剣の道殺人事件
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剣豪時代小説の著者が、推理小説で冠を獲ってデビューしていたと知ったのは、もう何年も前。これはいずれ読まなくてはと長らく思っていたが、店頭で著者の時代小説はよくみかけるものの、一向に本書をみかけることがなく、あきらめて古本をポチった。 乱歩賞の受賞作にはスカされることが多いが、本書はそこそこ満足して読了した。 ところが感想を書こうとつらつら思い返すに、不満やツッコみポイントばかりが浮かんでしまう。最大のウリは、大勢の観客やビデオカメラも入る全日本学生剣道大会の決勝戦中の殺人という強力な視線の密室で、この高いハードルに真っ向から取り組んでいるのは、さすがは新人の受賞作なのだが、HowとWhyにおいて完全には納得しきれなかったので、まずまずといったところ。 おそらくわたしが満足したのは、推理小説としてのプロットやトリックではなく、一方で宣伝文句に謳われている青春小説面でもなく、学生スポーツとしての剣道も数百年前の剣法・剣術と地続きだと感じさせてくれたことだろうか。 各章の頭に、一刀流や柳生新陰流の兵法書から一文が掲げられている体裁を始め、剣道に取り組む姿勢についても筆が及ぶ。 視線の密室の大きな謎の他にも、重要容疑者は、恵まれた体格を持っていながら、なぜ飛び込み胴を得手とするようになったのかと主人公が疑問に思うことが、事件の解明に繋がり、興味を引っ張る。物語が進むにつれて、殺される側の過去があぶり出されることでその理由は示されるのだが、かなりぶっ飛んだもの。だが著者が示すように、時代小説に出てきたのなら、違和感は覚えなかった筈だ。なるほど。【注1】 もうひとつは、こういった剣の道にがっぷり取り組んだ内容が、東野圭吾の『卒業』のアンチテーゼになっていること。 アンチテーゼとはまぁ言い過ぎだが、あちらで登場した加賀恭一郎が大学剣道の覇者という設定を読んだ際には、加賀に夏木六四三や東堂修羅より強い片鱗がまったく見えなかったことにツッコまずにはいられなかったものだ。調べてみると、前掲書の文庫化が1989年なので、それを読んで不満を感じた著者が、大学剣道をがっぷり背景に取り込んで本書を書き上げて応募した……というのは、考えすぎか? 一応不満の理由も書いておくと、具体的なハウダニットまでは判らなくても、前後の状況や物語の流れで、誰が犯人かは結構早いうちに察しがついてしまうことと、彼の動機となった事件のプロットがメインの密室トリック以上に納得がいかないところ。 被害者たちは、一人を除いて、むしろ平均的な人間よりも人格的に優れているくらいだが、酒が入っていたとはいえ、あっさりとその一人の扇動に乗って女性を凌辱している。 体育会系部活動の“先輩の指示は絶対”の文化に従ったとすると、そもそもの“黒幕”の操作が何も機能していなかったことになるし、それ以前に、“(別の)先輩の妹分”と認知されている女性を襲うなんて、めちゃめちゃ不自然だ。扇動者にしたところで、不自然さは同様。彼女が自殺することまでは計算できなかった筈だし、被害届を出される可能性を考えれば、彼女を襲うなんて到底できないだろう。彼の動機は“黒幕”のテストに向けての策略ではなかったのか? 被害が表沙汰になれば、そんなテストを待たずとも破滅だ。 ところで、解説者は巻末で、本文の前にこちらを読む人もいるだろうからと、フーやハウはさすがに明かさないものの、次は誰が殺されて、その次は~と、ご丁寧に展開をダダ明かし。それだけ書いたら、犯人の名前を明かすのとさほど変わらんでしょ。バカかな。 【注1】被害者側の特殊な環境が“黒幕”の存在とともに説明されるが、戦後日本人として特殊なのは、犯人の側も同様。しかしそんな風に彼を形成した生い立ちはスルーされている。そこも残念ポイント。 | ||||
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長年探していた本を手にしたときの喜びは、格別でした。愉しみながら、少しずつ少しずつ読んでいきたいと思っています。 | ||||
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時代小説作家のイメージの方が強い鳥羽氏の江戸川乱歩賞受賞のデビュー作である。 自身も経験者であることもあり、剣道を題材にしたユニークなミステリーだ。 メインは剣道大会での開かれた密室による不可能殺人だが、これ自体取り出してみれば、トリックはミステリー愛好者にはセオリー通りのトリックで新味はないのだが、それらのミステリー要素と剣道の世界を融合させたところに本書の面白さはある。 真犯人がすぐ分かるというのもあるが、それ以上に事件の裏に隠された陰謀や幕切れなどで読ませることもあり、さほど欠点にはなっていないと思う。 | ||||
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「剣の道殺人事件」……剣豪小説の第一人者・鳥羽亮氏の記念すべきデビュー作。衆人環視の剣道の試合中に発生した選手殺人事件。 目撃者数百人! 犯行時刻は秒単位で判明しており、容疑者も一人しかいない! しかし、その容疑者は犯行不可能&動機がないという、予想外の展開に。果たして、この容疑者は犯人なのか? そして、もし犯人だとしたら、小手を装着している手で、どうやって防具を着けている被害者を刺殺出来たのか? 難航する捜査の中、第二・第三の被害者が! 剣道という舞台設定だからこそ使える驚愕のトリックと、悲しき犯行動機が衝撃的です。前々年受賞のスポーツ・ミステリー「白色の残像」よりも遥かに後味が悪い(「白色の残像」は爽やかなラストだったのですが)今作の印象は、陰鬱な究道精神と関係しているようです。 「フェニックスの弔鐘」……「プラハからの道化たち」や「川の深さは」に繋がる、国家意識と生きる人間の在り方をテーマに据えたサスペンスミステリーです。いわゆる推理小説ではない。この作品は、江戸川乱歩史上最大の被害者数を記録することとなる作品です。スケールが段違い。 正義と悪ではなく、どちらも「我こそは正義」と考えるからこそ起こりうる悲劇を生々しく描いています。 | ||||
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剣道の試合中に起きた衆人環視の中の密室殺人。よく考え込まれたトリックには思わずうならされましたが、本書の魅力はそれだけではなく、丁寧な筆致で登場人物の心理が描かれている所。すんなりと入っていけて、面白く読み進みながら、最後まで一気に読める作品でした。剣道の経験者には共感できる所も多いのではないでしょうか。推理小説ばかり読んでいる玄人的な読者には細かい突っ込みを入れたくなる所もあるかもしれませんが、そうでない一般の読者には十分おもしろい作品に仕上がっているのではないかと思います。鳥羽さんと言えば「鬼哭の剣」シリーズなど、時代小説が面白いのですが、初期の推理小説も読んでみると、結構面白く読むことができ、作者の原点というか精神のようなものを垣間見ることが出来ます。読者層としてはやはり中高年の方が多いのかなと思いますが、初期の推理小説は年齢層を問わず楽しめると思います。ただ残念なことに本書は今はネットでしか入手できない所ですかね。 | ||||
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