■スポンサードリンク
夜歩く
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
夜歩くの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.57pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全28件 1~20 1/2ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
知り合いがCarr Graphicを出しまして、順番に読むことにしました。 このKindle版は訳が古いので、出来れば新訳をお薦め! ただ、Carr Graphicの絵を描かれた森咲さんの絵を見ると、自然と作品世界に入れました。 古典物を読むのに必須なのはその時代入り込むことだと思いますが、普段からTV等で情景等を頭に入れているので、姿形、風景も浮かびます。 森咲さんの手腕はもちろんですが、カー自身も色々沢山描き込んでくれています。 今でも翻訳本は役一年位かかるのに原作と同じ年に出て読めたと言うのは、当時のミステリーファンやカーマニア(ファン)にはたまらなかったと思います。 新訳であれば五つ星にしたと思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ご存知のように、ジョン・ディクスン・カーのデビュー作です。 これがもう初めからスゴイのだ。構成力・登場させるキャラクタ・発せられるコトバ、全てがもう、ジョン・ディクスン・カーとして完成している。そして、1930年作品だというのに、全く古さを感じない。 ここまで読んできて、ジョン・ディクスン・カーというヒトは、ホントに歴史中心に素養が満ち満ちているのが感じられる。だから、素晴らしいフレーズが随所に散りばめられているのだ。 で、ついに昨日は、この小説の謎を解いている夢まで見てしまった。 主人公は、アンリ・バランコン。カーが最初に作り上げた探偵は、とてもクールでカッコいい。これがどうしてフェル博士やH・Iのような探偵に移行したのか、ちょっと不思議ではある。ふたりとも、丁度この小説に登場するグラフェンシュタイン博士みたいだ。 そして、たまらなく映像的だ。だから夢に出てきてしまったのだろう。もう最初から素晴らしい。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
バンコラン・シリーズの第1作『夜歩く』は1930年の作品、1927年のパリが舞台です。 どぎついまでの怪奇趣味や不可能犯罪など、ミステリーとしては結構楽しめます。 しかし、和爾桃子さんの翻訳には、首をかしげる点が多すぎます。ちょっと、読んだだけでも ・・・・・・ P12「小ぶりな口ひげと黒くとがったあごひげに、ほの笑いをひそめ」 ・「ほの笑い」という語は初めてみました。『精選版日本国語大辞典』には載っていません。「ほの暗い」という語は一般的ですが、接頭語「ほの(仄)」は「動詞や形容詞などの上に付けて、かすかに、また、わずかに知覚されるなどの意を添える。」とのこと。文法的には合っているのかも。 P15「小耳にはさんだその関連の噂がいやな感じで耳朶に蘇る。」 ・「小耳」と「耳朶」の対照の妙が実に印象的です。要するに、思い出したってこと。 P16「レストラン内には、壁面装飾の薄っぺらい華やぎ相応にしまりのない人びとが群れていた。」 ・難解な修飾をさりげなく表現しているところが、まことに感動的。 P16「カラーにうずもれたあごをやおら動かして口を開くと、ブロンズ色の大きな口ひげが動きにつれてもふもふそよぐ。」 ・出ました! 「もふもふ」! 私は「もふもふ」は初見でしたが、『デジタル大辞泉』にはちゃんと載っていて、副詞・形容動詞として「動物の毛などが豊かで、やわらかいさわり心地であるさま。」だそうです。でも、これには「補説」があって「2000年代後半頃から広まったとみられるインターネットスラング。」と書かれています。21世紀の新訳にふさわしい名訳ですね。ちなみに、これはバンコランの友人で語り手であるジェフ・マールの記述です。 P21「このムッシュウ・ローランは新婚まもない妻を襲った―確か得物は剃刀でしたよ。」 ・「凶器」などという俗な訳ではなく、「得物」というのが素晴らしい。お前は武士か。 P25「警官一名による目撃があるんだよ。」 ・ふつうに「一人の警官が目撃していたんだ。」と訳さないのが、この訳者の面目躍如たるところか。 P29「にしても、困ったものだ。」 ・バンコランのセリフですが、「にしても、すごい訳だ。」 ・・・・・・ この翻訳者の魅力を語り出すときりがないので、このへんでやめておきます。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
