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邪魅の雫
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【この小説が収録されている参考書籍】
邪魅の雫の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.79pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全66件 41~60 3/4ページ
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悪くはないと思った。 確かに以前の作品にあった大どんでん返しはなかったが、これはこれで面白い。榎木津の出番が少なかったからこそ、今まで見えなかった榎木津が見えた気がするし、普段は見えない他のキャラクターの内面も垣間見えた。新鮮で面白かった。 | ||||
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ファン待望の「京極堂」シリーズの最新作ですが、これまでの作品に比べて少し読みづらい感がありました。登場人物が多い上に似た名前が多いのも一因ですが、これは面倒でもメモを取りながら読み進むことで解決できるとして、レギュラー陣以外での過去作品からの登場人物が結構多く、流石にそこまでは覚えていなかったので、「こいつはどの事件に登場したどういうヤツだったっけ?」と序盤はかなり苦戦しました。 ストーリーの仕掛けの部分については割と早い段階で想像がついてしまうのですが、それはまあいいとしても、クライマックスとなる京極堂の登場から謎解きのくだりや榎木津の扱いはちょっとこれまでの作品と違っており、当シリーズの定型パターンにハマっている読者には物足りないかもしれません。 とはいうものの、ブ厚さと読み応えは今までどおり。やはり言うまでもなくファンは必読でしょう。 | ||||
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1990年代は日本より海外で暮らした時間が長かったが、たまたま日本に居るときに店頭でみかけ、魅入られたように買ったのが第一作「枯獲鳥の夏」だった。読み終えるまではまさに至福の時間となり、以来、世界のどこにいようと新作が出たことを知るたびに速やかに手に入れ「読書の快楽」におぼれてきた。やはりたまたま店頭で魅入られて嵌まったヒューリック「ディー判事」モノと並んで、自らの幸運を感じさせ、生きる喜びを与えてくれている、宝物のようなシリーズだ。その最新作とあって、さっそく日本から取り寄せた。 設定が昭和20年代後半であり、あの大戦をくぐり抜けた人物が多く出てくるこのシリーズでは、近代日本、特にあの戦争が抱え、残してきた闇が常につきまとう。第二作「魍魎のハコ」はかなり荒唐無稽とはいいながら、この闇を基本的なテーマとして絶品となった。今回は731部隊と帝銀事件という実際にあったことの闇に光をあてる。 なおも解明が待たれている史実が大きな役割を果たすからだろうか、これまでのシリーズとはやや異なる趣向になった。多くの人が指摘しているように、毎回、そこらの科学者以上に徹底的な合理主義者である中禅寺秋彦の口から饒舌に語られてきた妖怪に関するうんちくが、今回は影を潜めている。歴史の闇を解体する作業も、通り一遍のレベル。最後に読者にカタルシスを与えてきた中禅寺の憑物落としは今ひとつ破壊力を欠き、中禅寺と並ぶスーパースター、薔薇十時探偵こと榎木津礼二郎の炸裂もない。そういう意味では期待はずれと感じる人がいるかもしれない。 だがその一方で、近代日本の闇を照らそうという方向はより鮮明になった。「平成の横溝正史」はこれから何を描いていくのか。次作への期待もこめて、星5つ。 | ||||
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京極堂シリーズ、邪魅の雫。 よいところ:シリーズ通してのファンとしては、やはり読みたい。 今回は『あの人』の過去、それも女性の影が・・・とても気になる。 ついつい読んでしまう面白さ。読み始めると厚さなんて気にならない。 その辺りは、やはり筆力のたまもの。お見事。考えさせられるところも 多々あり、読後は色々考えて・・・妙に納得したりもした。 悪いところ:今回は少々登場人物に覇気がない。各人物の良くも悪くも 個性的で魅力であるはずの部分が感じられなかった。全体に重く、暗い。 テーマが殺意、邪(よこしま)なココロ、そしてヒトゴロシなのだから 暗いのは仕方ないとして、登場人物の個性まで変わってしまうのは残念。 それらを新たな一面と捉えるにも、少し背景描写が薄い気がしてしまった。 全体に物足りない感が残ってしまったのが個人的には残念だったし、 各人物の心理描写より、京極堂の解体〜再構築のくだりがもっと読みたい。 特に妖怪談義、邪魅についてもっと語ってほしかった・・ぜーたくですが。 それでも大好きですからシリーズは今後も読む!次回に期待で星よっつ。 | ||||
