いのでは?というところまで書いてあるので、初読の場合、亀山氏の主張に引きずられる可能性があります。
何度も読んだり、同作家の他作品にいくつもふれているうちに、「そこ」に思い当たったり、それから派生する事柄の解釈も、読書の楽しみの一つだと思うのです。

否定的に聞こえる感想ばかりを並べてしまいましたが、読み返したくなる部分もとても多いです。
かなり大胆な訳もあれば、慎重で無難な言葉をおいた箇所もあります。何通りかの邦訳を手に出来ることは、面白いものです。
この作品自体が大きなエネルギーを持っているので、おのずと多方面へ興味が広がり、読者それぞれの「カラマーゾフ」が生まれると思います。
続刊が楽しみです。

カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)より
4334751172
No.57:
(5pt)

この小説は呪いでできています。

ジャンル分けするなら、『カラマーゾフの兄弟』は推理小説になります。
親子、兄弟、病気、師弟、友人、恋人、商売相手・・・もはや呪いというべき強固なコンプレックスが網の目のように複雑にからみ合うなかで起こる事件。そのまっただ中で苦悩する主人公の姿は、誰にとっても他人事ではいられません。アレクセイは互いに憎しみあう家族の中で、どういう答えを出せるのか。小手先のトリックではなくこんがらがった人間の心理を解きほぐす、人生の謎解きです。
難解なはずなのに割とスラスラ読めるのは、登場人物が「いつかの自分」と重なって、どうしても先が気になってしまうからだと思います。最初読んだときは、あまりにも自分の家族とそっくりで(情熱的な長男、理知的な次男、宗教的な三男)、ドストエフスキーの人間観察の鋭さに舌を巻きました。
蛇足ながら、この作品に限らずロシア文学を読むときは人物の軽いメモをつくっておくことをお勧めします。同じ人物が本名、敬称、愛称など、何通りもの呼ばれ方をしますので。
カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)より
4102010106
No.56:
(5pt)

もうひとつのヨブ記

読む度に一層深い感情と経験に誘われる、稀有の書。実在の社会的事件を題材にした「父親殺し」を巡る一連の筋の流れは、当時のロシア社会の問題性を浮き彫りにしてはいるものの、しかし物語の外面にすぎない。一貫してこの作品の底に流れているライト・モチーフは、「神は存在するのか」というテーマ、この世界は、生は、究極的には肯定しうるのか、それとも否定すべきものなのか、という苦悩だ。ドストエフスキーに親しんでいる読者なら直観することだが、イワンこそドストエフスキーの分身であり、イワンの苦悩はドストエフスキーの苦悩である。『大審問官』や『悪魔。イワンの悪夢』が作中最も力強く我々に迫るのも、そのためである。ドストエフスキーの内でそうだったように、イワンの内でも神と悪魔が激闘を繰り広げている。それに対し、純粋なアリョーシャ、彼を導くゾシマ長老は、ドストエフスキーが信じたかった、信じようとした、理想そのものである。上巻の前半で、ゾシマが苦悩の解決の可能性について訊ねるイワンに対して答えた言葉は、注目すべきものである。

「肯定的なほうに解決されぬとしたら、否定的なほうにも決して解決されませぬ。あなたの心のこういう特質はご自分でも承知しておられるはずです。そして、そこにこそあなたの心の苦しみのすべてがあるのです。・・・」

この作品には、苦悩に対する明確な解答は与えられていない。物語は、死者の復活を信じるアリョーシャの信仰告白で幕を閉じるが(一方イワンは発狂する)、ドストエフスキーの苦悩がそれで決着したわけではないであろう。しかし、それでよいのである。世界への苦悩、信仰と不信の相克、自我を他者に捧げることのできぬ罪の意識、永遠調和の瞬間(キリスト的愛の瞬間的実現・すなわち神の国の到来)への渇望・・・・・・どこまでも真剣な、ドストエフスキーの思考の過程。これらが読む者の心を慰撫し、浄化し、強めるのである。
カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)より
4102010122
No.55:
(5pt)

何か問題でも・・・・?