デビュー作って名作揃いが多い印象だが、これは無理。カーの作品は好きだが、これは肌に合わなかった。バンコランの人物像は苦手。トリックも何もない。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
期待して読んだらあまり好みじゃなかった。 できるか、それ?と思ってしまう。 雰囲気はおどろおどろしくていいけど、フランスが舞台だとミステリーは苦手だとなんとなく感じてしまった。 予備判事ってなにする人? | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
パタリロを思い出す(笑)。 犯人探しがもたもたしてる印象だし、被害関係者も自分の身をガチガチに守ろうとしてないし これはどーゆーことなんだろうなぁ~と思ったら、そんなことでしたか、みたいな。 人物の入れ替わりとか、諸々の趣向もございましたが、犯人はヤツってことが分かった時点で 最初の方見返す必要もないな・・・と。 だって、”小説内の事実”を語ってる必要性がないんだもの。 3作ほど読んでの結論は早いかもですが、どうもカーは自分に合っていないようだ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ヴァン・ダインがその最高傑作『僧正殺人事件』を上梓し、エラリィ・クイーンが『ローマ帽子の謎』でデビューを飾ったのが1929年。その翌年(1930年)、ジョン・ディクスン・カーが一足遅れてプロ・デビューしたのがこの『夜歩く』によってだった。 舞台はフランスはパリ、探偵役はパリ警視庁のトップにして予審判事(なんだか警察と司法の分立に反するような気がするが・・・)のアンリ・バンコラン。ワトソン役の語り手がバンコランの若い友人の米国人ジェフ・マール。 かなり前に旧訳版を読んで以来の再読だが、処女作という点を別とすれば、カーの諸作の中では平均点という感じ。 後にカーの専売特許となるゴシック的な怪奇趣味や不可能興味はすでに横溢していて、ル・ガル(人狼)伝説といったイメージやポウの『黒猫』を模した趣向で恐怖を煽るが、これらのアイデアや仕掛けが全体のプロットと有機的に連関しているとはちょっと言いにくい。 密室のトリックもカー全盛期の豪華絢爛たる(?)トリックに比べるとずいぶん呆気ない。犯人も、かなり直截な伏線によって、「お前が犯人だ!」と言うかなり前からバレバレだ。おまけにエンディングもちょっと投げやりな感じ。 ヴァン・ダインやクイーンのニューヨークを舞台にしたモダン・ミステリに対して、始祖エドガー・ポウに回帰するごとくパリを舞台にとり、フランス人を探偵役に選んだカーのこの処女作だが、後にイギリスに舞台を移すにしろ、カーにとってヨーロッパというトポスがどういう意味合いだったのかは、興味深い問題だ。 それにしても、シド・ゴルトンというアメリカ人の極端に戯画化されたキャラクターや、ただ騒々しいだけの音楽として毛嫌いされるジャズ演奏、といった描写からは、カーのアメリカ批判というよりは、何だか自身の深い根っこにあるアンビヴァレンスが見え隠れして怪しい・・・。 一度、カーの伝記(『奇蹟を解く男』)を読んでみようかなという気になった。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
誤訳、抄訳、翻訳者の資質などで評価が高まらないカーだが、近年新装版として発刊されている作品はその評価を変えている。この作品も以前の物と比べて非常に読みやすく良い。カー作品は従来駄作とされていた作品も新訳で読むと、決して駄作でないことが判る。パンチとジュディなどはその典型である。 恐怖は同じ、ハイチムニー荘の醜聞など絶版になって久しい作品の新訳を希望するのは私だけではないだろう。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
カーの本を現在入手できる物は全て読んでいます。 夜歩くも西田、井上、文村氏と現在もオークション、古書店等で入手できます。 各訳者の違いによって作品の評価も変わると思います。 さてこの訳ですが、分かりにくい表現の訳文が多々見受けられます。 たとえば、挙措の奥だとか、耳朶に蘇るとか、普通に、立ち居振る舞いとか 耳にしたのを思い出したとかと、 訳すほうが圧倒的に読みやすいのではないかと思います。 登場人物の話し言葉と情景描写のギャップに違和感を感じました。 あと単位のフィート、インチはメートルに直すぐらいの気配りは必要かと思います。 早川ミステリ文庫版の文村氏の訳が読みやすかったです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