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京極堂物の最新作と言うことで、本屋に並んでいるのを見て、迷わず購入した。読了後に持った感想は「混沌」の二文字である。とにかく読み始めてから、京極堂が出てきて事件の解決というか解説をするまで、頭の中が引っかき回されているような感じだった。何しろ事件の全貌と犯人の目線で述べられている犯行動機のような物まで、すべて書かれているのだが、真相はまるで分からないのである。事件に連続性のあるところから、自分としては前々作にあたる「絡新婦の理」の様な結末を想像もしたのだが、最後まで読んでみると事件の連続性という点では似通っているが、片方が整然と計画的に行われたのに対し、今作品はそうではなく、また違った印象を抱いた。本作品は今までの京極堂物と違い、妖怪などの解説に頁をさいていないし、登場人物も従来よりは少ないので、そこが評価の分かれ目となると思うが、今までになかったコンセプトで書かれた小説であると思う。特にラストで探偵が犯人に下す罰は、なかなか秀逸で、勧善懲悪とは行かないものの、読者を納得させるには十分の結末といえるのではなかろうか? | ||||
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トリックを楽しむミステリーとして読むなら、凡庸かもしれません。文章構成も(僕にとっては)複雑で、人間関係を理解するのに一苦労しました。 それでもすばらしいと感じたのは、 各ページ、各章が独立しながらも、全体の一部をなすという文章構成と個々の事件がつながっていくというストーリーが見事な相似形をなしているからだと思います。 「本」というメディアでしか表現できない、「本」の可能性の一つを示した小説だと思います。 | ||||
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快刀乱麻、 とはいかない。でも好きだ。 いつもなら京極堂登場で、こんがらがった線が一点へと戻る。そこに爽快感があるし、そこに整合性があって読者も納得してきたのだろう。でも今回は点に戻らず、後を引くのである。 事件の全体像が最後には露呈するのだが、それでも完璧には解決していない。それが逆に「京極堂でも解決しないこともある。榎木津だって人間である。」ということを思い返させてくれた気がする。 今回は木場、榎木津、中禅寺などの主要キャストの登場頻度が極端に低い。主にストーリーの筋を引っ張っていくのは益田や青木などの、いわゆる端役と云われる人たちである。それが今までと違って、感情が入りやすかったというのはある。心に迷いの少ない中禅寺や榎木津などのキャラクターよりも、迷いながら答えを見つけていく人物には、やはり感情が入りやすい。 関口も今回は違う顔を見せてくれたし、シリーズ初の探偵の生っぽい部分も見られた。これはこれで何故か少し恥ずかしいが、今作で榎木津を初めて好きになれたのかもしれないと思った。 派手な仕掛けはないが、人間どうしのやり取りが面白い。 地味キャラが好きな人は今作は面白いだろう。 | ||||
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ストーカーやニートという社会問題について。 書評論。流行論。 益田と青木の物語。 藤村のいぶし銀の名演技。 箱根の事件から大きく変化した山下の生き方。 あのアニメへ。 何から手繰っても真実は一つ、と云うことか。 そう云うと藤村は笑った。 「真実なんちゅう洒落た言葉は能う使わんがの、どうであれ、現場でおきたことは一つだろうて(以下略)」(213ページ) 中禅寺と榎木津の出番が少ないと、お嘆きの方へ。 冒頭の6〜12ページの再読を。 欲求不満。落ちます。 | ||||
