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(短編集)
砂の女
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【この小説が収録されている参考書籍】
砂の女の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.34pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全175件 161~175 9/9ページ
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昆虫、砂漠、穴、従順な女、太陽。それらの生み出す不協和音がこの作品の底に流れている。そしてその調べが徐々に読者の心を捉え、まるであり地獄のように小説の舞台である砂漠へ連れ込む。読者と主人公はいつの間にか同化し、それが主人公に「逃げ出す」という勢いを与える。強い色彩を持った不毛さ。そんな感じを私は感じた。 | ||||
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この物語は、昆虫採集にでかけた男が砂に埋もれそうになっている町に迷いこむことから始まる。 この町の存在は実世界から見ると理不尽なものだ。しかし、このたった一つの前提―この町の存在を認めること―を除いて、物語は極めて精緻に論理的に構成される。こうした意味で、阿部公房のシュールレアリズムは、非ユークリッド幾何―通常の幾何学の前提を一つだけ変えた世界―のような美しさを持っている。 そして、そのわずかな前提の変更によって、彼は、前提の違いを超えた物事の本質を鮮やかに際立たせるのだ。 | ||||
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イギリスの深夜番組にて、映画版砂の女が放映されていた。 それが安部公房の作品に触れるきっかけとなったのですが、カフカ、サルトル等の実存主義小説に満足できなかった自分にとって正に青天の霹靂でした。 映画以上の圧倒的な”砂の実存”の描写は、読むものに湿気と乾燥を同時に与えてきます。一気にむさぼり読みました。 自由を失い、自己の存在意義を発見する姿は示唆に富むものです。 | ||||
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阿部公房の小説は全体的にみて「恐怖」やそれに似たようなものを取り扱っている感がする。 これも例外ではなくかなり大雑把に要約すれば 「蟻地獄の巣に人間が引っかかったら」みたいなストーリー。 二流作家に書かせたならば「怖いですねー」で終わりなのだが やはりここは阿部公房。 その「恐怖」という感情に「焦燥」やら「絶望」さらには「興味」や 「哀愁」に似たような感情まで表現してしまうのだから恐れ入る。 公房はこの作品を通じて 「[恐怖]という感情はすべての感情の根幹に存在しているんじゃないだろうか」と訴えているような感覚がする。 | ||||
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鬼才・安部公房が贈るカフカもビックリの究極の変態小説。 安部公房という作家の天才性は、 その突拍子もない発想力や観念論的世界観よりもむしろ、 日本的な湿度の高い文体によって表現される徹底した土着的リアリズムにある。 現実の世界と非現実の世界が違和感無く混濁していくさまの圧倒的な「現実」感は、 最近の若手作家が書く観念論のそれのような、 オタク少年が寝っ転がりながら考えたようなリアリティのない綺麗なだけの胡散臭さとは無縁である。 彼の文章からは常に血と汗と精液の匂いがする。 本作のあまりにも艶かしい「女」の描写には当時中学生だった俺もエロい妄想を膨らませつつ興奮したものだ(バカ)。 上記したような意味で、この「砂の女」は、安部公房本来の才能が遺憾なく発揮された 彼の代表作と呼ぶにふさわしい傑作だと思える。 戦後文学を語る上でも基本的な作品の一つなので、未読の方は是非ご一読を。 | ||||
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ストーリーについては詳しくは触れません。 読むだけで寒気がする状況描写に、異質な人間達の行動もうまく捉えています。 今まで考えもしなかった様な非日常に放り込まれた男の変わりゆく心の様は一読の価値ありです。 | ||||
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これほど非現実性を持ちながらも文学としての良さを持ちつづけるところに安部公房氏の力を感じてしまう。常に砂のイメージが不快さを持ちつつも読者に強烈なイメージとして置かれていて、その中で読者も没頭していく。それほど様変わりしない中をあれほど面白く、それで居て日常の狂気を描き出す力。 それに、普通にストーリーとして面白い。読んでいて手に汗を握るシーンもあり、ミステリーばっかり読んでいるという人にも良質のエンタメとしてお奨めできる。世界的にも認められた日本文学の一つ、是非読んでください。 | ||||