原題 It Walks by Night 1930年に発表された記念すべきカーのデビュー長編。前年にはヴァン・ダインが『僧正殺人事件』、同年にはハメットが『マルタの鷹』を上梓した、まさにアメリカミステリ黄金時代の真只中であった。 初刊行時には後半の1/3を封印した形式だったという本書はベストセラーとなり、一躍カーは流行作家の一員となった。 読者を惹きつけて止まぬ波乱万丈な展開、グロテスクな残虐味、強烈な不可能犯罪興味を備えたサービス精神に満ちた筆致はとても二十代で書かれた作品とは思えないほど堂に入ったもので既に後の巨匠としての力量の一端を発揮している。(原型となった中編「グラン・ギニョール」の初稿は23歳の時に執筆されたという) 若きカーが愛し憧れ、本書において妖しく活き活きと描かれたパリを舞台に、闇を徘徊する人狼の様な殺人鬼…作中言及されるポオやド・クィンシーの如きデカダンスなイメージで彩られた猟奇的な物語の展開は後年の作品よりも更に濃厚なロマネスクを感じさせる。 そしてフェル博士やメリヴェール卿のようなユーモアや人情味といった属性を持たない探偵役アンリ・バンコランの冷酷な個性は本作の妖しい雰囲気に見事に合致し引き立てる一因となっている。 大胆なメイントリックと見事に散りばめられた手掛かり、ドラマチックな構成は『三つの棺』(1935年)や『火刑法廷』(1937年)といった代表作には及ばないものの、若き日のカーの闊達な才気を堪能出来る魅力を持ち、手元にある旧訳(ハヤカワミステリ文庫 文村潤訳)と比べても格段に読み易くなった新訳版で改めてそのスリリングな真価を味わえる。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
代表作の一つに数えられることもある、カーのデビュー作。しかし、後の作品を読んだことがある人が期待し過ぎて読むと、少しガッカリかも。 トリックは現代人から見れば凡庸、否、むしろ無理が多いという印象ばかりが残ってしまい、犯人も含め、見え見えの感が強し。 また、全体的には不気味さが漂いながらも、カーの真骨頂とも言うべき、オカルト趣味が出ているわけでもない。 だから、カーの未熟さが強く感じられる作品であることは否めず、ガチガチの本格派を読みたい人には物足りないだろうし、 ましてや後のカーの名作と比較してしまえば目も当てられない。 しかし、プロットやトリック等も含めて、後のカーの作品に繋がる片鱗は垣間見れるし、何よりも、ストーリーテリングはさすがで、 話としては面白く、グッと惹き付けてサクサク読めるという魅力があり、本格派風の軽い読み物と思えば、十分に楽しめる筈。 そこで、これらを全体的に考慮すると、星三つ位が妥当だろうが、カーのファンで原点を知りたい人にはもちろん、 気軽に本格派を読みたいという人にも、それなりにオススメできる作品ではある。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
カーの記念すべき長編デビュー作(1930年)。探偵役は、初期5作品に登場する予審判事アンリ・バンコラン。 サリニー公爵とルイーズ・ローランの結婚式当夜、サリニー侯爵が首を切られた死体で発見された。犯行時、殺害現場は、バンコランと部下の刑事が出入り口を監視していたため、密室の状態であった ・・・ カーといえば密室殺人と怪奇趣味。 怪奇趣味の方は、ルイーズの元夫 ローランが狂気にかられ、狼人間となって二人をつけ狙うという前振りがそれっぽい。もっとも、狼人間という言葉が出現するのは最初だけなのだけど。 いたってオーソドックスな密室ミステリと思いきや、ばら撒かれた数々の謎は、どこか匂い立つようなエロチックな要素もあって、独特な雰囲気を醸し出している。 整形で顔を変えた殺人嗜好のあるローランの影。サリニー公爵の、首を切り離された胴体の奇妙な格好。現場付近の小室に残された「不思議の国のアリス」。殺害現場の上層階の半裸の美女。そして、第二、第三の死体。第三の死体は、ポーの黒猫を想起させる。これらの謎解きの妙味が、最後まで読者を惹き付けていくだろう。 癖もので、腹に一物ありの登場人物たち。なかでも、バンコランの傲岸さや底意地の悪さが、小気味良い。 「24時間で解決できぬ事件はない!」と言い放つ(でも、そのとおりにはならない)、男女の親密な会話を平気で盗み聞して嘲弄する、密室トリックの証人に仕立て上げられているにもかかわらず悪びれない。ラストの真犯人への追及のドSっぽさが際立っている。 密室の謎は、真相が暴かれるまで、さっぱり分からなかったが、「そうきたか〜」というのが正直なところ。すべてがスッキリとはいかなかった。でも、謎に絡めとられてワクワクしたし、楽しい時間を過ごせたのは確かではある。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
