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王とサーカス
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王とサーカスの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.83pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全68件 61~68 4/4ページ
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ネパールを舞台に、ジャーナリストの推理劇が、展開されます。 緻密な伏線の張り方には、本当に感心されられました。 おそらく今年のミステリーランキングの10位以内には、入るだろう作品ですが、満願のように上位にランクインするかと言われれば、難しいかもしれません。 ストーリーの展開が、少し単調なので、読んでいてハラハラドキドキするようなストーリーでは、なかったです。 謎も、男の死体は、なぜ上半身裸だったのか?ということのみなので、あまり夢中にはなれませんでした。 しかし、終盤で明かされる伏線の張り方が見事なので、本格推理としては、優秀作品だと思います。 | ||||
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本書は、ミステリー作家の作品であり、後半になってミステリーとしての顛末も含んでいるが、そこに主題はないだろう(だから、著者やミステリー作品としての評価をレビューの軸にすることも私はしない) 小説で過去の日本ではないどこかの事件を題材にすることは珍しいことではない。しかし、2001年にネパールで起きた王族間の殺人は、多くの日本人には知られることもない事件であり、本書が、その事件当時のネパールを舞台として、それも前半は延々と主人公の日本人記者が初めてのカトマンズの街を彷徨うくだりは、作品がどこに向かっているのか読者には不安になるほどに見えない、この感覚は、主人公自身の感覚とも重なるものだろう。 そして、唐突に彼女が遭った一つの死体は、王室での凄惨な殺人事件との関連をうかがわせるもので、それは死体にナイフで刻まれた"informer"密告者という文字が、後半を読み進める読者の脳裏・心を支配し続ける。この点も主人公の感覚と重なっている。 私個人は、ネパールを訪問したことはないが、同様の途上国で旅して働きもした経験から、主人公の感覚は肌で伝わるところがあり、エトランゼの感傷や興奮ということを意識するのだが、主人公には(おそらくは前作での経験があって)そうした気持ちの高ぶりがなく真実に近づいていく。彼女は、彼女も推理できなかった、異国のサーカス芝居を見届ける。実に哀しいサーカスだ、エトランゼたちの感傷や興奮、そして、そのエトランゼを喜怒哀楽をもって見据えるネパール人・・・その後に起きたネパールの政変も含め、それでも主人公は哀しいサーカスを見た思いすら冷静に彼女の中に仕舞っていく。恐ろしいまでの、冷たい感情・・・映像のように詳細に描かれるカトマンズの人々と風景、一方で詳しく描かれながら想像しづらい主人公の心象風景、このコントラストこそが本作の味わい深さだろう。 informerという言葉については、日本人あるいはノンネイティブであれば、情報という単語を先ず意識するだろう。サーカスは、演じる者達の哀しさと、観る者達の浅薄な快楽から成り立っているが、もう1人の存在が不可欠だ。哀しさを快楽にすり替えた商売で銭儲けをするサーカス小屋の小屋主だ。そして、本作でも、あるいは今でも、私達は情報という名のサーカスを楽しみ続けていて、それは、2001年にはその片鱗しかなかったインターネットによって、飛躍的に巨大化している。 「知る」という知的な言葉で糊塗されたサーカスは、世界中の戦争や災害やテロやデモをも飲み込んで肥大化し続けている、そして、世界中の人間が、王の気分を抱きながら、サーカスの観衆であり、あるいはサーカスの演者にも成り得る時代が続いていくのだろう。だからこそ、2001年のカトマンズの片隅で起きたサーカスは、おそらくは世界じゅう~日本の私達のすぐそばでも起き続けている。 最後にもう一つ、サーカスには道化の存在も欠かせない。本作の道化は誰だったのか?このミステリーの答えは、読者一人一人の中で考えられていく難問なのだろう。 | ||||
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日本とは比較的馴染みの薄い南アジアのネパールが舞台。特に前半はネパールの街並みや生活習慣などが語られ、旅情感たっぷりで旅行記を読んでいる気分にさせられます。但し、主人公の同宿の宿泊客に、日本人僧や陽気なアメリカ男子学生、インドで商売をするビジネスマンがいて登場人物からは本格ミステリーの雰囲気は充分です。 実際の王族殺害事件をきっかけに事態は展開し、軍人の殺人事件が発生。ジャーナリストが自らの使命に戸惑いながらも、真実を追い求めていきます。いつもながら、伏線も充分散りばめられ著者のファンの方は楽しめることと思います。 真相自体はオーソドックスではありますが、もう一捻り後の背景にある繊細で微妙な問題が奥深く、それぞれの立場で深く考えさせられる作品でもあります。 | ||||
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正直に言って、ミステリー部分で傑作を期待された方は少々肩すかしをくった気分になるかもしれません。 犯人は意外でもないし、キーワードははっきり読者の記憶に残る形で示されていますし。 ただ真犯人解明の後の、ビターな読後感こそ米澤穂信の真骨頂。 私が米澤作品で読みたかったものが、ここにはあり、個人的には大満足です。 「冬期限定」待ってますよー米澤先生! | ||||