どうしてもロシア文学の作品は名前が覚えづらく
なかなか読む気になりづらいですが
この作品は、しおりに人物紹介も付いていて
読みやすかったです。
続きが早く読みたくて、新潮文庫の方のも買ってしまいました。
カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)より
4334751067
No.54:
(5pt)

犯人は誰か

必ず読みましょう。
三ヶ月かけて、一回目、読みました(カラマーゾフ初心者)。1500ページ以上、長いセリフ、登場人物の多さ(関係の分かり難さ)でよく分かってません。ただ凄い小説であるのはなんとなくわかりました。中巻の後半からのめり込みました。一体どうなるのかと。カラマーゾフ兄弟の父親殺人事件、として読むのがまずは入りやすいか。神について、、、は理解できませんでした。

召使スメルジャコフが、父殺しをイワンに告白する辺りなどが読み所です。描写が細かく、イワンが犯人であるかのように感じ(錯覚し)出す辺り、凄いと思います。

カラマーゾフ兄弟の父殺害の犯人はスメルジャコフらしいです(間違っていたらスミマセン)が、自分にはやっぱりドミートリィではないかとの疑問が残りました。

いずれにしてもこんな小説を創作したら、頭がおかしくなってしまいそう、そう思います。
カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)より
4102010122
No.53:
(3pt)

赤面

あー、やっと読み終えた。原稿料稼ぎとしか思えないようなくどくど文学。
八方美人の神さんが、あっちでぺちゃくちゃ、こっちでぺちゃくちゃ、
10分もあれば着くような目的地に、1日かかっても着かないようなもの。
評論家どもにだまされた。評論家好みの作品だ。
始めに解説本か、要約本を読むべきだった。

神は人によって作られた、やっと面白くなってきたぞと思ったら、
それでおしまい、がっかり。
3兄弟の愛憎、葛藤を期待したが、期待は大外れとなった。
そもそも3兄弟が登場する必然性が希薄だ。
思想書としても、探偵物としても、二流。
カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)より
4102010122
No.52:
(1pt)

アリョーシャの恋

ゾシマ長老の長い遺文を書いた後、俗世界に入ったアリョーシャ。二枚目の青年である、元僧侶の彼は、女性への恋愛に浸っていくというタブーを犯す。中編の見所だろう。ここから、小説の中で生き生きと行動する。
 ミーチャのアリョーシャへの接吻は、兄弟愛によるものだろう。純粋な青年である彼は、父殺しの嫌疑にかけられた兄を信用するのだった。父親を殴るドミートリイの気性の荒さ、三千ルーブルを女性から非公式に借りる(パトロン)という父譲りの奔放さ。これは、イワンも含めて三人がまるでひとつの息子であるようだ(ドストエフスキーはアリョーシャを主人公にしたいようだ)。
 「白痴」に共通する彼の性格は純粋さを強調している。物欲にまみれた精神状態ではあのような綺麗なゾシマ長老の遺文は書けないだろう。
ミーチャは獄中で弟の人生観に惹かれた。禁欲は、人間にとって必要なものなのだろうか。
カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)より
4102010122
No.51:
(5pt)

カラマーゾフ万歳!

なぜドスト氏はここまですごい文章を書くことが出来るのだろう。
なかでもゾシマ長老に関しての文章は心に響くものがある。
中巻のロシアの修道僧の、「神秘的な客」には感動した。
「楽園」という言葉が心に響き、世界を見る目が変りました。

裁判の場面もすばらしい。
検事の弁論を読んでいるときはあたかもドミイトリーが犯人であるかのように錯覚したが、
弁護士の弁論を読むと「たしかにそうだ」と思えてきて、逆にドミイトリーは
犯人でないと確信するに至った。
この構想、そして文章の巧妙さ!!

最後はアリョーシャの言明に感動し、「カラマーゾフ万歳!」で爽快な結末を迎えることが出来た。
未完作品といえど、感動的な結末である。

カラマーゾフ万歳!!
カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)より
4102010122
No.50:
(5pt)

読みやすい!!!

米川正夫、池田健太郎、原卓也、小沼文彦とそれぞれに楽しんで読んできた『カラマーゾフ』の邦訳であるが、確かにこれは読みやすい!
以降も早く刊行を期待する。何回読んでもこれほど面白い小説はないこともあって、亀山訳第1巻読了のあと原卓也訳で読み継いでしまった。亀山訳に比べやや生硬な印象もあったが、「大審問官」に差し掛かるともうそんなことはどうでもよい。圧倒的、冠絶の文業である。
亀山訳「スタブローギンの告白」もその解説も含めよかっただけに、2巻以降の「大審問官」が待ち遠しい。価格もうれしい。町の書店さんは是非常備されたし。ソローキンの翻訳といい、スターリン研究といい、最近のショスタコヴィッチの連載といい、この著者の大車輪は凄い!!
カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)より
4334751067
No.49:
(5pt)

