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(短編集)

火曜クラブ



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火曜クラブの評価: 4.60/5点 レビュー 50件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.60pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全44件 1~20 1/3ページ
123>>
No.44:
(5pt)

ミス・マープル無双

前警視総監や弁護士といった錚々たるメンバーが集まって、それぞれ迷宮入り事件を持ち寄り、推理しあう会が開かれます。
その中に混ざっていたマープルは、場違いすぎてはじめは軽く見られていましたが、どんどん真相を暴いていくという短編集です。

長編のマープル物ですと警察や探偵役に助言をする役回りなことが多いので、マープルの出番はあまりありません。
しかしこの作品は13篇あるので13回。なんと13回もマープルの推理が拝めます。マープル好きにとっては最高の一冊です。

長編ですと推理に必要な情報があれこれ提示されて、読者も謎解きを楽しめるようになっていますが、こちらは他のメンバーと一緒にマープルの推理の聞き手となって楽しむ作品かと思います。
マープル好きはもちろんのこと、特別好きでなくても、マープル物を読んだことが無くても、読み物として非常に質の高い作品なので万人におすすめしたいです。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
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No.43:
(5pt)

歳月を隔てて読むとまた印象が変わる

クリスティーのミステリは40年ほど前に早川の赤いカバーの文庫シリーズを一通り読んでいたのですが、最近アマプラでBBCドラマのミス・マープルシリーズを観て懐かしくて再読したくなり購入しました。
(文庫もどこかにしまい込んではあるのですが、老眼につらいのでkindleで)
ポアロもマープルも、若いころは別に嫌いではなかったけれどそれほど惹かれもしなかったのですが、ドラマを観て情景がより鮮やかになったことや自分も年をとったからか、ミス・マープルの人柄が若いころよりもずっと好ましく思われます。
クリスティー作品は冊数があったので、卒試から国試までの勉強の合間に、一日一冊気分転換に読んだものです。その頃はまだ「カーテン」や「スリーピング・マーダー」は出ていなかったような。
有名どころや好きな作品は内容もかなり詳しく覚えていますが、ほとんど忘れている作品もあるのでこれを機会に再読したいと思っています。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
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No.42:
(5pt)

ミス・マープルの初登場は何年か?

本書『火曜クラブ』で「ミス・マープルははじめて推理小説の世界に登場する」と
著者アガサ・クリスティーは本書冒頭の「著者のことば」に書いています。

本書の原書は “THE THIRTEEN PROBLEMS” (1932)
この1932年にミス・マープル初登場というのが、著者のおことばです。

マープル初登場について、少し考えてみました。

本書第一話の「火曜クラブ」“The Tuesday Night Club” が英国で発表されたのは、1927年。
その後の第六話までをまとめて、米国で “The Solving Six” として刊行されたのが、1928年。

長篇小説 “THE MURDER AT THE VICARAGE(牧師館の殺人)” が出たのが、1930年。

アガサの孫のマシュー・プリチャードは『牧師館の殺人』を
「ミス・マープルものの第一作」にあたるとしています。

一方、第六話の後に、第七話から第十三話までを付け加えて
“THE THIRTEEN PROBLEMS” が刊行されたのが、1932年。

わざわざ「13」という不吉な数になるように
短篇小説集に仕立てたところが、スリラー本ぽくて面白い。

話が逸れました。
ミス・マープルの初登場は第一話の「火曜クラブ」が発表された1927年では?
と思いませんか。

しかし、1927年は短篇小説へのデビューの年であるが、
本格的長篇小説へのミス・マープルの初登場は、マシューのいうように「1930年」
と考えることも可能と考え直しました。

早川書房は、本書『火曜クラブ』を<ミス・マープル>シリーズではなく、
別途、<短篇集>に分類しています。

<ミス・マープル>シリーズの最初は、『牧師館の殺人』となっています。

結局、読者もミス・マープルがはじめて推理小説の世界に登場したのは、
『牧師館の殺人』が出た「1930年」、と考えることにしました。

本当にアガサの小説は、細かいところまで興味が尽きません。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
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No.41:
(5pt)

短編集なので飽きない

中古で購入しましたが、良い状態でした。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
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No.40:
(4pt)

短編でキレがあってよかった。

短編でサクサク読めて、それでいて十分アガサ作品の雰囲気を味わえた。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
4150700419
No.39:
(5pt)

「バンガロー事件」はすごい!

