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わたしを離さないで



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【この小説が収録されている参考書籍】
わたしを離さないで
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないでの評価: 4.10/5点 レビュー 707件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.10pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全707件 661~680 34/36ページ
No.47:
(5pt)

抑えた表現の素晴らしさ

読み終わるのが勿体無いような、何時までも浸っていたくなるような、抑圧の効いた、最初から最後までまったく世界観がぶれない文体に脱帽です。この作品を読んでみて、昨今の日本の小説家の表現があまりにも直接的で強いかに気づかされました。淡々と、抑えた表現の中に誠実に書き綴られていく人間関係の厄介さ、成長していくことの辛さ、そして、抗えない運命の残酷さ。小説の王道をいくテーマと、現代(もしくは近未来)が抱えるテーマが見事に共存した傑作です。久しぶりに小説らしい小説に出会えました。そして、柴田元幸氏氏の解説がまた、短いながらも大変素晴らしいです。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.46:
(3pt)

萩尾望都でいいや

丁寧に作り込まれた作品ですので(3ページ目あたりでSFネタがわかってしまうのは別として、というかそれが作品の価値を貶めるわけではないので見逃すこととして)最後まで読み切ることはできますが、既にこの手の世界観は萩尾望都によって描かれてしまっているように思えた私にはあまり魅力がありませんでした。
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4151200517
No.45:
(5pt)

この物語に出会えたことに感謝

よくある小中学校学園物として、物語は始まる。誠実に、丹念に、物語はつむがれる。だが、「提供」という不可思議な(しかしある予感を持たせる)概念が、次第に物語りに影を落とす。やがて、「ポシプル」という言葉が、予感めいた影に実態を与える。そして、とうとう「クローン」という、身もふたもない設定が明らかになる。
 でも、物語は急がない。ヘールシャムの提供者ジュニアたちが、自然に認識していく速度にあわせて、描写されていく。作者の素晴らしい計算。心憎いまでの抑制。イシグロの並々ならぬ力量を感じる。
 ルースは、よくいる女王様タイプのコンパ主役。いじめられっ子だったトミーも、生々しいキャラクター。だから、この物語の世界は、もうすでに主題を語っている。彼らは、腎臓や肝臓や心臓や網膜の単なる集合体ではない。数ページ読んだだけで、それは明らかだ。
 理屈ではない。この世界に理屈を言っても仕方ない。この世界はそこに存在する。私達は、今や苦役を終えて「提供者」となっていくキャシーに、ただ涙を流すだけだ。
 土屋政雄氏の邦訳はすばらしい。そもそも日本語で書かれたのではないかと思うような自然な語り口に仕上がっている。
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4151200517
No.44:
(5pt)

現代科学文明への批判ではなく、生きることに真摯であるかどうかを問いかける小説として読

1990年代末の英国。「介護人」を務める31歳のキャシーは、ヘールシャムで過ごした青春時代を思い返す。特に仲がよかったルースとトミーの二人の友。彼女たち3人をはじめとする子供たちは「提供者」として生きるよう定められていた…。

 「わたしを離さないで」の描写にはけれんみは一切なく、主人公たちは抗うこともなく自らの過酷な運命を静かに受け入れているかに見えます。SF的な設定をもつこの小説を遺伝子工学など医療技術が進んだ現代社会への警鐘と捉えようとする読者もいるかもしれませんが、ならばこそキャシーたちの意外なほどの無抵抗ぶりには得心がいかない思いが募るのではないでしょうか。

 キャシーたちのような「短命族」(と私はあえて呼びますが)と、彼らの犠牲のもとに生きる「長命族」(これもイシグロの言葉ではありません)とが対比された物語の中で私が強く感じるのは、命の優劣はその長短にはない、という至極当然のことです。

 その長短にかかわらず、命はいつかついえるものです。いかに短くとも充実した命を全うすることができるのであれば、その命はいたずらに長い人生より価値がある。だからこそイシグロは抑制した文章で、キャシーやトミーたちに平凡な人生経験---ほろ苦い三角関係や激しく豊かなセックス---を与え、終わりの日に向けて彼らなりに濃密な人生を歩ませようとする、そう私には思えるのです。

 鬱々とした老年の日々を送っているかにみえる「長命族」よりも、彼らのために生きることをアプリオリに決められた「短命族」のキャシーたちにこそ、輝く日々がある。その哀しいまでに美しい人生の果てが、文字通り最後の1ページに込められていて、この場面は幾度読み返しても倦むことがありません。