ドスト氏の作品

最近読破しました。ドスト氏の作品はどれもそうですが、何度も読み返さなければ何を言わんとしているかを捉えることは難しいと思います。しかし、「面白さ」という小説の特権も十分に生かされているため、「再読」という行為が何の抵抗もなく行なえると思います。
『カラマーゾフの兄弟』の場合、解説を読むとドスト氏の晩年の思想の集大成的内容で、掲げているテーマがテーマ(神とは?信仰とは?人間とは?)なだけに、何度も何度も読み返さなければその考えを自分なり消化することはできないと思います。しかし、一般的な思想書と違い「もう一度読んでみよう」という気を起こさせてくれるので、ものわかりの悪い僕でも「継続は力なり」の言葉通り、繰り返し読んでいればいつの間にか自分なりの解釈の仕方というものが出来上がってくるのではないかと思っています。とにかく、思想書としては「再読」が苦にならない、小説としては「引き込まれる」ほどの面白さを持つという、2つの稀有の要素を持ち合わせた作品ではないかと思いました。
カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)より
4102010106
No.48:
(3pt)

家族という問題、聖と俗

罪や良心というテーマを書き上げたドストエフスキーの晩年の傑作。
莫大な財産を持っている父ヒョードル、気性の激しいドミートリィ、冷静なイワン、純粋な青年アリョーシャ(主人公なのかは謎)の喜悲劇である。
 出家したアリョーシャは、父や兄に可愛がられていた。家庭の問題に巻き込まれたくなかった彼は、兄たちと議論をする。財産に無縁な無欲の思想である宗教に、彼は人間自身の束縛からの解放を見出したのだった。上巻と中巻しか満足に読んでないが、四人の男たちの思想の違いは
封建制ロシアの当時に通じるものがあるのだ。
 目標を持って生きるということは何か、例えばイデア論はそれを教えてくれる。アリョーシャの出家に涙を流す強欲な父は、『罪と罰』で完成された良心の概念を知っていたのだ。だから結局ニヒリズムでもあるアリョーシャの意見に、主要登場人物や脇役までが聞き入ってしまうのだ。

カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)より
4102010106
No.47:
(5pt)

人生のつっかえ棒

一冊だけ小説を選べと言われれば、おそらく多くの人が『カラマーゾフの兄弟』を選ぶだろうし、私自身もこれを選ぶ。故黒澤明が「ドストエフスキーは苦しんでいる人と一緒に苦しんでしまう、神のような資質を持っている」という趣旨のことを語っていた。また、「ドストエフスキーは人生のつっかえ棒になることを書いてくれている」とも。これはこの作家について語られた最良の言葉だし、本書を読めばそれがわかるだろう。人生に「失敗」などない、ということも教えられた。
初心者には『地下室の手記』もいいだろうが、若いうちに本書に挑戦してほしい。恋愛、哲学、宗教などあらゆる側面で指針を与えてくれる本だ。特に第一巻の「大審問官」などはすばらしい。難しいことを考えずに、推理小説として手にとってもいいだろう。
ただ、最新の新潮文庫版は活字を大きくしてかえって読みにくくしてしまったのが残念だ。古本屋で前の版を探した方がいいかもしれない。
ちなみに、(未完だと言われる)この小説の続編は、この本を読む一人一人の人生そのものにある、と言っておきたい。
カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)より
4102010106
No.46:
(5pt)

最高の小説

最高の小説。この作品ゆえに、私はドストエフスキーを褒め称える。
二十世紀の評論家ローザノフは『大審問官』(上巻所収)の章をこの作品の魂と見做したそうだが、私はもう一つ、この作品の核として、第二部第六編の『ロシアの修道僧』(中巻所収)を挙げたい。『大審問官』には人間性への鋭い洞察が漲っているし、『悪魔。イワンの悪夢』における超人思想はおそらくニーチェに大きな影響を与えたであろう。しかし、ドストエフスキー自身は人間にも、ロシアにも、正教にも絶望していなかった。ドストエフスキーの想いはゾシマ長老の昔語りに大いに込められている。

物語の主筋である父親殺しの事件とその裁判が描かれていく中で、当時のロシア社会の抱える問題が読者の前に浮き彫りになっていくが、この作品はそれを遙に超えた普遍性を内に有している。人は生きていく中で、悲しみと苦しみに、罪の汚れに、どう向きあっていけばよいのか。ドストエフスキーはそう問いかける。

本来、この作品は二部構成で、第二部に当たる小説、作者をして「重要な小説は二番目のほう」と言わしめている部分は、書かれておらず、作品は未完に終わっている。第一部でこれほどの完成度を示している作品の続きが読めないのは、真に残念なことである。第一部においても、まだ役割を果たしきっていない人物はいるのだ。フェラポント神父、ラキーチン、リーザ、そしておそらくはイワン、また主人公であるアレクセイさえも…。

