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数奇にして模型



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数奇にして模型の評価: 6.10/10点 レビュー 10件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.10pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全4件 1~4 1/1ページ
No.4:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

9作目にして作者大いに趣味に走る!?

S&Mシリーズ9作目の本書ではこのシリーズの原点回帰とも云える密室殺人事件を扱っている。しかも同時に2つの密室殺人が離れた場所で起こるが、どちらも容疑者は同一人物だったという、魅力的な謎をいきなり提示してくれる。

一方の密室殺人は大学の実験室で起こる。共同実験者の上倉裕子が扼殺されて横たわっていた。その部屋の鍵を持つのは被害者の上倉裕子と助教授の河嶋、そして研究室の学生用の1つでそれは容疑者の寺林が持っていた。

他方の密室殺人の舞台はオタクの祭典、模型展示会が行われている公会堂の控室。そこにいたのは首のない、しかし体型からコスプレモデルとして来ていた筒井明日香の遺体、そして頭から血を流して昏倒していた寺林だった。そしてその部屋の鍵は寺林と管理人のスペアキーしかなかった。だが鍵を持っていた人物は部屋で昏倒していたので誰がどうやって鍵を掛けたのかが解らない。

さらに筒井明日香の兄紀世都もまた自分のアトリエで萌絵、寺林、大御坊、喜多、犀川ら衆人環視の中で殺害される。死因は感電死だが、浴槽に浸かっていた彼の遺体は白い塗料が吹き付けられていた。それは恰もフィギュアのようだった。

本書で特徴的なのは『幻惑の死と使途』以降付されていなかった登場人物表が復活していることだ。
『幻惑の死と使途』、『夏のレプリカ』、『今はもうない』は登場人物表を付けられない、凝った構成の作品だったからだが、本書でそれが復活しているということはつまり原点回帰的な密室殺人ミステリであることを意味している。

さて本書では森氏の趣味がある意味横溢していると云っていいだろう。
まず事件の舞台となるのが模型作品展示・交換会、つまりモデラー達の集いである。作者自身がかなり本格的な鉄道模型マニアであることから、これは満を持してのテーマだったと思われる。そのためか登場人物が模型やフィギュアに対する哲学を語るシーンがそこここに挟まれており、それらは作者自身の考え・意見であると窺える。

そしてもう1つ特徴的なのはコスプレイヤーも登場するところだ。
モデラー達よりもその色合いは薄いものの、本書では西之園萌絵がコスプレしているところに注目されたい。まずは上記の展示会でのオリジナルキャラクターのコスプレに、事件の容疑者寺林に話を聞くために彼が入院している病院の看護婦に成りすまして潜入する。
コスプレマニアにとってはある意味萌え要素が盛り込まれており、やはり西之園萌絵の名の由来はオタクやマニアにとって馴染みの“萌え”から来ているのかと思わず勘ぐってしまった。

もう少し云えば、本書の章題に注目したい。「土曜日はファンタジィ」、「日曜日はクレイジィ」、「月曜日はメランコリィ」とラノベ的な軽さを持っており、これもオタク要素を盛り立てている。本書の題名に隠されたもう1つの意味、「数奇にして模型」≒「好きにしてもOK」の如く、森氏は奔放に本書で遊んでいるようだ。

さて真相を読めば至極面倒な手続きを踏んだ事件だったと云える。
正直「夜はそんなに長いか?」と疑わずにいられない。この真相のバランスの悪さがカタルシスを感じさせないのが残念だ。

しかし本書では真相に至るまでの経緯も含めて色んなミステリのガジェットに満ち溢れているように思える。

例えば録画好きの大御坊の8ミリカメラの映像で第3の殺人事件、筒井紀世都の遺体が発見されるまでの彼のアトリエで起きたイベントの一部始終を振り返るところはジョン・ディクスン・カーの『緑のカプセルの謎』を髣髴させるし、犯人の動機である理想形の人物をシリコンで型取って等身大のフィギュアを造る件は島田荘司氏の『占星術殺人事件』のアゾートを想起させる。

さてシリーズ9作目になると固定メンバーの知られざる事実が小出しに明かされていく。犀川の友人喜多が鉄道マニアであったこともそうだが、特に今回は萌絵の同級生で同じ犀川研究室に所属する金子勇二が姉を萌絵の両親が遭った同じ旅客機事故で亡くしていることがちょっとしたサプライズだった。これが彼と萌絵との関係にどのように展開していくかは今の段階では解らない。

さらに初登場の萌絵の従兄、大御坊安朋もまた実にエキゾチックなキャラクターである。
妾の子という暗い生い立ちにありながら作家にして女装家でオネエ言葉を連発する、1998年と今から17年前の発表当時では実に濃くて生理的に受け付けない人物であっただろうが、オネエタレントが芸能界を闊歩する今では免疫が出来て寧ろ魅力的に映った。あと1作を残すのみとなったS&Mシリーズの終盤では登場するに遅すぎたと残念に思った。

本書はフィギュアにコスプレにとオタクたちの集いと云った趣のある内容、大御坊安朋のオネエキャラは刊行当時ではそれほどこれらの世界が認知されていなかったせいか、比較的その濃度は控えめだが、現在ではもはや珍しくもない題材なので、いささか早すぎたテーマだったのかもしれない。逆に昨年ドラマ化されたことはようやく時代が本書の内容に追いついたことということか。

またこのシリーズのもはや特徴となっているが、殺人を犯すことの動機の浅薄さ、不可解さは逆にネット社会で人とのコミュニケーションがリアルよりも電脳領域での比率がかなり高くなっている現在の方が実に解りやすくなっている。

そして9作目にして初めて犀川は犯人と対決する。犯人の毒牙に落ちようとする萌絵を救うため、身体を張って彼女を護り、怪我を負う。ドライでクールなミステリだったシリーズがホットでフィジカルな色を帯びて正直驚いた。

このようにシリーズの評価は私的には尻上がりに好ましくなってきているが、唯一変わらないのは西之園萌絵に対する嫌悪感である。本書でも彼女は我儘で傍若無人、傲岸不遜であった。萌絵と私には決して近づくことができない斥力が働いていると認識しよう。
いやはや身の回りにいなくてよかった。


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Tetchy
WHOKS60S
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

数奇にして模型の感想

第一の殺人が起きるまではちょっと取っ付きづらく感じたけども前作でメインキャラがあまり出てこなかったので最後まで楽しく読めました。


ちなみに今仮面ライダー鎧武を観てるせいか大御坊が仮面ライダーブラーボの凰蓮が頭にそのまま浮かんでしまって困ったw

船橋西瓜
QL8HSWRK
No.2:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

数奇にして模型の感想

正常と異常の違い、人はどこまでが一人なのか、模型が模するのは形ではない、といった哲学的な話が面白く、スラスラと読めました。今作は、今までのS&Mよりも、どういった思想で実行したのかという動機に焦点が当てられている気がします。動機は(共感は全くできないが、そういう人がいてもおかしくないという意味で)納得させられてしまいました

ほっと
2XKXV6EI
No.1:
(7pt)

数奇にして、、、


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phantom
XG7WFVJT

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