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囁く影
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囁く影の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.59pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全17件 1~17 1/1ページ
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はるか昔に古本屋で入手して読んだのですが、今回再読しておお!こういうお話だったのか!と。印象はだいぶ違いました。 一言で言えば「カーの読者」ならば絶対好きな一作となるでしょう、という佳作です。 不可能犯罪、怪奇趣味、何よりこの雰囲気。 そしてラストシーンが余韻が残る印象的なもの。読み終わって、「あの人」は結局どうなったのだろう…?と思う読者も多いことでしょう。 んが実は、他の作品で「その後」が語られておりますので、読後に気になる人は「仮面劇場の殺人」へGOだ! | ||||
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2次大戦直後の1945年、まだ復興中で瓦礫が残るロンドンから物語は始まります。叔父から遺産を受け継いだばかりの歴史学者マイルズは”殺人クラブ”の晩餐会に急いでいました。限られた13名の高名なメンバーたちが過去の殺人事件に関して論じ合う風変わりな集まりに、フェル博士から招待されていたからです。ところが到着してみれば、講演予定の招待客と1人の若い女性以外は誰もいず・・・他のメンバーたちは、そしてフェル博士はいったいどうしたというのか?という謎めいたスタートからぐっと引き込まれます。 それでもとにかく、招待された大学教授リゴーは6年前にフランスのシャルトルで起きた不可解な事件について語り始めます。現地で事業を展開していた資産家の英国人が、他に誰もいなかったのに塔の上で殺害された事件でした。 そのシャルトルの描写がとても美しいのです。黄色い穀物畑の真ん中の丘の上にある中世風の街、丘のふもとにはウール河が流れ、柳の木が水面に垂れている、生いしげる草原の草いきれや花の香り、木の葉の音、太陽の光、けだるい午後・・そんな描写にうっとりしてしまいました。昔読んだカー作品をよく再読しているのですが、こんなに風景描写のうまい作家だったのかとちょっとびっくりしています。最近読んだ「魔女の隠れ家」や「連続殺人事件」でも、スコットランドの風景やイングランドの小さな村が美しく描かれていました。 その事件で殺人犯人ではないかとみなされた英国人女性フェイ・モートンは、はっきりした証拠があがらないままにフランスから追放されます。が、その彼女が、司書を求めていたマイルズの前に現れる、いかにも”運命の女”にふさわしい登場の仕方です。 カー作品に出てくる女性たちには共通したところがあり、どちらかといえば妖しく不可思議で圧倒的な女性的魅力に満ちている、それでいて守ってやりたくなるようなタイプが多いと感じますが、カー自身がそういう好みだったのかもと思ってしまいました。ストーリーはまったく違いますが「火刑法廷」のヒロイン、マリーとも雰囲気が似ています。また、ネタばれになるのであまり書けませんが・・ヒロインが抱える問題は、現代でいうとどういうものになるのだろうかとあれこれ考えてしまいました。 意外な犯人には驚きましたが、犯人や真相を追究するというよりは、ドラマチックな展開を楽しむサスペンス寄りの物語と感じました。アガサ・クリスティ映画のような、レトロで緊迫感に満ちた魅力的な作品です。 | ||||
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犬は標的を「匂い」で覚えさせられます。彼らにも視力はありますが記憶のベースは殆ど臭覚。 ドイル『バスカヴィル家の犬』の中では、犯人がこの世から消してしまいたい人物の匂いを覚えさせられた怖ろしい魔犬に追っかけられたある人物は崖から転落死してしまいます。でも、もし犬にも仕留める前に目で確認する習性があったなら・・・。本作の場合だと、犬ではなく・・・。 ▼ ▼ 『囁く影』は文中で時間軸を前後させストーリー進行するので、ここでは発生した事柄を時系列に並べ直してみる。ギデオン・フェル博士と同じ<殺人クラブ>のメンバーであるリゴー教授は下記どちらの事件現場にも居合わせ、特に第一の事件のあらましは回想としてリゴー教授の口から読者へ伝えられる部分が多くを占めている。 ◎ フランスのシャルトルという町。皮革業主で、この地の名士である英国人ハワード・ブルック氏。