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王とサーカス
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王とサーカスの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.83pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全68件 41~60 3/4ページ
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かなり以前に著者の「さよなら妖精」を読みましたが、その登場人物の一人である太刀洗万智さんが主人公として登場する作品です。「さよなら妖精」の事件から10年の時を経た2001年、新聞記者を辞めてフリーのジャーナリストになったばかりという設定。知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のために訪れたネパールで展開する物語です。 物語の冒頭は、特段事件も起こらず、けだるいモッタリとした展開ですが、やがて王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発したり、殺人事件に遭遇したりで、テンポが上がっていき、終末部はとても充実しています。読み進めるほどに密度が高まり、惹きこまれていく作品と言えます。(冒頭部のゆったりした展開も、必要な、物語上計算されたものであることが、最後まで読むとわかります。) この物語の背景には、2001年に実際に起きたネパール王宮での殺害事件と世情の混乱が描かれていますし、異国の10年以上も前の風景や空気感は独特で、著者の作風も相まってほの暗い印象のする作品です。私はその雰囲気をとても楽しみながら本書を読みました。 本書はミステリーであるのは間違いないのですが、いわゆる謎解きものではありません。事件の展開を主人公の一人称で語っているため、太刀洗万智の感情や思考、悩みに共感しながら読み進めていく、物語の展開を味わうタイプの作品です。「ジャーナリズムとは何か」を主人公といっしょに考え、「人の本当の生き様はパッと見ではわからない、陰影の深いもの」という感慨を持つ作品です。 (人によって好みはあるかもしれませんが)著者の力量に感嘆する、充実した物語と思います。私は、本書を読み終えてとても満足感に満たされました。お薦めします。 | ||||
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「真実の10メートル手前」と合わせて読んだ。 いつも思うのだけど(つまりそういう色眼鏡で見てしまっているということなのだろうけど)、この作者の登場人物たちはその行動原理がとてもはっきりしている。 「なぜそのように行動するか」だけでなく、「なぜそのような考え方をするか」というところが明確に描かれる。それはミステリの文法なのかもしれないし、米澤さんの文法なのかもしれない。 「犯人を捕らえること」よりも「真実に辿り着くこと」を重要視する姿勢は「氷菓」シリーズや小市民シリーズに通じるところもある(もしかしたらそれもまた一般的なのかも。その程度の読書量です、すみません)。 善意が必ずしも善ではない、少なくとも善意を向ける相手にとっての善とは限らない。 組織における正義、あるいは職種における正義が、すなわち世界の正義とは限らない。 日々を全力で生きるというのは確かに大切なのかもしれないけれど、その拠り所は常に、あるいは時々疑っておく必要がある。 最善手を打ってきたつもりが、どうしようもない袋小路に迷い込んでしまうことだってある。 先の見えない路地を前に、思い切って踏み込むか、予感を察して踏み止まるか、咄嗟の判断をするには、理論を越えた嗅覚のようなものが求められるのかも知れない。 とはいえその嗅覚は、先天的にまとうものではなく、日々の、あるいは重大な場面において身に着けるしかないのだろうな。 | ||||
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とにかく評判がいいので、否が応でも読む前にハードルが上がってしまうのは 本作にとって少々デメリット。 ただ、ハードルを上げ過ぎなければ十分傑作だと思う。 難を言えば、ちょっとマッタリし過ぎ。 終盤にドドッと動き出すが、もっと序盤から引きずり込んで欲しかった。 中盤までは独立したて女性記者の、自分探し紀行エッセイのようでもある。 「うーん、あんまり好みじゃないなあ」と今一つ乗りきれなかった。 最後は思ったよりも深い話で、ちょっと考えさせられる。 サーカスかぁ・・・ でもやっぱり伝えないことには、存在、事象を我々は認知し得ないわけだし。 難しいね。 対象と向き合う都度、伝え手はモラルと想像力をフル回転させて、自問自答を 怠らないでくださいとしか言えないかな。 | ||||