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ミステリとしては著者の他の作品に近く大仰なトリックなどはない。 けれど文章に丁寧に撒かれた伏線を回収していく流れは相変わらず見事。 『さよなら妖精』の太刀洗万智が主人公だがこちらはライトな感じはなく、 ページ数もそこそこあり、多少冗長なところもある。 しかし万智の記者としてのスタンスに共感ができ、 とても魅力的な主人公になっている。 終わり方的に彼女が主人公の物語は以降なさそうではあったが、 もっと読んでみたいと思った。 しかし『王とサーカス』というタイトルにはなるほど考えさせられた。 ストーリー、舞台、結末、登場人物、どれも良かったが、 展開が地味めで冗長なところがあったため、星はマイナス1で。 | ||||
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序盤こそは異国でのロードノベルというのか,『軸』の部分が見えづらくもあるのですが, 何気ない一言での始まりと,その地や人々を見るかのような雰囲気に一気に引き込まれます. また,記者としての仕事や信念を激しく揺さぶられ,自問自答を繰り返す主人公の姿は, 早々に知らされるタイトルの意味と,そこでのやり取りも重なり,内側を鷲づかみにされ, 混乱や恐怖に戸惑いながら,記事と自身の『完成』を求めてあがく姿は強く印象に残ります. 中盤過ぎからのミステリ展開も,メインではないためかいささか易しめではあるものの, 伏線や立てては覆される推理,犯人との対峙まで,どれも充分楽しめるものとなっており, その犯人が残した一言,『本当の敵』の正体や真意と,苦々しさが上塗りされていく終盤は, 主人公だけではなく,サーカスをはやし立てる『観客』の我々にも大きな問いを投げ掛けます. なお,内容紹介や巻頭で綴られた『言葉』,そして何度か挟まれるあの少女のことなど, 『さよなら妖精』を意識させる要素は見られますが,本作との直接の繋がりはありません. それでも,知ること,伝えることなど,あの時から始まった主人公の根底にあるのは確かで, 十年前の出来事,作品自体はさらに昔のものですが,やはり繋がっているように感じられます. | ||||
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「さよなら妖精」刊行から11年。 ベルーフシリーズとして短編はいくつか発表されてきましたが、妖精ファン満を辞しての長編の刊行です。 「~妖精」の本質は守屋路行の物語であると思っているので、今作を正当な続編と称していいのかは分かりませんが 献辞のあの1文が『彼女』へ向けた太刀洗万智の感情だと思うと胸が締め付けられます。 作品への評価、でなくこの書籍へのレビューを素人の自分が書いていいものか、読み終えた後も随分迷いました。 「日記帳」などと揶揄されることのあるAmazonレビューにおいても、この作品を読んだ後では、他人に向けて言葉を 発することの意味や重さについて深く考えさせられたからです。 「報道・ジャーナリズムの在り方」がテーマと言ってもいい今作、作家とジャーナリズムではその性質は全く違うものの、 人に伝えることに自らの人生を賭している米澤さんの文書は痛いほど心に響き、また恐ろしくも感じました。 私自身は決してミステリに明るくありません。米澤作品以外ではいくつかの有名作を嗜む程度です。 そういった人間から見てもこの作品は(悪い意味でなく)ミステリらしいミステリには思えません。 ただ氏がデビュー作である「氷菓」からずっと書いてきたように、謎が見える裏には必ず人や物の介入があり、 そこで垣間見える人の感情や信念や業と呼べるものが、どんなに小さくとも謎を、ひいては事件を生んでいく。 その感情をフィクションとしてではあっても人の心に訴えかけるのが作家という仕事であり、 その感情のもつれを遡って紐解いて解釈し、他人に伝えるのが報道という仕事なのかと思うようになりました。 この作品では前作のユーゴスラビア紛争と同じく、2001年に実際に起こった「ネパール王族殺害事件」をモチーフとして扱っています。 恥ずかしい話ですが、私はこの作品を読んで初めてこの事件があったことを知りました。 私が無知なのは別として、時間と共に人の記憶や関心は風化していく。けれど何かのきっかけに、昔こういうことがあったのだと、 過去に目を向ける意味はあるのだと、日本の戦後70年を迎える今になって改めて気付きを与えてくれるきっかけになりました。 「さよなら妖精」を読み終えた後に、いくつかユーゴ関連の書籍に目を通したのを思い出します。 本質を理解できたとは冗談でも言えませんが、それでもそこに何があり、何故それが起こったのかを誰かが残してくれたからこそ、 数十年、もしくは数百年前の当時の記憶を、読み取る機会になり得るのでしょう。 決して報道そのものを全肯定しないし、出来ません。 それでも巻末での万智の言葉は、自分がその当事者にも、或いはそれを与えてしまう側にも成り得るのだという事実を示してくれた、深い1冊でした。 | ||||
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米澤先生のファンなので、星五つです。 内容は歴史上の事件関わる架空の事件を扱っています。 ミステリとしてはびっくりするようなトリックはありませんが、それも含めて先生らしい物語で楽しめました。 | ||||
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