彼が溺愛する愛息ハリーはハワード氏が秘書として雇った、言葉にならぬエロティシズムを湛えた女性フェイ・シートンと婚約するが、一方で彼女を「不品行」だと誹謗する噂が。やがて、入口とその周辺が衆人環視された古塔の上でハワード氏刺殺という惨劇が起きるが、塔上での肝心な瞬間を目撃した者がなく、フェイに容疑がかかるが証拠不十分で逮捕はされず。その年の暮にハワード氏の妻も惨劇のショックで亡くなり、欧州では戦争が勃発。召集されたハリーはこれまた戦地で命を落とし帰ってこなかった。 ◎ 第二次大戦終息。イギリスは戦勝国だったが、街並も人の生活も変わった・・・。<殺人クラブ>の集会に招待された本作の主人公マイルズ・ハモンドは女性記者バーバラ・モレルと共に、リゴー教授の話によって第一の事件を知る。そんな彼が司書を募集した処、運命の悪戯でやってきたのはあのフェイ・シートンだった。フェイがハモンド家に腰を落ち着けた夜、突然リゴー教授とフェル博士が車を飛ばしてやってくる。その理由をマイルズが問い質しているうちに銃声が響きマイルズの妹マリオンを奇禍が襲い・・・。 ハヤカワ・ミステリ文庫版は2000年代に二刷が再版されてから2020年のいま現行本流通ゼロ。読みたくても中古本を探すか電子書籍しかない。『囁く影』もまた、カーが国内で盛んに翻訳された1950~60年代の状況と違って年々評価が上がってきた中期の良品なのに新刊書店で買えないってのはおかしいだろ?新訳を出さないんだったらせめてハヤカワも適度に増刷すればいいのに。この斎藤数衛・訳は昭和のものだが、マイルズ・ハモンドの同一カギカッコ内のセリフで第一人称「わたし」と「ぼく」をゴッチャに言わせている箇所が二、三ある以外は、読みにくい文脈もないし悪くはないと思う。 日本の探偵作家のこういう長篇は二時間ドラマみたいにドロドロするか、あるいはキャラ立ちが淡白でロマンの無いものになりがちだが、カーは不可能犯罪とオカルティックな吸血鬼疑惑を主軸として筆を進めており、メロウネスとのバランスもとれている。本作でも「××を×で××された人間が他人に×られずにいられるのか?」と一言私は毒突きたくなるが、そんな時ほどカーの長篇は面白い。 またフェイ・シートンの外見設定からして顔がとびきり美形とか男好きのする肢体とかじゃなく、一見普通っぽくも見えるけれど多情で脳裏から離れなくなる何かを持っているというこのリアルな造形がGood。一生異性に縁の無い<古本><アニメ>オタクのような人種とは違ってカーはオンナのこと、よくわかってらっしゃる。 ▽ ▽ ダグラス・G・グリーンのカー評論ではニンフォマニアと呼ばれているフェイ・シートン嬢。単純なラブ・ロマンスなどではなく、‶誘蛾燈〟のような女に引き寄せられていく男が締めるラスト・シーンまで、じっくり楽しんでほしい。 | ||||
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ジョン・ディクスン・カーは「好きな人にとってはたまらない」というタイプの作家だ。その意味では僕はあまりカーの良き読者とは言えないのだが、本書は面白かった。カー作品にしては話があっちこっちにならず、コンパクトにまとまっているのがいい。 舞台は第2次大戦後のイギリス。あるクラブで、数年前にフランスで起こった未解決の殺人事件の話が出る。さらにそれを踏まえて、現代のイギリスでも怪事件が発生し…と、物語はわりと一直線に進んでいく。登場人物も少なく、とてもわかりやすい。 それでいて、フーダニットとして優れたミステリになっていると思う。これはカーにしては珍しいのではないだろうか? カーにはトリックメーカー(ハウダニットの作家)というイメージがあるが、本書ではあっと驚く「意外な犯人」の醍醐味が堪能できる。 古いミステリのご多分に漏れず、訳のぎこちなさがちょこちょこあるのは、まあ仕方ないか。おそらくカー自身も決して文章がうまい作家ではなかったのだろう。表紙の絵は依光隆画伯によるもので、昔はよくこういう油彩画が本の表紙になっていたなあと懐かしい。 | ||||
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カーの作品を読むのは18作品目だが、読後の印象がとても良く、個人的にはカーのベスト5に入れたい作品。 川沿いに建つ塔で起こった不可能犯罪の殺人事件1件と、その6年後に起こった殺人未遂事件1件。作者らしい不可能犯罪や、オカルト趣味の「空飛ぶ吸血鬼」の話を織り込んではいるが、どちらも比較的地味な内容。しかしながら、作中人物の人物造形や、ラブロマンスを織り込んだストーリー運び、登場人物の心理分析がすばらしい。とりわけ、行く先々で悲劇をもたらす、妖しく儚げなヒロインのフェイ・シートンが魅力的。 派手さはないし、すごいトリックが使われているわけでもないが、フェル博士の真相説明を読むと、様々な手掛かりが1つの線となって上手くつながっていき、すべての状況がきちんと説明されていて、納得できる。また、手掛かりや伏線の盛り込み方の見事さには感心せざるをえない。 フェル博士は、非常に細かい手掛かりをいくつも拾い上げて推理しているので、読者がこの真相を推理をするのは難しいのではないだろうか。 冒頭の殺人クラブでの出来事から開始して、各章の終わりには読者の興味を駆り立てるような出来事や発言が盛り込まれているところに、カーのストーリーテラーとしての巧みさを感じた。 また、最後の方で判明する、ある人物の正体に関するサプライズも面白いと感じた。 | ||||