レビュアーの方も仄めかされていますが、「バンガロー事件」は大傑作だと思います。こんなトリック?はこれまであったでしょうか?
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
4150700419
No.38:
(5pt)

いつ読んでも楽しい

マープルはこの作品から始まります。大好きなキャラクターです。ポアロ作品も繰り返し読みますが、マープル作品が少なくて残念ではありますが、でもやはり、古き昔の英国のゆるやかなクリスティならではの雰囲気に思いついたら読み返しています。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
4150700419
No.37:
(5pt)

とても良かった

中古本でそれなりかと思いましたが、新品と間違えるほどでした。良い本をありがとうございました。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
4150700419
No.36:
(5pt)

ミス・マープル大すき

短編集はいいですね。
サクサク読めるし、家事の合間に1つ2つつまむのにも、寝る前のナイトキャップ代わりにも。

全編通してつくづくミス・マープルのキレ者っぷりに胸がすく思いでしたが。
もう一人のジェーンにやられました。
これぞドンデン返し。

あともう一つ気になった文章が。
【ひょっとこの娘】
言いたいことはわかりますが、ひょっとこの女性版がパッと頭に浮かんでその後ずっと消えなくて困りました……。
読点つけてくれたら良かったのに……
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
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No.35:
(5pt)

何度読んでも

ミス典型的なマープル素敵!となる。
中村妙子訳の美しいご婦人方の語り口調がまたいいんですよね。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
4150700419
No.34:
(5pt)

面白い

面白い
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
4150700419
No.33:
(4pt)

マープル叔母さんのその面白さ、そして怖さ・・・。

マープル叔母さんは、田舎の一人暮らしの老嬢ではありません。その見た目に騙されてはいけません。元警視総監も驚く、洞察力、行動力、観察力。いろんな階層の人物が出てくるので、イギリスのいわゆる階級社会の勉強にもなります。ただの短編と侮るなかれ。短編なら、ポワロものより、私はマープルものの方が、どちらかと言えば好きですね。何の色眼鏡もなく、読んでもらいたいです。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
4150700419
No.32:
(5pt)

ミス・マープルの魅力が堪能できる一冊です。

アガサ・クリスティーの作品の中では、ポアロの方が有名かもしれませんが、ミス・マープルもとても魅力的な人物だと思います。
「火曜クラブ」の他のメンバーがしたように、小さな村に住む、物知らずの「おばあさん」と、侮ることなかれ。

イギリス人らしい慎み深さと皮肉とユーモア、そして物静かな自信にみちた物腰。
しかも「小さな村」でこそ養ってきた、人と物事の真髄を見抜く眼と推理力は抜群。

まさかまさか、相手にされていなかったミス・マープルが、警察、弁護士、小説家、画家、牧師という推理力と人を見る眼に自信ありのメンバーを、わっと驚かせる様子がかっこいい。

そして推理を披露し、周囲を驚かせた後には、「わたしのものの見かたなんて、井の中の蛙のようなくだらないものなんじゃないでしょうかね」と、マープルはつつましく答えるのです。

冒頭に(私が購入したのはKindle版です)「著者のことば」として、マープルについてのクリスティ―の言葉が掲載されているのも、興味深く読みました。
そこでクリスティ―は、マープルとポアロを比較したりもしていますが、マープルが祖母に似ていること、この「やさしい感じの老婦人」への愛情を抱いていること、書いていてとても楽しかったことを語っており、ミス・マープルに対して、私を含め多くの読者が魅力を感じる事に、改めて納得しました。

「この『火曜クラブ』は、ミス・マープルを愛する人々にとっては、彼女の真髄を知るに足る一冊ではないかと思う。」
ミス・マープルの魅力が堪能できる一冊だと思います。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
4150700419
No.31:
(5pt)

短編好きならば是非。

クリスティーはほぼ全部読んでいるとおもうのですが、ミスマープル物としては一位か二位、クリスティー全体の中でもトップ10に入る出来の短編集。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
4150700419
No.30:
(5pt)

私も参加したい

ミスレモンになりたい(ドラマ版ポワロの)、と熱望していますが、火曜クラブに参加も希望です。
最終章の「溺死」は40年前に初めて読んだマイファーストクリスティで、とても感慨深く再読しました。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
4150700419
No.29:
(5pt)

アガサ・クリスティはやはり凄い

マープルの面白さがつまっています。昔の作品なのに人間というものは、根本的に変わってはいないということがわかり楽しく読めました。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
4150700419
No.28:
(5pt)