 SF的設定はあくまで書割にすぎません。この小説の眼目は、私たちが人生を深めようと日々どこまで努力しているか、それを問いただすことにあるのです。


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4151200517
No.43:
(5pt)

主人公の視点の背景を考えさせられる

小説の中盤で明かされる秘密自体は、そんなにショッキングなものではありません。他の人も言ってますが、粗筋や書評を見て「そうかも」と予想していたネタでした(20年以上前にコバルト文庫で読んだ新井素子さんの小説でも、同じネタを扱っていたのを思い出しました)。
 だから、そういうSF的味わいは2次的なものです。(ただ、この世界はカセットテープとかウォークマンとかとても古臭いものに満ちていて、下手すると80年代の英国では、と思わされます)。感じるべきは主人公キャシーの少女らしい瑞々しい感性や、得られたかもしれない大切なものをほんの少しの選択ミスから失ってしまうこと、それはもう取り戻せないと思い知ること、そんな喪失感、はかなさでしょう。非常に繊細な文章で描かれていて、傑作だと思います。
 ただ、実際的な話としては不思議に思います。主人公達は普通に会話し、車の運転をし、そして、外観も街で一般人に埋没できるもののようです。なのに、何故、自分達の運命に抗おうとしないのでしょう。教育のせいだけとは思えない。
 主人公の視点から語られるのでわからないのですが、やはり彼・彼女は知能その他で実は異なっていたのでしょうか。ヘールシャムで力が入れられていたのは詩・美術などの芸術分野です。わたしはエイブル・アートという言葉を思い出しました。この本の翻訳はとても美しい日本語ですが、もしかしたら、使われている熟語などは、英語だと、もっと平易な言葉なのではないでしょうか。
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4151200517
No.42:
(5pt)

人は生きる、それぞれの「自分勝手な解釈」で

SF的な形式をとりながら、人間のエゴイズムについて掘りさげた小説だなあと、私は思いました。『日の名残り』にも共通する、知り合いの思い出話を聞くような文章で、すんなり読み進んでいけますが、数ページでその異常さに気づき、それは章がひとつ進むごとに増していきます。「人間」でありながら人間ではないキャシーHたちと一緒に、彼らを生み出した「人間」の善良さに期待していくと・・。人間の善良さとはいったい何なのか。実は私たちも形を変えた「提供者」ではないのか。読み終わったあとも、読者にいろいろ考えさせる力を持った作品です。実は私も読み終わった夜、心がざわざわして、よく眠れませんでした。カズオ・イシグロの作品のなかでも、最も読みやすく、また、翻訳の土屋政雄さんの日本語が、私はとても好きでした。
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4151200517
No.41:
(5pt)

無慈悲で、残酷な世界

「日の名残り」と同じ作家が書いたとは思えない作品でした。押さえられた、抑制の効いた文体で、完璧なストーリー構成でした。個人的には、ブッカー賞を受賞した「日の名残り」より、こちらの作品の方が良かったと思います。

人格を認めらず、物体としてしか扱われないクローンたちが、その事実を再認識した時、何を考えたのでしょうか。キャスとトミーの別れのシーンは、淡々と書かれているがために、一層胸にくるものがあります。
科学技術が進歩し臓器移植の技術は進んでも、その提供者がいなければ何にもなりません。毎日の新聞でも、その不足ぶりや、トラブルが盛んに報じられます。それを考えると、この物語は、フィクションとばかりは言えない空恐ろしさを持って、迫ってきます。

マダムは言います。「科学が発達して、効率もいい。古い病気に新しい治療法が見つかる。すばらしい。でも、無慈悲で、残酷な世界でもある。そこにこの少女がいた。・・・心の中では消えつつある世界だとわかっているのに、それを抱き締めて、離さないで、離さないでと懇願している。」
この言葉が、この小説のすべてを語っているように思います。
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4151200517
No.40:
(4pt)