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頭が働くほうではないので、単純にトリックに驚いて膝を打ちました。恋愛要素が入ると犯人絞り込みが簡単になってしまう(主人公がひかれた異性は犯人ではない法則)けど。 | ||||
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カーの好きなラブロマンスと怪奇と不可能犯罪が全部出ている作品。 解決するのはフェル博士ですけど、この作品では、こう言えばいいかな・・・横溝正史の八つ墓村の金田一耕助のような役割になっています。 雰囲気の出し方が非常に巧みなので、一気に読んでしまいます。流石は巨匠の一人と言ったところでしょうか。 発売が結構前になる作品は、訳があれだったりしますけど、この作品は別になんとも思いませんでしたね。 | ||||
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歴史学者マイルズ・ハモンドが司書として雇った美女フェイ・シートン。 彼女は6年前、土地の富豪ハワード・ブルックが誰もいない塔の頂上で刺し殺された事件の真犯人として疑惑がかけられていた。その上、彼女には吸血鬼疑惑までが重なる。 そして、彼女がハモンド家に雇われたその日の深夜、鳴り響く銃声にかけつけたところマイルズの妹マリオンが仮死状態で(外傷等はなく恐怖によるショック状態で)発見される。彼女の手に握られた拳銃。部屋の窓にはマリオンが何かに向かって撃ったと思われる銃痕が。そして何かが「囁いた」というマリオンのつぶやき。 不死人であり毒殺魔のマリー・ドーブリーを扱った『火刑法廷』を髣髴とさせる本書は、そのトリック、意外性、謎解きの論理のいずれをとっても抜群の出来で、カーター・ディクスン名義を除くカー作品のベスト5に挙げたい。 (『三つの棺』のレビューでベスト5を披露したが撤回する。『曲った蝶番』を外そう。) カー作品に登場する女性は概ね魅力に欠け、多くは印象が残らないが、本書のヒロイン、フェイ・シートンはまったく別格である。 最後のページで「あの人がどんな女だってかまわない。ぼくはあの人のところへ行きます。」マイルズに語らせる彼女がどんな女なのか、そしてその魅力をとくと味わって欲しい。 | ||||
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歴史学者マイルズ・ハモンドが司書として雇った美女フェイ・シートン。 彼女は6年前、土地の富豪ハワード・ブルックが誰もいない塔の頂上で刺し殺された事件の真犯人として疑惑がかけられていた。その上、彼女には吸血鬼疑惑までが重なる。 そして、彼女がハモンド家に雇われたその日の深夜、鳴り響く銃声にかけつけたところマイルズの妹マリオンが仮死状態で(外傷等はなく恐怖によるショック状態で)発見される。彼女の手に握られた拳銃。部屋の窓にはマリオンが何かに向かって撃ったと思われる銃痕が。そして何かが「囁いた」というマリオンのつぶやき。 不死人であり毒殺魔のマリー・ドーブリーを扱った『火刑法廷』を髣髴とさせる本書は、そのトリック、意外性、謎解きの論理のいずれをとっても抜群の出来で、カーター・ディクスン名義を除くカー作品のベスト5に挙げたい。 (『三つの棺』のレビューでベスト5を披露したが撤回する。『曲った蝶番』を外そう。) カー作品に登場する女性は概ね魅力に欠け、多くは印象が残らないが、本書のヒロイン、フェイ・シートンはまったく別格である。 最後のページで「あの人がどんな女だってかまわない。ぼくはあの人のところへ行きます。」マイルズに語らせる彼女がどんな女なのか、そしてその魅力をとくと味わって欲しい。 | ||||