ミス・マープル初登場作を含む、クリスティを代表する名作短編集

マープル物13編を収録。ミス・マープルに興味を抱いた方であれば、他のどんな作品よりもまず最初に手に取ることをお勧めします。何しろ、本書に収録されている「火曜クラブ」は彼女の初登場作品であり、それに続く12編を通して、ミス・マープルのキャラクター性、推理のスタイル、さらにはシリーズに繰り返し登場するバイプレイヤーたちまでもが確立されていったのですから。まさにミス・マープルを知る第一歩であり、外すことのできない一冊といえます。

さらに、本書はマープルシリーズに留まらず、クリスティの全作品中でも上位の、短編集に限れば間違いなくベスト3に入る完成度を誇ります。ミステリとしての面白さと語り口の妙を、これほど高次元で融合している作品はクリスティの中でも少ないでしょう。

もちろん、本書収録の作品は1927~1931年、つまり昭和2~6年に書かれているので、医学・薬学的な記述や、警察の捜査方法、あるいは当時の英国で一大ブームを起こしていた心霊主義の影響など、今から見れば、古いと感じる部分もあります。しかし、ポーの諸作やホームズ譚が古いからといって無価値ではないように、ミステリにおけるクラシックとして、今なおその価値と魅力は燦然と輝きを放っています。しかも、抜群の読みやすさ。邦訳の上手さも手伝って、中学生レベルの国語力があれば十分楽しめます。もともとクリスティの文章は会話文主体で表現も平易ですが、本書はほぼ全編が台詞と簡単な動作を示す地の文で構成されているため、その傾向が顕著でサクサク読み進んでいけます。その点で、初めてクリスティに触れるという方にもお勧めです。

なお、本書収録の13編は最初からこの形でまとめることを前提に書かれたわけではありません。まず最初の6話が月刊誌The Royal Magazineの1927年12月号から翌年の5月号にかけて連載されました。この時点ではそれ以上の展開は約束されていなかったのですが、当然というべきか好評を得たため、続く6話が月刊誌The Story-Teller Magazineに場を変えて、1929年12月号から翌年の5月号にかけて掲載されます。第12話の掲載から約半年後には、マープル物初の長編となる『牧師館の殺人』が1930年10月に刊行、さらにそこから約1年後、最終第13話となる「溺死」が月刊誌Nash's Pall Mall Magazineの1931年11月号にて発表されました。『火曜クラブ』が単行本として世に出たのは1932年6月。つまり、この短編集は、刊行時点で存在していたマープル物短編をすべて集めて編纂されたのです。途中で登場人物が変わったり、最終話だけ物語の形式が違うのはこうした事情によります。

以下、収録作品のレビューを目次順で記述します。雑誌での発表順はこれとは異なりますが(後述の「ミス・マープル登場作品全リスト」を参照)、単行本にまとめる際クリスティが配列を変え、それに合わせて内容も手を加えているため、目次順に従います。

火曜クラブ
毎週一度火曜日の夜に集まり、自分が結末を知っている実際に起こった事件について話す。他のメンバーはそれを聞いて真相を推理する。この会合を曜日に合わせて“火曜クラブ”と名づける……本書前半部のスタイルはこの巻頭作で定まります。謎解きに参加するメンバーは全部で6人。まず、そもそものきっかけを作った作家レイモンド・ウェスト。彼はマープルの甥にあたります。次いでその恋人で、会合の命名者となった画家ジョイス・ランプリエール。さらに教区の牧師ペンダー、老練な弁護士ペザリック、前警視総監サー・ヘンリー・クリザリング、そしてこの夜の集まりの場となった家の主人であるミス・マープル。最初彼女は数にも入れてもらえないほど、みそっかす扱いを受けています。さて、この中で記念すべき最初の話を語るのはサー・ヘンリー・クリザリング。彼の話は肩書きのわりにはやや地味ですが、それでも殺人事件であり、犯人はなかなか悪辣な人物です。マープルは過去に村で起こった事件に照らし合わせ、明快かつ切れ味のある推理で真相を看破。ポアロと人気を二分する名探偵はかくしてデビューを飾ります。