心が痛くて腫れ上がってる感じ・・

この本を読んだ夜、一睡もできなかった。トミーが最後にキャッシーに手をふった光景に脳みそが振り回されて心が痛くて腫れ上がってしまった感じだ。人としての尊厳を(だけは)与えられず最後は物を与える「物体」として葬られていく過酷な運命をすみやかに受け入れるために仕組まれた(?)ヘールシャムでの教育。いじめられっこだったトミーを救ったありのままでいいと教えたルーシー先生の言葉。そのトミーが自分の無残な最期を最愛の人に見せたくないためにとった態度、プライドと思いやりは人としてこそのものだし、崇高ささえ感じられる。彼らのような存在は決して作り出してはならない。科学の進歩が生み出す酷さ・・少しでも現実になる可能性があるのなら、それを打ち砕く警鐘となる一作になってほしい、ならなければいけないと思う。思わずのめりこんでしまった秀作である。
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4151200517
No.39:
(3pt)

主人公の静かな息づかいは確かに感じる

読み進めるうち、クローンがどうとか、倫理がどうだとかは
あまり重要じゃない気がし始めた。

この小説ではそういった一見異彩を放つ要素は
実は単なる付録に過ぎないんじゃないかと。

それよりむしろ、主人公の人生経験を
一人称の語りで構築していく作業そのものが
この作品の目的のように感じています。

だから読後、生命倫理について深く考えようという気にはほとんどならなかった。

その一方でこの作品に強く魅せられた点は、
まるで彼女の吐息が耳元にかかるような気配まで感じながら、
あるいは彼女が踏み入れた沼地の湿り気を足元に感じながら、
キャシー・Hという人間の存在感の確かな余韻に包まれたことに他ありません。
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4151200517
No.38:
(5pt)

不思議な読書の時間、読後の余韻も未体験なものでした

架空な20世紀後半のイギリスを舞台にした物語です。
「介護人」という仕事を10年も続けた女性の独白という形で物語は進みます。
舞台は幼少女期を過ごした「ヘールシャム」という施設を中心に展開していきます。若い男女がおりなす青春物語の一方、その上に不気味な影を落とす「ヘールシャム」という存在。
「ヘールシャム」が、そして彼女らの存在を生んだ闇、それが少しずつ見えてきます。
「使命」を受け入れながら、わずかな希望の「うわさ」にさえ、期待を見つけようとする「生」への思い。
「生命の倫理」なんていう言葉がチンケな言葉にしか思えなくなるような闇を背負いながら、他人の「生」への「使命」と受け入れなければならない存在のもろさ。
どんな犠牲を払ってでも生き延びたいはずの「命」とはを、一方的な使命を背負わされて誕生した「存在」というパラレルワールドから見つめる、とても未体験な小説でした。
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4151200517
No.37:
(4pt)

この緻密な箱庭のような世界

「日の名残り」を読まれたことのある方は、ほぼ同じテイストをイメージしていただいて間違いないと思います。
ある限定された特殊な社会で暮らす主人公が、幼年期、思春期、青年期に渡るエピソードを、繊細な描写と美しい文章で語ってゆく物語です。「日の名残り」では大英帝国の執事、今回は女性と主人公は違いますが、あたかも作者に主人公が憑依したかのような、リアルに語りきる作者の力量には、同じように舌を巻かされました。

ストーリーの後半でサプライズがあるところも同じです。似たような設定の話は世に多いようですが、カズオ・イシグロの場合、主人公たちは能動的に自らの住む世界を変えようとはしません。そうした類の活劇ドラマに展開させず、あくまで限定された特殊な社会の中で、静かな日常のドラマを繋いで行くことによって、独自の大きな物語世界を作り上げています。その意味では、この特殊な設定はカズオ・イシグロ的世界を構築するためのまさに「設定」に過ぎず、作品のテーマではないとさえ思えました。
カズオ・イシグロの作り上げるこの緻密な箱庭のような世界は、一見特殊なようでいて、逆にわれわれ一般人の平凡な人生のメタファーなのかもしれません。平凡で限定されているからこそ、いとおしい。執事や「提供者」の人生を借りて、それを作者は繰り返し表現している気がするのです。

繊細で、叙情にあふれる丁寧な文体。あまりに謙虚な語り口に、「日の名残り」の執事口調を思わせる、一種のあざとさを感じるところもありますが、それを補って余りある清冽な描写が胸を打ちます。特に最後のシーンは美しく、この一ページのためにこの長い物語が語られたのだ、と思えるほどでした。

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4151200517
No.36:
(4pt)

どのように考えればよいのだろう


全く予備知識なくタイトルから恋愛小説の一種と思い読み始めたが、全く予想外のシチュエーションにとまどった。そして読み終わったあともこの小説のテーマは何だったのだろうと消化しきれない思いが残っている。