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この作品で描かれるのは、2つの事件です。 1つ目の事件は、 1939年にパリ郊外にある<ヘンリー4世の塔> と呼ばれる古い建物で起こります。 この塔の頂で、実業家のハワード・ブルックが 仕込み杖で刺されて死亡しているのが発見されます。 事件発生当時、塔には他には誰も登っていなかったことが 関係者の証言で分かり、自殺と判断されますが、 もちろんこれは殺人なわけで、 カーお得意の不可能犯罪の発生です。 2つ目の事件は、第1の事件から6年後。 イギリスの歴史学者マイルズ・ハモンドの邸宅で、 妹のマリオンが部屋で何者かに襲われ、瀕死の状態に。 彼女は、何かが「囁いた」と呟いていた・・・。 この2つの事件をつなぐ登場人物が、フェイ・シートン。 彼女は、第1の事件の際には、 ブルック家の秘書として在籍しており、 第2の事件の際には、 司書としてハモンド家に住み込んでいたのです。 物語は、このフェイ・シートンの 妖しき存在を軸に展開していきます (本の表紙に描かれている女性は、 フェイ・シートンと思われる)。 彼女が事件とどう関係していたのかが、 不可能犯罪の謎とともに、 事件の解決を握る大きな鍵となっています。 第1の事件の不可能犯罪のトリックも、 第2の事件の「囁く」に関する謎も、 驚愕度からは小ぶりな感じでしたが、 妖しき女性のフェイ・シートンが ほどよいアクセントになっていて、 なかなか楽しめる作品に仕上がっていると感じました。 また、カー作品の特徴である怪奇色は、 「吸血鬼伝説」が取り上げられていて、 その点も読みどころのひとつとなっています。 | ||||
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この作品で描かれるのは、2つの事件です。 1つ目の事件は、 1939年にパリ郊外にある<ヘンリー4世の塔> と呼ばれる古い建物で起こります。 この塔の頂で、実業家のハワード・ブルックが 仕込み杖で刺されて死亡しているのが発見されます。 事件発生当時、塔には他には誰も登っていなかったことが 関係者の証言で分かり、自殺と判断されますが、 もちろんこれは殺人なわけで、 カーお得意の不可能犯罪の発生です。 2つ目の事件は、第1の事件から6年後。 イギリスの歴史学者マイルズ・ハモンドの邸宅で、 妹のマリオンが部屋で何者かに襲われ、瀕死の状態に。 彼女は、何かが「囁いた」と呟いていた・・・。 この2つの事件をつなぐ登場人物が、フェイ・シートン。 彼女は、第1の事件の際には、 ブルック家の秘書として在籍しており、 第2の事件の際には、 司書としてハモンド家に住み込んでいたのです。 物語は、このフェイ・シートンの 妖しき存在を軸に展開していきます (本の表紙に描かれている女性は、 フェイ・シートンと思われる)。 彼女が事件とどう関係していたのかが、 不可能犯罪の謎とともに、 事件の解決を握る大きな鍵となっています。 第1の事件の不可能犯罪のトリックも、 第2の事件の「囁く」に関する謎も、 驚愕度からは小ぶりな感じでしたが、 妖しき女性のフェイ・シートンが ほどよいアクセントになっていて、 なかなか楽しめる作品に仕上がっていると感じました。 また、カー作品の特徴である怪奇色は、 「吸血鬼伝説」が取り上げられていて、 その点も読みどころのひとつとなっています。 | ||||
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一応不可能犯罪でありますが、 実は一部の事件に関してはある程度読みなれた人だと 容易にトリックはわかってしまうかと。 完全にはわからないにしても概要は先読みできると思います。 でもそれでもトリックは巧妙です。 そうされたら誰が見たって 殺しが誰かはわからなくなってしまいますからね。 ただ残念なことに犯人発覚部分が この作家の某作品と類似しています。 つかまり方もろとも。 まぁその作品も不可能犯罪ものなので 仕方ないかと思います。 | ||||
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一応不可能犯罪でありますが、 実は一部の事件に関してはある程度読みなれた人だと 容易にトリックはわかってしまうかと。 完全にはわからないにしても概要は先読みできると思います。 でもそれでもトリックは巧妙です。 そうされたら誰が見たって 殺しが誰かはわからなくなってしまいますからね。 ただ残念なことに犯人発覚部分が この作家の某作品と類似しています。 つかまり方もろとも。 まぁその作品も不可能犯罪ものなので 仕方ないかと思います。 | ||||