アスタルテの祠
古代人の聖地とされる鬱蒼とした森を舞台に起こった怪事件を描きます。語り手はペンダー牧師で、キリスト教の聖職者に異境の女神の話をさせるというアイディアが面白いです。不可能犯罪を扱っていますが、謎解きはそれほど難しくないかもしれません。しかし、全編に漂う怪奇小説風のムードが秀逸で、読んでいて引き込まれる一編です。なお、この第2話から第6話までが、第1話の取り決め通り火曜日毎に語られたのか定かではありません。というのも、読む限りでは一晩に6つの話が語られたと考えるほうが自然に思える箇所が何度か出てくるためです。クリスティ自身、さして気にしていなかったのかもしれません。

金塊事件
難破船に眠るとされる金塊を巡るエピソードです。語り手はレイモンド・ウェスト。ただし、彼は事件の真相を知りません。みんなで話しているうちにいい答えが見つかれば、という気持ちで話すのですが、やがて彼が思ってもいなかった真相が明かされます。僻地の閉鎖的な漁村の雰囲気がよく出ており、嵐の夜のなんとも知れない薄気味悪さなど、冒険物風の雰囲気が楽しめます。レイモンドはこの後マープル物に何度も登場するレギュラーキャラクターになりますが、一見シニカルで皮肉屋でありながら、根はロマンチストであるその性格も見事に描かれています。

舗道の血痕
これも海岸沿いの村が舞台ですが、こちらは小さいながらも海水浴客がやってくる隠れ家的な避暑地。そこで起こった女性の変死事件を扱います。語り手は画家ジョイス・ランプリエール。絵を生業とする女性らしく、光と色、それに女性の服装に関する描写が随所にあふれており、それが物語を盛り上げつつ、謎とも密接な関係を持ちます。男性陣が口々に手がかりが乏しいと言う中、マープルは女性的な視点から真相を解き明かします。

動機対機会
遺言状のすり替えをテーマにした不可能犯罪物。語り手はペザリック弁護士。想像力を排し、事実を事実としてありのままに見ることが唯一の成功の道、と語る彼らしく、派手さはないものの、難解な謎を提供してきます。しかし、マープルはいつものように村で起こった出来事を手がかりに柔軟な思考で正解を導き出します。

聖ペテロの指のあと
前半のラストとなる作品で、語り手はマープル自身。姪の身に降りかかった疑惑を解くために奔走する姿が描かれますが、相手との距離感や人物的評価に応じて、マープルが態度や言葉を選んでいることがわかります。彼女は決して穏やかで優しいだけの老婦人ではなく、ときには苛立ちや焦りも見せ、必要とあれば厳しいことも言ってのける人物であることがわかります。

青いゼラニウム
ここから後半戦。これ以降の6話も1人ずつ事件について話していくという形は変わりませんが、すべてが一夜のうち語られたという設定になっており、語り手が真相を知らない事件もいくつか入っています。メンバーについてはマープルとクリザリングを除く4人が入れ替わり、田舎の郷士でこの夜の会場となる館の主人バントリー大佐、その妻であるドリー、年配の医師ロイド、女優ジェーン・ヘリアという顔ぶれ。リスタートを飾る「青いゼラニウム」では、バントリー大佐が彼の友人の身に起こった不可解な事件を語ります。このエピソードは、当時英国で流行していた心霊主義がもたらす怪異を、ごく普通の家庭に持ち込んだ意欲作であり、恋愛要素の絡め方など、巧みなストーリー構成が楽しめる好編に仕上がっています。

二人の老嬢
カナリア諸島を舞台にした女性変死事件で、語り手はロイド医師。クリスティらしい心理誘導が成功している好例です。また、興味深いのがロイドの行動でしょう。今回の事件では彼は真相、すなわち犯人を知っているのですが、はたしてその人物をどうしたのか? マープルシリーズのレギュラーキャラクターである、もうひとりの医者ヘイドックが『牧師館の殺人』で主張する犯罪論も読み合わせてみると、いっそう興味が増すのでは、と思います。

四人の容疑者
クリザリングが語る未解決事件。ある老人が自宅の階段から転落して死亡します。警察関係者は特殊な事情からこれが事故ではなく殺人であるという確信を抱き、事件当時家にいた4人の中に犯人がいると考えますが、証拠が何もなく、そこから先へ進めません。しかし、マープルは武骨な警官たちではなかなか気づかない手がかりを見つけ出し、瞬く間に犯人をあぶり出します。

