囁く影
- ギデオン・フェル博士 (23)
- 安楽椅子探偵 (187)
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結局、この物語で語りたかった事は何だろう? | ||||
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はるか昔に古本屋で入手して読んだのですが、今回再読しておお!こういうお話だったのか!と。印象はだいぶ違いました。 一言で言えば「カーの読者」ならば絶対好きな一作となるでしょう、という佳作です。 不可能犯罪、怪奇趣味、何よりこの雰囲気。 そしてラストシーンが余韻が残る印象的なもの。読み終わって、「あの人」は結局どうなったのだろう…?と思う読者も多いことでしょう。 んが実は、他の作品で「その後」が語られておりますので、読後に気になる人は「仮面劇場の殺人」へGOだ! | ||||
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2次大戦直後の1945年、まだ復興中で瓦礫が残るロンドンから物語は始まります。叔父から遺産を受け継いだばかりの歴史学者マイルズは”殺人クラブ”の晩餐会に急いでいました。限られた13名の高名なメンバーたちが過去の殺人事件に関して論じ合う風変わりな集まりに、フェル博士から招待されていたからです。ところが到着してみれば、講演予定の招待客と1人の若い女性以外は誰もいず・・・他のメンバーたちは、そしてフェル博士はいったいどうしたというのか?という謎めいたスタートからぐっと引き込まれます。 それでもとにかく、招待された大学教授リゴーは6年前にフランスのシャルトルで起きた不可解な事件について語り始めます。現地で事業を展開していた資産家の英国人が、他に誰もいなかったのに塔の上で殺害された事件でした。 そのシャルトルの描写がとても美しいのです。黄色い穀物畑の真ん中の丘の上にある中世風の街、丘のふもとにはウール河が流れ、柳の木が水面に垂れている、生いしげる草原の草いきれや花の香り、木の葉の音、太陽の光、けだるい午後・・そんな描写にうっとりしてしまいました。昔読んだカー作品をよく再読しているのですが、こんなに風景描写のうまい作家だったのかとちょっとびっくりしています。最近読んだ「魔女の隠れ家」や「連続殺人事件」でも、スコットランドの風景やイングランドの小さな村が美しく描かれていました。 その事件で殺人犯人ではないかとみなされた英国人女性フェイ・モートンは、はっきりした証拠があがらないままにフランスから追放されます。が、その彼女が、司書を求めていたマイルズの前に現れる、いかにも”運命の女”にふさわしい登場の仕方です。 カー作品に出てくる女性たちには共通したところがあり、どちらかといえば妖しく不可思議で圧倒的な女性的魅力に満ちている、それでいて守ってやりたくなるようなタイプが多いと感じますが、カー自身がそういう好みだったのかもと思ってしまいました。ストーリーはまったく違いますが「火刑法廷」のヒロイン、マリーとも雰囲気が似ています。また、ネタばれになるのであまり書けませんが・・ヒロインが抱える問題は、現代でいうとどういうものになるのだろうかとあれこれ考えてしまいました。 意外な犯人には驚きましたが、犯人や真相を追究するというよりは、ドラマチックな展開を楽しむサスペンス寄りの物語と感じました。アガサ・クリスティ映画のような、レトロで緊迫感に満ちた魅力的な作品です。 | ||||
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犬は標的を「匂い」で覚えさせられます。彼らにも視力はありますが記憶のベースは殆ど臭覚。 ドイル『バスカヴィル家の犬』の中では、犯人がこの世から消してしまいたい人物の匂いを覚えさせられた怖ろしい魔犬に追っかけられたある人物は崖から転落死してしまいます。でも、もし犬にも仕留める前に目で確認する習性があったなら・・・。本作の場合だと、犬ではなく・・・。 ▼ ▼ 『囁く影』は文中で時間軸を前後させストーリー進行するので、ここでは発生した事柄を時系列に並べ直してみる。ギデオン・フェル博士と同じ<殺人クラブ>のメンバーであるリゴー教授は下記どちらの事件現場にも居合わせ、特に第一の事件のあらましは回想としてリゴー教授の口から読者へ伝えられる部分が多くを占めている。 ◎ フランスのシャルトルという町。皮革業主で、この地の名士である英国人ハワード・ブルック氏。彼が溺愛する愛息ハリーはハワード氏が秘書として雇った、言葉にならぬエロティシズムを湛えた女性フェイ・シートンと婚約するが、一方で彼女を「不品行」だと誹謗する噂が。やがて、入口とその周辺が衆人環視された古塔の上でハワード氏刺殺という惨劇が起きるが、塔上での肝心な瞬間を目撃した者がなく、フェイに容疑がかかるが証拠不十分で逮捕はされず。その年の暮にハワード氏の妻も惨劇のショックで亡くなり、欧州では戦争が勃発。召集されたハリーはこれまた戦地で命を落とし帰ってこなかった。 ◎ 第二次大戦終息。イギリスは戦勝国だったが、街並も人の生活も変わった・・・。<殺人クラブ>の集会に招待された本作の主人公マイルズ・ハモンドは女性記者バーバラ・モレルと共に、リゴー教授の話によって第一の事件を知る。そんな彼が司書を募集した処、運命の悪戯でやってきたのはあのフェイ・シートンだった。フェイがハモンド家に腰を落ち着けた夜、突然リゴー教授とフェル博士が車を飛ばしてやってくる。その理由をマイルズが問い質しているうちに銃声が響きマイルズの妹マリオンを奇禍が襲い・・・。 ハヤカワ・ミステリ文庫版は2000年代に二刷が再版されてから2020年のいま現行本流通ゼロ。読みたくても中古本を探すか電子書籍しかない。『囁く影』もまた、カーが国内で盛んに翻訳された1950~60年代の状況と違って年々評価が上がってきた中期の良品なのに新刊書店で買えないってのはおかしいだろ?新訳を出さないんだったらせめてハヤカワも適度に増刷すればいいのに。この斎藤数衛・訳は昭和のものだが、マイルズ・ハモンドの同一カギカッコ内のセリフで第一人称「わたし」と「ぼく」をゴッチャに言わせている箇所が二、三ある以外は、読みにくい文脈もないし悪くはないと思う。 日本の探偵作家のこういう長篇は二時間ドラマみたいにドロドロするか、あるいはキャラ立ちが淡白でロマンの無いものになりがちだが、カーは不可能犯罪とオカルティックな吸血鬼疑惑を主軸として筆を進めており、メロウネスとのバランスもとれている。本作でも「××を×で××された人間が他人に×られずにいられるのか?」と一言私は毒突きたくなるが、そんな時ほどカーの長篇は面白い。 またフェイ・シートンの外見設定からして顔がとびきり美形とか男好きのする肢体とかじゃなく、一見普通っぽくも見えるけれど多情で脳裏から離れなくなる何かを持っているというこのリアルな造形がGood。一生異性に縁の無い<古本><アニメ>オタクのような人種とは違ってカーはオンナのこと、よくわかってらっしゃる。 ▽ ▽ ダグラス・G・グリーンのカー評論ではニンフォマニアと呼ばれているフェイ・シートン嬢。単純なラブ・ロマンスなどではなく、‶誘蛾燈〟のような女に引き寄せられていく男が締めるラスト・シーンまで、じっくり楽しんでほしい。 | ||||
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ジョン・ディクスン・カーは「好きな人にとってはたまらない」というタイプの作家だ。その意味では僕はあまりカーの良き読者とは言えないのだが、本書は面白かった。カー作品にしては話があっちこっちにならず、コンパクトにまとまっているのがいい。 舞台は第2次大戦後のイギリス。あるクラブで、数年前にフランスで起こった未解決の殺人事件の話が出る。さらにそれを踏まえて、現代のイギリスでも怪事件が発生し…と、物語はわりと一直線に進んでいく。登場人物も少なく、とてもわかりやすい。 それでいて、フーダニットとして優れたミステリになっていると思う。これはカーにしては珍しいのではないだろうか? カーにはトリックメーカー(ハウダニットの作家)というイメージがあるが、本書ではあっと驚く「意外な犯人」の醍醐味が堪能できる。 古いミステリのご多分に漏れず、訳のぎこちなさがちょこちょこあるのは、まあ仕方ないか。おそらくカー自身も決して文章がうまい作家ではなかったのだろう。表紙の絵は依光隆画伯によるもので、昔はよくこういう油彩画が本の表紙になっていたなあと懐かしい。 | ||||
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カーの作品を読むのは18作品目だが、読後の印象がとても良く、個人的にはカーのベスト5に入れたい作品。 川沿いに建つ塔で起こった不可能犯罪の殺人事件1件と、その6年後に起こった殺人未遂事件1件。作者らしい不可能犯罪や、オカルト趣味の「空飛ぶ吸血鬼」の話を織り込んではいるが、どちらも比較的地味な内容。しかしながら、作中人物の人物造形や、ラブロマンスを織り込んだストーリー運び、登場人物の心理分析がすばらしい。とりわけ、行く先々で悲劇をもたらす、妖しく儚げなヒロインのフェイ・シートンが魅力的。 派手さはないし、すごいトリックが使われているわけでもないが、フェル博士の真相説明を読むと、様々な手掛かりが1つの線となって上手くつながっていき、すべての状況がきちんと説明されていて、納得できる。また、手掛かりや伏線の盛り込み方の見事さには感心せざるをえない。 フェル博士は、非常に細かい手掛かりをいくつも拾い上げて推理しているので、読者がこの真相を推理をするのは難しいのではないだろうか。 冒頭の殺人クラブでの出来事から開始して、各章の終わりには読者の興味を駆り立てるような出来事や発言が盛り込まれているところに、カーのストーリーテラーとしての巧みさを感じた。 また、最後の方で判明する、ある人物の正体に関するサプライズも面白いと感じた。 | ||||
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