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実際に起きたネパール王族殺害事件を元に、記者の視点で書いている。 ネパールは祈りの国であり、王制だった。 そんなネパールで、国王や王妃らの王族が銃撃されるという、 信じられない事件が実際に起きた。 この事件の真相は、不明のままであるが、 事件の真相には触れず、フィクションにしている。 主人公は「さよなら妖精」で高校生だった太刀洗が、記者として登場。 設定が素晴らしく、それだけで期待が高まる。 ミステリーのトリックとしては、そこそこかと思う。 トリックを期待し過ぎると、物足りないかもしれないが、よく練られている。 遠い国で起きた事件を、どのように伝えるか、をテーマとしている。 「ハゲワシと少女」という報道写真で受賞後に 自殺したカメラマンについて触れた章もあり、 報道か人命か? 読者へ考えさせるが、それ程重過ぎないようにしているようだ。 「さよなら妖精」は盛り上がりがないまま、淡々と進んでいったが、 当著は初めから最後まで見せ場があり、引き込まれる。 | ||||
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2001年ネパールで実際に起きた王族殺害事件を、たまたま現地に居合わせたフリーのジャーナリスト太刀洗万智が、現地で知り合った人々の情報や伝手を使い、綿密な取材を進めていきます。 そして、取材中に、新たな殺人事件に遭遇してしまいます。王族殺害事件との関係はあるのか、犯人の目的は何なのか。 異国情緒ゆたかなカトマンズの街中で、主人公はジャーナリストのあるべき姿を問いかけながら、事件の真相に近づいていくミステリ小説です。 情景描写、心理描写がとてもリアルで、物語の中にどんどん引き込まれていきます。 | ||||
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TVや新聞では日々色々な事を伝えている。世界情勢や国内で起った災害や事件、ゴシップ等多岐にわたる。自分はあまりニュースを見ない。その理由としては自分に関係ない、からである。政治家の汚職やゴシップネタ、世界情勢や事件。学生である自分が知っていないと困る、何てニュースはそうそうないものだと思う。その中でも特に興味の無い事はゴシップネタや事件の部類だ。何故人は自分と関係のない人の不倫や恋愛に関してあそこまで夢中になれるのか分からない。事件に関して何か知ってる事があればニュースで情報提供を求めなくても通報するだろうし、芸能人が結婚したり不倫をしたからといって自分の生活が変わる訳でもない。それでもニュースは毎日色々な事を放送しているし人々ゴシップネタの話に花を咲かせたりしている。この作品に気になる文があったので引用する。 「自分に降りかかることのない惨劇は、この上もなく刺激的な娯楽だ。意表を衝くようなものであれば、なお申し分ない。恐ろしい映像を見たり、記事を読んだりした者は言うだろう。考えさせられた、と。そういう娯楽なのだ。」 「たとえば私が王族たちの死体の写真を提供すれば、お前の読者はショックを受ける。『恐ろしいことだ』と言い、次のページをめくる。もっと衝撃的な写真が載っていないか確かめるために」 「あるいは、映画が作られるかもしれない。上々の出来なら、二時間後には彼らは涙を流して我々の悲劇に同情を寄せるだろう。だがそれは本当に悲しんでいるのではなく、悲劇を消費しているのだと考えたことはないか?」 全ての人がこうである訳では勿論ないが、こうある人がいるのもまた事実だろう。自分は悲劇を消費しているとは思った事はない。だから自分は偉いとか言うつもりは毛頭ない。ただ、悲劇に対して自分が出来る事はあまりにも少ない。その中で自分が出来る事がもしあるならばどんな些細な事でもしようと思う。考えさせられたと言ったり、悲劇を消費したりするのは被害者にとって何にもならないのだから。 | ||||
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エキゾチックな異国情緒たっぷりのシチュエーションでミステリーが展開していきます。 ネパールで実際にあった王族事件をトリガーとして、その関連性を匂わせつつ、ミステリーに入っていきます。 このことにより、ミステリックなストーリーにより深みを与えています。 登場人物が絞られていて、むやみやたらに名前が飛び交って混乱を来たすということがありません。 なので、主人公の動きとその関係人物が明瞭に分かりやすくなっています。 現地の少年ガイドといった震撼ミステリーにマイルドさを添加させています。 413ページ、決して飽きることはないミステリーな展開が待っています。 主人公はジャーナリストですが、後半になるにつれ、もはや名探偵のごとく、事件の真相に迫っていきます。 タイトルにある「サーカス」とは、ラストにその意味が隠されています。 真相を解明していく名探偵役から、原点にもどり、ジャーナリストの立ち位置について一石を投じています。 | ||||