クリスマスの悲劇
文字通りクリスマスに起こった殺人事件。語り手はマープルで、悪人に対する彼女の容赦ない苛烈さが描かれます。興味深いのは、犯人の名が最初に明かされ、どうやって犯行を行ったのか、という点に謎が絞られること。クリスティのミステリは、“誰がやったのか“に焦点があてられ、“どうやったのか”は二次的に扱われる場合が多いのですが、ここでは珍しく逆になっています。とはいえ、手がかりをさりげなく文中に忍び込ませる技法はこのパターンでも健在。本書中でも指折りの本格派として楽しめます。

毒草
クリスティが得意とした毒殺物。語り手はドリー・バントリーが務めますが、夫曰く、個々の事実を伝えるのはともかく、それをつなぎ合わせて装飾を加えるのはちょっと、という彼女だけになかなかスムースにはいきません。しかし、それを逆手に取り、他のメンバーが質問することによって事件の全体像が見えてくる、というこれまでとちょっと違った趣向で物語が展開していきます。

バンガロー事件
後半6作のフィナーレとなる作品で、語り手は女優ジェーン・ヘリア。この話はプロットそのものに仕掛けが施されており、迂闊に中身に触れてしまうとネタバレになってしまう恐れがあります。ですので、意外な結末が待っている、とだけ申し上げておきます。後はどうぞお読みになってみてください。

溺死
この最終話のみ過去に起こった話ではなく、現在進行形の事件を扱います。注目したいのは、最初にマープルが犯人を名指しし(読者には誰なのかは明かされません)、それをクリザリングが裏付けしていくという構造になっていること。探偵小説の世界では、名探偵と警察官といえばとかく対立しがちですが、マープルとクリザリングの間にはここまでの12話を通して深い信頼関係が生まれており、それがこのような方法を可能にしています。また、マープル物では、マープルは謎解きをするだけで、捜査や情報収集は他人に任せ、実質的な主人公はそちらの人物になる、というスタイルが多くみられますが、その嚆矢となった作品ともいえます。

■※重要※ 本書掲載の“訳者あとがき”について

本書には、本文後に訳者あとがきと解説が付いています。このうち、訳者あとがきはハヤカワ・ミステリ文庫時代から掲載されていた文章ですが、その中で、本書収録作、及び他のクリスティ作品に対するネタバレが行われています。

具体的には「火曜クラブ」の犯人が事実上指摘されており、「溺死」の犯人も予想がつく範囲の記述があります。「アスタルテの祠」に関しても、犯人の動機が明記されているため、先に読んでしまうと興が削がれます。また、本書収録作以外では『白昼の悪魔』の犯人が事実上明かされており、『エッジウェア卿の死』『なぜエヴァンズに頼まなかったのか?』『ポケットにライ麦を』の各長編と短編「検察側の証人」に関して、ストーリーの中核部分に触れる記述があります。『杉の柩』についても、やや曖昧ではあるものの、危険な表現があります。

クリスティは同じ素材からバリエーションを生み出すことが得意な作家でした。そのため、すべての作品を読んでみると、類似点や発展形をいくつも見つけ出すことができます。この訳者あとがきはクリスティ作品の全部、あるいは相当数を読んだ人にとっては、そうした関連性を見いだす手がかりとして興味深い内容といえます。ただ、そこまで読んでいない人にとっては未来の楽しみを奪う恐れがあります。ご留意ください。

■ミス・マープル登場作品全リスト

英国で発表された年代順。番外として『火曜クラブ』も記載ています。ssは短編、nvは長編を意味し、短編の場合、収録されているクリスティー文庫の単行本名を()内に記しています。