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久々の新作待っていました。重ねあう不明瞭な事柄に京極堂が名前をあたえ明瞭な形をなす。テンポがあり関係の無い話が実はその話を読み解く重要な鍵になる。・・今回は久しぶりということもありなかなか読み進まなかった・・テンポが無さ過ぎて絡み合う事柄が多い不明瞭、不快感・・つながりが見えない不快感に読むのが辛くなりました(厚いし・・笑)でも気づいたんです今の自分が物語の中で奔走する刑事たちと同じではないかと・・分かるものだと思って読むのではなくて分からないまま読んでみる・・ただ読んでいく。いつの間にか自分がキャラクターの一人になった一体感が現れる。泥のようにだくだくとしていた事件に京極堂が言葉という雫を落とし波紋となって泥のような不快感が透明な形を見せる。・・そして事件に関わった一人のように切なくなる・・。計算された話し方(描き方)だったら脱帽です。・・京極 夏彦・・恐るべし。 | ||||
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不思議なことはなにもない。京極堂の言葉が最後に心に落ちる。そんな作品に感じた。 意図的だと思われるその混沌に、多少の息苦しさを感じながら読みぬければ、 そこには複雑で波立つように見えたものが静かに凪いでいく快感がある。 全てを見てみればその荒いでいるかと思った波形は雫が落ちた時の小さなそれであった。 今回は今までの妖怪を見るような不思議さはなかった。 残ったものは、切なさ。 榎木津の今までとは異なる側面が見ることが出来、中々新鮮だった。 良い作品だと思う。次回作も期待。 | ||||
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スッキリはしないかもと書いておいて評価は5なんですが。ストーリー上、榎木津がほとんど出てきません。京極堂自身も…いつものように沢山出てきてはくれない。スパッと気持ち良く切ってくれない。仕方ないです。今回の話がそういう話ですから。キャラのファンとして言うなら、榎木津と京極堂が話す場面で(1回しかナイけれど)互いの信頼度の高さが良く分かって、とても嬉しかった…かな。あまり色々書くと、ネタバレになってしまいそう(皆さん上手に書きますね) スッキリはしないと言うのは、話がそういう話だからで、決して面白くないとかでは無いです。あのストーリーで、スッキリさせる必要はナイと思うので。ただ、爽快感を求めている人には不満はあるかと(榎木津でなく京極堂シリーズにそれを求めるのはどうかと思いますが) 京極作品は、推理しながら読んで最後にまさかの超どんでん返し!…のようには書かれていないので、途中で犯人が判る推理小説は不満だ!と思われる方には面白くないかと。私も多少は推理しながら読みますが、京極作品は“小説自体が面白くないと意味が無いから、普通に読んでいけば自ずと見えてくる”ように書かれてあるんだと思います。無理やりミスリードさせたりはしないので、元々、トリックも犯人も、途中で判ってしまっても仕方がない!という書き方がされているように思います。まだシリーズを一つも読んでいないという方は、そう思って読まれた方がより楽しめるかと。 | ||||
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本作はかなりプロットが複雑。 また、今まで以上に多くの人物の視点で物語が進行するので中禅寺が最終最後に語る真相まで混乱しまくり。 読了後スッキリというよりも再読しないといかんな〜と言った感じになります。 前作よりもシュチュエーションに特異性が無いので盛り上がりに欠ける印象を持つと思いまが、従前の作品に比べ関口視点もしくはキーパーソンの視点で進行してきた構成から作者が新たな取り組みに臨んだ作品であると評価をすべきではないかと思います。 しかし、ストーリー上仕方ないとはい榎木津の出番の少なさ(3シーン程)等、今までの主要メンバーの登場場面の少なさには残念な思いが残ります。次回期待します。 但し、青木刑事ってこんなに気骨ある人物だったっけ?と感心するシーンなどもあり相応に愉しむ事も出来ます。 矢張り及第点はあげられる内容ですが、通読して来たファンにとっては星は若干減にて評価。 多くの方はシリーズを通読されていると思いますが、未読の方は過去作品を読んでから臨む事をお勧めします。(事件の関連性は有りませんが、今回に於いては「塗仏」を事前に読んでおく事をお勧めします。) | ||||