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語彙・教養の潤沢さは、著者の魅力の一つである。本作品も例外ではなく、多くの言葉に出会えるし、日本語の妙も味わえる。 また普段読書をしない(いわんやミステリー小説をや)自分としては、最後の伏線回収はアハ体験-likeな爽快感であった。謎解き後には登場人物の見え方が変わるので、二度読み待った無しの作品。ただ、熟練のミステリーファンと思しき方々のレビューを見るに違った感想が得られているようなので、読書経験を積んでからまた読み直したい一作である。 | ||||
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いろいろなところで、評価されているので読みたいとは思っていたが、なかなか手を出せないでいたが、読んでよかった。 ベースがきちんとしている上質な文学だと思った。 ミステリーというくくりでとらえたくないと思う。 米沢穂信さんは、力量のある作家さんだと実感。 | ||||
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2001年に、実際の事件であったネパール王宮事件 を題材として描かれていて単純に面白かったです。読みごたえも充分でした。 | ||||
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知ることは尊いのだろうか? 『さよなら妖精』にも通じるテーマがここにあった。 | ||||
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さよなら妖精もそうでしたが、氷菓や小市民シリーズと比較するとシリアスな内容です。 さよなら妖精に出てきた大刀洗万智が主人公で、フリージャーナリストとなった彼女が 外国の地で事件の取材をする中で、謎を推理し解いていく内容です。 米澤さんの作品は、言葉で表現し難い人の内面や心情を描いたものが多く、そこが大きな魅力だと思いますが、 王とサーカスについても様々な人々の表には出さない心情が描かれていきます。 きちんと伏線が張ってあるので薄々そうではないか?と展開が読めてしまったのが 少し残念だった点。また、氷菓のような作品を期待している人には少しズレを感じるかもしれません。 氷菓が好きなら小市民シリーズの方をお勧めします。 | ||||
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帯まで麗しく本品の状態も素晴らしい。 機会があればまた利用したい店舗です。 | ||||
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読んでいる自分まで海外旅行をしているような気分にさせてくれる導入から、どんどん不穏な展開を見せていく中盤、深い余韻が残るラストまで、文句のつけようがない傑作。 2001年にネパールで実際に起きた王族殺害事件を題材にしていて、あの『さよなら妖精』の太刀洗万智がジャーナリストとして事件を追っていく、というもの。 特に軍人との会話のシーンが素晴らしくて、『王とサーカス』というタイトルにも込められているメッセージ性が深く心に刻まれる。 ミステリーとしての面白さももちろんだけれど、小説として、いいものを読んだ、という感じ。 ミステリーランキングを総ナメしたというのにも納得しました。 | ||||
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実際にネパールで起きた事件をもとにその時間軸にそって物語は進んで行く。 フリーライターの太刀洗がその場で出くわし、それを記事にすることと、それを利用しようとする者の駆け引きが事件を起こさせる展開が見事。 様々な所にその鍵が織り込まれており後から「あー」と思わす作品です。 | ||||
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タイトルの謎めいた響きと表紙写真の世界観に惹かれて、どこの何の話か分からずに読み始めてしまいました。 これが堅苦しい文章だったら、すぐに閉じてしまうところでしたが、のど越しの良い文章と、想像を掻き立てる表現の連続で、本当にスパイスの香りがしてくるような気がしました。 途中では無性にチャイが飲みたくなったりして、読んでいるだけなのに何かを体験しているような気にさせてくれる文章でした。 アジア旅行好きなら楽しめるところが多いし、国際情勢や地球規模での善悪を哲学するのにもおすすめです。 | ||||