01__1927/12月号___ss_火曜クラブ(火曜クラブ)
02__1928/01月号___ss_アスタルテの祠(火曜クラブ)
03__1928/02月号___ss_金塊事件(火曜クラブ)
04__1928/03月号___ss_舗道の血痕(火曜クラブ)
05__1928/04月号___ss_動機対機会(火曜クラブ)
06__1928/05月号___ss_聖ペテロの指のあと(火曜クラブ)
07__1929/12月号___ss_青いゼラニウム(火曜クラブ)
08__1930/01月号___ss_クリスマスの悲劇(火曜クラブ)
09__1930/02月号___ss_二人の老嬢(火曜クラブ)
10__1930/03月号___ss_毒草(火曜クラブ)
11__1930/04月号___ss_四人の容疑者(火曜クラブ)
12__1930/05月号___ss_バンガロー事件(火曜クラブ)
13__1930/10___nv_牧師館の殺人
14__1931/11月号___ss_溺死(火曜クラブ)
**__1932/06___**_火曜クラブ[01~12及び14を収録]
15__1935/05月25日号___ss_ミス・マープルの思い出話(黄色いアイリス)
16__1942/01月号___ss_管理人の事件(愛の探偵たち)
17__1942/02月号___ss_巻尺殺人事件(愛の探偵たち)
18__1942/02___nv_書斎の死体
19__1942/04月号___ss_非の打ちどころがないメイド(愛の探偵たち)
20__1943/06___nv_動く指[米国版は1942/07]
21__1944/07月号___ss_風変わりな冗談(愛の探偵たち)
22__1950/06___nv_予告殺人
23__1952/11___nv_魔術の殺人[同内容、別タイトルの米版が同年内に先行で発売]
24__1953/09___nv_ポケットにライ麦を
25__1954/10月号___ss_教会で死んだ男(教会で死んだ男)
26__1957/11___nv_パディントン発4時50分
27__1960/08月号___ss_グリーンショウ氏の阿房宮(クリスマス・プディングの冒険)
28__1962/12___nv_鏡は横にひび割れて
29__1964/11___nv_カリブ海の秘密
30__1965/11___nv_バートラム・ホテルにて
31__1971/11___nv_復讐の女神
32__1976/10___nv_スリーピング・マーダー

ミス・マープルの初登場作品については、単行本の発行時期から『牧師館の殺人』であると誤解されることが多いのですが(創元推理文庫版の同書の邦題が『ミス・マープル最初の事件』とあるのも一因かもしれません)、上記の表を見て戴ければわかるとおり、本書収録の12話のほうが先行しています。ただし、第13話「溺死」は『牧師館の殺人』の後で発表されています。マープル物を年代順に読んでみたいと考えている方はご注意ください。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
4150700419
No.27:
(5pt)

文句なしに面白い短編集

セン・メアリ・ミードに住んでいるおばあさんのミス・マープル。このおばあさんが、事件の現場を見ずに、人が話をするのを聞いて事件を解決する。13の事件について見事な推理というか、あたかも見てきたかのように真相を暴いていく。彼女の手腕は見事としか言いようがなく、謎が解けた時にはものすごい爽快感がある。靄に包まれていた状態から、一気に青空の高原に連れていかれたかのようだ。ミステリーが好きなら必読である。すごく楽しめるから。

何が一番面白いのか議論するのも野暮である。どれも意外な結末があるし、ミス・マープルや登場人物のストーリーテリングにも引き込まれる。訳文も読みやすい。読んで良かったと心から思う。

ところで、火曜クラブとは少し上流階級の人が火曜日に集まって、自分が知っている(当事者でもある)事件について話、聞き手が犯人を推理する会である。6人の会であるが、それで13件(実際には12件だが)の事件について話をされるということは、どれだけこの人たちは身近に殺人事件があるのだろうかと。名探偵コナンもびっくりの事件遭遇率ではなかろうか。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
4150700419
No.26:
(4pt)

サー・ヘンリーはここでミス・マープルの推理力のすばらしさを知る

作家(甥のレイモンド)、牧師(ベンダー博士)、元警視総監(サー・ヘンリー)、女流画家(ジョイス・ラングリエール)、
弁護士(ベサリック)、編み物好きな老婦人(ミス・マープル)など様々な職業の人が集まって毎週火曜日にパーティを開いた。
その席で自分が遭遇した不思議な事件について語り合い、その事件の真相をみんなで語り合う。
いつも事件の真相を見抜くのは編み物をしながら話を聞いてるミス・マープルだった。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
4150700419
No.25:
(4pt)

憧れのおばあちゃん

学生の頃からずっと好きだった、ミスマープル。映像版では、ジョアンヒクソンのマープルが、クリスティ本人もマープルそのものと絶賛しと言われているくらいイメージそのもの。そのジョアンヒクソンのマープルを思い浮かべながら、何度も何度も読みました。その洞察力には、ただ脱帽。年をとったら、こんなおばあちゃんになりたいとも思ったものです。文庫は繰り返して読んでボロボロになったので、Kindle版で集め直そうと思い、購入しました。今から、何度目になるかの読書が楽しみです。
内容は☆5つ。でも、ダウンロードしてみると表紙となる絵がAmazonで表示されているものとちがうので、そこはちょっとがっかりしたので☆を一個減らしました。
火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)Amazon書評・レビュー:火曜クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-41 クリスティー短編集 6)より
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