主人公のキャシーの職業は一種のセラピストかなと思われるシーンから物語は始まる。その後舞台は、キャシーが幼年時代から生活したヘイルシャムという名の養育施設に移り、一見普通の施設に見えるヘイルシャムにおけるキャシー、親友のルース、トミーの日常生活が描かれるが、キャシーが感じていた違和感の原因を探るうちに、施設の真の意味が次第に明らかになってくる。

一種のミステリー仕立てでもあるので、余り詳しくは書けないが、主人公達が薄々感じている施設の意味と、自分達の存在意義を発見する過程や、その中で描かれる友情と愛情と亀裂が実に見事に描かれており、テーマは重いが最後まで飽きるところは全くない。

でも読み終わるとやはりテーマの重さがずっしりと圧し掛かる感じがする一方で、社会的正義を訴えたいという目的で描かれたとも思えないため、消化しきれない思いが残っており、作者に作品の意図を是非一度聞いてみたいと思った。

小説としては非常によくできていて最後まで一気に読ませるので、手に取って損のない作品だと思います。英語の勉強も兼ねて原書で読みましたが、文章は平易で難しい単語も少ないので、英文に挑戦したい人にもお勧めです。


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4151200517
No.35:
(5pt)

え? でもやっぱりイシグロ。

イシグロさんがこのような世界を描き出してくれるとは思いもよりませんでした。不思議な設定は過去にもなかったわけではありませんが、この形は彼にとって新たな挑戦であることに間違いはありません。しかし、中身はやっぱりイシグロそのもの。嬉しくなってしまいました。静謐で少し余計に丁寧な語り口。そのヒトとして持つべきささやかながら頑なこだわりが、全編を通じてバックミュージックのように流れ続けています。ファンにはたまらない1編になっているのは間違いありません。ヒトとしての生を受けることの出来なかった一人の女の子が(SF的な未来社会の設定です)、素直に「人」としての人生を、静かに、そして逞しく生きて行こうとします。イシグロの語りから紡ぎ出される彼女の人生に、その言い知れぬ切なさに、私の心も激しく揺さぶられてしまいました。翻訳版が出たようで、NHKの「週刊ブックレビュー」で紹介されるみたいです(それで、ふと思い出すようにこのレビューを書いているわけですが)。でも、イシグロの作品って、日本語で読んで意味あるんですかね(翻訳者さん、すみません)。彼の誰のものでもない、私達の宝物のような「英文」は、この作品の中でも健在です。
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4151200517
No.34:
(4pt)

科学と生命倫理について考えさせられました

優秀な介護人キャシーによる回想形式で、静かに静かに物語が進んでいきます。
初めはヘールシャムがごく一般的な学校かと思っていましたが、それが施設―毎週健康診断がある、生徒たちが特殊な「使命」を全うするために生きているなど、特殊な施設であることが徐々にわかってきます。

誰かを救うために生まれてきた人たち。自分の職業や生き方を選ぶこともできず、ただ自らの運命を受け入れて生きている彼らの人生は痛ましくもあり、哀しくもあり、たくましくもあります。

クローン問題、臓器移植問題など世間でいろいろ取り沙汰されていますが、実際にこういうことが起きるかもしれないと思うと、改めて生命倫理について考えさせられました。

唯一気になったのは、トミーのしゃべり方が全然若者らしくなかったことです。施設時代はもちろん、大人になってからも、ほぼ自分と同年齢の彼のしゃべり方がどうもおじさんっぽくて、そこだけ浮いているような感じがしました。これだけ科学が進んだ時代の話ですから、できればもう少し現代の青年らしく訳していただきたかったです。
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4151200517
No.33:
(5pt)

耳に残る声 目の裏に残る風景

この小説は,女性の一人語りでつづられています。
子供時代のいかにもイギリス的な共同生活。(そういえば,子供の頃大好きだったおちゃめなふたごシリーズであこがれていたなぁ,こんな寮生活。)
その後のコテージでの日々。(背伸びしたい年頃だよねと自分を振り返りながら思う。)
登場人物たちの成長が丁寧に丁寧に著されます。思い切り,はまり込んで読んだために,読後2日たっても,Never let me go の歌声とキャシーの姿が残ってしまってしょうがありません。ねたばれになるので,詳細は書きませんが,設定自体は国内外で新しいものではありません。でもこのような静謐さでそのテーマをあつかえたということに,驚きました。
どうしても原文が気になるので,アマゾンさん,Never let me go一丁。

