三つの棺
評判
三つの棺の評価:
3.86/5点 レビュー 51件。 B ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全56件 21〜40 2/3ページ
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三つの棺の評価:
3.86/5点 レビュー 51件。 B ランク
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フェル博士は密室講義は密室トリックが体系的にいくつかの基本パターンに整序できるものであることを明らかにしました。そして講義に際してフェル博士は「今回の犯罪もそのどれかに属さなければならない。どれほど変化しようと、いくつかのおもだった方法のたんなる一変化形にすぎないのだ」と宣言しました。この「今回の犯罪も」という短い言葉には「これから現れるであろう優れた密室ミステリーはいずれも」というニュアンスが含まれます。そして実際、後に現れた「ユダの窓」「本陣殺人事件」「見えないグリーン」「斜め屋敷の犯罪」といった内外の傑作群が、いずれも「おもだった方法の一変化」によって書かれていることを思えば、フェル博士の宣言はまさに卓見だと言わざるを得ません。主要なトリックのパターンが出尽くしたと思われる今となっては、いたずらに前例のないトリックを創ろうと重箱の隅をほじくるよりも、よく知られた基本パターンを物語の中に上手に隠れんぼさせることで意外性のある密室ミステリーが産まれてくるという指摘は、後進の密室作家にとっては最も重要なものでしょう。そしてカー自身が本書で、その理論を実践して作り上げたトリックは、教会の鐘の音が解明する大どんでん返しを含め、まさにその隠れんぼのお手本となる見事なもので、再読、再再読して、その精緻さと企みの深さを味わうことができます。また、現代の意欲的な密室作家の創作が、この密室講義の補完や総合的な超克など、密室講義への挑戦を原動力に動いていることも忘れてはならないでしょう。プロ作家やミステリーマニアが、最も深い関心を寄せ続ける密室ミステリーであるのは当然のことと思われます。
しかし、ミステリー史上、最も重要な作品のひとつである本書も、これを物語の出来映えから評価すれば、残念ながら2流作。トリック作りのみに拘ったせいでしょうか、設定の上手さや、怪談や笑劇を交えたストーリーの楽しさ、テンポのよさなど、物語に説得力を持たせる要素があまりにも後退しすぎています。初読は苦痛です。例えば吸血鬼怪談も「吸血鬼が、ただピストルで人を殺して回る」という話では狙った効果は上がらず、後の円熟期に書かれた、あの身の毛もよだつ「囁く影」などに比べると物語として全くこなれていません。また謎が解明された後「回りくどい」「あの目撃証人は忠犬ハチ公か」「バカ警官どもを懲戒免職に」といった突っ込みが産まれてくるのも、ひとえにトリックを覆うお話に力がないからでしょう。同じ無理のあるトリックでも「ユダの窓」ではテンポのよさに飲まれて無理が無理と感じられませんし、突っ込む方が野暮とさえ感じられます。同じようなイリュージョン・トリックでも「火刑法廷」では濃厚な怪奇趣味で読者を五里霧中に翻弄した末に謎を解き明かしますから、快刀乱麻の鮮やかさのみが際立ちます。こういう名人芸が、「三つの棺」には欠落しているのです。
カー再評価の機運のなか、ミステリー史上の重要性やマニア向けの楽しさと、物語としての完成度が混同されて、これをカーの最高傑作だと喧伝する人が相次ぎましたが、私はそれは乱歩や正史が「帽子収集狂事件」や「死人を起こす」を喧伝したのと同じで、カー離れを引き起こす元凶ではないかと案じています。あえて星二つ。