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ネパール王族殺害事件が題材の割には、緊張感が伝わってきません。 読んでいて中だるみします。 ミステリーとしては古典的で、ドキドキすることはありません。 だから最後が気に入るか、そうでないかで評価が分かれると思います。 僕はよかったと思います。 | ||||
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期待以上の出来でした。特に、テーマの生かされた、ラストで示される犯人像がすばらしく、笠井潔の名作『バイバイ、エンジェル』に通じるものがありました。 本作のテーマを「他者の現実的悲劇を報ずることの、ジャーナリズムにおける正当性」の問題だと限定的に理解する読者は少なくないでしょうが、本書のテーマの射程はもっと遠く広く「善かれと思ってなされるすべての行いが、必ず一部の誰かにとっては迷惑であり悪でしかないという現実。にもかかわらず、私たちはより善きことをなさねばならないという決断において、ある意味、冷たい(避けられない犠牲を容認する)心を持たないではいられない」という、苦い人間認識が示されていると見るべきでしょう。 また、これは「面白い娯楽作品を提供すること、享受することの、負の現実的側面」の認識という作者自身のジレンマにも直結する、誠実な問題提起だと言えるでしょう。 作者のこの生真面目な誠実さに最大の敬意を表しつつ、ここでは世界の現実と向き合って闘った神学者カール・バルトの『急ぐことと待つこと』という言葉を贈りたい。 私たちは、このいかんともし難い現実に対して、つねに今ここで対処しなければならない。しかし、それが人間のすることであれば、当然その不完全性によって悲劇を招くこともある。だがしかし、そこで絶望するのではなく、私たちはそれが真に結実する時を「待つ」心(希望)を持つべきなのです。作中でも描かれているとおり、それが開き直りや傲慢に陥らないよう、最大限に「気をつけ」ながら。 | ||||
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「さよなら妖精」の語手は男子だったような記憶が有るが・・・ あちらはユーゴスラビア崩壊で、こちらはネパール王族殺害事件。 ネパール王族殺害事件の正式見解は疑問だが憶測することは可能なのでミステリーはこちらではない。 王に対する敬愛とマオイストとの内戦の危機がユーゴスラビア崩壊と似ている所で「さよなら妖精」と読後感が似ているのかな。 遠い外国での報道が自国の悲劇を消費しているだけとか、情報の取捨選択を行って記事を作成することは、自身の見識が露わになるとか納得できるな。 短編集も購入してみよう。 | ||||
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同じ世界線である作品「さよなら妖精」において、キーパーソンとなった少女「マーヤ」は、現在の大刀洗の人物形成に影響を及ぼした過去のアイコンとして描かれる程度であり、2つの物語の間には連続性と言えるものがないので、単なる「女性ジャーナリストを主人公としたミステリー」と考えれば未読者にもとっつきやすいのではないだろうか。 本編に触れると、舞台はカトマンズにあるホテル「トーキョーロッジ」。日本でも知られるネパール王室事件の裏側で行なわれていたある殺人事件を巡り、日本人ジャーナリスト大刀洗万智、そしてホテルの従業員や同宿人、ネパール政府高官、土産売の少年らが絡み合い、一度収束したはずの事件は思わぬ真実へ辿り着く。終盤で、ある人物の胸中から絞り出される言葉が、大刀洗と私の胸に重く伸し掛かり、「王とサーカス」というタイトルの本当の意味を知る。大胆な推測と、冷静な分析・綜合から真実を導き出す米澤先生らしい手法は健在で、派手さはないが良質のミステリーであり、先生の作品の常である、苦い薬を飲み下したような読後感を与えてくれる。個人的には今年の佳作に認定したい。 追記 匂い立つような街の風景や、独特の習俗の中で生きる人々がリアルに描かれていたので、てっきり取材に行かれたのかと思っていたが、とある文芸雑誌で先生が一度も訪問したことがないと発言されていてびっくり。見もせずにこれだけ現実感を持った描写ができるのはさすがだと思いました。 | ||||
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