この作品を読むことで、ドストエフスキーの各作品相互の繋がりも、より明確になるであろう。ドストエフスキーが初めての方には、まずこれを読むことをおすすめする。
カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)より
4102010106
No.45:
(5pt)

カラマーゾフ的な近親憎悪


読み終わりました。私にとっては非常に良書でした。

有名な上巻末の「大審問官」の章よりも、私個人的にはこの中巻の中の、ゾシマ長老の手記からアリョーシャが編纂した章が好きでした。ただ、これは非常にキリスト教の要素が強い章なので、聖書に関する知識や、キリスト教理など、多少の予備知識がないと、理解は難しいかもしれません。どのように好きかと問われると、その説明は難しいのですが。

ただ、この中巻では、自分の心に安心や休息を与えられる反面、吐き気を催すような人間の弱さ、醜さ、愚かさ等を感じずにはいれませんでした。読み終わるまでに、かなりの気力と体力が必要でした。なぜならそれは、私の内側にもこれらカラマーゾフ的な人間の醜さが蔓延っているからに他なりません。

この書の中ではアリョーシャの存在が、全ての登場人物の救いになっているように、読者である私にとっても、救いでした。

カラマーゾフの兄弟〈中〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟〈中〉 (新潮文庫)より
4102010114
No.44:
(5pt)

あまり身構えず、自分なりの感じ方で。

確かに長い。が、ぐいぐい引き込まれる。生きるとは?憎しみとは?信仰とは?幸福とは? 考えずにはいられない。人間愛に満ちた超大作である。(私を含め)宗教的な意味が理解できなくても十分に楽しめる。法廷での最後の弁論は圧巻。
物語は、カラマーゾフ家の三兄弟(軽薄な放蕩息子、長男ドミートリイ、退廃的な世界観を持つ次男イワン、天使のような三男アレクセイ)のもとで、「起こるべくして起こる事件」がミステリーふうに進行する。
三者に代弁される葛藤は、誰もが持つさまざまな心の側面であろう。とりわけ、その真面目さと純粋さゆえに崩壊してゆくイワンの姿は胸を打つ。
読後、何かが…小さいけれど暖かなものが、ぽっと灯る。人間もまんざら捨てたものじゃないかも…というような。
カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)より
4102010106
No.43:
(5pt)

世界最高傑作序章

この小説のレビューを何度も書こうと思い、そのつど諦めてきた。この本に書かれていることは容易に理解することはできないし、自分の解釈が正しいという自信もない。だがあえてレビューに挑戦しようと思う。結局、自分はこの小説が最高だと思っているのだし、大好きなのだから。
 あらすじを書くと以下のようになる
 父親フョードルとその三人の息子たちドミートリイ、イワン、アレクセイを中心に十九世紀ロシア社会に生きる人間の愛憎渦巻く地獄絵図を描きながら「家族とは何か」を問いつつ人間愛を壮大に描いた作品。 
フョードル、ドミートリイ、イワン、各々が様々な思惑を懐き二人の女性を巡って互いに争いあう。それを何とか解決しようとする純真な三男アレクセイ。それに周囲の人々が絡み合い、ついには長男ドミートリイの「父親殺し」という事件が発生してしまう。
 無実を訴えるドミートリイ、真犯人を突き止めるも犯人スメルジャコフの脅迫に合い、中々それを言い出せないイワン、真相は攫めないものの兄を信じるアレクセイ。
 やっとの思いでイワンが真実を語ることを決めた時にはスメルジャコフは自殺。イワンの精神は崩壊寸前だった。敏腕弁護士の必死の弁護、イワンによる身の破滅と引き換えの証言も空しくドミートリイには有罪判決、シベリアに送られてしまう。
 だがこの作品のよさは話の筋にはない、登場人物達の思想性にあるのだ。それを中巻で論じたいと思う。
カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)より
4102010106
No.42:
(5pt)

超大作の序章

超大作の序章といった感じです。上巻では主要人物のそれぞれの来し方にアプローチしています。
 好色で独善的な父フョードル。
 その父と同じ女性を奪い合い、父を強く恨んでいる長男ドミートリィ。教養はあるが、いささか直情気味。
 次男のイワンは教養が深いが、それを内に秘めている。底の見えない人物。
 そして、三男のアリョーシャ。彼はカラマーゾフにもかかわらず、実直で純粋。二人の兄に気おされ気味ではあるが、兄弟の中では唯一、「自分の道」のようなものを見つけている。
 こんな感じです。物語は始まったばかりです。これからどうなるのか分かりませんが、超大作の臭いが強いです。
カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)より
4102010106

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