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剣の道殺人事件
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剣の道殺人事件の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.29pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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剣豪時代小説の著者が、推理小説で冠を獲ってデビューしていたと知ったのは、もう何年も前。これはいずれ読まなくてはと長らく思っていたが、店頭で著者の時代小説はよくみかけるものの、一向に本書をみかけることがなく、あきらめて古本をポチった。 乱歩賞の受賞作にはスカされることが多いが、本書はそこそこ満足して読了した。 ところが感想を書こうとつらつら思い返すに、不満やツッコみポイントばかりが浮かんでしまう。最大のウリは、大勢の観客やビデオカメラも入る全日本学生剣道大会の決勝戦中の殺人という強力な視線の密室で、この高いハードルに真っ向から取り組んでいるのは、さすがは新人の受賞作なのだが、HowとWhyにおいて完全には納得しきれなかったので、まずまずといったところ。 おそらくわたしが満足したのは、推理小説としてのプロットやトリックではなく、一方で宣伝文句に謳われている青春小説面でもなく、学生スポーツとしての剣道も数百年前の剣法・剣術と地続きだと感じさせてくれたことだろうか。 各章の頭に、一刀流や柳生新陰流の兵法書から一文が掲げられている体裁を始め、剣道に取り組む姿勢についても筆が及ぶ。 視線の密室の大きな謎の他にも、重要容疑者は、恵まれた体格を持っていながら、なぜ飛び込み胴を得手とするようになったのかと主人公が疑問に思うことが、事件の解明に繋がり、興味を引っ張る。物語が進むにつれて、殺される側の過去があぶり出されることでその理由は示されるのだが、かなりぶっ飛んだもの。だが著者が示すように、時代小説に出てきたのなら、違和感は覚えなかった筈だ。なるほど。【注1】 もうひとつは、こういった剣の道にがっぷり取り組んだ内容が、東野圭吾の『卒業』のアンチテーゼになっていること。 アンチテーゼとはまぁ言い過ぎだが、あちらで登場した加賀恭一郎が大学剣道の覇者という設定を読んだ際には、加賀に夏木六四三や東堂修羅より強い片鱗がまったく見えなかったことにツッコまずにはいられなかったものだ。調べてみると、前掲書の文庫化が1989年なので、それを読んで不満を感じた著者が、大学剣道をがっぷり背景に取り込んで本書を書き上げて応募した……というのは、考えすぎか? 一応不満の理由も書いておくと、具体的なハウダニットまでは判らなくても、前後の状況や物語の流れで、誰が犯人かは結構早いうちに察しがついてしまうことと、彼の動機となった事件のプロットがメインの密室トリック以上に納得がいかないところ。 被害者たちは、一人を除いて、むしろ平均的な人間よりも人格的に優れているくらいだが、酒が入っていたとはいえ、あっさりとその一人の扇動に乗って女性を凌辱している。 体育会系部活動の“先輩の指示は絶対”の文化に従ったとすると、そもそもの“黒幕”の操作が何も機能していなかったことになるし、それ以前に、“(別の)先輩の妹分”と認知されている女性を襲うなんて、めちゃめちゃ不自然だ。扇動者にしたところで、不自然さは同様。彼女が自殺することまでは計算できなかった筈だし、被害届を出される可能性を考えれば、彼女を襲うなんて到底できないだろう。彼の動機は“黒幕”のテストに向けての策略ではなかったのか? 被害が表沙汰になれば、そんなテストを待たずとも破滅だ。 ところで、解説者は巻末で、本文の前にこちらを読む人もいるだろうからと、フーやハウはさすがに明かさないものの、次は誰が殺されて、その次は~と、ご丁寧に展開をダダ明かし。それだけ書いたら、犯人の名前を明かすのとさほど変わらんでしょ。バカかな。 【注1】被害者側の特殊な環境が“黒幕”の存在とともに説明されるが、戦後日本人として特殊なのは、犯人の側も同様。しかしそんな風に彼を形成した生い立ちはスルーされている。そこも残念ポイント。 | ||||
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