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地下道の少女



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【この小説が収録されている参考書籍】
地下道の少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

地下道の少女の評価: 4.17/5点 レビュー 12件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.17pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全12件 1~12 1/1ページ
No.12:
(4pt)

ミステリー小説の範疇にない。

この作品は、ミステリー小説という範疇ではなく、国家の抱える問題や貧困といった現実に基づいて書かれたルポルタージュという方が近いんだと思う。なので、娯楽作品としての起承転結や、それなりの結末を求めて読んでしまったら、不満が残るかもしれないけれど、人々の経緯や状況と、そして感情をとても冷静に、克明に、描いているので、どんどん魅了されて、私も終いには舞台となった地下道から出たくなくなる。この著者の作品を初めて読んだので、他の作品も読んでみようと思う。
地下道の少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:地下道の少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
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No.11:
(4pt)

<street girl>の悲哀・人権、人身売買という卑劣な犯罪を中心として社会の暗部を多彩な角度で重厚に抉った秀作

作者の作品としては「熊と踊れ」に次いで本作を読んだ(共に共作)。「熊と踊れ」はスウェーデンで実際に起こった事件をモデルにした由だが、本作も幾つかの事実を基にしてはいるものの、社会の歪みを扱った典型的な北欧ミステリである。すると、「地下道の少女=(under)street girl」の人権・社会復帰を扱った作品という事が理解出来る。

まず、地下道で暮らす少女の姿が無記名で描写される。そして、発端となる事件はバスから放り出された43名の外国人少年・少女。素直に読めば、これらの少年・少女は人身売買された<street children>(予備軍?)である。続いて、地下通路(ストックホルムでも地下街が拡がっている)でドブネズミに顔を喰われた女性の惨殺死体が発見される。この女性の身元や<street children>との関係がミステリとしての焦点だろう。また、主人公のエーヴェルト警部の恋人アンニへの思慕は作品に寂寥感・哀切感を与えているとも言えるし、単に物語の進行を妨げているとも言える。これらと並行して、ヒロインの少女がレオという躁鬱病の男に庇護されている事、少女売春をしている事と同時に、レオが巨大ネズミを収集している事が語られる(最後はフェイクだろう、犯人の目星は付いた)。案に反して被害者女性の身元はアッサリ判明するが、その娘ヤニケは父親の性的虐待から逃れるために失踪していた(生きていれば現在16歳)。これで全体が繋がった感がある。裏表紙にある程の衝撃的結末ではないが。

「熊と踊れ」と同様、ミステリとしての回りくどい構成、捜査手法の杜撰さ、推理の切れ味の無さという欠点はあるものの、これらは眼目ではないのだろう。代りに、<street girl>の悲哀・人権、人身売買という卑劣な犯罪を中心として社会の暗部を多彩な角度で重厚に抉った秀作だと思った。
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No.10:
(4pt)

アンダーワールド(地下世界)の物語

福祉国家で名を挙げているスウェーデンの実情がこうだったとは…。
日本は決して偉そうに批判できないが。
東ヨーロッパのルーマニアについては、事実に遠からず、なのだろうと察する。
主人公のグレーンス警部には特に好感をもてない。不幸な背景もちでこの人の人生もひとつのドラマではあるが、まともで有能なふたりの部下との対比で、暗さやしばしば見受けられるクソ野郎ぶりが際立ち、つい、警察よりも地下世界の人たちを応援してしまう。
最底辺の人たち…。互いに干渉せず、知恵があり良識も持ち合わせている。
警察が一般社会の常識でかき回すことによって、終盤不幸な結果が起こった時には、怒りともの悲しさを感じた。
殺人事件の動機やその思いについては理解できる。
結末は余韻を残す終わり方で、その後については読み手に任せるのだろう。個々の価値観や感情があるのでこの終わり方でいい。
独特なストーリーで引き込まれたが、個人的には主人公にもう少し魅力があってもよかったように思う。
地下道の少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:地下道の少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
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No.9:
(4pt)

疲れる

毎回、投げ出したくなる嫌なハナシ。だけれども、やめられない。
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No.8:
(5pt)

地下道の生活

地下に人が住んでいるって日本では考えられないと思いますが、実在する状況のようです。
舞台は北欧ですが、いろいろな国のことがうまく混ぜ込まれて、ミステリアスな空間が形成されていました。
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No.7:
(4pt)