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待望の京極シリーズ最新刊! 文庫版やらなんやらと出ていましたがファンとして待ち望んでいたのはこの「邪魅の雫」。圧巻の800P。読ませる作家の力の本領発揮というところでしょうか。 小節の冒頭は死ぬか殺すかで始まるのですが、殺伐とした世界ながら魅力あふれるキャラクターが縦横無尽に活躍し、物語は展開していく。すべてが京極夏彦の手の中にあるような、そんな世界観が楽しめます。 連続シリーズで物語が連綿と続き一つの世界を構築しているので、是非とも一作目からすべてを読んで楽しんでほしい一冊。 | ||||
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何やら今回、シリーズの事件年表という とても親切なものが間に挟まっていて(笑) へぇ〜、と関心してしまいました。 凄い普通の感想で申し訳無いのですが、面白かった(笑) 各自の視点から徐々に集まって、最後に読者の中に起きる 「こうでしょ?」「こういうことなんでしょ?!」 という疑問を解くラストが、この長いストーリーを読み切る 原動力になっているんじゃないかと思います。 今作では、榎木津のいつもとは違う面や バカオロカ事、益田くんの内面が丁寧に書かれていました。 また、不思議な事なんてない…、というのが一番良く分かる作品でした。 只、物事は起こっているだけであって 事件というのはそこから人間が連想し、妄想し構築してしまった世界 そんな風に考えさせられました。 人間ってしょうもない生き物なんだよなぁ〜、とか思わすにはいられませんでした。 そういえば今回は木場の旦那がメインで登場しません。鳥口くんも。 まぁたまには二人には穏やかな日常を…と思いながらも 次回作でこいつらが巻き込まれるんだろうなぁ〜とか想像中です(笑) 京極作品は事件に関わった人物が、後々も絡んでくるので シリーズファンとしてはこれも楽しみの一つになっています。 是非「新書」で買って読んでこの「本の重み」を体感してほしいです(笑) | ||||
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いやあ、今回の錯綜振りは中々っス(多分)。『狂骨の夢』以来かも知れません。 最終盤、「探偵(役)に拠る証明」の段階に至っても、実はよく解らないまま進んでたりして…。 主題は――社会学、とか?(私の無知と拙い語彙では説明不能です)。『妖怪大談義』とか、太平洋戦争に関するある方面の資料とかを参照しながら読むと、尚一層楽しめるかも、なんて。 はい。 「真犯人」に見当を付けるのはそれ程難しくない、と思います。でも兎に角プロットがややこしいので、全体の構図を把握するには、矢張り、「あの男」の登場を待ちましょう。 で、最後には矢張り――落ちます。そして――。 青木君が格好良いっス。 | ||||
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今回は定番の妖怪話はありませんでしたが、世界について考えさせられました。自分の考えている自分と他人から見た自分は違う、世界は人の数だけ存在する。皆が自分の物語を生き、他人によって虚構の自分像が作られていく。ある意味で怖いと思います。 | ||||
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気が進まないまま、榎木津がらみの依頼を 本人に内緒で調査する益田と、 行動をともにするいつになく雄弁な関口。 毒によって次々に死んで行く人、人、人。 江戸川、大磯、平塚。 転がる死体は、なぜ増えていくのか…。 毒が使われたということ以外、一見繋がりのない その事件は迷走を重ね、警察は翻弄される。 八方塞かと思ったとき、黒衣の男の憑物落としがはじまった…。 それは推量なのか、事実なのか。 主観なのか、そうではないのか…。 人々は自分の世界で物ごとを捉え、 だから何かを見失う。 それが世界中で通用するのだと勘違いして。 残念ながら、今回は、定番の妖怪話や、 思想・宗教講和は、ほとんど聞くことができない。 けれども、もっと身近で無意識の思考についての 見解や有り様の解説も、楽しく読めた。 定番メンバーでは、益田、関口、青木が活躍。 箱根の事件以来、人が変わった山下も必見だ。 ちなみに、初回限定版についてる特典の小冊子は なかなかおもしろい!! 何しろ作品ごとの解説だけじゃなく、色んな事件の年表とかついてます。 事件自体の年月だけじゃなくて、布石となった出来事まで 書かれているのだ。 大正11年秋、円覚丹、危篤状態の父と再会とか。 関口くん作家デビューとか、京極堂開店とか。 かなり細かくて、こちらも入手する価値あり。 | ||||