創元推理文庫版は新刊で購入できないようですから、この版で読むしかないんですが、創元推理の井上一夫訳より、より現代的で読みやすい印象があります 後年の凝ったミステリに比すればマイナス点もあるでしょうが、処女作ゆえの熱っぽさみたいなものが充満している作品です ミステリファンの方はぜひどうぞ | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
アレクサンドル・ローランは、 妻ルイーズを殺害しようとして、 数年前、精神病院に収容されました。 彼は、今般ルイーズが 公爵のラウール・ド・サリニーと結婚するという噂を聞きつけ、 病院を脱走します。 「狼人間」となりパリを徘徊する彼に、 サリニー公爵が命を狙われているとの依頼を受けた 予審判事アンリ・バンコランは、 ケ・ド・トーキョーのはずれにあるレストラン、 フェネリの店に赴くのだが・・・。 不可能犯罪ミステリの巨匠、 ジョン・ディクスン・カーの処女作は、 そんな展開で幕を開けます。 果たして、フェネリの店の2階、カード室で、殺人事件が発生。 首を切断された死体が発見されるのですが、 これはもちろん「密室殺人」。 カーならば、当然ですよね。 正直なところ、この作品、傑作とまではいえません。 密室トリックも、カーにしては、 独創性に欠けるような感じですし、 意外な犯人の設定も、作品発表の1930年には、 すでにありきたりであったのでは、という印象を受けました。 それでも、後年の作品への萌芽となるような 作風を兼ね備えたミステリであることは間違いなく、 カーが好みの方なら、 是非読んでおくべき一作といえるでしょう。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
怪奇趣味や猟奇性を煙幕にすることで、読者の目を真相から逸らさせるという カーお得意の手法が、処女長編である本作でも、遺憾なく用いられています。 特に、整形手術を受けて顔を変えた狂気の犯罪者(被害者の妻の元夫)を“夜歩く 人狼”と大時代的に見立てているのは、カーの面目躍如といえるでしょう。読者は、 そうしたファンタジックな人物像と、真相のギャップに驚かされることになるのです。 また、解説でも指摘されていますが、本作の主眼である“密室からの犯人消失” のトリックを、カーは後のいくつかの作品のなかで、手を加えて再利用しています。 カーのトリックの基本を知る、という意味でも、本作は必読といえるでしょう。 ちなみに、本作は、メロドラマの部分が必要以上に濃厚というか、エロいのですが、 それが単なる装飾にとどまらず、犯人の静かな狂気を引き立て、その動機に説得 力を与えているところは、良くできていると思いました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
怪奇趣味や猟奇性を煙幕にすることで、読者の目を真相から逸らさせるという カーお得意の手法が、処女長編である本作でも、遺憾なく用いられています。 特に、整形手術を受けて顔を変えた狂気の犯罪者(被害者の妻の元夫)を“夜歩く 人狼”と大時代的に見立てているのは、カーの面目躍如といえるでしょう。読者は、 そうしたファンタジックな人物像と、真相のギャップに驚かされることになるのです。 また、解説でも指摘されていますが、本作の主眼である“密室からの犯人消失” のトリックを、カーは後のいくつかの作品のなかで、手を加えて再利用しています。 カーのトリックの基本を知る、という意味でも、本作は必読といえるでしょう。 ちなみに、本作は、メロドラマの部分が必要以上に濃厚というか、エロいのですが、 それが単なる装飾にとどまらず、犯人の静かな狂気を引き立て、その動機に説得 力を与えているところは、良くできていると思いました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