最も大事な、少女の母親殺しの動機が語られていない。

北欧の推理小説は何冊か読んだが、この著者のは初めてだ(共著者のヘルストレムは近年死去)。家を捨てて、麻薬に溺れ、ストックホルムの地下道に男と共に住む16歳の少女が、母を誘き寄せて、残酷な方法で殺す。この殺人事件が発覚するのと同時期に、ルーマニアの浮浪児数十人がバスでストックホルムまで運ばれ、街中に放り出されるという事件が発生する。ストックホルム市警のグレーンス主任警部とスンドクヴィストとヘルマンソン(女)警部のトリオがこの二つの事件を追及する。勤務中の事故で、同僚でもあった妻に瀕死の重傷を負わせたグレーンスは、ここにも時間を割かねばならない。ストックホルムの地下道に多くの浮浪者(ホームレス)が住んでいたのも、ルーマニアの子供が置き去りにされたのも事実起こったことだそうだ。市内に張り巡らされた地下道を住まいとし、焚火で暖をとり、店舗や倉庫に忍び込んで食料を備蓄する生活は実際の調査にもとずいているのだろう。誰が、どういう目的で、薬漬けのルーマニアのストリートチルドレンを幾つかの大都市に置き去りにしたのか、その理由は明らかではない。警部達が、教会や福祉の関係者の協力を得ながら問題を解決するプロセスはそれなりに面白いのだが、最大の不満は、この少女が、何故、職業を持った両親が居る家庭を捨てたのか、何故、母親をこれほど(身体の40個所以上を刃物で刺す)憎まなければならなかったのか、その背景が語られていないことだ。どうも、レズビアンの母の性愛の対象とされことらしいことが仄めかされているだけだ。「地下道」と聞くと、ナチスに抵抗するためにワルシャワの地下水道に立てこもった
悲劇的なレジスタンス運動を描いたポーランド映画「地下水道」(アンジェイ・ワイダ監督、1956年)を思い出す。時代は変わったものだ。
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No.6:
(3pt)

誰にも探されない人たち

真冬のストックホルム、バスに載せられた43人の子供が町中に捨てられた。
一方、病院の地下通路で顔をズタズタにされた女性の死体が発見される。

ううむ、なんか微妙だなあ。
警察側の動向と地下に住むホームレスの話が交互に語られる趣向は、読み進めたくなる牽引力は確かにある。
社会に見捨てられた者たちの生活や心理も興味深い。
でも、これはリアルな警察小説ではあっても、ミステリではないだろう。
殺人の真相と犯人は途中で丸わかりである。集団で棄てられた子供たちは、
誰もが性奴隷にするための人身売買を予測するだろうが、実体はもっとひどい。
大量捨て子事件の真相と高福祉国家にも見捨てられた人たちがいるという事実は、かなりの衝撃だった。
読む価値はある。

社会派ルポのような味わいで、エンタメには程遠い。
主人公のエーヴェルト警部の妻は、事故で頭部に受傷してまともに会話できない状態が二十年以上続いている。
警官にも家庭に事情を抱える人はいるだろうが、主役にここまで重い設定を背負わせる必要があったのか。

全体に重苦しく、陰陰滅滅としている。これが北欧ミステリの特色なのか。
明るくなりようのない話ではあるのだが。「87分署」のような娯楽作を期待する人には、お勧めできない。
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No.5:
(5pt)

事件と同時に、社会の闇が明かされるミステリー。

厳冬のストックホルムを舞台に、殺されて顔を激しく毀損された女性の事件と、薬物依存症の外国人の子どもが多数遺棄された事件の捜査に携わるストックホルム市警の刑事3人を描く。
 重厚な社会派ミステリー。著者の1人は元ジャーナリスト、1人は刑務所から出所してきた人のための支援団体を立ち上げた元服役囚だという。
 2つの事件の連関は必ずしも十分ではないが、子どもが子どもとして生きられない社会(それはヨーロッパの某国にも福祉大国スウェーデンにも存在する)の闇が次第に明らかになるところから目が離せなくなる。ミステリーとしてのいわゆる「謎解き」もきちんとあるが、それは本書の魅力の一部に過ぎない。
 巻末の「著者より」には「この物語で、真実らしくないように思えることは、すべて真実である」とあり、スウェーデンで実際に起きた出来事を題材にしているらしい。
 日本でも児童虐待や居所不明児童が社会的に注目されているようになっている。逆に言えば、これまでは日本も「自分の悪いところには蓋をするのが得意」(登場人物のセリフ)だったのだろう。
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No.4:
(3pt)

印象が薄い

何テーマにしてるのか不明。
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No.3:
(4pt)

かつての日本の社会派ミステリを濃くしたような作品

1960~1970年代あたりの、日本の社会派ミステリを濃くしたような、とも言えるような作品。読後にカタルシスはなく、モヤモヤした気分が胸に残る。

バスに乗せられた外国人の子ども43人が置き去られた事件とに病院の地下通路で発見された顔の肉を何カ所も抉られた女性の殺人事件が並行して描かれる。それぞれの事件の真相、二つの事件の関係性の有無が物語全体の流れだが、中心となるポイントは、ストリートチルドレンの問題。ストリートチルドレンが生まれる背景もさることながら、男女間に格差が存在すること、民間委託の問題点などが浮き彫りにされている。この問題は、高福祉国家であろうがあるまいが避けて通れないようだ。