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この作品は、安部公房の中で、唯一「普遍的な高み」に達していると思います。というのは、その他の作品の、他人の顔、壁、箱男、密会、方舟さくら丸、そしてカンガルーノートといった作品は、どれも極端な「特殊」の部類に入っているからです。ですから、安部公房の作品を何か読みたい、と思っている方は、是非この作品を読んでみることをおすすめします。文学的な含みがたくさんあり、無限の広がりを見せる作品だからです。多くの比喩にも着目してみて下さい。安部公房の「実験」が、文学的に最高の高みに達したのが、「砂の女」といえるでしょう。(なお、この作品を読んで、安部公房の他の作品にも触れてみるのもよいでしょう。ただし、着想やイメージが極端に特殊化しているので、多少「砂の女」とは温度差を感じるかもしれません。しかし、そんな安部公房の世界を探険してみるのもよいと思いますよ。) | ||||
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日常と非日常 ――― ただの虫好きの内向的な中年が、砂漠で珍虫を追っていくうちに砂漠に暮らす村へと迷い込んでしまう。日も暮れて帰れなくなった主人公は一晩だけの宿泊を求める。村人に案内された宿には女がいた。砂を深く掘り、梯子を降りてその中に住んでいる女。非現実的状況のはずなのに、妙に現実的で生々しい女の描写と、砂穴の描写。砂穴に閉じ込められてしまった主人公だが、日が経つにつれて次第にすべてが日常化してゆく。それは馴化なのか、それとも特化された環境の中で悟る人生への諦観なのか。。。 本を開けてただの文字列を読んでいるだけなのに、なぜか息苦しくなり、口の中に砂を感じてしまう --- それほどの表現力に満ちた作品。この作品は安部公房の作品の中でもストーリーが分かりやすく、頭の中にイメージを創りやすいのではないでしょうか。安部ワールドを覗くには最適の一冊。 | ||||
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砂の中へ閉じ込められるなんて本当に怖い設定でした。主人公が脱走した時は我が事のような気持ちで読みました。ずーっと外に出ることばかり考えていた主人公が、最後の出られる状況になった時に逃げることよりも部落の人に水を溜める方法を自慢げに教えることを考えていた時には人間ていうのは変わるものだなと思いました。それに女が砂の中に留まる理由にも考えさせられました。 | ||||
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安部公房は私が今まで読んだ作者の中でも最もレベルの高い比喩の使い手だと思う。砂に侵食されている家に住む女に対する描写は鋭すぎて同じ女として胸が痛むのだがいい得て妙の感がある。また、学生時代にわからなかった比喩が社会人にになって人並みに辛酸を舐めた今日になってやっと理解できるようになった。私のような頭の足りない人間が表現しきれない感覚を、その独自の鋭い比喩が上手く表現して私を救ってくれるのである。 | ||||
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「罰が無ければ、逃げるたのしみもない」 冒頭に記されている、この言葉の意味がわかったときに戦慄を覚えました。 主人公は、突如として砂の穴の底に閉じ込められ、 人間の尊厳を奪われた生活を強いられます。 その心の中に最後に芽生えたものは、 果たして「希望」だったのか?それとも「絶望」だったのか? 人間の心に潜む暗部に正対し、 恐怖小説とは異なる怖さを感じさせる作品です。 | ||||
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砂に埋もれていく部落という非常に非現実的な世界でありながら、そこに疑問の余地をはさませない巧みな描写は脱帽ものです。最後の一文を読み終わったとき、人間心理の恐ろしさに思わず身震いしてしまいました。この話の終局に向かう過程は次の言葉に集約されます。『罰がなければ逃げる楽しみもない』 | ||||
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学校教師の主人公は灰色の日常、日々の虚脱感、etc.全てから逃れるため、趣味の昆虫採集へ…。男は一時的な日常からの逃避のつもりだった。しかし、思わぬところから砂と戦う愛郷精神いっぱいの村で一軒の家に砂をかき出す労働力としてとらわれてしまう。あらゆる方法で脱出を試みる男、しかし逃亡は失敗。しだいに男は自分が逃げ出してきた日常生活よりももっと虚無的な砂の家での生活に自らなじんでゆく。インテリな男が砂についての分析、一般社会での失踪者の扱われ方、村の人々を分析すればするほど、むなしく、哀れに見える。そして、残酷な女の言葉「かまやしないじゃないですか、そんな、他人のことなんか、どうだって!」。楢山節考と並ぶ恐ろしい日常生活と、人間の精神の順応性!ついに逃げ出せる機会が来た時、男は… | ||||
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ある中年の男が、砂に埋もれかかっている部落に昆虫採集に来るところから物語は始まる。そこで男は未亡人に捕まり、一緒に生活し家を砂の被害から守る手伝いをする羽目になる。徹底した砂のリアリズム描写は読むものを圧倒します。シチュエーションが全くナンセンスであるにもかかわらず、読んでいくうちにこんな部落が現実に存在するのではないかと錯覚してしまいます。非常に深いのでじっくりと読んでください。 | ||||
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