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4151200517
No.32:
(5pt)

とても良かった(^^)

最初から最後までとても静かな作品で、盛り上がるわけでもなく淡々と語り口調で終わっていくが、それが何でかとても心地よく、暗い話であるにもかかわらず読後に気分が滅入ることがなかった。あるとても悲劇的な使命をもった人間達の話だが、悲劇的な部分があまり強調されず、それが運命なのだと受け入れる部分に焦点があっていたからだろうか。翻訳の仕方も上手く、すんなりと本の世界に入っていくことができた。
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4151200517
No.31:
(5pt)

それでも…

親友ルースという「魅力的であるけれど嫌らしい女」を描きだしてゆく適度な距離感に、読みながら少々驚いた。親友トミーに向ける視線にも似たものを感じたけれど、作者が男だったことを忘れるくらいに自然で、語り手キャシーに寄りそうように読んでゆけた。
正直、なぜ彼ら彼女らは逃げないのか、運命をすんなり受け入れてしまうのか、また世間一般にまじわって暮らしているはずなのに、なぜ終盤になるまで「そのこと」を知りえなかったのか、自分で調べることができたのではないかと、さまざまな疑問をうっすら感じるのだけれども、おそらく作者は、そんなこと描くつもりがなかったのだろう。
作者の現時点での代表作であろう「日の名残り」でも感じたけれど、この作者には、みずからへの運命への受容性に、その特徴があると思う。ある運命を受けいれ、そこに繊細な感受性をもって柔らかな世界をひろげてみせる。
主人公たちは、ヘールシャムの幸せな幼年期の記憶をまとっている。過酷な運命にさらされることになっても、またヘールシャムの「驚くべき真実」とやらがわかっても、なお、幸せな記憶は、主人公たちからは消えない。幼年期特有のいじめもあり苦悩苦痛もあり、ヘールシャムは楽園ではなかったけれど、そこでの憶い出が、主人公たちを支えている。
読了後、「それでも、キャシーたちは幸せだったかもしれない」と感じた。
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4151200517
No.30:
(5pt)

家畜のように

ある特殊な役割を持った人々の成長と愛情の物語。ある意味では、家畜のような存在の人々。教育もうけ、知性もあり、芸術性もあり、愛情もあり。自分の運命をやがてしっていく。それなのに、しずかに、淡々と受け入れる様が物悲しい。延期する手段もあるが、でも、それは、延期にしか過ぎず、中止ではない。静かに、悲しい話なのであるが、淀む事なく話はすすんでいく。愛する人を亡くした後の、主人公の女性の最後の静謐な”境地”を読んで、私も泣いた。
 同じような設定を、マイケルクライトンの”クロモゾーム6”で読んだが、あまりに読後感が違う。いつか、本当に、こんな時代もくるのだろうか?
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4151200517
No.29:
(5pt)

最初の印象は、、

いかにも現代的な設定だと感じた。クローン技術などが急速に発展してきた、現代社会への警句とうけとるこもできると思う。でも僕はその設定自体はこの話の主題ではないと思う。人は誰でも自分の意思とは無関係にいろいろことが限定されてしまっている。例えば、才能、容姿、財産などだ。物語のなかでも主人公たちは、僕たちの想像をこえて、悲劇的に限定されてしまっている。でもその不条理のなかでも、彼らは生きていかなければならない。これは人間だれしもに当てはまることではないだろうか?これが僕がこの本から感じたことだ。いろんな読み方ができる、考えさせてくれる本だった。
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4151200517
No.28:
(5pt)

一気に読んでしまいました

友人がこの本の話をしてくれて、実際にストーリーを知ってしまったのですが、それでもなお、読んでみたくて買いました。つまり、ミステリの種明かしをされてもなお、どうしても読みたいと思ってしまったのです。
この作家の本は初めて読みましたが、翻訳も素晴らしいのでしょうか、睡眠時間を削っても最後まで読みたくて、泣きながら夜更かししてしまいました。主人公は31歳の女性で、昔の回想を淡々と述べていきます。でも、子供時代、思春期、青春時代、その描写のこまかいことといったら、男性が書いているなんて思えないくらい、繊細でした(失礼!)。この小説の世界を見事に構築したカズオ・イシグロに、私は敬服しました。素晴らしい想像力です。他の作品もぜひ読みたいと思いました。いままでにない、読後感でした。
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4151200517

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