原著の慣行は2007年。現在はどのような状況なのだろうか。
しかし、近年の北欧ミステリーには力作が多い。
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No.2:
(5pt)

闇に追い詰められた子供たちと老刑事、それぞれの試練の物語

現実に即して書こうと意図した作品には、すっきりした終わりはない。小説題材となる現実を、普遍的な形として世界の記憶に留めようと意図する作家は、読者が求める単純化に応えることは容易にはできない。何故なら現実が抱える問題は、今もなお解決を見ることなく、ずっとそこにあり続けるものであるからだ。だからこそ、この種の作品はどこかで必要とされ、そして誰かに読まれる時を待つ。

 これは子供たちの物語だ。家族に捨てられたり、家族から逃げ出したり。ストリート・チルドレン。北欧では冬を越すためにシェルターや施設に逃げ込む者、連れ戻される者もいる。しかし帰りたくない、逃げ続けたい子供たちの一部は、何と地下道に居住している。地下道で火をおこし暖を取り、暗闇の中で何年も生きる子供たちと、共存する初老の世捨人たち。福祉国家として名を馳せるスウェーデン。そんな国でも公営機関はその種の人々の存在を認めようとせず、見た目の数字だけを誇りに虚像の上に座り込んでいる。

 どこかの国と同じだ。日常的に虐待を受けている少女が、学校や児童相談所に自らの危険を顧みず訴えたにも関わらず、最も危険な家族のもとへ帰されてしまった今年初頭の事件。他人事でしかない問題を、書類という形で右から左へ送るしか能のない公職という実態。逃げ出すべき地下道を見出すことなく、父親に殺されてしまった少女。まだまだ発見されぬこの手の事件がこの国にはもうないと誰に言えよう。日本にも家庭から追い出されたり逃げ出したりしてストリート・チルドレンとなった子供たちが皆無だと誰に言えよう。日本の都市の地下道にも少女たちが隠れ住んでいないと誰い言えよう。

 そうした事件の一方で、ルーマニアから来たバスがストックホルムの街で、ある冬の朝、43人の薬物中毒の子供たちを放り出した。これも真実の出来事。作家はこれに脚色を施し物語の一方に加える。

 シリーズならではの三人の刑事の書き分けも見事だ。60歳を間近にしたエーヴェルト・グレーンス。頑固者を通り越し、もはや偏執狂のサイコパスの領域にありそうなヴェテラン刑事。アンニの病状の変化にぐらつく中でめった刺しにされた女性の殺人事件を追う。妻と息子との生活と刑事としての職務の間のバランスを取り切れていないかに見えるデリカシー溢れる刑事スヴェン・スンドクヴィストは本書ではその人間味をひときわ光らせてみせる。さらに新米捜査官なのにエーヴェルトのお眼鏡にかなった有能な女性刑事マリアナ・ヘルマンソンはルーマニア移民の子として、街頭に捨てられたルーマニア孤児43人の事件を独りで追う。

 二つの事件で、親に捨てられ、薬漬けにされ、精神や肉体を侵された子供たちが多く登場したり、刑事たちがそれを目撃したりする。多くの悲劇が背景にあるのにそれに眼を背ける国の中で、小説が何をできるのかを証明しつつ、絶妙のストーリーテリングで現在と三日前からの過去を往還しつつ、読み始めたら止まらないスピード感と面白さ。今に始まったことではないが、ラストシーンでの驚愕のどんでん返し。暗い題材に眼を向けながらも、飽くまでエンターテインメントとしての王道を行く、本シリーズの価値、健在なり!

 付記:同様の恐怖を感じさせられた作品として、香納諒一作品『絵里奈の消滅』を紹介しておきたい。ある少女の生死自体が社会に痕跡を残さないという事件を題材にしており、ハードボイルド・エンターテインメントとしても秀逸である。
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No.1:
(5pt)

福祉国家とは?

「制裁」から始まったシリーズの国内での最新刊ですが、福祉国家と呼ばれているスウェーデンの表に出せない「裏の一面」をあぶり出している作品です。この作家の他の作品と同じように「見事に解決!読んでスッキリ! とはいきません」北欧諸国が抱える「ストリートチルドレン」の問題を取り上げ、作者は地道な取材活動や関係者へのインタビューを行い真実と小説の虚構の世界を巧みに混在させながら、ストーリーを展開させています。決して明るい話ではないのですが、頁をめくる手を止める事が出来ない作品です。是非、ご一読を!
地下道の少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:地下道の少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
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