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パリ郊外の川岸に聳える古塔の頂上で、土地の富豪が仕込み杖で刺殺された。 現場が密室状況であったため、世間では吸血鬼の仕業と噂され、被害者の息子 の婚約者フェイが吸血鬼で、殺人犯ではないか、という容疑がかかるが、最終的 には、自殺として処理された。 それから数年後、事件の話を聞き、興味を持った歴史学者マイルズのもとに、 図書整理の司書として、なんと事件の渦中の人であったフェイがやって来る。 不穏な雰囲気が高まるなか、ついにマイルズの妹マリオンが 深夜、自室で何者かに襲われ、瀕死の状態に陥ってしまう。 何かが“ささやく”と呟きながら……。 ミステリアスなヒロインを軸に、過去と現在の事件を交錯させ、 思いもかけない真相を描き出す1940年代後半のカーの傑作。 本作では、過去と現在にそれぞれ一件ずつ事件が起きます。 密室状況にあった塔の頂上での殺人事件にかんしては、犯人と被害者の人間関係に 着目する必要があるのですが、現場のロケーションを活かしたあるモノの巧妙な処理も 見逃せません。 一方、現在の事件では、冷徹な犯行方法や、犯人も想定してなかったアクシデントなどに 加え、 フェイがマイルズのもとに来たことで、マリオンの命 が狙われたという因果関係を 強調し、フェイの“魔性”を読者に印象付ける、カーの巧みな演出が目を引きます。 また、フェイとともに、過去と現在の事件双方に関わる、リゴー教授という人物が、 オカルトに基づく推理を展開し、フェイへの疑惑を増幅させているのもうまいです。 本作の謎は、すべて余りを出すことなく、きれいに割り切れてしまうため、 物足りなく感じる向きもあるかもしれませんが、カーが苦手な人にも安心 してオススメできる、スマートな作品だと思いました。 | ||||
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パリ郊外の川岸に聳える古塔の頂上で、土地の富豪が仕込み杖で刺殺された。 現場が密室状況であったため、世間では吸血鬼の仕業と噂され、被害者の息子 の婚約者フェイが吸血鬼で、殺人犯ではないか、という容疑がかかるが、最終的 には、自殺として処理された。 それから数年後、事件の話を聞き、興味を持った歴史学者マイルズのもとに、 図書整理の司書として、なんと事件の渦中の人であったフェイがやって来る。 不穏な雰囲気が高まるなか、ついにマイルズの妹マリオンが 深夜、自室で何者かに襲われ、瀕死の状態に陥ってしまう。 何かが“ささやく”と呟きながら……。 ミステリアスなヒロインを軸に、過去と現在の事件を交錯させ、 思いもかけない真相を描き出す1940年代後半のカーの傑作。 本作では、過去と現在にそれぞれ一件ずつ事件が起きます。 密室状況にあった塔の頂上での殺人事件にかんしては、犯人と被害者の人間関係に 着目する必要があるのですが、現場のロケーションを活かしたあるモノの巧妙な処理も 見逃せません。 一方、現在の事件では、冷徹な犯行方法や、犯人も想定してなかったアクシデントなどに 加え、 フェイがマイルズのもとに来たことで、マリオンの命 が狙われたという因果関係を 強調し、フェイの“魔性”を読者に印象付ける、カーの巧みな演出が目を引きます。 また、フェイとともに、過去と現在の事件双方に関わる、リゴー教授という人物が、 オカルトに基づく推理を展開し、フェイへの疑惑を増幅させているのもうまいです。 本作の謎は、すべて余りを出すことなく、きれいに割り切れてしまうため、 物足りなく感じる向きもあるかもしれませんが、カーが苦手な人にも安心 してオススメできる、スマートな作品だと思いました。 | ||||
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ムードでは私的にカーの作品中NО.1だと思います。数年前のパリ郊外で起きた殺人事件。だれもいないはずの古塔の頂上で男の刺殺死体が発見される。警察は自殺と断定したが、世間は吸血鬼が空高く舞い降りてきて、男を切り裂いたのだと噂した。 そして今、件の事件を調査していた歴史学者の妹が恐怖のあまりに瀕死状態に陥った。何かが”囁く”呟きながら。しかもそこには数年前の事件、吸血鬼と呼ばれ、被害者の嫁となるはずだった女性がいた! 簡単に言うとこういう話です。巨匠得意の不可能犯罪もあり、かつてない殺害方法を生み出していますが、仰天するようなトリックがあるかというと、悪くもありませんが解決にそういった目立つ点はありません。 しかし、とにかく雰囲気はかつてないほどの高みに達しており、その点、珍しくカーのストーリーテラーとしての腕前を堪能できます。 | ||||
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カーはタイトルの語感が気に入ると何度も使い回しをしたがる傾向があります「囁く影」「引き潮の魔女」「ヴァンパイアの塔」といったところは何度も作品のタイトルに使われていますで、これは「囁く影」の長篇長らく重刷未定になっていてファンを嘆かせていましたが現在は手に入れやすくなっています吸血鬼伝説が蔓延る中、尖塔の上で殺人が現場には犯人の人影はなく被害者が昇った後、おりてきた者もいないどうやったんでしょうね? | ||||
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