英米のミステリー黄金時代に活躍した偉大な怪奇と密室の鬼才カーが1930年に著した戦慄の処女長編小説です。本書はフランスのパリを舞台にしてパリ警視庁の大立者と呼ばれる予審判事アンリ・バンコランが探偵役を務めるシリーズの第1作です。彼は著者の生み出した名探偵フェル博士やH・M卿程に有名ではないですが、やや面白味には欠ける物の明晰な頭脳と俊敏な行動力を備えた迫力を感じさせる紳士探偵です。 精神異常者ローランは妻ルイーズを殺そうとして捕まり精神病院に収容されるが、数年後に彼女がサリニー公爵と再婚しようとしているとの噂を聞いて脱走に成功する。ローランは整形手術により顔を変え、公爵の命を狙い夜な夜なパリの街を徘徊する狼人間と化す。そして結婚式の夜、密室状況のホテルの一室で恐ろしい事に首をはねられた死体が見つかる。 本書は著者の好む怪奇趣味が際立ち残酷の域にまで達しており、「不思議の国のアリス」の本とポーの有名な怪奇短編が小道具として効果的に使われています。著者にとって初の密室トリックは、さり気なく一瞬を誤魔化す巧妙な仕掛けで種が明かされるまでは難攻不落に思えるでしょう。作中の現場見取り図と時間表が重要な手掛かりですので貴方もぜひ挑戦して下さい。本書のミステリーとしての素晴らしさは、事件が実は見掛けとは根本的に全く違う物語だという点で、表面上の筋書きの裏側で仕組まれていた真相の凄まじさに完全に圧倒される事でしょう。そしてバンコランが意外な真犯人に自白を迫る最後の場面では、ある意味人狼よりも恐ろしい残虐な人間の性が強く心に刻まれ、思わず全身が総毛立つような思いに震える戦慄を禁じ得ないでしょう。本書には著者の処女長編に賭ける強い熱意と意気込みが感じられ、見事なトリックの魅力に加えて人間の狂気に満ちた恐るべき愛憎と情念の世界を描き切った意味で、誠に忘れ難い鬼気迫る傑作だと思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
本書はパリを舞台にアンリ・バンコランが登場するカーの処女作で、人狼伝説をベースに密室内で首切り殺人が起きるというスプラッタ・ホラーの「はしり」のような作品で、肝心の人狼は言葉だけが2、3登場するだけと尻切れトンボの感じはするものの全編に恐怖感が漂い、加えてポーの作品からの引用や『不思議の国のアリス』の本を小道具に使うなど、作者の趣味に満ち満ちた作品である。 (ちなみにポーとアリスの組み合わせは、『帽子収集狂事件』において別の形で再現されている。) バンコランは、読者には推理では到底わかりえない人間関係を次々に明るみに出すというような、いわば前時代的な超人的名探偵で、同じフランスを舞台にしたルルーの時代の作品に逆行したかのような感がある。 作品の核をなす密室トリックについては実に鮮やか、と言いたいところだが、もしもカード室のホール側のドア正面にフランソワ刑事(あるいは他の人)がいればそれだけで露呈するもので、偶然に頼りすぎている。急場しのぎのトリックならともかく、計画的犯行でこのようなリスクの高いトリックを用いるものはいないだろう。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
本書はパリを舞台にアンリ・バンコランが登場するカーの処女作で、人狼伝説をベースに密室内で首切り殺人が起きるというスプラッタ・ホラーの「はしり」のような作品で、肝心の人狼は言葉だけが2、3登場するだけと尻切れトンボの感じはするものの全編に恐怖感が漂い、加えてポーの作品からの引用や『不思議の国のアリス』の本を小道具に使うなど、作者の趣味に満ち満ちた作品である。 (ちなみにポーとアリスの組み合わせは、『帽子収集狂事件』において別の形で再現されている。) バンコランは、読者には推理では到底わかりえない人間関係を次々に明るみに出すというような、いわば前時代的な超人的名探偵で、同じフランスを舞台にしたルルーの時代の作品に逆行したかのような感がある。 作品の核をなす密室トリックについては実に鮮やか、と言いたいところだが、もしもカード室のホール側のドア正面にフランソワ刑事(あるいは他の人)がいればそれだけで露呈するもので、偶然に頼りすぎている。急場しのぎのトリックならともかく、計画的犯行でこのようなリスクの高いトリックを用いるものはいないだろう。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
有名な作家ですが、処女長編のためか まだまだ文章が「甘い」感じを受けました。 なぜそう思えたかと言うと、 ある程度読みなれた人が読むと大体犯人などが 読めてくるためです。 ただ、ラストの人物描写はとてもすばらしく、 人間の弱さ、と言うのを存分に感じることが出来て なかなか作品としてはよくまとまっています。 やはりトリックの甘さ、がマイナスですね。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!