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「繰り返される「死」の連鎖。いったい誰が、何のために? そして”あの男”との関係は・・・。 今度の事件は一言でいうと”自分の知っている「リンゴ」と他人の知っている「リンゴ」は、同じ「リンゴ」ではない”ということかなぁ? 一応「京極堂本編」ということになっている本作ですが、一寸出番が少ないんじゃぁ?その割に最後は、しっかりと目立ってますけどね・・・。 本編にはあんまり関係ない(ですよね?)場面で、京極堂が関口に「世間」と「作品」と「書評(評価)」について、諭す場面が大変、興味深かったです。 「小説如きに自分の主義主張なんぞを籠(こ)めようなんてことは、海の水に食塩を入れるようなもの云々」 こういうことを自分の作品に書くってことは??? うーん。今回の榎木津は、ちょっとカッコ良すぎじゃないかなぁ:笑、つーことで星4っ。 PS”ロイヤルバカオロカデリシャス”には笑ロタ。 | ||||
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次々と破談となる榎木津礼次郎の婚約話に何か裏を感じた榎木津の伯父今出川からの真相調査を命じられ、薔薇十字探偵社の探偵見習い益田は成り行きで調査活動をはじめる。 一方、木場ともども降格左遷されていた青木刑事は、本庁・公安・県警本部の合同捜査本部が設置される、不可解な毒殺事件を追っていた。公式的には単独の事件とされながら、上層部は何かを隠蔽しつつ、連続殺人事件として捜査指針を下される二件の殺人事件。しごく真っ当な操作手順を敢えて飛ばす本部の指示と、警察内部の三つ巴の縄張り意識の軋轢の中で、青木は所轄の若手捜査員とともに独自の捜査を進めていく。 そして、長野県警を退職した胡乱な男大鷹は、謎の女から、一人の女の身辺警護を依頼される。 ご存知の面々がそれぞれの思惑の元に集う先は平塚。そして、海沿いの寂れた町にまた新たな毒殺事件が沸き起こる。 大まかな構成はシリーズ通してのフォーマットに則っているものの、京極堂の妖怪講釈が無かったりなど、ちょっと趣向が変わっている。メインで活躍するレギュラーメンバーが地味な2ndリーグの顔ぶれである。が、元あるいは現役の警察関係者で〆られているため、ちょっとした警察小説めいた展開で物語が進むところも、目先の変わったところだ。 事件そのものはそれほど複雑ではなくテーマ性も明解。が故に、ちょっと食い足りない感があるかもしれない。特に、勘のいい人間なら、割合はやばやと実在の事件や「あのヒト」の匂いを感じ取る事だろう。ただし、良くも悪くもその予断は裏切られるので、シリーズ最長編の某作に否定的なファンは途中で投げ出す必要は無いと思う。 というわけで本作、一見さんにはちょっと辛いかもしれない。せめて、『魍魎の匣』、『鉄鼠の檻』、『陰摩羅鬼の瑕』のいずれかは読んでいたほうが良いかもだ。無論理想は、『姑獲鳥の夏』から順番が一番だけれど。 | ||||
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毎回京極堂シリーズではテーマにしているものは変えてくるけれども 今回のテーマは、ストーキングやニートといった 人とのコミュニケーションが取れない人というか、 自分と世界との関わりについてかと感じた。 人には自分の世界というものがあって それは必ずしも他人が見ている世界とは大きく違う。 だから、自分からは非常にイヤな奴だったりしても 他人からすると、とても良い人だと思われてたりする。 つまり、自分が見ている、信じているものが 必ずしも本当の姿とは限らない、ということである。 また同時に、自分の内面に邪な部分があったりもして、 それを普通は理性が働いたりして、世間に出したりしないけれども だが、背中を押す何かが足りないだけなのかもしれない。 それがあったら、邪な部分が周りの世界に対して 表面化してしまうかもしれない。 今回は、自分と周りの世界、自分と自分の邪な内面 との関わり方が手を変え、品を変えて語られていきます。 出てくるキャラクター達もある意味らしいないし、 また別の意味ではらしくもある、という感じでうまく描かれていて 展開としては読めてしまうところもなくはないけれども、 やっぱり京極夏彦はこのシリーズが一番だなぁ、と感じました。 最高とまでは言わないけれども、 久々に楽しく一気に読めたんで、 まぁ、ちょっと評価はオマケということで。 | ||||
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